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こんな映画は見ちゃいけない! 

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フォックスキャッチャー こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/02/14

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/2/14号  Vol.1635   ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は

          「フォックスキャッチャー」  です。

名門の家系に生まれたけれど偉業を為した祖先の足元にも及ばない。
一方、五輪金メダリストにもかかわらずボロアパートに住みファスト
フードで腹を満たしながらトレーニングを積むマイナー競技の現実が、
若者の精神を不安定にさせていく。新たな名声への欲望と切実な生活
苦、そんな2人が出会ったとき彼らの人生の歯車が好転し始める、はず
だった。物語はひとりのレスラーの目を通して大富豪の孤独を描く。
語り部となる主人公もまた情緒不安定、静謐のなかにはち切れそうな
緊張をはらむ映像は、狂気はいかに育つのかを丁寧に紐解いていく。

厳しい環境で練習するマークは、デュポン社の御曹司・ジョンからの
申し出で、大豪邸敷地内の合宿所に引っ越す。レスリングに集中でき
たマークは世界選手権で優勝、ジムには有望選手が集められる。

様々な肩書をカネで買ってきたジョンの次なる目標は、“五輪メダリ
ストを育てたコーチ”。実際には資金を出すだけでほとんど何もしな
い。マークを始め周囲もそれをわかっているが口には出せない。ジョ
ンは若いころから同じ茶番を繰り返していたのだろう、彼の秘書は訳
知り顔でジョンが暴走しないようにカネの力を借りて見守っている。

やがてジョンはマークの兄で同じく金メダリストのデイヴをチームに
加える。ジョンにとって、同類の匂いがするマークよりも社交的で遠
慮のないデイヴは探し求めていた友人。生気のない目は何も語らない、
それでも要求を呑みジョンはデイヴへの友情を示す。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                       「フォックスキャッチャー」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141218

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

            「悼む人」  です。

誰に愛され愛したか、どんなことで感謝されたか。世間の片隅で悲劇
的な最期を迎えた人々でも、必ず生きた証を残しているはず。主人公
は見知らぬ人の死を胸に刻み、彼らの足跡をわがものにしようとする。
彼の姿はまるで赦しを願う巡礼のようでもあり、悟りを目指す修験者
のようでもある。本人にも明確な理由や目的は分からない、ただ、人
間の“生”は“死”をもって終わるのではなく、その先もどこかで続
くのではないかという問いかけの答えを模索するのみ。それでも見返
りを求めず死者の思い出に耳を傾ける彼に傷ついた家族は癒されてい
く。映画はそんな青年と旅をする女と、彼に興味を持つルポライター
の目を通して、“命”とは何かを見つめる。静謐を湛えた映像は厳か
な斎場に似た空気を醸し出す。

事件・事故現場を訪ね歩き、そこで亡くなった人を悼む静人はゴシッ
プ誌記者の蒔野の取材を受けるが変人扱いされただけ。その後、殺し
た夫の亡霊に付きまとわれる女・倖世が静人に合流する。

冥福を祈るのでもない、怨嗟を共有するのでもない。静人の悼みはな
かなか理解されず、時に不審者と誤解される。一方で、貴重な時間を
共に過ごした親族や友人の記憶から薄れていくなか、死者の魂を鎮め
ようとする静人に共感し礼を言う人もいる。

片膝をつき手を片方ずつ振って胸の前で重ねる、感情を抑制し心を浄
める静人の儀式的な所作を高良健吾がしなやかな動きで再現する。

        お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「悼む人」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150115

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「little forest 冬/春」  です。

深い雪に閉ざされた冬、山奥の集落では食べ物は保存のきくものしか
ない。夏や秋のうちに収穫した野菜を干し、漬け、埋め、発酵させ、
必要に応じてその都度手を加える。小さな一軒家に住むヒロインはそ
こで“食”と正面から向き合って己の生き方を模索する。正解がない
のは分かっている、でもより良い答えは見つけられるはず。作物を育
て、山菜を摘み、魚を釣り、鶏を絞める。毎年同じことの繰り返しに
思えてもやはりどこか去年とは違っている。“人生は円ではなくらせ
ん”という母の言葉に象徴されるように、同じ場所を巡回しているよ
うでも少しずつ高さや深さは変わっている。物語はそんな彼女のスロ
ーライフを通じて“生活の質”とは何かを問う。

ケーキを焼いたいち子は友人のキッコ、ユウタとクリスマスを祝う。
ある日、キッコの愚痴に上から目線のアドバイスをしてケンカ、その
後、ユウタにも何かから逃げていると言われてしまう。

いち子は日常にデジタル機器を持ち込まず、気分転換の息抜きと呼べ
るのは友人たちとのおしゃべり程度。起きているほとんどの時間を生
きるための準備に費やしている。まるで自分を罰するかのごとき禁欲
的な暮らしは、失踪した母への贖罪なのか。それとも町に馴染めず戻
ってきた反省なのか。だが、いち子は食材の調理法について語るのみ。

喜怒哀楽を抑え料理に没頭する姿は、濃い人間関係を結んだ身近な者
に裏切られ傷つくのを極度に恐れている彼女の不安の裏返しに見えた。

        お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「little forest 冬/春」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141219

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

           「マエストロ!」  です。

音楽への情熱はまだ冷めていない。でも生活のためにカネを稼がなけ
ればならない。廃工場に集合した演奏家たちは、葛藤を抱えながらも
楽器を奏でられる喜びを抑えきれない。そんな彼らの前に現れたのは
粗野で下品なジジイ。物語は一度解散した楽団と強烈な個性の指揮者
が互いにエゴをぶつけ合いながらも、音楽という芸術を究めるために
全力を尽くす過程を描く。卓越した耳とセンスで個々の欠点を指摘し、
罵倒し、できるまで繰り返させるやり方は、まさに命がけの決闘。若
きコンサートマスターの、ワガママな先輩楽団員とワンマン指揮者と
の軋轢に苦悩する姿は、“中間管理職”の辛さがにじみ出ていた。

若手ヴァイオリニスト・香坂を中心に再結成したオーケストラの練習
場に天道と名乗る老人が登場、“運命”と“未完成”の指導を始める。
口の悪い天道に楽団員たちの不満が募り、香坂も彼らに同調する。

指揮者としての力量は認めるが、経歴不詳の天道に楽団員たちは興味
津々。無名と見下していたのにいつしか彼の指揮に魅力を覚える者も
いる。一方でプライドの高い者は天道に対する嫌悪感を膨らませてい
く。ひとり混じったアマチュアのフルート奏者・あまねだけは古いし
がらみにとらわれず天真爛漫な態度を貫く。

そして紆余曲折を経ながらも迎えた本番、カメラはステージに上がっ
たオーケストラの前後左右上下を変幻自在に移動し、映像に圧倒的な
立体感とスピード感をもたらしていた。

        お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「マエストロ!」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150213

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

           「ジョーカー・ゲーム」  です。

騙したはずが騙されて、仕掛けられた罠にかかっても逆手にとって利
用する、身分を偽装し敵の懐に潜り込み重大な機密を奪う任務を負っ
た男は、幾重にも張り巡らされたトラップと、複数の競争相手を向こ
うに回して奮闘する。第二次世界大戦前夜、映画はそんなスパイたち
の虚々実々の駆け引きをアクションたっぷりに描く。可能な限り暴力
に訴えず、変装と開錠技術、そして足の速さで逃げ切ろうとする主人
公の、欧米韓のスパイものとは一線を画すスマートな身のこなしの数
々は、むしろ“怪盗映画”と呼ぶにふさわしい。

死刑判決を受けた元軍人は、特務組織・D機関のスパイとなり嘉藤とい
うIDを与えられる。嘉藤は新型爆弾の設計図が隠されたブラックノー
トを手に入れるために南方の島に飛び、米国大使に近づく。

漠然と下っただけの階段の段数や広げた地図の下のアイテムを記憶す
るなど、一瞬の観察眼と鋭い分析力が必要とされるスパイ。語学を始
め格闘技や金庫破り、奇術まがいのトリックまで叩き込まれる。優秀
な成績で訓練を終えた嘉藤にとって怠惰な米国大使の信頼を得るのは
お手の物で、知己を得てすぐに公邸に出入りするまでになる。

ただ、その間繰り広げられる、潜入・強奪・逃走・追跡劇はサスペン
スにもスピードにも乏しく、安っぽいTVドラマを見ている気分。嘉藤
を演じる亀梨和也の肉体からはリアリティがまったく感じられず、ア
イドル映画の域を出ていない。

        お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                    「ジョーカー・ゲーム」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150212

    を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

東京・渋谷区が同性カップルに「結婚相当する関係」と認める証明書
を発行する条例案を議会に提出するそうです。

憲法24条に反するという意見もあることから、法律的な効力はなく、
あくまで実生活における差別をなくそうという意図。

まあ、時代の流れと言えばそれまでなのですが、逆に別れ話がこじれ
た時の慰謝料や、パートナーが死んだときの相続など、もめ事も増え
そうです。

女同士のカップルだった場合、子供の養育権はやっぱり産んだ方が得
るのでしょうか。。。

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      次回配信予定は2/19、作品は
         
          「きっと、星のせいじゃない。」
         
              です。

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創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
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