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こんな映画は見ちゃいけない! 

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エクソダス こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/01/29

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/1/29号  Vol.1630   ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は

          「エクソダス」  です。

圧倒的な魔法を使って神の威光を示すわけではない。確固たる信仰で
民を導いたわけでもない。素顔は強固な意志と卓越した洞察力を持つ
軍務に長けた将軍であり、あくまで現実と向き合うリアリスト。奇跡
よりも説明を求める姿は論理的な哲学者のようだ。確かに男は神に選
ばれた。だがそれは結果論で、度重なる偶然が運命を変えただけにも
思える。一方で常に先頭に立ち危険を克服し、時に厳しい決断で“暴
君”となじられたりする。そんな彼の勇気と苦難に迫ることで、映画
は主人公が預言者である前に一人の人間だったと訴える。「旧約聖書」
最大のヒーローは何者だったのか、カメラはその実像に肉薄する。

王子・ラムセスと兄弟同様に育てられたモーセはヘブライ人奴隷の長
老から出自を聞かされる。噂が王宮に広まるとモーセは追放され、た
どり着いた村で結婚、9年後啓示を受けエジプトに戻る。

専制を強めるラムセスにヘブライ人の解放を要求するモーセは追われ
る身となり、ゲリラ戦を仕掛ける。同時に様々な災難がエジプトを襲
うが、ラムセスの側近は合理的な解説を試みる。このあたり、エジプ
ト人もヘブライ人も神や神託を妄信するのではなく理性を働かせる。

モーセ像の定番となったセシル・B・デミル作品に対してあらゆる疑問
を投げかける21世紀の「出エジプト記」は、リーダーとはいかに振る
舞うべきかの理想像を提示する。モーセの煮え切らなさは混迷の時代
の責任者の苦悩を象徴していた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                       「エクソダス」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141215

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

         「KANO 1931海の向こうの甲子園」  です。

岡島秀樹風のダイナミックなフォームで速球と変化球を使い分ける投
手、軽々と打球を外野まで運ぶ強打者、出塁すればすかさず次の塁を
狙う俊足の野手、そして苦虫をかみつぶした表情のままの監督。球児
ならば誰もが目標とする甲子園、その思いは日本統治下の台湾でも同
じ。映画は1931年夏の甲子園で準優勝した台湾代表チームの奮闘を描
く。日本人・漢人・現地人の混成チームが民族の垣根を超えた友情と
チームワークで旋風を起こした事実は、日本人がいかに台湾に融和し
ていたかを物語る。南国の小さな町の水田から銀傘新しい甲子園まで、
CGで再現された背景には当時の報道写真に色を付けたような懐かしさ
を感じた。

嘉義農林の野球部監督を依頼された元松山商のコーチ・近藤は、選手
たちに甲子園出場を宣言し猛練習を課す。厳しいが的確な指導はすぐ
に実を結び、就任2年で台湾予選を勝ち抜く。

まだまだ本土とはレベルの差があったであろうの選手たちに日本的な
“野球道”を叩き込む近藤。南国的気質の地元の選手たちも日本がル
ーツの選手たちも「甲子園、甲子園」と口にしてランニングするうち
に徐々に目の色が変わり、夢に向かって努力する充実感を覚えていく。

そして、甲子園で勝ちあがっていくうちに、選手にも試合を見守る人
々の間にもいつしか一体感が生まれる。そんな野球の魅力を伝える力
をこの作品は持っていた。

        お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

              「KANO 1931海の向こうの甲子園」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150127

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

      「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」  です。

日没後にセットされた目覚まし時計が鳴ると、棺桶から起き上がる。
同居人を起こして回り、“共同生活のルール”ついて話し合う。太陽
と十字架と銀製品は苦手、口にするのは動物の血、でもそれ以外の生
態はほとんど人間と同じ。当然、面倒見のいい者も自己チューな者も
反抗的な者もいる。カメラは郊外の一軒家でひっそりと暮らすヴァン
パイアたちを記録するドキュメンタリーの体裁で彼らの日常に密着す
る。とりあえず周囲の人間に正体はばれていない、それでもたまには
人間の生き血をすすりたい、そして永遠の命と若さを謳歌したい。物
語はそんな彼らの欲望と葛藤をコミカルに描く。

ヴィアゴ、ディーコン、ヴラド、ピーターが身を潜める家に、新たに
ニックが加わる。ニックは闇の掟を守らず、自分がヴァンパイアであ
ると口外してはばからない。さらに人間の親友・ステュを招き入れる。

IT技術者のステュは早速パソコン持ち込みネットでの検索・通信をヴ
ァンパイアたちに教える。ヴィアゴは探し続けていた恋人の消息を知
るなど、ヴァンパイアたちは役に立つステュを友人として迎え入れる。
時代の流れを受け入れなければ未来が危うい、ヴァンパイアの世界も
時と共に変わってく様子が、ゆる〜い感覚で再現される。

100年以上も近代文明から遠ざかっていたヴァンパイアたちがITの洗礼
を受け驚き楽しむシーンは、彼らも人間界との相互理解を怠れば、昔
のように忌み嫌われ排除されることを予感させる。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                 「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141212

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「ANNIE/アニー」  です。

成功者はよりリッチになり、経済活動から落ちこぼれた人々は食料配
給の列に並ぶ。チャンスをつかみ勤勉に働き続けた男が見返りに得た
ものは、圧倒的な孤独だ。しかも、愛する人も愛してくれる人もいな
い状態を心地よいとさえ思っている。映画はそんな実業家が、偶然出
会った少女から他人との絆を築きぬくもりを感じていく姿を描く。厳
しい現実の中でも両親との再会を信じて生きるヒロインは、彼にとっ
ては忘れていた“希望”の象徴となっていく。への字口と三角眼で意
地悪な養母を怪演したキャメロン・ディアスが異彩を放っていた。

毎週金曜日、生き別れた両親の帰りを待つアニー。ある日、市長選候
補者のウィルに命を救われた場面がSNSで拡散する。ウィルはイメージ
戦略にアニーを利用しようと彼女を食事に招待し、同居を提案する。

通信会社の経営者でもあるウィルは労働者家庭で育ったにもかかわら
ず、今は非ホワイトカラーの有権者を票田としか見ていない。身体的
接触後には必ず除菌するほど彼らを見下し、当然清潔とは言えない風
体のアニーにも嫌悪感を抱いている。だが、ウィルの企みを見抜き駆
け引きをするアニーの、10歳とは思えない利発さにも興味を持つ。

このあたり、アニーはもはや明日に夢を託す健気な孤児ではなく、生
き馬の目を抜くような変化の速い世の中でサバイバルする“運命と戦
う少女”というキャラクター。あまり面倒を見てやりたいとは思わな
い強さを身につけていた。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                    「ANNIE/アニー」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150128


    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「スパイ・レジェンド」  です。

裏切りと嘘。陰謀と偽装。誰もが秘密を抱え、信じられるのは自分だ
け。そんな諜報の世界に戻ってきた伝説のスパイは、2つの組織から追
われる女を守る。味方の中に敵がいる、敵がいつしか味方になる。国
際秩序を覆しかねない巨大な謀略の陰で繰り広げられる虚々実々の駆
け引きがスリリングだ。物語はロシア大統領候補のスキャンダルを知
る女を巡って、主人公とCIAとロシア人組織の三つ巴の戦いを描く。複
雑に入り組んだ設定と謎が謎を呼ぶ展開はミステリアス、相手の考え
を先読みし言葉で挑発し罠を仕掛ける心理戦はサスペンスに富む。ピ
アース・ブロスナンが20世紀的なスパイになりきっている。

ロシア中枢部に潜り込んだ元恋人の救出に向かったピーターは、ミラ
という女が重大な情報を握っていると告げられる。CIAのかつての部下
・メイソンとロシアの女殺し屋も同時にミラの行方を探していた。

ミラにつながる唯一の関係者・アリスは、女殺し屋に狙われたところ
をピーターに救われ、行動を共にする。その過程でCIAの追手を雑踏で
まき、古典的な方法で排除していくピーター。石畳で整備された欧州
の古い町並みでのマンハントは派手さよりも緊迫感が重視され、図らず
も巻き込まれたアリスの感覚を再現する。

予想外の出来事への戸惑いと不安がリアルだった。加えて、立場の違
うスパイたちの動きから事件全体を俯瞰する構成は、ピーターの立ち
位置をわかりやすくしている。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「スパイ・レジェンド」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150124


    を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

イスラム国人質事件の影響で、歌の歌詞を変えたりアニメの放送を見
送ったりと、TV局が様々な自粛し始めています。

C・イーストウッドの新作「アメリカン・スナイパー」にも、テロリス
トが人質の少年を惨殺する場面がありますが、彼らの残虐性を示す意
味でもぜひ公開してもらいたいものです。

イーストウッド作品といえば、2011年の「ヒアアフター」も公開直後
に大震災が起き、津波シーンがあるということで上映が打ち切りにな
りました。

“世間の空気”に安易に流されて表現の自由を捨てる、それもまたテ
ロリストに対する敗北ではないでしょうか。。。

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      次回配信予定は1/31、作品は
         
          「バベルの学校」
         
              です。

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