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こんな映画は見ちゃいけない! 

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TRASH! こんな映画は見ちゃいけない! 

2015/01/08

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2015/1/8号  Vol.1624    ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は

            「TRASH!」  です。

うずたかく積み上げられた都市からの大量の廃棄物、その中から少し
でも換金できるモノを探してビニール袋を漁る。家はない、親もいな
い、もちろん教育は受けていない。それでも宣教師やボランティアの
おかげで犯罪に手を染めずに生きている。物語は、ゴミ拾いの少年た
ちが偶然手に入れた財布を巡って、格差の現実と貧困の原因を突き詰
めていく姿を描く。劣悪な環境でも正しいことは何か理解している彼
らが直面するのは、政治家たちの腐敗を証明する鍵であるとともに、
自らの運命を切り開く希望。圧倒的な組織力を持つ警察を相手に決し
てひるまない行動力、それがブラジルの活力になっているのだろう。

数字が記された写真と鍵が入った財布を見つけたラファエロは、親友
のガルド、ラットと共にコインロッカーに隠された手紙を回収。服役
中の政治犯にそのメッセージを伝えるためにガルドは刑務所を訪れる。

身分証から、財布の持ち主が単身で汚職を暴こうとしていると知った
3人は、更なる調査を進める。一方で警察も財布を奪還しようと包囲
網を狭めていく。少年たちは暗号と謎を解きつつも追っ手をかわさな
ければならない。

身軽な彼らが、アクロバティックに柵を上り壁を伝い素早く道路を横
切り、迷路のように入り組んだスラム街を逃げ回る光景は、不当な権
力に命がけで抵抗する“持たざる者”の矜持を称えているようで、ス
リルよりもむしろ痛快感を覚えた。

       お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

                    「TRASH!」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141126

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「真夜中の五分前」  です。

恋人の死といまだ正面から向き合えず殻にこもっている男。一卵性双
生児として生まれたゆえに自己を確立できない女。ふたりとも何かが
欠けているのには気づいているが、正体はわからない。そんな男女の
恋は、お互いに求めすぎることを恐れるあまり、相手に深く立ち入ろ
うとはせず、己の周囲にも防御線を張っている。物語は、美人フリー
ライターと出会った孤独な時計職人が、彼女の双子姉妹とその婚約者
を交えた“愛の迷宮”で彷徨し苦悩する姿を描く。デートしたのは姉
なのか妹なのか、彼女たちはなぜ混乱させるような言動を取るのか。
双子は記憶や思考も共有できるのか。ミステリアスな装いのしっとり
とした映像は、人間の心に潜むささやかなエゴを照らし出す。

室内プールでルオランに声をかけられ、プレゼントの買い物に付き合
った良は、後日双子姉妹のルーメイを紹介される。売れっ子モデルの
ルーメイは映画プロデューサーのティエンルンと婚約していた。

明るく社交的なルーメイとは対照的に、ルオランは感情より理性が先
行するタイプ。ルーメイと違って、美しさを自覚しながらも積極的に
利用しようとはしない。むしろルーメイに自分の人生を奪われたとい
う被害者意識すら持っている。良は不器用な生き方しかできないルオ
ランに共感を覚え、彼女を愛し始める。

ただ、時に男たちのカン違いを訂正しないルオランとルーメイ、いい
年してそれを楽しんでいるような底意地の悪さが非常に不快だった。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                    「真夜中の五分前」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150107

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「マップ・トゥ・ザ・スターズ」  です。

下積みの者は野心を隠さず、スターになった者は後進の活躍に脅え、
落ちぶれた者は現状を嘆く。誰もが虚栄心をむき出しにし、享楽的な
時間を過ごすことで不安やストレスを紛らわせている。そんな街に舞
い戻った1人の娘は、亡霊のごとく彼らの日常を蝕んでいく。だが、元
々一般的な常識からズレた世界、むしろ痛々しくも健気な態度が、彼
女の方がよりまともな精神状態なのではと思わせる。人間の心に巣食
う狂気、それはどこからもたらされ、いかにして育つのか。映画は登
場人物の内面深く覗き込み、強烈な“死”のイメージにとり憑かれた
人々の悲劇を描く。

ハリウッドにきたアガサはカムバックを狙う女優・ハバナの個人秘書
になる。ドラッグ矯正中の子役スター・ベンジーは少女の亡霊に悩ま
される。ベンジーの父・ワイスはハバナからアガサの話を聞かされる。

ハバナは1970年代に焼死した名女優・クラリスの娘だが、クラリスか
ら受けた虐待の記憶に今も苛まれている。彼女が新作映画で演じるの
はそのクラリスの役、ぜひやりたいけれど、自分もクラリスのような
女になってしまうのではという恐怖も消せない。

複雑に絡まった運命、壊されるべき家族。アガサの行為でハリウッド
すべてが浄化されるわけではない、それでも己の周囲の“穢れ”だけ
は取り除こうとする。甘美な“死”の誘惑の前で、アガサのただれた
横顔が一瞬美しく見えた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「マップ・トゥ・ザ・スターズ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150106

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「バンクーバーの朝日」  です。

緩慢な三塁手の前にバントで球を転がし、出塁すると二盗三盗を決め
て、内野ゴロで生還する。パワーでは勝てない、球威に手が出ない、
ならば走攻守のうち、走だけに特化する。その野球はまさにスピード
重視の現代ベースボールの先駆けだ。物語は1930年代バンクーバーで
旋風を起こした日本人チームの葛藤と活躍を描く。二世三世の時代に
なっても移民に対する差別は根強く、過酷な条件で働く日系労働者た
ち。巨大なオープンセットの街並みと人々のファッション、背景とな
る精緻なCGが当時の空気を濃密に再現する。

製材所従業員・レジーは日系人仲間と野球チームのメンバーとして退
社後グランドで汗を流す日々。試合では白人チーム人にまったく歯が
立たなかったが、あるときレジーはセーフティバントを成功させる。

その後もバント戦法で相手チームをかき回し連戦連勝、日本人街は歓
声に包まれるが、すぐに恐慌や戦争の影が忍び寄ってくる。ところが、
映画は野球をできる喜びよりも野球なんかやっていていいのかという
後ろめたさに重心が傾き、一向に盛り上がらないまま低空飛行を続け
る。仕事との両立、家族との対立など、登場人物の感情を丁寧に掬い
取ってはいるが、それが足し算にならず散漫なまま放置されるのだ。

そもそも野球こそ日系人の希望なのだから、そこに焦点を当てるべき
だろう。何より、レジーがメンバーをまとめて引っ張るような“熱い
男”でないのがこの作品の体温を下げていた。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                    「バンクーバーの朝日」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141226

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「天国は、ほんとうにある」  です。

聖職者として、夫として、父として強い男であろうとする主人公は、
どれほど困窮しても他人に援助を求めない。自分は住民の手本となる
べき人間、死にゆく老人には赦しを与え、困っている人のツケは後回
しにし、便宜を図ってもらうのを潔しとしない。ただ家族と地域の人
々のために黙々と働くだけ、時に自らの経験と聖書の引用を踏まえ説
教を行う以外は。物語は、彼の幼い息子が臨死体験を語った後に起き
る騒動を描く。そして息子を信じるか迷う父もまた、真実を模索しな
がら自らの信仰を問われていく。聖書の記述を事実と主張するほど狂
信的ではない、一方で息子の発言に嘘は感じないという葛藤を通じて、
頼られるばかりではなく、頼ることで人と人は支え合えると訴える。

ネブラスカ州の牧師・トッドの息子・コルトンが危篤状態になる。無
事手術は成功するが、コルトンは天国で天使やイエスらしき人物を見
たと言い出し、さらに手術中の両親の行動を言い当てる。

映画はコルトンの見たビジョンを映像化するが、そこで神の奇跡を強
調したり、逆に否定もせず、不思議な出来事として処理するのみ。懐
疑的なればいくらでもケチは付けられるが、トッドが大勢の聴衆の前
で行ったスピーチ同様「信じれば意識が変わる」のだ。

神はいないかもしれない、だが親が子を慈しむ気持ち、子が親に頼る
気持ち、隣人が隣人を慮る気持ち、それら“愛”と呼ばれる心の動き
は必ず存在すると思わせてくれる作品だった。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「天国は、ほんとうにある」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20150105

    を参考にしてください。


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        余|談|
        ━┛━┛

特にウナギを食べたいという以外の理由もなく、浜松で年を越しまし
た。JR浜松駅周辺は近代的な商業ビルと繁華街が軒を並べていたので
すが、人通りの少なさに驚きました。

一応政令指定都市なのだから、大みそかはもっとにぎやかになると思
っていたのに、どこも閑散としています。

「紅白」後、初詣に出かけましたが、ガイドブックに載っている有名
な神社仏閣も京都や東京の基準で考えるとかなり地味で、こちらも人
出はまばら。

浜松の若者はどんな年末年始を送っているのだろうか。。。

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      次回配信予定は1/10、作品は
         
           「サン・オブ・ゴッド」
         
              です。

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