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こんな映画は見ちゃいけない! 

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サンバ こんな映画は見ちゃいけない! 

2014/12/25

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2013/12/25号  Vol.1623  ☆
   
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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は

         「サンバ」  です。

稼いだカネを故郷の家族に送る真面目なアフリカ人が、小さなミスで
身分を奪われ、収監されてしまう。働きすぎで燃え尽きたキャリアウ
ーマンはそんな彼を救おうと奔走するが、残ったのは無力感ばかり。
助けが必要な男と心の支えが欲しい女、物語は出稼ぎ労働者とフラン
ス人支援者がお互いを補い合う関係に発展していく過程を描く。自分
の事情より相手の気持ちを慮り、友人の頼みは断らないけれど女には
手が早い。権利を制限された主人公の、笑顔を失わない生き方がすが
すがしい。外国人就労者の現実を告発しつつ夢や希望も大いに語る、
ポジティブシンキングこそ未来をつかむとこの作品は教えてくれる。

サンバの担当となったボランティアのアリスは、彼が引き続きフラン
スに留まるための書類を集める。サンバは“国外退去命令”受け釈放
されるが、再申請までの1年間待たなければならない。

トラブルを起こさないようにと大きな駅を避け、電車賃はきちんと払
えと伯父に言われるサンバ。スーツや靴、鞄まで欧州人風に変えて街
に出る。盗んだり傷つけたりしたことはない、ただ友との約束を果た
そうとしているだけなのに、周囲の人の視線が気になって仕方がない。
そのあたり、社会の最下層で“透明人間”として生きる不法滞在者の
心理をリアルに再現する。

パーティ会場から厨房の奥の洗い場にいるサンバまでワンショットで
とらえる冒頭のシーンに、グローバル経済の格差が象徴されていた。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「サンバ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141025

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「海月姫」  です。

男なんか必要ない、オタク趣味を理解しあえる仲間がいるから。流行
の洋服もメークも興味はない、ボロいけれど居心地のいいアパートで
暮らしているから。恋もオシャレも拒絶した5人の女の平和な日常、物
語はそんな空間に闖入してきたイケメン女装男子が、彼女たちの目を
外の世界に向けさせる過程を追う。世間からズレた女たちと世間ずれ
した若者、そのちぐはぐでかみ合わない会話が楽しい。一方で、みな
忘れたい過去を抱えていて、これ以上傷つきたくないのも明らかにな
る。時に奇行に走り、繁華街を“魔物が住む”と恐れる彼女たちは、
現実逃避でかろうじて生きていられるのだ。その姿がデフォルメされ
るほど、トラウマの深さが浮き彫りになっていく。

イラストレーターを目指す海月はクラゲのスケッチに励む日々。それ
なりに充実していたが、クラゲ屋でもめているところを美女に助けら
れ部屋に泊める。それは、ウィッグをつけた大学生・蔵之介だった。

女と偽ったまま男子禁制の共同生活に入り浸る蔵之介は、海月に女子
力UP服を着せる。初めて気づいた自分の魅力、初めて女性として扱わ
れる喜び。そして偶然出会った蔵之介の兄・修に海月は惹かれていく。
好きという気持ちにうまく対処できず、トンチンカンな言動を繰り返
す海月を、能年玲奈がとぼけた味わいを出しつつキュートに演じる。

あらゆる女子よりも綺麗な蔵之介を演じる菅田将暉の艶めかしさと、
“女”を捨てたオタク女子たちのヴィジュアル的落差が笑いを誘う。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「海月姫」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141031

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「毛皮のヴィーナス」  です。

ルーズなのに繊細、粗野なのに優雅、無教養なのに知的。突然乱入し
てきた女は、男のあらゆる常識を打ち破る。戸惑いと混乱、いつしか
彼は彼女にコントロールされることで経験のない快感を覚えていく。
物語は精神的な支配と肉体の痛みを伴う服従の古典的ストーリーを脚
色した劇作家がオーディションに参加した女優に心酔していく様子を
描く。劇作家と女優が奴隷と女主人に変化していく過程は、人間の心
の奥に潜む“命令されたい願望”をあぶりだす。自由を奪われる自由
も権利としての自由なのか。映画はそんな不条理に見る者をいざなう。

オーディションに遅刻したワンダは帰り支度をするトマに強引に頼み
込んでステージに上がる。はじめは迷惑顔のトマだったが、ワンダの
迫真の演技力と原典に対する理解に次第に引き込まれていく。

当然トマはマゾッホの原作を精読し関連資料も調べつくしているはず。
だがワンダは彼以上に深い考察と洞察で独自の「毛皮のヴィーナス」
観を構築している。解釈はフェミニズム的で、相手役を務めるトマは
仕事を忘れて夢中になる。そして芝居にのめり込んだ2人は、劇中の人
間関係さながら主従の立場を演じ、現実と虚構の垣根が取り払われる。

決定権を持つが責任も取らされる劇作家の不安の裏返しとしてのマゾ
嗜好なのか、演出家の注文通りの演技しか許されなかった女優の復讐
なのか、2人の作品に対するあくなき探究心なのか。映画はさらなる芸
術の深淵に足を取られていく。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                    「毛皮のヴィーナス」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141225

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「ベイマックス」  です。

ピンチの時は助けてくれた。わがままなボクの唯一の理解者だった。
そして使い方が分からなかった才能に未来への道筋を示してくれた。
そんな兄さんが突然の事故で命を落としてしまった。“愛”をプログ
ラムされたロボットを遺して。物語は天才工学少年が、病気やけが・
老いのために弱った人の世話をするロボットを通じて、他人への思い
やりや自己犠牲を学んでいく姿を描く。その曲線で構成されたボディ
はあらゆるものを包み込む優しさを象徴していた。

ヒロは革新的な装置・マイクロボットを発明。兄・タダシの先生であ
るキャラハン教授に認められるが、火事ですべてを失う。ある日、タ
ダシの開発したベイマックスが起動、ヒロの心身をスキャンする。

1体だけ残ったマイクロボットに導かれたヒロとベイマックスが向かっ
た先は、焼失したはずのマイクロボット工場。歌舞伎マスクの男に操
られたマイクロボットがヒロとベイマックスに襲い掛かる。力持ちだ
が素早く動けない、人のケアをするコマンドしかもたないベイマック
スのキャラクターが微笑ましく和ませてくれる。

ヒロはマイクロボットを取り戻すため、ベイマックスに戦闘モードを
プログラムする。しかし、戦いに利用されるベイマックスはどこか悲
しそう。なぜならベイマックスには、タダシの心がプログラムされて
いるから。死は終わりではない、人間もロボットもメモリーの中で亡
くなった人を生かし続けているとこの作品は主張する。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「ベイマックス」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141223

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「暮れ逢い」  です。

執拗に絡み合う視線、触れ合う手と手。自分の気持ちは通じているは
ずなのに抱きしめられない。窓越しに見つめる彼女のシルエット、で
もそこは夫と夜を過ごす寝室。物語は社長の屋敷に住み込みで働くこ
とになった若者が、若く美しい社長夫人への煩悶を膨らませていく姿
を描く。すぐそばにいるのに手が届かない。彼女も気まぐれに求めて
くるが、夫や子供の目が気になって自制してしまう。勤勉と忠誠が欲
望に勝る、いかにもドイツ人らしいお堅い気質が、恋を人生の喜びで
はなく耐え忍ぶ苦悩に変えていく。幸福のパズルは愛する人というピ
ースが欠けていては完成しないとこの作品は教えてくれる。

製鉄会社に就職したフリッツはカール社長に能力を認められ、カール
の自宅療養を機に秘書に抜擢される。下宿を引き払いカールの邸宅で
暮らしはじめたフリッツは、カールの妻・ロッテに惹かれてく。

カールはロッテと親子ほど年が離れているうえ、もはや冷め切ってい
る。だが、男としてののプライドか、家長の役割を果たさせている。
ロッテはフリッツを“籠の鳥”生活から一時夢を見させてくれる存在
と意識しているのか、彼の好意に曖昧な態度をとり続ける。

成熟した大人たちの思惑とは別に、経験値の低いフリッツはカールへ
の忠義とロッテへの思慕、加えて下宿に残してきた恋人との間で千々
に心を乱す。奪うほどの勇気はないがあきらめられない、そんなフリ
ッツの葛藤がもどかしいまでに抑制の効いた映像に反映されていた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「暮れ逢い」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141224

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

                「メビウス」  です。

足の甲や腕の内側を石でこすると、血が滲み耐え難い痛みの後に至福
の瞬間が訪れる。ペニスを失ってもなお快感を追い求め、自らの肉体
を傷つける男たち。絶望に満ちた日常に一条の希望を探す行為である
が、性機能を奪われた男の悪あがきにも見える。嫉妬に狂った母、自
分を犠牲にしてでも守ろうとしてくれる父、そして父の愛人。3人の大
人たちの間で少年の心は混乱と自己否定の後に奇妙な悟りの境地に達
する。物語は母にペニスを切り落とされた高校生が、理解できない運
命の成り行きに流されるうちに家族の絆を再確認していく過程を描く。
ただ、あらゆる予想を裏切る展開はセリフを排したために説明的にな
り、余計に登場人物の感情が分かりにくくなる悪循環に陥っている。

浮気した父の代わりに母によってペニスを切られた少年は、父の愛人
だった女がチンピラにレイプされた現場にいたため逮捕される。

チンピラに促され女の股の上で腰を振る息子。秘密を知られたくない
のか、息子は“やっていない”のに己の無実を認めず服役する。そん
な息子のために父は己のペニスの切除手術を受け、移植手術や射精法
を研究する。一方で女は出所してきたチンピラのペニスを切り取る。
ペニスを奪う女たちとペニスを失くした男たち。

ペニスに苦しめられてきた女の復讐とペニスの暴走を制御できない男
の身勝手さ、その相克は朝鮮人的な“恨”の思想から発しているのだ
ろう、愛ゆえの憎悪が強烈に反映されていた。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                    「メビウス」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20141222

    を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

今年も1年ご愛読ありがとうございました。2014年の配信はこれが最後
です。

というわけで今年のベスト10です。

?リアリティのダンス
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140416

?誰よりも狙われた男
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140908

?百円の恋
http://d.hatena.ne.jp/otello/20141204

?怪しい彼女
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140426

?ある過去の行方
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140214

?それでも夜は明ける
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140104

?アデル、ブルーは熱い色
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140201

?ダラス・バイヤーズクラブ 
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140114

?ソウォン 願い
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140524

?幸せのありか
http://d.hatena.ne.jp/otello/20140918

それでは、よいお年を!
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      次回配信予定は1/8、作品は
         
           「TRASH!」
         
              です。

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最後までお読みいただきありがとうございます。
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創刊日:2002-12-02  
最終発行日:  
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