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こんな映画は見ちゃいけない! 

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ゼロ・ダーク・サーティ こんな映画は見ちゃいけない! 

2013/02/14

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☆  こんな映画は見ちゃいけない!  2013/2/14  号 Vol.1450   ☆

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 こんにちは、発行人のオテロです。

 本日、とりあげる作品は

                 「ゼロ・ダーク・サーティ」  です。

過酷な拷問と巧みな嘘、捕虜を肉体的精神的に徹底的に追い詰めて自
白を迫る。さらに情報の断片をつなぎ合わせ、逆探知、尾行と地味で
地道な作業を繰り返す。そこには超人的なスパイも偏執的な悪党も登
場しない。敵もみな血の通った人間、何を恐れ何に怒り誰を信じ誰を
愛しているかを微細に調べ上げて急所を突いていく。物語は911以降姿
を消したビンラディンの足跡を追うCIA分析官の狂信的なまでの信念を
描く。「若いが冷血」、そんな評価を下される彼女が独創的なアイデ
アで潜伏場所にたどり着く過程は息を飲む緊迫感に満ちている。

ビンラディン追跡チームに投入されたマヤは、捕虜への尋問と心理的
な揺さぶりで証言を集めるが、なかなか核心には迫れず、一方でテロ
は相次いでいる。やがて同僚の爆殺を機に更なる復讐の炎を燃やす。

現場で体を張る工作員や特殊部隊とは違いマヤのエネルギーは膨大な
情報の分析に費やされ、非人間的な捕虜の扱いと官僚的なやり取りを
丁寧に浚っていく前半は映画的アクションには乏しい。だが、テロ組
織連絡係の携帯電話からビンラディンの所在を確信していく後半は一
気にスリルも盛り上がる。

他の高官がビンラディンの潜んでいる確率は60%程度と逃げ道を作って
いるのに、マヤはひとり100%と断言。“ビンラディンを絶対に殺す”、
その圧倒的な自信に、死をも厭わぬテロリストを相手にするには自ら
もまた同等の狂気を持たねばならないと彼女の表情が物語る。

       お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

                        「ゼロ・ダーク・サーティ」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20130112

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「PARKER/パーカー」  です。

銃を手にしても一般人には銃口を向けない。カネは奪うが人質を傷つ
けたりはしない。ケチな泥棒とは違う、銃器の扱いにも格闘技にも熟
練したプロの犯罪者。時に暴力も辞さず殺人も厭わないが、それは自
身に危険が迫った時だけ。そんな義理人情に篤く、自分のルールに忠
実な男に扮するジェイソン・ステイサムがクール。今回の主人公もこ
れまでの演じてきたキャラクターの延長線上にあるのだが、テイラー
・ハックフォードの演出によって“粋”なほど進化している。自信に
満ちた立ち居振る舞いは、ハゲ頭さえスタイリッシュに見せるほど洗
練されていた。

一匹狼のパーカーは、一時的にメランダーら4人組と組んで州祭りの売
り上げを強奪した後、殺されそうになる。4人組の行方を追ってマイア
ミに行くが彼らの背後にはシカゴの大ボスの影がちらついていた。

パーカーは重傷を負うが、病院を抜け出すと瞬く間にカネを手に入れ
車を盗み身分を偽装する。その鮮やかな手口は様式美を思わせる無駄
のない動きだ。さらにマイアミで不動産販売員・レスリーと知り合い
自らの復讐に巻き込んでしまうが、彼女の安全は命がけで守る。

一方でレスリーに言い寄られても恋人への思いを貫くあたり、身持ち
もかたい。アンダーグラウンドに生きる犯罪者なのにかたくなに己の
美学を貫く姿は、「男の世界」ではやせ我慢こそヒーローの条件であ
ることを教えてくれる。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                      「PARKER/パーカー」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20130211

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「脳男 」  です。

高度な記憶力・判断力を持ちながら生まれつき感情がない男。喜怒哀
楽すら知識として吸収し、あらゆる質問に対して決して尻尾をつかま
せないほど頭の回転が速い。しかも極限まで鍛え上げられた暗殺者の
資質も備えている。映画はそんな主人公を精査する医師の葛藤を通じ
て、人間の意識とは、心とは何かを問うていく。警察さえ手が出せな
い世の中の悪人に制裁を加えるプログラムを入力された彼の姿は、不
気味である以上にサイボーグのごとき機能美を有する。

連続爆破の容疑者は、精神科医・真梨子の鑑定を受ける。真梨子は、
異常に高い知能と無痛体質を持つこの男を調べるうちに、彼の名が大
威でかつて殺人マシーンとなる訓練を受けていたと知る。

一方爆破事件の首謀者である紀子は大威を奪還するために、真梨子の
身辺に張り付き、調査結果を盗聴する。その過程で真梨子による大威
の生い立ちの解読、紀子と大威の関係、警察の立場などが錯綜し、謎
がまた新たな謎を提示していく展開はスピーディでスリリング。特に、
大威がなぜ紀子たちの犯罪に加担したのかが示される場面は、もはや
法を超越した存在となった大威が背負う十字架がオーバーラップする。

その後も拒否することを教えられていない大威は、痛みも恐怖も不安
もない肉体と精神で真の悪に立ち向かっていく。報われない運命は彼
の孤独をより浮き彫りにするが、それすらもともと感じていないとい
う現実が彼の哀しい人生を象徴する。。。

       お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

                      「脳男 」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20130212

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「ムーンライズ・キングダム」  です。

ドアのない屋敷の中を平行移動するカメラがとらえた家族の肖像は平
和な家庭の違和感を漂わせ、双眼鏡で外界を観察している少女の孤独
を物語る。厳格な規律に支配されたボーイスカウトのキャンプから突
然姿を消した少年は、“不在”をもって初めて存在を認識される。居
場所がないふたりは出会い、惹かれあい、希望の地に向かって旅に出
る。映画は、彼らの逃避行と追う人々の葛藤を通じ、世の中のフツー
からはみ出してしまった子供の生きづらさを描く。

里親から厄介者扱いされていたサムは、ある朝無断でボーイスカウト
を脱退し、1年前に“運命”を感じたスージーとともに秘密の入り江を
目指す。大人たちは駆け落ちに気づき、小さな島は大騒ぎになる。

サムもスージーも積極的に気持ちを表に出すタイプではなく、自己表
現が下手。お互いにお互いしか理解しあえる相手がいないとわかって
いても、実際にふたりだけになってみると期待にときめいているはず
なのにためらいが混じり、どう接していいのかわからず戸惑っている。
初めての恋、初めての冒険、初めてのキス。ふたりにとって現在と未
来を変える出来事なのに、感情的な盛り上がりからは程遠い。

もちろんこの「劇的な展開を斜に構えた冷めた目で観察する」のがウ
ェス・アンダーソンの持ち味なのだが、端正な映像に描きこまれた、
抑制の美学でもない、人生の真実に迫るでもないが、少しコミカルな
世界観は、いつもながら戸惑いと斬新さを覚えるばかりだった。

       お勧め度=★★(★★★★★が最高)

                      「ムーンライズ・キングダム」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20130213

    を参考にしてください。




 本日はもう1本

             「塀の中のジュリアス・シーザー」  です。

陰謀、裏切り、暗殺、そして破滅。シェイクスピアが描いた英雄の最
期は、演じる男たちにとっては忌わしい記憶を呼び起こす。カネのた
め、復讐のため、欲望のため、一線を超えてしまった彼らには、信頼
を仇で返す血ぬられた物語が己の過去とダブって見えるのだ。映画は
服役中の重刑者たちに芝居という課題を与え、その活動を通して彼ら
の変化をとらえようと試みる。ハプニングなど起こらない、だが単調
な生活に張りを持たせたい受刑者たちがいつしか役になりきっていく
過程は、リアルと虚構の間をさまよっているかのような錯覚に陥る。

ローマ郊外の刑務所、恒例の演劇プログラムの演目に「ジュリアス・
シーザー」が選ばれる。志願者は演出家によって、それぞれ哀しみと
怒りを表現するオーディションを受け、役柄を振り分けられていく。

短い者でも刑期は14年、終身刑の者もいる。塀の中の変わりばえしな
い毎日に少しでも刺激を与えたいのだろう、不真面目な態度で稽古に
臨む者はいない。それどころか稽古場が使えないと、各監房でセリフ
合わせをし、廊下・中庭など刑務所内のあらゆる場所で稽古に励む。

殺人から麻薬密売といった本来凶悪な犯罪で収監されている受刑者た
ちが何故これほどまでに芝居に熱中するのか。それはブルータスの苦
悩やキャシアスの憎しみに自らの体験を重ね合わせたから。犯罪の世
界と政治の世界、きれいごとでは生き残れない男たちの悲哀に共感し
たに違いない。

       お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

                      「塀の中のジュリアス・シーザー」
                         についての詳細は、

       http://d.hatena.ne.jp/otello/20130208

    を参考にしてください。

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        余|談|
        ━┛━┛

2020年のオリンピックからレスリングがなくなるそうです。日本が金
メダルを狙える数少ない競技、選手・関係者たちの落胆は想像に余り
あります。

あるスポーツライターによるとレスリングはルールが複雑で、テレビ
の視聴者にポイントが分かりにくいのが理由だそうです。

でも、レスリングは古代オリンピックからあった歴史ある競技。いか
にテレビ映えしないからといって、外すのではコンセンサスは得られ
ないでしょう。

オリンピックは商業主義に堕した、今更ながら思い知らされました。

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      次回配信予定は2/16、作品は

                  「ジャッジ・ドレッド」

                              です。

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