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ある日の教室

書家詩人である作者が、書道教室での子ども達の様子や、日々の生き方のヒントをお届けします。

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ある日の教室

2003/05/07

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【ある日の教室】〜塾講師から見た子供の世界 Vol.27
   作者:荒木崇
(合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ)

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『かえるの歌』

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◇貴子(中3・女子)のお母さんとの保護者面談で、その第一声に驚いた。
「先生と、うちの娘には共通点があるそうで・・・。」
お母さんの話の中身ではない。貴子が家で、そのことを母親にしゃべって
いたのが驚きだったのだ。

◇おそらく、五歳ぐらいだったと思う。小学生ではなかったはずだ。僕は
そのとき、「エレクトーン教室」なるものに通っていた。いや、正確に言
うなら、通わされていた。母は、自分が出来なかったことを息子の僕にや
らせたかったらしい。こっちとしてはいい迷惑なのだが。

◇ エレクトーン教室で男の子は僕一人。同じ幼稚園に通う女の子達に囲ま
れて、「逆紅一点(?)」の状態で、レッスンを受けた。

◇僕は、この、エレクトーン教室が嫌で嫌でたまらなかった。周りが全て
女の子ばかりだったからではない。宿題が出るのだ。次のレッスンまでに
課題曲を家で練習して、弾けるようにしておかなければならない。その頃
から僕は「努力」とか「コツコツ」とか、大嫌いな人間だった。(そして
今でも。)家にある、親戚からもらってきたエレクトーンの前に五分と座
ってはいられなかった。

◇ある日の宿題で「かえるの歌」が出た。これを次までに弾けるようにし
ておかなければならない。しかし、うまく弾けなくて、やっぱり五分で練
習を放り投げてしまった。

◇レッスン当日。なぜか、その日は、みんなの前で「かえるの歌」を演奏
しなければならなくなった。いつもは「みんなで、一斉に練習してきた曲
を演奏しましょう。」だったのに。

◇ 他の女の子たちは次々に見事にクリアしていく。僕の番がきた。しょう
がない。エレクトーンに座る。弾く。『ド・レ・ミ・ファ・ミ・レ・ド』。
しかし、その先が続かない。もう一度、『ド・レ・ミ・ファ・ミ・レ・ド』。
止まる。再び『ド・レ・ミ・ファ・ミ・レ・ド』。止まる。ずーっと止まっ
て、とうとう、そこで泣き出した。ひどい号泣だったと思う。数分、泣き
続けて、ようやく僕は解放された。

◇ ざっと、このような話を貴子のクラスで授業中にしたことがあった。か
えるの歌で泣いてしまったくだりで、前から2列目に座っていた貴子の表
情が瞬間パッと変わり、「ワタシモ」とつぶやいた。

◇貴子はどちらかというと大人しい、自分からしゃべるような生徒ではな
かったので、その一言が随分意外だった。
「先生、一緒。私も、かえるの歌弾けなくて泣いたことがある!」

◇ その日は、授業後も「かえるの歌」で彼女と盛り上がった。彼女はピア
ノを習っていて、やはり小さい頃「かえるの歌」が弾けなくて泣いたのだ
った。

◇貴子のお母さんがうれしそうに言った。
「先生も、『かえるの歌』が弾けなくて、泣かれたそうですね。娘がうち
で話してましたよ。」
貴子が、こんなことを家で母親に話していたなんて。塾のことを話すよう
なタイプではないと思い込んでいただけに、意外なことに驚いてしまった
のだ。

◇ その後も、保護者面談をしたり、家庭に電話をすると、普段、無口な生
徒が、塾のことをこちらが思っている以上に話していることがわかり、そ
いう大人しい生徒に対する見方が随分と変わった。大人しくても、彼らは
心の中にいろんな感情を持ちながら塾へ来て、そして帰るのだという、当
たり前のことに気付いたのだ。

◇ お母さんとの面談が終わったその日、授業へやってきた貴子にきいた。
「お母さん、今日の面談のこと何か言ってたか?」
「うん。」
「なんて言ってた?」
「先生のこと、『歌のお兄さん』みたいだったって。」

◇子供って、意外としゃべるものだ。

*登場する生徒名は全て仮名です。
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      ◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
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