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ある日の教室

書家詩人である作者が、書道教室での子ども達の様子や、日々の生き方のヒントをお届けします。

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ある日の教室

2003/04/16

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【ある日の教室】〜塾講師から見た子供の世界 Vol.24
   作者:荒木崇
(合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ)

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『深淵』

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◇「あなたは、いつか死にますよ。」
人から、こう言われたらどんな気持ちになるだろう。見ず知らずの人から
言われれば、もちろん、あまりいい気はしないだろうが、知人であれば、
「当たり前だろ。人間はいつか死ぬんだよ。」と僕は笑いながら言うだろ
う。

◇命あるものが死んでいくのは自明の理だ。例外はない。金持ちだろうが、
政治家だろうが、僕のような凡人だろうが。満開の桜はやがて散るのが宿
命だ。大人なら、誰もが頭では理解していることと思う。(もちろん日々、
そんなことを考えて生きている人は少数だろうが。)では、子供の場合はど
うだろう。

◇私が12歳の時だ。個人的に剣道を教わっていた先生が急病で病院に運
ばれた。私が病院に駆け付けた時には、危篤で、面会謝絶にまでなってい
た。病室の前やロビーには、たくさんの大人達が何も語らず、ただうつむ
いていた。30人ぐらいはいただろう。人は多いのに、その場を支配して
いたのは沈黙だった。
「人一人の命ってこんなに重いんだ。」
心にずしりとのしかかるその感情は僕にとって初めてのものだった。

◇平日の昼間にこんなに大勢の大人を集めてしまう力。
これだけの数の大人達に何も言わせない力。
そして、うつむく大人達、一人ひとりから発せられる無力感。
そんなものを12歳の僕は感じていた。

◇あの時の僕と同じ12歳になる生徒達に「生と死」をテーマにした文章
を授業することになった。
「ヒトはなぜヒトを殺してはいけないのか。」
かなり衝撃的な一文で始まる論説文だった。筆者の主張は「人は『ヒト』
という記号ではなく、一人ひとり『顔』を持っているから殺してはいけな
い。」というようなことだった。

◇ この答えが正解かどうかは分からないが、国語の授業なので、まずは、
筆者の主張を読みとらせた。その後、生徒に意見を聞いてみた。
「なぜかはわからないけど、殺しちゃいけないと思う。」という答えに終
始した。当然だろう。僕も答えは分からない。そのことを伝えた上で、僕
は生徒達に言った。
「でも、人間は、いつか死ぬんだよ。生まれた瞬間から死に近付いている
んだよ。君達がこうして、座って、授業を受けている間にも死に向かって
いるんだよ。」

◇もっと驚くかと思ったら、意外と冷静だった。
「知ってるよ。当たり前じゃん。」と言う生徒もいた。
ちょっと拍子抜けしかかったが、一人だけ、みんなと異なる反応を示す男
の子がいた。宏明だった。
「え〜、そうなの?そうか、あーーーー。どうしよう、どうしよう。」

◇宏明は面白いキャラクターで、周りをいつも笑わせている。冗談もよく
言うし、授業中、言いたいことが言葉にならないときは「『ババーン』っ
て感じだよ。」などと、身ぶりを交えながら、発言する。その宏明が、僕
の一言に、かなり反応し、何かを感じてた。

◇「人は死に向かっているのか。先生、いいのかなぁ?ここで、こうして
いる間にも死に近付いているんでしょ。僕は、ここで勉強してていいの?」
ここまでの反応をするとは意外だった。きっと「自分が死ぬ」なんて今ま
で考えもしなかったのだろう。(当然だ。)彼の心の中は、真っ暗でどのく
らいの深さがあるのかよく分からない谷底を覗き込んだときのようなもの
だったろう。石を落としてみたけれど、地面に届いた音も気配もしない。
心の中で始めて経験する深淵。

◇「お前はどう思う?今、自分ができることは何だ?」
そう言うと、ちょっと落ち着きを取り戻した。
「う〜ん、ここで勉強する。勉強して、死なない方法を考える。」
「そんな方法あるかなぁ。あるといいなぁ。」
笑いながら僕は答えた。みんなも笑っていた。一人、宏明は真剣だった。

◇「生と死」、難しい問題だ。まだまだ、答えは出そうにない。

*登場する生徒名は全て仮名です。
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◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
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