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ある日の教室

書家詩人である作者が、書道教室での子ども達の様子や、日々の生き方のヒントをお届けします。

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ある日の教室

2003/03/05

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【ある日の教室】〜塾講師から見た子供の世界 Vol.18
   作者:荒木崇
(合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ)

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『景色』

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◇ 友人はビールの中ジョッキの残りを飲み干すと、テーブルの上に
ドンッと置き、「それにしても」と切り出した。
「それにしても、あれもいいけど、『裏』ある日の教室が見たいな。
結局、良いにせよ、悪いにせよ、あれって印象に残っている
生徒だよね。でも、本当は、何のエピソードもないような生徒が
いるわけでしょ?」

◇ 「う〜ん。」うなったきり何も言えなかった。確かに彼が
言うような生徒はいる。いや、むしろ、そういう生徒のほうが
多いかも知れない。毎日、真面目に塾に足を運び、黙って数時間を
過ごし、そして帰っていく。友人が言いたいのは、そういう生徒こそ
取り上げるべきだ、ということだろう。しかし、それは無理だ。
なぜなら、彼が言うように、何のエピソードもないのだから。
いや、訂正しよう。彼らがエピソードとして語れるような接し方を
僕がしてこなかったからだ。

◇ かつての室長が、中3の受験校ミーティングで言ったことを
思い出した。一人一人の内申点と学力から、その生徒の志望校が
妥当か教師で検討していった。恵子の番だった。彼女が、志望校に
受かる力は十分あることを確認した後、室長が言った。

◇「まず、合格するでしょう。でも、何が楽しくて恵子は通ってきて
くれるんだろうね。1年生の時から、来てくれているけど、大人しく、
黙って授業を聴いていて、『こんにちは』と『さよなら』ぐらいしか
声を交わさないよね。私がこんなこと言うのはいけないんだろうけど、
ほんと、不思議だね、ありがたいよねぇ。」

◇ そう言われて初めて気付いた。確かに恵子と話したことは全く
なかった。本当にあいさつぐらいだ。彼女が教室の決められた席に
黙って座っているのが当たり前の「景色」と化していた。見えている
けど、見えていない。そんな状態だ。慣れきった当たり前の景色。
しかし、景色のまま放っておくとたいていその景色はやがて消えて
なくなってしまう。

◇恵子のように3年間も通ってきてくれるなんて、室長の言うとおり
本当にありがたいことだ。恵子はまれなケースなのではないか。
僕が恵子なら、こんな塾、つまらなくてきっとやめているだろう。
現に、僕の目の前から何人もの生徒が去っていった。もちろん、
卒業ではなく。彼らはどんな思いで塾の時間を過ごしていたのだろう。
塾の時間が迫ってくるときの彼らの心中はいかほどのものだったろう。

◇ ある日の中3の授業後、教室から生徒が出ていくのを
見送っていると、一番最後まで残っていた久美子が僕にきいてきた。
「先生、数学ってどうしたらいいですか?」
驚いた。それまで久美子が自分から何か話し掛けるのを経験したことが
なかったからだ。しかも、私の担当は国語だ。数学は全くの音痴だ。

◇「数学のことは、数学の先生にきいたほうがいいんじゃないか。」
と言いかけて、瞬間、グッと飲み込んだ。それができるぐらいなら
僕にこんなことをきいてくるはずがない。
「そうかぁ。数学は苦手か。国語は得意なのにな。」
僕は、そう応じると、ごく当たり前の勉強のアドバイスをした。
その他にも学校のことや、趣味のことを話した。
正味10分ぐらいだ。そして、帰り際の久美子の一言に
再び驚くことになる。

◇ 「ありがとうございました。私、こんなに塾の先生と話すの
初めてです。」笑顔で言ってくれた。
複雑だった。彼女はもう、2年間も塾へ通ってきているのだ。
それなのに、たった10分のおしゃべりが初めてなんて。
その後、久美子は卒業まで通ってくれた。卒業の頃には彼女との
会話は随分増えていた。

◇子供はみんな気にかけてほしいものなのだ。自分のことを。

*本文中の生徒名は仮名です。
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◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
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