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ある日の教室

書家詩人である作者が、書道教室での子ども達の様子や、日々の生き方のヒントをお届けします。

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ある日の教室

2003/02/19

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【ある日の教室】〜塾講師から見た子供の世界 Vol.16
   作者:荒木崇
(合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ)

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『杞憂』

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◇それでも、やはり心配だった。
だから、一言声をかけようと待っていた。
「あっ、なんで先生いるの?びっくりした。」
とは言いつつも、さほどびっくりした様子も見せず、
ゆいは、いつものようにクールに振る舞った。

◇ 正直言って、公立高校入試は国私中学入試と比べると
僕の緊張の度合いは低い。神奈川県の公立高校入試は、
現在のところ、内申点が60%、入試点が40%の割合で
合否が決まる。と、言うことは、入試前に60%部分は
決着がついているわけで、ここが高ければ高いほど当然、
合格に有利になる。

◇あとは入試でどれだけ得点できるか、模擬試験、過去問題、
予想問題等で検討をつければよい。残り1ヶ月で爆発的に得点力を
伸ばす生徒もいるのでぎりぎりまで志望校へ向けて粘ってみる。
それでもダメなら、倍率を見てから志願変更をする。
受ける前からだいたの合否の予想がつくのだ。僕の緊張の度合いが
低いのはそのためだ。しかし、ただ一つ、例外を除いては。

◇公立高校第一志望の場合、不合格に備えて、ほとんど全部の生徒は
いわゆる「押さえ」という形で、私立高校の併願受験をし、
合格を持って公立入試に臨む。だが、まれにいるのだ。
併願受験をせず、公立高校に挑む生徒が。それは、つまり、
落ちたときの保証(受け皿)が全くないということだ。
高校は義務教育ではない。必ず「受かる」という確信を
持っていないとできることではない。

◇塾教師2年目、痛い経験をした。
私の担当の生徒、あけみが併願受験をしないで、学区トップの
公立高校を受験した。内申点は十分あり、合格する確信はあった。
もちろん、本人にも、お母さんにも併願は勧めた。しかし、
指導力のなかった僕は、結局、併願での合格を持たずに、
彼女にそのまま試験を受けさせてしまった。

◇結果、不合格。呆然とした。「いやー、信じられません。」と言って
ご家庭へ電話をした室長の言葉は本心だったろう。
誰もが信じられなかった。あけみのお母さんは「併願受験を
しなかったうちが悪い。」と言ってくださり、また、幸いなことに
同じ学区の2番手校が定員割れで2次募集となり、その試験で
合格することが出来、なんとか救われた。あけみは2次募集の
試験の日まで毎日、塾へ明るく来てくれた。本当は随分、
落ち込んでいたろうに。忘れられない痛くて苦い経験だ。

◇ゆいを校門の前で待っている間、あけみのことをどうしても
思い出さずにはいられなかった。ゆいは併願受験をせず、
1発勝負で公立高校入試へ臨むのだ。

◇あけみのことがあったので当然、併願受験は勧めた。
本人もご家庭も悩んだ。しかし、ゆいの場合、家庭の事情で
どうしても併願受験ができなかった。

◇ 内申点は申し分ない。入試に関係ある中2の3学期の内申点は、
9科目でオール5。中3の2学期は44(9科目)。
ただ、気掛かりなのは、ゆいは、定員の少ない、学区外の
トップ高校を受験するのだ。成績が上位の生徒達が集う受験だ。
もしも、万が一のことがあったら、ゆいは2次募集を
待つことになってしまう。もし、通える範囲に公立の
2次募集がなかったら・・・・。ゆいの家庭事情では私立高校へ
進学することはとてもできないだろう。

◇もちろん、このことはゆいもわかっている。
けれども、どうしても本人はこの学校へ進学したいのだ。
そのために今まで頑張ってきた。

◇「心配で来ちゃったよ。はいっ、握手。」そう言って僕が右手を
差し出すと、いつものクールさはちょっと消え、ゆいは、
はにかんだ様子で、それでも、僕の右手を意外な力強さで握った。
僕の「頑張れよ。」の声に微笑でこたえ、ゆいは校門を入ると
小走りで駆けていった。晴れた空の下、長い髪の毛が上下に揺れた。

◇結局、僕の心配は杞憂に終わった。入試得点、5科目、250点中、
226点。見事合格。たいして喜ぶふうでもなく、「おめでとう」の
声にも、首から上をチョコンと1回、下げただけだったのが
なんともゆいらしかった。

◇全ての心配が杞憂で終わりますように。

文中に登場する生徒は仮名です。
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◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
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