塾・予備校

ある日の教室

書家詩人である作者が、書道教室での子ども達の様子や、日々の生き方のヒントをお届けします。

全て表示する >

ある日の教室

2002/11/13

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   
  
 【ある日の教室】〜塾講師から見た子供の世界  Vol.2
  
   作者:荒木崇(合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

  『リグレット』

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
◇この仕事をやっていると
生徒達の「初めて」に遭遇することが少なくない。
入試はその最たるもので、中学入試にせよ、高校入試にせよ、
こういった合否の結果で自分の人生が変わるような経験は
もちろん初めてだろう。
その他にもいろいろあって、「初めて塾にくる。」
「男の先生に初めて習う。」「初めて手を挙げて発表した。」
「勉強のことで初めて誉められた。」など、あげればきりがない。
その中で、些細なことだが、私が忘れられない「初めて」がある。
きっかけは『MY LITTLE LOVER』だった。

◇7年も前のことだ。
Sという中学3年生の女の子がいた。
みんなが考えるような一般的な中学生ではない。
(まぁ、もっとも、何が「一般」なのか、そんな規定はないのだが。)
つきあっている彼氏がいた。自称5人目の。
しかも、その彼は彼女が通う中学校に
卒業アルバム用の写真撮影に来た25歳のカメラマンだった。
(いったい何がどうなったらそんなことになるのやら。)
そんなかなり大人びた女の子だった。

◇Sは塾には通ってくるが、とりたてて頑張るわけではない。
高校も「行けさえすればどこでもよい」と公言してはばからない。
では、なぜ塾に来るのか?
違う学校の友達に会えること、
学校の先生とはちょっと違う塾の先生の雰囲気が好きだったらしい。
だから、職員室に来て、よく話をしてくれた。
「今度、写真集が出るんだよ。」
これはもちろん、「彼氏」の話だ。

◇ ある日のことだ。
Sが職員室にやってきていきなりきいてくるのだ。
「先生、『リグレット』って何?どんな意味?」
私はすぐにピンときた。
「あっ、MY LITTLE LOVERでしょ。」
その頃、『MY LITTLE LOVER』の『Hello,Again』という歌が流行っていた。
私も好きで、CDを買って、よく聴いていた。
その歌の中にこんな一節がある。
『雨はこの街に降り注ぐ少しのリグレットと罪を包み込んで』
『リグレット』確かにあまり耳にする言葉ではない。
「そう、先生、意味知ってる?教えて。」Sが言った。
もちろん知ってはいたが、「教えて」と言われると
なんだか素直に教えたくない。
天の邪鬼が私の心を駆け巡る。
「辞書を引いて調べる!」
先生らしい一言を発して、書棚から英和辞典を取ってやった。
「えーっ、わたし辞書引いたことないよー。」
「大丈夫、国語辞典と仕組みは同じだから。」
「だから、わたし、辞書引いたことないの!」
「えっ、ひょっとして、お前、国語辞典も引いたことないの?」
「うん。」
絶句。
15年生きてきた彼女は今まで国語辞典を引いたことがなかったのだ。
学校で課される意味調べの宿題は誰かの丸写し、
もしくは、さぼっていたらしい。
私は使い方を教えてやった。
「へー、Aから順番に並んでるんだ。」
それから『リグレット』のつづりを紙に書いてやった。
「あった!『後悔』だって。『後悔と罪を包み込んで』?どう言うこと?」
私は、簡単に歌の意味を説明した。
「先生、なかなか深いね!」Sは言った。

◇ これだけの話だが、私はこの出来事をはっきりと覚えている。
あのときのSの嬉しそうな顔が忘れられないのだ。
「分からなかったことが分かった。
しかも、その言葉の裏にある意味の深さまで含めて。」
そういう「分かることの喜び」がよく表れた顔だったように思う。
事実、この後、いろんな先生をつかまえては
「『リグレット』ってどんな意味か知ってる?教えてあげようか。」
と何度も言っていた。

◇ こうしてSは勉強の面白さに目覚め、入試に向けて本気で取り組み、
見事、難関校に合格した・・・という具合にいくと良かったのだが、
世の中、そんな都合良くできてはいない。
結局、彼女は本人の希望どおり、「行ける学校」へ進学した。
ただ、私は思う。
あのときの彼女の顔は嘘ではない。
日常、我々が目にしたり耳にしたりすることの中に
学ぶヒントがたくさん隠れているのではないか。
当然、子供達はそれに気付くことは少ないだろう。
だとすれば、それに気付かせてやるのが教師、大人の役目なのではないか。
ポンっと投げかけて子供の背中を押してやる。
私はそれができる大人になりたい。

◇ヒントはそこらじゅうに転がっている。盲目になっちゃいけない。

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
           ◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
=================================
最後まで読んでいただきありがとうございました。
もしよろしければ他の人にもこのマガジンを紹介してください。
よろしくお願いします。
=================================

『夢見る力を!』合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ

ホームページhttp://www.management-brain.co.jp/

お問い合せ・感想はこちらmailto:mailadm@management-brain.co.jp
=================================

合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツのメルマガ配信中!!

「塾経営の戦略・戦術」
     〜これであなたの塾が変わる!:毎週月曜配信

「ある日の教室」
     〜子供達の意外な一面をどうぞ:毎週水曜配信

「教育記事から教育を考える」
     〜記事の奥にある本質をえぐる:毎週金曜配信

「考えるヒント・今日の言霊」
     〜古今の名言から生きるヒントを学ぶ:月曜〜土曜配信

 
全てのマガジンの新規登録/購読中止はこちら
 http://www.management-brain.co.jp/cgi-bin/column/column.cgi


規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2002-10-30  
最終発行日:  
発行周期:週刊  
Score!: 100 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。