建築

建築所感

世界のあちこちで見てきた建築を勝手に書きつづります。第一回はビルバオグッゲンハイム。ネタのある限り続けます。

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建築所感30<MA GALLERY>

2002/09/26

建築所感30<MA GALLERY>

名称:MA GALLERY
場所:福岡県糸島群志摩町
設計:有馬裕之
建設年代:今から6年前
用途:ギャラリー

軍艦島に行こうとしていた。
場所は長崎県の茂木の港のちょっと先。
炭坑掘削のための島。
コンクリートの建物がひしめきあって建っている。
本島は端島という名前なんだけど、島を海から眺めたその姿が
まるで軍艦のようだったので、誰もがそう呼ぶようになった。
今は廃虚となり、誰もそこにはいない。
友達が船を特別に予約してくれていていた。
博多、朝の4時。まもなく出発だ。
そんな時に携帯が鳴った。
「今日は海がシケてて船、出ないんだって」


いつもこんな感じだなオレ。
ついてねえよなあ。

もう一度寝てもよかったのかもしれないが、
すでに頭が覚醒していた。
というより行けない悔しさで興奮していた。
「こんな朝早くにすることって釣しかねえじゃんか」
車に乗って釣り具屋に向かう。
友と向かう。

1000円くらいでサオからリールからすべてそろったやつを
買う。エサは200円の小エビ。
近くの岸壁に向かう。
があああああああああーっと向かう。
お魚が待っているううううー。


エサをつけて糸を垂れる。
釣れない。
3時間そこにいて、釣れたのは
ちいさなフグ1匹。
手の平の上で、フグぶーとふくらむ。
サカナまでがオレをバカにする。

その後、遅れてきたもう一人の友と合流。
何も予定のない日曜日になった。
予定がないのでサオをのっけてそこらへんを
ドライブすることにした。
まあいいか。

道はくわしく知らないが、博多から唐津方面に向かっていたと
思う。
海と岸壁を見つけるたびに釣り糸を垂れる。
釣り糸を垂れては車に乗り、
車に乗っては釣り糸を垂れる。

そのうち、少しは釣れるようになった。
クロ、タイ、カワハギ、カタクチイワシなどなど。
ただーし、ほとんどが体長5センチ以下のすんごく小さいやつ。
喰えねえよ。
釣っては逃がす。
逃がしては釣る。
岸壁の上からのぞき込むとけっこうでかいサカナが泳いでいるのが
見える。おーし、あれ釣ったるけんね。
でもやはり見えてる魚は釣れないもんだね。
そうこうするうちにコザカナたちにエサは喰われて
私達の惨敗であった。

 友が言う。
「たしかこの辺に葉さんの作った住宅があるはずなんだよねー」
葉さんというのは博多在住のすばらしい建築家だ。
どの建物も繊細で美しい。
見たい見たい。

車で移動あちこち。
なんだか、それっぽい建物を山の中腹に発見。
はっきりとは言えないが、建築家の手掛けたものって
他の建物とは外観が違う。
白っぽい看板が林立してるような感じのそれに近付いていった。
わくわく。

近くに来て、これは葉さんじゃないなあ、と気付く。
なんか、違う。
そしてそれは住宅でもなさそうで
「MA GALLERY」と書いてあった。
ギャラリーってことは入っていってもいいんだよなあ。

アプローチは鉄骨でできた繊細な階段だった。
登り切ったところは建物の屋上で、まわりの景色が一望できた。
ただものではなさそうだな。
もうひとつ階段があって、こんどは下におりる。

ようやく内部の空間らしきところに至る。
白い壁と白い床、メタルの天井、亜鉛メッキの柱、ポリカーボネートでできた
採光窓。
かっこいい。
ギャラリーなんだから、本当はそこに飾ってある作品を見るべきなんだろうけど、
そっちのけで壁の端っこを見てたりする。
まあ、失礼な客だったろうな。

ふと、声がかかった。「建築関係の方ですか」
ばれたー。当たり前か。
その人はこの建物のお施主さんだった。
やはりこの建物は葉さんじゃなくて、有馬さんて人が設計して
6年ぐらいたったものだってわかった。
知りたいことや感じたことがストレートに自分の口から
スラスラ出る。
私「最初、遠くからこの建物を見た時、工事中か何かの立て看板に見えたんですよ。」
「このテーブルの素材って、マナ板に使われてるのと同じやつですね。」
施主「ひどーーーーい」
やはり私はひどい男なのね。
ひどい事を言ってるつもりがまるでなかったので、
モトから俺はひどいんだろうなあ、なんて考えた。
そしてやはり女の人(そのお施主さん)からひどいと言われるとなんか応える。
開き直りもできないし、ちょっとだまって耐えた。

それでもそのお施主さん、慈悲であろう、そのあとに
御親切に建物のことをいろいろ教えて下さった。
感謝である。
扉のところが雨で朽ちてることや、吹き抜けのところが危なくて
落下防止の板を取り付けようとしたら建築家から猛反発をくらったことなど。
冷暖房は1台だけどの効きがいい、って話も聞いたけど、本心はどこにあったのだろう。
僕もそうだけど、おそらく多くの建築関係者が来ているはずだ。
誉められても困ったこともあったのかもなあ、と想像していた。
そして僕自身も話を聞いてるうちに、この建物をどうとらえていいのか
わからなくなってきた。

これでいいんだろうか、おいらだったらどう計画するだろう。
建って6年で朽ちてたら、それがたとえ扉1枚だとしても
お施主さんとしては、たまったものではないだろうな。
”これだけではないかもしれない”なんて思うだろうし。
部分だけで判断するのは良くないかもしれないが、
その部分をフォローする何かが必要なような気がした。
具体的な修理も必要だけど、ことばと行動も必要だろうな。
もちろん大工さんや工務店ではなくて建築家の。

建築には狂気的部分もあると思う。
試行錯誤もある。
それらがなくては前には進まないし、おそらく建築もできない。
部屋と部屋を結ぶ通路部分を屋外にしてしまった安藤さんの住吉の長屋、
壁を全てガラスにしてしまったミースのファンズワース邸、
鉄のコルゲートパイプで作ってしまった石山修武の開拓者の家、
100年を超えても完成しないガウディのサグラダファミリアなどなど。
どれも狂気に満ちているが、それを超えて人をひきつける魅力をそなえている。
人間の強さを信じて戦い抜いたからなのかもしれない。

MA GALLERY。これはどうなんだろう。
今回の僕では判断がつかなかった。
面白いしカッコいいのは認められることだ。
物はすべて朽ちていくけど、
どうせ朽ちるのなら美しく朽ちていきたいものだ。
人に対してもそうだろうけど、
建築に対しても愛は必要なんだろな。


               02.09.26  竹中アシュ

御意見、こちらまで。
hidehiko@ruby.ocn.ne.jp

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創刊日:2002-01-27  
最終発行日:  
発行周期:ときどき  
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