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建築所感

世界のあちこちで見てきた建築を勝手に書きつづります。第一回はビルバオグッゲンハイム。ネタのある限り続けます。

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建築所感23<カルロス5世宮>

2002/06/12

建築所感23<カルロス5世宮>

名称:Palasio de Carlos V
場所:Granada Spain
設計:Pedro Machuca
建設年代:1527-1592
用途:もと国王宮殿

印象に残るってどういうことだろう。
私は何かに裏切られた時、
良くとも悪くともそれが印象になっているように思う。
つまりは予想外の事が起きた時。
おそらくそれらの予想外が経験となって
先を読むということを無意識にしてるような気がする。
慣れということがある反面、通常以外の事が起きると、
それまでのマニュアルでは自分の行動を決められず、
自らの本能で事態と対決することになる。
脳の中でもおそらく根本的な部分がそういう時に
起動しているか、あるいはそういう時でないと起動してないんじゃないかな、
と思うのだけどあくまでも推測だ。
今回もその裏切りパターンで、カルロス5世宮。
思えば前回もフエの王宮で王宮続きになりました。

これはどこにあるかというとスペインのアルハンブラ宮殿の一部、
というかそのすぐ近くにある。
アルハンブラ宮殿自体はすんごく繊細な造形が
これでもかこれでもかというぐらいにびっしり。
建物と、ところどころにある水や噴水そして緑の組み合わせがとても涼やかで、
気持ちがいい。さすがもと宮殿だよなあ、といった感じ。
おかげで観光客も建物の中にびっしり。
それでももちろん見る価値はある、十分にある。
何か創造的なことをする上でのインスピレーションにもなるし、
そうでなくても豊かな気持ちになれる。
私が保証しなくてもスペイン政府は間違いなく保証するだろね。

そしてカルロス5世のパビリオンだが、
そのような繊細さはあまり期待できない建物だ。
建物の外観は四角くて大きい。石でできてる。
見たところ17〜18世紀くらいの王宮関係か何かの建物だろうなあ、というところ。
カルロス5世とまで名前がついてるくらいだからまあ、そんなもんだろうと。
正直に言えば面白くもなんともなさそうな建物である。

すっとばしてもいいかあとさえ思った。暑かったし。
ただ、この建物もアルハンブラ宮殿内の庭園の中にある。
つまりは入場料分のお金はすでにかかっているというものである。
お金かけたんだし、やはり見ておくかなあ。
日陰だろうし、イスぐらいはあるだろうし、
中でジュースくらい売ってるかもしれないし。
で、入口をくぐる。石ゆえのひんやりさが気持ちいい。
入ってみたものの奥行きがあまりなく、すぐに出口らしきものがあった。
やはりつまんなさそうな建物だ。
そのまま光の方へ目的もなくフラフラと向かう。
予想外はそこにあった。

予想しなかった、というより予想し得なかった。
どうせ四角い部屋がえんえんとあって
中庭なんかもあったりしてまあそんなとこだろうと考えてた。
つまりは四角いものは中も四角だと勝手に決め込んでいた。
自分が浅墓であった。
現代の建物ならいざ知らず、見た目の古さということもあったが、
技巧故なのだろうかどうか。
四角い建物の中にあったのは円形の大きな中庭であった。

中庭自体は何も置かれていない。床は一面石である。
それらがやはり石の回廊でぐるりと囲まれている。
その回廊も2階建てで軒までの高さは目測で15メートル。
広さも気になり柱と柱の間隔を測ってみた。
3.14メートル。列柱の数は32本。
だから3.14*32で広場の円周。それを3.14(偶然か?)で割って直径32メートル。
数字がわかったところでプールの大きさくらいしか思い浮かばなかったのだが、
とても大きなものに見えた。曲面故ということもあったかもしれない。

1階の床から2階の床まではおよそ7.5メートルあることになる。
日本であればそんだけの高さがあれば十分に2階建ての住居が出来てしまう。
天を見上げればアンダルシアの青い空(真島か?)。
斜に構える太陽が中庭にはっきりとした陰影を作り上げる。
ずっーと見ていると影が動いてい、
太陽が動いてることにひさびさに気が付く。(ほんとは地球だー)

観光客は少なかったんだけど、その中にひと組の家族がいた。
よくわからないのだけど広場の中央付近で楽しそうにしてる。
パチパチ拍手したりしている。
何か、変だよなあ、と思ったがもしかして、と気が付いた。
その家族が去っていってから僕もとことこ広場の中央に行く。
ははーん、これかあ。

音が反響するのだ。
自分が発した足音が壁の全てに跳ね返り自分のところに戻ってくる。
距離もあるので、わずかだがディレイ効果もある。
拍手をすると、おお、帰って来る帰って来るみたいな、フシーギな感覚。
少し小さな声で”わっ”とか言ってみる。ちゃんと帰って来る。
こだまに似てなくもないのだけど反響する音の量とでも言えばいいのか、
体全身をめがけて音が帰って来る感じ。
まん中のその辺だけ、目には見えなくてもまるで異空間になっている。
自分ひとりなのになんだか笑えてきた。

四角い建物と、円の中庭と、いちめんの空と太陽と、2段列柱の回廊と反響。
なんていうか、原始的というか、幾何学とか物理、生理学みたいな
ものごとの根源を成すような要素のカケラがそこに集まっているみたいだった。
それは建築なんだけどそれ以上の効果をともなって、
宇宙とか時間とかもっと大きなものにつながってるようだ。
設計したのもいつ出来たのかもその時はわからなかったが、
そんなことよりもドラマティックで衝撃的なこの空間に、
語る相手もなく、ただ佇む。
人は見かけによらない、なんてどこにでもある格言をそこで思いだした。
人だけじゃないよなあと。

  

                 02.06.12  竹中アシュ

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創刊日:2002-01-27  
最終発行日:  
発行周期:ときどき  
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