建築

建築所感

世界のあちこちで見てきた建築を勝手に書きつづります。第一回はビルバオグッゲンハイム。ネタのある限り続けます。

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建築所感22< フエの王宮>

2002/05/31

建築所感22< フエの王宮>

名称:Imperial City
場所:Vietnam Hue
設計:-
建設年代:19世紀
用途:もと王宮

フエ。
ほんとうは、そんなに興味のないところだった。
アジアを放浪している最中、ベトナムに入り、
南のホーチミンシティーから北のハノイまで向かう計画をした。
フエはおよそその2つの都市の中間くらいにある。
立ち寄るにはちょうど良さそうな感じだった。
他にもうひとつ、気になることがあった。
安藤忠雄さんの本に”都市彷徨”というものがある。
世界中の自らが訪れた街や都市について、いやそれだけでなく
それ以上の内容が加えられたすばらしい本である。
で最初に出て来る街が世界の名立たるところをさし置いて、このフエなのだ。
何故最初にこの都市にしたのか、気になった。
人の臭いのするところだ、と書いてあった。
写真さえ見たことのないところであったが
実際に見てみたいと思った。

フエにはマイクロバスで行った。
ホーチミンシティーから車で一昼夜。
書いてみるとたいしたことないのだが、道が悪くて大変だった。
道路のそこらじゅうに穴があいているらしく、ついでに車のサスも
あまりいいものでないため、しょっちゅう座席から飛び上がることになる。
それが夜中ずっとである。当然眠ることができない。
フエに着いたころはフラフラ状態であった。
車から下りた目の前がホテルであったのはラッキーであった。
疲れていたがあまり時間が取れない状態だった。
ホテルの人に
”街を見たいんだけど、どーしたらいい?”と聞く。
”ああ、それならバイクがいいよ、観光バイクがあるさあ、予約するう?”
直感そのホテルマンの言うことに従い予約する。
ああ、またボラれてんのかなあ・・・
体力も知力も使えない時はまわりの流れにあわせるしかない。
予約の時間を過ぎて1人の男がバイクとともにやってきた。
あんまり大きいバイクではない。おそらく50ccくらい。二人乗りだ。
大丈夫かいな、と思いながらも運ちゃんはアクセルふかす。
ベトナムはノーヘルで良かった。風が気持ちよかった。

主要ないくつかの遺跡を彼と一緒にめぐった。
街から離れたところが多かったが、保存状態は悪くないようだ。
補修も一生懸命やってるみたい。
ただ入場料でここぞとばかりにお金が取られるのにはまいった。

そうこうしているうちに雨になってしまった。
かなりの本降り。
まいる。疲れよみがえる。
しばらくカフェで休むこととなる。
しかし、トリとなるものをまだ見ていなかった。
フエのほぼ中心にある、王宮である。
ベトナム戦争での爆撃で壊滅してしまったところである。
見ておく必要があると思っていた。
バイクの彼は雨に慣れているのだろう、安そうなレインコートを僕にも分けてくれた。
出発を決める。

透明のビニールのレインコートに大粒の雨があたる。
ぐしゃぐしゃになる、でもバイク走る。
それらしい大きな建物見えて来る。
近くまできて、ほんとに大きいことがわかった。
建物、というよりは大きな門なのだろうか。
そこがエントランスであった。

中にはいろいろな建物があった。
爆撃前からそこにあったのか、あるいは新しく作られたのかは知らない。
さらに進むと、そこは雨に濡れて緑の草むらが広がっていた。
ここが爆撃を受けた跡であろう。
戦争のつめあとという感じはしなかったが、整理されていたからだろうか。
ただ、荒野とも見えるその爆撃の遺構の中に、
強い意志のあらわれのように一本の大きな旗が立っていた。
赤い布地に黄色い星ひとつ、ベトナムの国旗である。
雨であったため、たなびいていた訳ではない。
しかし、それがかえってその印象を強くしたように思う。
どんな事をされてもどんな状態になっても自分たちは生きぬいていく。
今の彼らの脳裏にアメリカがどのように写っているのかはわからない。
どのようにも写っていないのかもしれない。
物質的に豊かとはいいがたい国であるが、
生命力ははるかに強いように感じた。

外に出るとバイクの彼が待っていた。
約束の時間より少し長くなってしまったようだ。
詫びながらふたたびバイクにしがみつく。
雨はあいかわらず降り続けていた。

雨に濡れれば体は冷えるし、不快でもある。
しかし、物を見るという点で考えると
雨に濡れた風景というのもひとつの風景ではないだろうか。
しかもたいていの場合、雨だと観光地でも人が少なくなる。
これは自分と建築、あるいは場と対峙するには好都合の状況である。
そしてもしかすると、晴れよりも雨の方が人間の思い情が
表出しやすいのではないだろうか。
雨もいいのかもしれない。
ふたたび安藤さんの文章をひも解いた。
文章能力のあまりの格差に愕然とする。
しかし仕方がない。私は私のスタンスと状況で戦うしかないのだ。
人の臭いもしたが、雨の臭いが自分には染み付いていた。


           02.05.31 竹中アシュ

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創刊日:2002-01-27  
最終発行日:  
発行周期:ときどき  
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