建築

建築所感

世界のあちこちで見てきた建築を勝手に書きつづります。第一回はビルバオグッゲンハイム。ネタのある限り続けます。

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建築所感20<メゾンエルメス>

2002/05/23

建築所感20<メゾンエルメス>

名称:MAISON HERMES
場所:東京銀座
設計:レンゾ・ピアノ・ビルディングワークショップ
   竹中工務店
内装:レナ・デュマ・アルシテクチュール・アンテリュール
建設年代:2001
用途:ブティック


ちょっと前まで、ピアノが設計した橋のすぐ近くに住んでいた。

こう書くと、まるでイタリアかフランスにでも住んでいたんじゃないかと
思われそうだな。
気持ちがいいのでそのままにしておきたいが、
残念ながら(?)日本だったりする。
熊本の天草の牛深ってとこなんだけど、海の上をわたる白い橋があって
それがそうだった。
長さ800メートル程。まっすぐの橋じゃなくってぐーんとカーブしてる。
気が向いた時はその橋を走ってた、自分のアシで。
橋の上だから橋はよく見えないけど、まわりの海や、眼下の建物や、
ちょっと向こうの山やてっぺんの青空や雲や太陽やとんびやかもめや
カツオドリや、出発する漁船群や、海流や、青い海の底や光る水面や、
そんなものが自分が走るのにつれて少しずつかたちを変えて流れていった。
走ることも楽しかったけど、そんな風景の展開が好きだった。
後で知ったのだけどピアノさんは周りの風景のことを
とっても気にかけていたらしい。
もしかしたら自分の設計した橋で景観が壊されるんじゃないか、って
心配もされていたみたいだ。
繊細な人だと思う。
橋げたはコンクリートの箱、その上に鉄で出来た橋が乗っかって、
海風よけのフィンが橋の左右に付く。
ボリュームをきわめて小さくしようとしていたことがよくわかる。
ちなみにこの橋の構造を担当していたのは
オブアラップの故ピーターライス。

今回は銀座エルメスのビル。
ちよつと用があって東京まで出向いたのだけど、
銀座にこのビルが出来てることを知ってたので
用の合間をぬって見に行くことにした。
銀座のどこにあるのか場所はよく知らなかった。
まあ、行けばわかるだろう、と思っていた。
行けばわかった。
だって地下鉄の出口の案内表示に”メゾンエルメス”って書いてあるんだもん。
まじかよ、そんなに有名なたてもんなのかよ。
表示に従って進んでいくと、そのエルメスビルは地下ですでに
つながっていた。オノボリさんにはわかりやすくて、良い。

エスカレーターを上がる。
すでに雰囲気がなんか違うのがわかる。
そう、ここは高級ブティックなのだ。
少し考える、おいらみたいな小汚い人物が踏み入れてもいい建物なんだろか。
ちなみに同じく高級ブティックの名古屋栄にある青木淳氏設計の
ビトンには恐くて入れない。
しかしオノボリにはオノボリの開き直りというものがある。
今入らなかったら、次に東京に来るまで入れないのだぞ、と。
地上に出る。ガラスブロックの壁が立ち上がる。
金持ちそうな老若男女がガラスの扉越しに見える。
意を決めて鉄で出来た扉の取っ手をつかんだ。

中に入ったけど、緊張感はあまりなかった。
オレの緊張をやわらげる設計までしていたのかレンゾピアノは。
んなことねえか。

その日は日曜日だった。
けっこうたくさん人が入っていた。
そのためだと思うのだけど刺さるような視線が飛んで来ることが
なかった。だったらいいかなあ、ということで
安心して内装を見てまわる。
外壁のほとんどがガラスブロックで出来ている。
そのため、光は入ってくるが、あまり外の風景は見えない、
というより見にくい。
全体に窓がないと考えるか全体を窓と考えるかはビミョーなところだ。
外の風景を見せたくないという配慮なのかもしれない。
ためにお客は商品に集中することになる。
もしかしたらオーナー泣かせの気配りなのかもしれない。
建物の構成は地下が3階くらい、地上が11階くらいだったと思う。
地下から4階くらいまでがブティックで5階ぐらいがエルメスの
特別の展示場、屋上階あたりがギャラリー。

手すりに革が巻いてある。つかんだ時にやわらかい。
高級感ただようエルメスにはもうぴったり。
革が巻いてある手すりといえばエリックグンナーアスプルンドの
映画館を思いだす。あれは文句無しにカッコイイ。
スェーデンに行く人は要注意よ。

雰囲気は建物のどこに行ってもあんまり変わらない。
変化がない、ということにもなるけれど、そんな事気にする人
少ないだろうなあ。
それより”エルメスってスカーフだけじゃあなかったんだ”と
思ったのはオレだけか?服やらバックやら馬の鞍(!)が並んでる。
銀座まで来て馬の鞍買う奴っているのかあ?
でもエルメスだしなあ、よくわからない。

ガラスの壁をささえるマリオンに注目する。
鉄骨なんだけどボルトみたいなもので締め付けてある。
ボルトみたいなものはボルトじゃなくて、
ステンレスでできたあまり目立たないもの。
たぶんここで普通の高力ボルトなんて使ってしまったら
全体の雰囲気が台無しになっていただろう。溶接も似合わない。
繊細〜。でもカネかかったろうなあ。
階段は石なのかな?それともプレキャストコンクリート。
カツカツ鳴って小気味良い。
全体の構造はよくわからなかったのだけど鉄骨造かなあ?
よーく見てると鉄骨の柱があることがわかるのだけどメンバーが細い。
これ、飾りか何かじゃないのというくらい。

ひととおり見て外に出る。
そう、ここはソニービルの隣であった。
ソニービルは銀座の中でも目立つ建物のひとつだと思う。
その隣にならんだガラスブロックの壁は
違和感なくそこの通りに溶け込んでいた。
なんだか、はやくも老舗の風格を持っているみたい。
夕方で、中のオレンジの光が外にもれ出していた。

こういうのも解なのかな。

確か”特殊解をつくり出す”って論文をピアノが発表していたと思う。
読まなかったけど。
覆う系の建築でピアノはピカ一だと思うけど、
ここでもその能力が遺憾なく発揮されていたと思う。
老練なる手を感じる。



           02.05.23 竹中アシュ

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創刊日:2002-01-27  
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