建築

建築所感

世界のあちこちで見てきた建築を勝手に書きつづります。第一回はビルバオグッゲンハイム。ネタのある限り続けます。

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建築所感009<岐阜県営北方集合住宅・妹島棟>

2002/03/16

建築所感009<岐阜県営北方集合住宅・妹島棟>

妹島さんの建物に体面するのは
ほとんどはじめてだ。
ほとんど、というのは前に東京の銀座のデパートの
ファサードをちらっと見ただけだったからだ。
ドキッとした。
銀座のさまざまなビルの顔が並ぶ前で
妹島さんのその建物は白いガラスを全面に打ち出していて、
他とは違う存在感をつくり出していた。

ほんとはそれをよーく見ておけばいいものを
そのビルのテナントは女の子の洋服の売場だったので
敬遠してしまったのだ。
わたしは女の子の服の売場や化粧品売場に身を置くと
緊張してしまう。わたしだけだろか?
たぶん男性読者のみなさんの中にも同じ思いの人が
いるのではないでしょか?
というかほとんどの男はそうだと思うんだけど、
ということでためらっちゃったのだ。

まあそれはそれとして、今回は岐阜の集合住宅だ。

何年か前から存在は知ってたんだ。
妹島さんの建物はほとんど知らなくても、
作品集はなぜか購入してしまい、よく眺めていたからだ。
おまけに集合住宅とくればちょっと前にメジャーなコンペが青森であって
それにもエントリーしてたからだ(これも落ちたが・・・)。
んでもって妹島さんの今回の集合住宅にはかなりの衝撃を
受けていたし、何度も図面を読み、寸法まで参考にしていた。

どういう建物か?
建築を言葉で表すのは容易ではない。
しかしあえて近い表現とすれば
テトリスだ。

テトリス、御存じでしょうか?
テレビゲームで流行ったやつで
今でもケータイのおまけのゲームについていたりします。
上から形の異なるブロックが落ちてきてそれを回転させて
並べて平にすることで得点となるゲーム。
一番上までブロックが積み上がったらゲームオーバー。
そんなのをそのまま住戸にしてしまったようなものだと
私は思っている。違うっていう人もいると思うけど、
私はそうだ。
はじめてその存在を知った時はちょっとびっくりした。
ほとんどの住戸は形が異なることとなる。
メゾネット(マンションみたいな建物の中でも1住戸で2階建てがあるやつ)
部分があちこちにある。
なんで今まで誰も気が付かなかったんだろう、
コロンブスの卵的発送。
すべてはきれいに大きな四角いハコにおさまっている。
カッコ良すぎ・・・

妹島さんの建物はそのようにはっとさせるものが多い。
見てないものがほとんどなのだけど、
見なくても頭の中で理解できちゃうようなやつが多いのだ。
たぶんものすごいプロセスで設計を進めているのだと思う。
ただ、実際に見てみたら、図面で衝撃を受け過ぎたためか、
あまり衝撃はなかった。
力が弱められてるような感じがした。

言葉にできる理由はある。
今回の集合住宅はこの妹島さんのものが単独で存在するのではなく、
他に3つの集合住宅が別々の設計事務所によって設計されたのだ。
おそらくお互いが刺激しあい、質を高める要員になったと思う。
もうひとつは、それらの集合住宅が似たような印象を出していたところにあると
思う。
コンクリートの建物、それにメタル が何らかのかたちで
建物にくっつく。色感は寒色系統が中心。
それぞれの建物は集合住宅のみで公共部分をほとんど含まない。
建物同士、相互に干渉する部分が見られない。

集合住宅を設計するのはおそらく難しい。
何だって難しいのだけど、人が集まって住むというプログラムは
簡単には立てられない。
自然発生的に人間は集落を形成してきたわけだけど、
人工的に組み上げることで、どこか無理が出て来る。
それを認知した上で設計を進めるより他ないのだが、
やはりその土地に建物がなじむまでは何十年単位の時間がかかる。
新しさは刺激を生み出すが、同時に違和感も持つことになる。
何よりも見知らぬ人たちが集団でやって来ることになるのだ。
それまでそこに住んでいた人にとってはちょっと驚異にならざるを
得ないだろう。デザインの問題ではない。

これらの団地の隣に、これから解体されるであろう団地の群れがあった。
ほとんどの住戸は住人がいない。
建物はどれもがほとんど同じ作りでデザインも変わらない。
1970年造と書かれたプレートがはってあった。
高さは4〜5階建てといったところか。
ほとんどが同じつくりで、同じように南に面して均等間隔に建物が
並んでる。
しかしモノ言わぬそれらの群れは今まで生きてきた証をそこに
日のもとに確実に映し出しているようだった。
公園に作られた土管の遊具は子供がいなくても存在し、
今までの歴史を語るようだった。バルコニーにいる人と中庭の人のやりとり
も想像に難くない。どこもどの部屋も同じつくりであるが、
必要最小限で最大効率をあげようとし、その中で生き抜く力が
かつてそこにはあったであろう。
その頃は経済でない、本当の豊かさとは何か、ということが問われていたと思う。
がむしゃらに働き、それで得た金で家族を養い、家財道具は少しずつ増えていった。
モノが増えていき、それで部屋はうめつくされ、誰もがケータイを持ち
家族が解体し路頭に迷う現在は何を問えばいいのだろうか。
自分自身の回路を使って楽しむことがひとつの解になるかもしれない。


                 02.03.16  竹中アシュ

□読者の皆様へ

・次回の建築所感のテーマは未定です。
はやくもネタ切れか・・・
書きかけの文章はいくつかあるのですが、現時点で次を決めることが
できませんでした。

・現在、読者数122です。
すこしづつ増えてます。
いちど減った事があって、ちょっとショックでした。
でもこうしてこりずに発行してます。

・勝手に解説
 妹島:
建築家、妹島和世。なんて言えばいいんでしょか。
建築界で今一番活動的で活躍してる人だと思います。
GAやJA、建築文化等の建築雑誌でもよく特集されてます。
 岐阜県営北方集合住宅:
建築家磯崎新がコーディネーターとなって五人の女性建築家と一人の女性庭園
設計士により設計された集合住宅郡+庭園+集会所。
岐阜駅付近より岐阜バスでおよそ35分。

・御意見御感想御鞭撻、下記アドレスまで
hidehiko@ruby.ocn.ne.jp

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創刊日:2002-01-27  
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