建築

建築所感

世界のあちこちで見てきた建築を勝手に書きつづります。第一回はビルバオグッゲンハイム。ネタのある限り続けます。

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建築所感005<ル・トロネの修道院>

2002/02/24

建築所感005<ル・トロネの修道院>

しかし、なんていうか、見たいと思うものって
あんまり都会になかったりするんだよね。
どちらかというとすんげえ田舎の交通の不便だったりするところ
だったりするんだなこれが。
今回のル・トロネの修道院もその1つ。

行ったのは2001年の6月。
うちの妹がイギリスで結婚式を挙げたので、帰りに南仏まで行ったのだ。
目的の1つが今回の修道院だった。

たぶん、というかメジャーなものである。
建築600選の本にも出てるし、安藤さんが若かりし頃、この修道院を訪れて
感動したという話もある。
コルビジェもラ・テューレットを作る前に見に行ったそうな。
ギョームという人が書いた”荒い石”の修道院こそがここなのだ。
建築されたのが西暦1202年なのでかなりの歴史だ。

だけど、遠かった。
最寄りの駅は南仏のレザルクドラギニアン。
駅には何の情報もなかった。
さてどないしよう・・・
その日の宿をさがすべく、あちこちあるきまわる。
幸いに駅の近くに小さなホテルがあったのでそこに泊ることにした。

宿のおかみさんにトロネの修道院の事を聞く。
どうやらここからはタクシーか車でもないと
行けないよってのこと。
”バスないの?”
ない、と簡単な返事。
”タクシーだとどのくらい?”
と聞いて帰ってきた返事が日本で20000円!!!
うへえ、マジかよ?
ボラれてんのかなあ、しかしそれにしてもなあ、
どうしよう・・・
と考えていても仕方なく、ここまで来たのだと自分に言い聞かせ
タクることにした。

確かに遠かった。
タクシーはえんえんと走った。
運転手のおっさんはフランス語しか話せないみたいだ。
顔は上機嫌だ。
まあ、そうだろう。もうけてんだろうなあ・・・
その場の流れに身をまかせ、タクシーの運ちゃんとどーにか
こーにかコミュニケーションをとった。

トロネというところにも集落はあってホテルらしきものも
見えた。しかしここまで来るのも車でなければ難しいらしい。
基幹バスくらいあっても良さそうなものなのに
それは日本で染み付いてしまった感覚なんだろうか?

山あいの森をしばらく走って修道院に着いた。
駐車場に、かんたんなレストランがあった。
どうやら観光客を受け入れる体制にはなっているらしい。
というか、一種の観光名所みたいな感じがした。
入場料を払って建物へと進む。

修道院は、ひたすら切り石を積んだものであった。
大小さまざまだが、それらがていねいに積まれている。
”荒い石”の本文を頭の中で読み返しながら館内をまわる。
質素なものだ。
窓にはかんたんなステンドグラスがはめこまれていたが、
これはもしかして後からつけられたものではなかろうか?

古の大工たちの手のあと、そこにあった息遣い、
それになによりここを心を込めて設計した建築家の厚い思いを
そこにいる短時間のうちに吸収しようと体を空にした。
壁に手をやる、耳をすませる、光をみる気配にひたる。
建築とは異次元との交流が可能なのである。
かれらのひたむきな敬虔な気持ちが私に宿るように
静かに床を見た。
これからもあるし、これまでもあった場所。
いったい今はいつなんだろうか?
私はかたちに問いかけて形はつねに無言である。
どこかに手が届きそうな気がした。

なーんてカッコつけちゃったけどさ。
反面、ここを見るにも自分1人ってわけじゃなくって、
ほかにも観光で来てた人がけっこういた訳でさ。
まあ、仕方ないんだけど。
なんつうか、名建築って観光名所になってるものが
ほとんどじゃん?
自分1人で静かに見たいのに、そうにはならないっていう
ジレンマをケンチク見に行く毎に思うよ。

修道院を出るとタクシーの運ちゃんは昼ごはんを食べていた。
なんだろう?何かうまそうだ。
チーズとたまごをまぜて焼いたような、うーん。
お前も喰ってみるか、というそぶりを見せたので
うんうんとうなづく。
あつあつのチーズが今でも忘れられない。
パナシェなんぞ頼んだりして。
そこまですんげえ高いカネ払ってきたんだけど、まあいーか
ってな気分になるからアルコールってのは恐い。
ま、いいんだけどさ。
そこからは修道院は森の中でみえないんだけど、
安藤さんもこれを見たのかなあなんて考えてた。
作る意志だよね。
最後まで作り上げる意志だよね。
これって、ほんとは久遠の久遠ってゆうか、
重すぎるくらいのもんだと思う。
実際、”粗い石”なんてけっこう暗い話だよ。
宗教に対する敬虔さだけでここまでやったんじゃないかって
考えると、ちょっと震えるね。
そこまで重いものを観光という、一番てっとりばやくて
わかりやすいものにしてしまうってのは、
合理的って言えばいいんだろか?
まあ、日本も似たようなもんか。


                 02.02.23  竹中アッシュ

次回は香港について勝手に書いてみたいと思います。

■読者のみなさまへ

・この粗い石については以下の通り。
”粗い石”
フェルナン・ブイヨン 著
荒木亨 訳
発行所:形文社
定価3000円
東京の南洋堂だったら、たぶん今でもおいてあるはず。

・おかげさまでこのメルマガをとっていただいているみなさんが
117人になりました。
すんごくうれしいです。
それとゴロがよくってさー。
いいなー、とか
時報とかさ。
次は天気予報目標です。

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創刊日:2002-01-27  
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