文学

ほうれん草の記

ほうれん草、ゆであがりましたよ!みんなで楽しく食べましょう。世界の平和を守って。これは、私の小説です。

全て表示する >

どちゃらか夫婦日記

2004/09/20

    ほうれん草の記    ーどちゃらか夫婦日記ー
     最終回 浅間山が噴火した
 
 9月1日、浅間山が噴火した。
 この山の麓は、長野県側が旧軽井沢、軽井沢町、群馬県側が北軽井沢、嬬恋村である。
 北軽井沢の別荘に滞在していた人達は、嬬恋村の公民館等に避難したとか。
 私たちは、8月に別荘に行き、すでに帰京していたので、被害はなかった。
 名古屋の姉に電話する。
「お姉ちゃんたち、軽井沢に行ってなかった?」
「行ってない」
「良かった。別荘、たいへんらしいよ」
「それなんだけれどね……」
「え? 何?」
「主人が怒っていてね」
「なんで?」
「別荘の屋根に穴があったりして、降り積もった火山灰がそこから中に入って、どこかさびたりして、修理が必要になるんじゃないか、と心配しているの。
そうしたら、自分のお金を出さなけりゃならないんじゃないか、と私に文句を言うの」
「屋根に穴なんか、あいてないよ。雨漏りしたこともないもん」
「それならいいけれど。主人が山荘を見に行くと言っているの」
「これから行くの?」
「いや、用事がいろいろあって、行くなら、今月の24、25日あたりしかないけれどね」
「そんな遅く行くの?」
「うん」
「行ってもいいけれどね、そのころは、もうお店とか、食堂とか、営業してないと思う。
あそこは、夏、行くところだもん。食べ物を持って行かないと」
「うん」
「それより、修理費が必要なら、ママの遺産の預貯金からおろせばいいじゃない」
「あれは、もうない」
「えっ、ない!」
「うん」
「どうして? 300万円以上あったのに? お姉ちゃん、いったいなんに使ったの?」
「別に何ってことなくて、毎日の生活に使ったの」
「生活費にしたの? 生活費なら、義兄さんにもらえば良かったじゃない」
「私、それが苦手なんだなぁ」
「ま、お姉ちゃんって、そうなの? それでは、離婚もできないよ」
「うん。ずっと主人にぴったり付いているから」
「だって、人生には、何があるか、わからないのよ。
浅間山が噴火したって、あのお金があれば、そこから修理費を出せたじゃない。
お金は、大事なのよ、お姉ちゃん。
自分のお金は、まさかのときのためにとっておくの!」
「……」
「しようがないわねぇ。お姉ちゃんにお金をあげても、何にもならないわね」
 私は、6年前、母の死後、残った預貯金を3人に分けて、姉の分は名古屋に送ったのだ。
 あきれて、妹に電話する。
 山荘の修理費のことで、義兄が怒っている、と言う。
「修理ったって、それが必要なのかどうかもわからないのに、想像だけで言われても。
隣の山荘に住んでいる山里さんの話では、あのへんはあまり被害なかったんだって。
これから先のことはわからないけれど」
 妹は、困惑している。
 しかし、義兄の怒りは、どうするか。
 夫に言うと、
「そんなに苦になるなら山荘はこちらでもらいますよ、って言えばいい。言ってごらん」
との返事。
「でも、それでも怒るでしょうねぇ。失うのも損だし、修理費は出したくないし、で、ね」
 義兄は財産家の息子だが、姉だって母からけっこうもらったので、そんなことで、彼に怒られる筋合いはない。
 私たち姉妹だけなら、遺産相続でもめることはなかったのだ。
 しかし、山荘は、ほんとにどうなっているのだろう?
 ニュースでは、軽井沢はいつもと同じにぎわいで、大勢の人たちが、観光につめかけているそうだ。
 私も見に行きたいが、来年の春まで無理だろう。
 姉夫婦は、9月末に行くのはやめたらしい。
 義兄は、町内会の仕事があるのだそうだ。
「そういうわけで、9月末は、私は閑になったけれど」
「じゃ、そのとき、ママの7回忌をする?」
 法事は10月に入ってからするつもりでいたが、母の命日は9月29日なので、その前のほうがいいにはいい。
「そうね、それがいい。9月24日に、3人で会おう」
 何年かぶりの姉妹再会だ。
 私は期待に胸ふくらませて、ふと、夫のほうを見る。
 夫の一番上の兄嫁が、ガン、だとか……。
 年配の兄姉が多いので、病気の話など、そこいらにごろごろしている。
 これからも、こういう状態が続くのだ。
 ゆううつな事である。

                                 ー終わりー

     愛読者の皆様へ
 長い間、この「ほうれん草の記」をご愛読いただきまして、ほんとうにありがとうございました。
 これで、いったん、終了させていただきます。
 これからも、小説やエッセイを書いていきます。
 作家活動の道半ば、インターネットで「小城ゆり子」と検索してくだされば、私の作品は、お読みになれますので、今後とも、よろしくお願いいたします。
                                 小城ゆり子

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2002-01-27  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。