文学

ほうれん草の記

ほうれん草、ゆであがりましたよ!みんなで楽しく食べましょう。世界の平和を守って。これは、私の小説です。

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どちゃらか夫婦日記

2004/08/12

      ほうれん草の記
    どちゃらか夫婦日記  第14回
      軽井沢で夫、がんばる

「ね、うちの人がね、山荘の玄関扉を張り替えるとか言っているけれど」
「あすこは、山里さんが直してくれたのよ。あと、塗ればね」
 山里さんとは、私たちが軽井沢で懇意にしている建築士のこと。
 この人は、四季を問わず、年中ここ避暑地で生活し、建築の仕事もしている。
「塗る? 張るんじゃないの?」
「えっ、あれは『張る』って言うの?」
 妹も私も言葉が通じない。通じない電話である。
 しかし、夫は近くのホームセンターからベニヤ板を買い込んできて、車にのせ、私たち二人、はるばる高速道路を乗り継いで、ここ、軽井沢の山荘にやって来た。
「ありゃ、もう扉、新しくなっているじゃないか」
「あ、山里さんがやってくれたって、このことだったの」
 そうか、扉を新しくすることはなかったのだ。
「後は、ニス塗りだな」
 あ、そうか。それが妹の言う『塗る』だったのか。
「来年、来るとき、ニスを買って来よう」
 後回しになった。
 が、山荘の隅々までしっかり掃除した夫は、
「あ、あるじゃないか」
と、ニスを見つけた。
「なんであるんだろうなぁ」
「花田さんが、買って来たのかしら?」
 花田さんとは、妹の夫、アマチュアカメラマンのこと。
 詮議はともあれ、夫は、喜び勇んで玄関扉をニス塗りし始めた。
 すっかりきれいになった扉。だが、ニスはまだたくさんある。
 もう夜になっていた。
 彼は、台所にある物を、次々と片づけ始める。
 何をやるんだろうと見ていると、台所の床を塗り始める。
「お母さん、これから水、飲むの?」
「えっ?」
「ポットに水、入れておくからね」
 何で?
 彼はトイレの床も塗る。
「もうこっちへ来るんじゃないぞ」
「えっ?」
「ニスが乾くまではな」
「あっ? もう明日の朝までトイレに入れないの? それはちょっと、人権じゅうりんじゃない?」
「だったら、足の置き場所を作っておこう」
 やれやれ。
 翌日、午前中にゴルフ練習場に行き、高原のゴルフをたんのうして来た彼は、今度はカマと熊手を持ち直して、草ぼうぼうの庭を刈り始める。
 カマ、熊手も、彼がわざわざ家の近所、ホームセンターから買って来たものである。
 彼ががんばったので、庭、というか、建物の敷地は、きれいになった。
「さて、明日の午後、ゆっくり帰ろう」
「あ、そう……」
 仕事の終わった夫は、早く灼熱の自宅へ帰って、家の掃除をしたいらしい。貧乏症だ。
 私も、原稿を書いたり、シーツ類の洗濯をしたりと、忙しかった。
 でも、ここには、パソコンもないので、早く家に帰って、原稿を送りたい。
 ここからまた高速道路を通って無事にわが家に帰り着いたらのことであるが。

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創刊日:2002-01-27  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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