文学

ほうれん草の記

ほうれん草、ゆであがりましたよ!みんなで楽しく食べましょう。世界の平和を守って。これは、私の小説です。

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どちゃらか夫婦日記

2004/04/14

   ほうれん草の記   どちゃらか夫婦日記
   (9)定年退職したら掃除人?

 うちの団地は、住宅供給公社が35年前に建築したもので、公社のローンは、今年で終わった。
 銀行などにローンを組んでいる人を除いて、借金はないわけである。
 世帯数528世帯。
 これを管理しているのが、当団地の管理組合である。
 普通のマンションなら、管理は管理会社に委託しているわけだが、それだとお金をどんどん管理会社に吸い取られてしまい、修繕費用も高々と取られてしまうのだ。
 夫が聞く。「管理組合って、自治会と違うのか?」
「管理組合は、建物を所有している人の組織。自治会はここに住んでいる人たちの組織です。
 前は一つだったけれど、今は別々になっているのです」と。私は。答える。
 これは別々でないと、困るのだ。
 団地ができたとき、みんな、ここに住もうと思って買った。
 しかし、長い年月の間には、いろいろなことが起こった。
 転勤その他もろもろの事情で、団地から引っ越して行った人も多い。
 で、その人たちは、家を売るか、または人に貸していくので、賃貸借している人たちも多くなっている。
 こうして今、住民の半数は、借りている人たちである。
 自治会の仕事は、各地の町内会と同じ。会費を納めない人がいて、困っている。
 中には、管理組合費も納めない人もいて、これは法律違反なので、組合は裁判に訴えて、お金を取り立てる。
 友だちから、電話が入った。
「あのねぇ、私、自治会役員候補者を選ぶという仕事をやっているのだけれど」
「それで?」
「お宅の御主人に役員をやってほしいのだけれど、だめかなぁ?……あと、一歩というところにきて、あ、小城さんのご主人もいたんだ、って気づいたのよ。
 ご主人、定年退職なさったんでしょう?」
「そうなのよ。主人、仕事も肩書きもなくなって、最近、荒れているのよ。
 私も自治会や管理組合の仕事をやるよう、薦めているんだけれど。それが、ダメなのね」
「ダメっておっしゃるの?」
「そうなの。ちょうど適任なのにね」
「でも、私からもお願いしたいの。夕方、お宅にお電話したら、ご主人を出してくれる?」
「良いわよ。わかった」
 で、夕方の電話。
 友だちが、しっかりと頼んでいるらしい。
「そうですか。でも、私はできませんので、女房ならどうですか? 
 別に女だって良いんでしょ。女房に頼んでみてくださいよ」
 彼はまんざらでもなさそうなのだが。
 しかし、自治会より、管理組合の方が、責任の重い仕事なのだ。
 でも、うちの場合、組合員は夫ではなく、私なので、彼は理事になれるだろうか?
「あの、住宅の持ち主は、私なのですが、夫も理事になれますでしょうか?」
 組合の返事は、「結婚しているなら、良いですよ」というもの。
 ところが、彼は、それも嫌だと言う。
 日曜日はゴルフの競技会なので、自治会や管理組合のような日曜日の仕事は、嫌だと言う。
 一方で、彼は、団地内の公園の遊具が危険だと言う。
「それなら理事になって、そう言えば良いじゃない。
 あなたは肩書きがほしいんでしょ?
 団地管理組合理事。これは立派な肩書きでしょ」
「うーん。だけど、日曜日は嫌だなぁ」
 そして、夫は庭の芝刈りや掃除が好きらしい。
 でも、それはいつも3階の武田さんがやっている。
「あなた、庭の芝刈りをやったら?」
「そんな、人の楽しみを奪うことはできないよ」
「あ、うちの庭でなくてね、シルバー人材センターに行って、あなたの好きな芝刈り、掃除、それに日曜大工を言うのよ。
 ぼくはこれらが大好きですが、何か仕事はありませんか?って頼んでみたら?」
「おれ、人のうちの仕事はできない」
 そうなのだ。彼は、中小企業ではあるが中堅のしっかりした会社に勤め、社員から役員になり、60歳でいったん退職して、相談役になり、65歳で完全に定年退職した。
 ここまで出世したので、掃除人などとてもできないのだ。
 プライドが高い。
 現在、生活に困っているわけではないが、私は彼にふさわしい仕事は、どこかにないかなぁ
っと悩んでいる私である。
 でも、肝心の彼は、ゴルフと水泳に明け暮れている。

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創刊日:2002-01-27  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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