文学

ほうれん草の記

ほうれん草、ゆであがりましたよ!みんなで楽しく食べましょう。世界の平和を守って。これは、私の小説です。

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どちゃらか夫婦日記

2004/02/25

      ほうれん草の記   どちゃらか夫婦日記 
     
    (6)お茶くみ物語
 
 私は、自分が新入社員だから、と思って、黙ってお茶くみをしていた。
 ほんとうは、こんなことは、嫌だった。
 それでも私は始業時間よりも早く出勤して、お掃除もしていた。
 言われたことはなんでもした。
 それなのに「口が悪い」「細かなことに気をつけない」 そして「お茶はなみなみと入れてはいけない」と言われた。
 湯飲み茶碗に少しだけ入れると、おいしく見えるのだそうだ。
 そんなこと、高いお茶葉を買えばいいのだ。
 忘れられないのは、隣の席のM男である。
 私は、頼まれたことを次々とやっていて、とても忙しかった。
 隣のM男は、仕事もなく、ぷかぷかと煙草をくゆらして、私に「お茶をくんでくれ」と言う。
 私は、その瞬間、M男のことを殺してやりたいと殺意に燃えた。
 じーと胸の痛みをこらえて、お茶を汲んでやった。

 次に中学校に就職したが、そこではお茶くみは女の用務員さんの仕事になっていた。
 いちいち人の茶碗を、これは誰の物、あれは誰の物と憶えているのも大変なことで、彼女は苦労したと思う。
「お茶くみの仕方が悪いと言われ、会社を首になった」という話をしたら、男性教師に「この人は、自分は大学出だから、お茶汲みなんてしなくて良いと思ったんだろう」
「お茶くみなぞは、誰がやってもいいことだ」と言われた。
 そもそも大学出ならお茶くみはしなくてもいい、と考えるのが、なんでいけないのか?
 人は言う。「女は、賢いのはいいが、それを鼻にかけてはならない」「高慢ちき」。
 しかし、人は決して「男はその賢さを鼻にかけてはならない」とは言わないのだ。
 女は賢く、自分のことをつつましく思い、振る舞い、一生懸命お茶くみをしなければならないのだ。
「お茶くみもそれはそれで立派な仕事」と言う女流評論家もいるが、とんでもないことだ。
 前に、団地の管理組合に勤めていたとき、銀行員が営業に来たので、お茶を出した。
 で、銀行員はぷかぷか煙草を吸いつつ長居した。
 私は後で事務局長に叱られた。「お茶なんか出すから、長居して、煙草なんかくゆらすのだ」
 煙草が嫌なら、自分で言えばいい。

 と、そんなことを考えていたら、夫がそっとお茶を出してくれた。

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創刊日:2002-01-27  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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