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AC通信 No.737

2019/05/09

AC通信:No.737 Andy Chang (2019/05/06)
AC論説 No.737 混沌たる台湾の総統選挙

台湾に十日ばかり滞在してアメリカに戻ってきたところで、今は時差
ボケで考えがまとまらないが、来年の台湾の総統選挙の候補者選びは
私の時差ボケと同じように混沌としている。国民党と民進黨の両方と
もに候補者の世論評価と党上層部の意向に大きな違いがある。

国民党側では党が永年育ててきた朱立倫が立候補し、国会議長を長年
務めてきた王金平も出馬を発表したので候補者が二人となった。とこ
ろが党主席の呉敦義が突然、民間の人気が最も高いのは高雄市長の韓
国瑜だから政権を取り戻すためには韓国瑜を徴用すべきだと言い出し
た。既に立候補した二人はこのような民主制度を無視した党主席の主
張に反対である。しかも徴用される韓国瑜も出馬すると言わない。そ
のようにごたごたが続いているところへホンハイ(鴻海精密工業)の
会長郭台銘が出馬すると発表したので更に話が難しくなった。

ホンハイはアップルの下請け会社で中国大陸に数か所に工場を持ち、
百万人の雇用をしている会社である。会長の郭台銘と中国の関係が深
く、彼が当選すれば中台統一が実現する或いは中国に降参するに違い
ないと懸念する人が多い。また、現市長の韓国瑜は政治経験がないの
に中国の支持で高雄市長に当選したと言われた男で、中国の影響が強
い台湾のメディアは韓国瑜のニュースが毎日新聞の3割を占めている。
中国がメディア操作で韓国瑜を持ち上げているのだ。

候補者が四人となれば誰が国民党の代表となるか全くわからないが、
呉敦義が強引に韓国瑜を徴用すると言い出したのにも中国の暗黙の圧
力があったと思われる。それなのになぜ同じ中国の影響が強い郭台銘
が飛び出したのかと言う疑問に対し、一説では郭台銘の出馬は韓国瑜
に反対するためと言い、一説では韓国瑜と郭台銘は両方とも中国の暗
黙の支持があると言う。つまり「二本立て」で朱立倫と王金平を下ろ
すのが目標で、韓と郭のどちらが選出されてもよいと言う。

このような状態で真相がわかるはずもないが中国の闇の干渉があるこ
とは誰が見てもわかる。台湾人候補者の王金平でさえ中国を訪問して
「先祖のルーツ訪問」をすると発表した。しかし中国側が王金平を支
持するとは思えない。メディアはともかく民間の評判では実業家の郭
台銘を好意的に見る人も少なからず居る。そのかわり財界と政党の支
持はない。一般台湾人の政治意識はかなり曖昧で、絶対に国民党に政
権を取らせてはならぬと考える人は半分ぐらいしかおらず、民進黨に
失望したから国民党に投票する人も少なくない。

代わって民進黨の方だが、蔡英文総統が出馬表明したけれど民間では
蔡英文支持は殆どない。去年の地方選挙で惨敗した蔡英文が続投すれ
ば再度惨敗すると言う。蔡英文に民間は大反対だが民進黨上層部は蔡
英文支持を発表した。世論調査では国民党の候補者四人と比べて蔡英
文は誰にも勝てないと発表した。このような現状を見かねて頼清徳が
出馬すると発表したが、民進黨上層部は蔡英文支持に回ったため世論
は更に悪化した。民間では蔡英文が候補者となれば、絶対に負ける、
投票しない、国民党(誰でもいい)に投票する、などマイナスの評価
である。党幹部は頼清徳出馬に反対で、代わりに蔡頼コンビを推薦し
たので世論はさらに悪化した。海外の台湾人組織はみな頼清徳支持を
表明している。

国民党と民進黨が候補者選びで混乱している上に台北市長の柯文哲が
無党派で出馬する可能性もある。柯文哲は何度も親中国的発言をして
きたので独立派や中国を恐れる台湾人から反対されているが影の支持
者も多い。柯文哲が出れば民進黨の票を攫うので国民党に有利になる
と言われている。本人は出ると言っていないが民間では彼が立候補す
る可能性は高いとみている。

このような混沌とした状態で政見主張は殆どないが、両党ともに中国
の統一が大きな問題となる。中国が武力または経済で台湾を征服する
意図は明らかだから中国との関係が政見主張の主題となるはずだ。

民進黨は中国の台湾併呑(または中台統一)に反対で、国民党の候補
者が中台統一を推進するかも知れないと懸念している。中国は「92共
識」(中国と台湾は一つの国)を固持しているが民進黨は92共識を承
認しない。中国べったりの韓国瑜や郭台銘が政権を取ればこれを承認
するかも知れない。民進黨は台湾と中国は二つの国と主張するが、蔡
英文は「台湾は中華民国」であると言い、頼清徳は台湾独立を主張し
ている。郭台銘は最近の記者会見で「中華民国と中華人民共和国の二
つの国である」、つまり台湾は中国であると主張した。台湾人は「台湾
は中国ではない」と主張しているから郭台銘の発言に反対である。

来年の選挙でもう一つの大きな政見主張となるのは自由経済特区であ
る。自由経済特区とはFTA(Free trade Area)のことで、台湾では既に馬
英九時代からこの問題を討論してきた経緯があり、ECFAまたは両岸経
済合作(Cross Straits Economic Cooperation Framework Agreement)として
討論されてきた。だが中国がこれに介入してきたふしがある。

韓国瑜が最近、高雄市を自経区とする構想を発表したので政府は直ち
に反対を表明した。自由経済特区とはある地域を自由経済として免税
措置、物流、貿易の自由化を目指す構想で、FTAの免税措置と言えば
台湾経済に有利と思わせるが実際は免税措置が他の地域に不公平とな
り台湾の経済に有利ではない。だが自由経済で台湾人がみんな金持ち
になると言えば賛成する人も多い。

韓国瑜の主張する自経区は中国の経済陰謀の一環である。トランプが
中国に対して25%の関税措置を取り始めたから台湾で自由経済特区
を作り、中国の半製品が台湾で製品となってアメリカに輸出される。
半製品だけでなく中国の人材、機密などの台湾侵略を許すことになる。
中国の目標である台湾の経済侵略を促進するだけでなく、アメリカか
ら「中国の片割れ」と判定されたら大変だ。「台湾独立と中国統一」と
「自由経済特区」が来年の総統選挙の主題となるに違いない。

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