政治・経済

AC通信

国際ニュース解説と評論記事

全て表示する >

AC通信 No.722

2019/01/04

AC通信:No.722 Andy Chang (2019/01/03)
AC論説 No.722 老人が皆から孤立するわけ

毎年のクリスマスから新年にかけて子供たちが帰ってきて団欒を享楽
するのだが、いつも子供たちの話についていけず孤立している自分が
いる。子供たちも私が皆の話に加わっていないことを気にして補聴器
をつけろと言う。お互いに私が孤立していることを気にしているけれ
ど私が子供たちに補聴器をつけてもダメだと言っても理解できない。

なぜ補聴器をつけてもダメなのかはかなり複雑な問題で、自分でも説
明できないことが多いが、私なりに考えた理由をいくつか挙げること
が出来る。個人的な問題だからわかって貰えないかもしれないが、主
な理由を書いてみようと思う。読者の中には私と同じような経験をし
た老人もいるに違いない。

●聴力の問題

年を取って聴力が退化すると皆の話が聞き取れなくなる。補聴器をつ
ければよく聞こえるようになると皆は思っているが、実際に補聴器を
つけた人でなければ補聴器をつけてもなかなか聞き取れないことを理
解してもらえない。

確かに補聴器はかなり進歩して高音や低温の衰退関係を調べて調節し
たり、ボリュームを調整することができる。しかしそれでも補聴器を
つけた人には完全に聞き取れるのではない。聞き取れないだけでなく
聞き間違いが多く、例えば「聞き違い」を「キチガイ」と間違える事
だってある。聞き違いが起きると相手がダメだねと反応する。それを
言われるのが嫌だから聞き間違いでもわかったようなふりをする。こ
のような事が重なってだんだんと孤立していくのである。なぜ聞き間
違いが起きるのかというと、これは補聴器の問題ではなく老人の頭脳
の退化に関係しているのだ。

●頭脳の理解力と速度が退化

こんな問題は自分でよく考えなければわからないが、頭脳の退化とは
理解力の退化、つまりある言葉や単語、物事などを見たり聞いたりし
てそれを理解する速度が落ちることなのである。

本や新聞を読む速度が落ちる。人の話を聞いても理解するのが遅くな
るから若い人に呆れられる。聞き取れない、聞き間違いだけでなく、
速度と理解力の退化が問題なのだ。しかも若い世代はたいてい話す言
葉の速度が速い。老人にはテレビのニュースキャスターの話す速度は
聞き取れても若者の話す速度についていけない。つまり若者の会話が
聞き取れないのは世代の違いも原因の一部なのだ。

聴力だけでなく視力にも関係があって、例えば老人の反射能力は視力
の判断速度に関係があり、視力の判断速度が退化すると車の運転に影
響する。町を歩いていても周りで起きている事象を理解する速度や関
心が遅くなる。頭脳の理解力と速度が落ちると周りの事象に無関心に
なり、見えても聞こえても反応しなくなる。これがだんだんボケに繋
がって自分の殻に籠っていくのだ。

●「我」とは何かと言う問題

私にはもう少し複雑な問題がある。私は多言語人間である。日本語、
台湾語、中国語と英語のうち基本的言語は日本語でありながら4番目
の言葉である英語の世界に住んでいる。毎日の生活では日本語と英語
の変換が常に脳内で起きているのだ。日本語で記事を書きながら英語
でニュースを聞いている。日常生活は英語だから子供たちの英語会話
も頭の中では常に日本語に変換される。4種類の言語の理解速度が違
うし、特に英語の理解速度が遅くなっているのがわかる。30年前は英
語日本語の同時通訳をやったこともあったが今ではそれができない。

つまり私の基本的思考は日本語である。英語のニュースを聞きながら、
知らない単語に出会うとすぐに「この意味は何か」と頭脳が日本語に
切り替わってしまう。難しい事象に出会えば日本語脳で物事を考える。

年を取るといつも自分に最も便利な日本語脳に切り替わるようになる
のである。日本語の理解速度は落ちていないが、英語の理解速度は落
ちているので新聞を読む速度やテレビを見たり聞いたりする速度は落
ちている。

つまり私と言う人間の「我」とは何かと言うと、「我」は日本語であり、
英語の「I」ではない。だから子供たちとの会話でも常に頭の中で言語
の変換が起きていて、老人になって速度が落ちると会話についていけ
なくなって孤立するのである。話す速度、理解速度、反応速度、みん
な関係があって、聴力の問題ではないから補聴器をつけてもやはり問
題があるわけだ。

●日常生活の違い

個人的な問題もある。年を取って外出しなくなり交友関係も少なくな
っていくとどうしても自分の殻に籠ってしまい自分だけの思考を中心
に生活するようになる、つまり自分の殻に籠ってしまうのだ。ところ
が若い世代は仕事の関係や交友関係など忙しく生活しているから話題
も豊富だけど、老人には知らない話題が多いから会話に加わることも
できない。

老人の暮らしとはテレビを見たり新聞、パソコンなどの話題が中心だ
から、いつも新聞の一面記事が主題なのに、若者の話題は三面記事の
方が多い、従って世代共通の話題が少ない、それで皆の会話に加わる
のが難しくなるわけだ。その上に聴力の低下、言語能力、理解速度や
話す速度などいろいろな原因が加わり、老人の世界と若者の世界がど
んどん乖離していくのは自然現象ともいえる。

聴力の低下だけでなく老人の基本的能力が退化していくのは避けられ
ないことだ。老人は若者についていけない。若者もここにあげた困難
を理解し、例えば話す速度を遅くするとか、共通の話題を探すなどお
互いに歩み寄る努力をしてほしいと思う。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
AC通信バックナンバーはhttp://www.melma.com/backnumber_53999
メルマの左上部の「登録する」をクリックすれば自動配信されます。
ご意見はbunsho2@gmail.comまで
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-12-18  
最終発行日:  
発行周期:月刊、不定期  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • 名無しさん2019/01/04

    あけましておめでとうございます 自分自身のようで納得できます