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AC通信 No.696

2018/06/05

AC通信:No696 Andy Chang (2018/6/4)
AC論説 No.696 通訳と速記

韓国の文在寅が訪米してトランプと米韓首脳会談を行った数日後、北朝鮮
の金正恩の側近金英哲党副委員長がニューヨークでポンペオ国務長官
とシンガポールに予定された米朝首脳会談があった。

重要人物の会談には双方に通訳が付いていて、韓国側が喋った時は韓
国の通訳、米国側が喋った時は米国側の通訳がする。通訳は重要でか
なりきつい仕事である。私は20年も前に通訳の仕事を頼まれたことがあ
ったので、最近の首脳会談では通訳の動作に非常に興味があった。

私は通訳の専門家ではないが、96年ごろ日米間のDRAMメモリーの訴訟
で、日本語と英語の外に理工系の専門語がわかる人を探していた、ワシント
ンの法律事務所から日本語の資料を通読して整理する仕事を頼まれた。そ
の仕事の一部で大阪の米国領事館で行った法廷証言の通訳をチェックす
る仕事を頼まれ、これが私には初めての通訳という仕事の勉強になった。

その仕事から数か月たったら、ニューヨークの法律事務所で日本のある会
社とアメリカの会社のパテント訴訟で、日本語と英語と理工系の通訳を探し
ていたので、ワシントンの法律事務省が私を紹介し、ニューヨークに出張して
日米通訳の仕事をした。この時、大阪で習った通訳の仕事ぶりが役立った
のである。

通訳はまず双方が話す言葉を速記することから始まる。それには空白の紙
の中央に縦線を引いて、一方を日本語、一方を英語に分ける。英語で話し
ているときは英語の方、日本語の時は日本語の方に談話を速記し、話が終
わったら速記したノートをもう一方の言葉に訳すのである。つまり英語の速記
と日本語の速記が必要なのだ。私は専門の通訳ではなかったので、自己流
の殴り書きで談話を書き留め、自己流のノートを見ながら通訳したのだった。

あの時のユダヤ人弁護士は実に意地悪で、当初は談話を一分ぐらいで区
切っていたのが、だんだん私を試すように5分10分と長々と話すようになっ
た。英語の談話は英語の速記、日本語の時は日本語の速記である。辛い
仕事だったが、一日が終わってあの弁護士からよくやったと褒められたとき
は心の中で「糞くらえ」と思ったものだ。ユダヤ人にはこんな意地悪をする人
が多い。

今回のトランプと文在寅の首脳会談では米韓双方に各々通訳が付いてい
たが、二人とも私がやったのと同じく、空白のノートに縦線を引いて速記をし
ていたので20数年前のことを懐かしく思い出しながら見ていた。今回の会談
ではトランプのときは米国側の通訳、文在寅が話すときは韓国側の通訳で
二人とも一方だけの通訳だから私のような双方通訳よりは楽だったに違いな
い。しかも首脳が話すときはたいてい一分か二分で区切るから、私が体験し
たような5分10分の試練はなかった。

ところがニューヨークでポンペオ氏と金英哲が会談した時はポンペオ氏の通
訳は、椅子に座るとすぐに空白なノートに縦線を二本引いたのでアレッと思
った。彼女は速記ノートを三つに分けたのである。あれは何だろう。ポンペオ
の談話と金英哲の談話の外にもう一つの区切りには何を書き入れるのか。
私の推測では陪席した金英哲の側近(つまり参謀)の述べる意見を速記して
翻訳したのだろうと思う。興味津々だが確答はない。

私がやった通訳の仕事から24年たった。あの頃は英語を聞けば頭の中に
日本語、日本語を聞けば英語がポンと出てくるほど早かったのに、84歳にな
った今では頭の回転がすっかり遅くなった。英語を読むときは一語一語読ま
ないと理解できない。日本語の場合は一行の半分ぐらいを一目で理解する
ことが出来るが、書くときは時間がかかる。英語の単語を日本語に直すとき
はもっと時間がかかる。頭の中の「縦線」が薄れてきたのかもしれない。残念
だが年は争えない。

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十日ほど旅行します。次の記事は少し遅れます。
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