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AC通信 No.656

2017/08/25

AC通信:No.656 Andy Chang (2017/08/23)
AC論説 No.656 トランプのアフガン新戦略

トランプ大統領は21日、16年続いたアフガン戦争について新戦略を発表し
た。シャーロッツビルで起きた白人至上主義者のデモと反対グループの衝
突事件でメディアと左翼グループからさんざん批判されてきたトランプだが、
このアフガン新戦略の発表については多くの共和党議員が賛成と評価を述
べたが民主党側の批判はなく、メディアの反応も殆どない。アフガン戦争は
三人の大統領が関わったアメリカの歴史で最も長い戦争だが、戦争が長引
いたにも拘らず勝利と言える結果はなく泥沼状態である。トランプの発表した
新戦略はこの泥沼から抜け出す方針を明確にしたと評価されている。

●アフガン戦争の概要

アフガン戦争はG.W.Bush大統領時代の20010年10月7日に始まった。ア
メリカが9.11の同時多発テロ事件の首謀者として指定したアルカイーダの
引き渡しに応じなかったタリバン政権に対し、米国主導のもとに有志連合諸
国及び北部同盟(アフガニスタン暫定政府)がタリバーン勢力と武力衝突を
始めた戦争である。

アフガン戦争はブッシュ(2001`2008)、オバマ(2009~2016)から現大
統領のトランプ(2017〜)まで16年続いても決着はついていない。タリバー
ンは36万人のうち2万人の死者、アフガニスタン政府は2万5千人、米国連
合軍は9千人の死者をだした。民間も3万人の死者を出した。オバマはブッ
シュのアフガン戦争に批判的で期限付きでイラク撤兵を強要した結果、中
東戦線は泥沼状態となった。

オバマが事毎に前線司令官に干渉したので戦略がコロコロ変わると批判さ
れた。この期間に中東戦線の司令官は12人ほど更迭された、と言うより司令
官がオバマを見限って引退したのだ。16年の戦争で12人の司令官と言え
ば殆ど毎年に一人である。

●新戦略の概要

このように戦略が決まらなくては解決は出来ない。トランプの発表した新戦略
は政治家や軍部、評論家などから好感を持って迎えられた。新戦略は以下
の8点と言われている:
1.将軍たちや閣僚と会議した結果、戦線の早期終結はないとした。
2.戦争は勝つまで戦う。勝つとはテロを撲滅することである。
3.早期撤退はしない。(現今の84000人に新たな4000人を追加)
4.パキスタンにアルカイーダ保護を警告する。インドの参加を要請。
5.終結に時間の制限はない。
6.軍事だけでなく政治交渉も進める
7.アフガニスタン政府の為ではなく、アメリカの安全の為に戦う。
8.戦いに制限をつけず軍部に任せ、大統領は支配しない。

このうち第8点については、オバマのアフガン戦争はアフガン政府の民主化
を推進しアメリカは撤退と不干渉、ホワイトハウスからのマイクロマネジメントで
失敗したことを指している。トランプの新戦略とはテロに勝つ、アメリカの安全
が第一であるとしている。その上で武力の他に政治協議も可能(第6点)とタ
リバンに呼びかけている。

重点はパキスタンにアルカイーダを保護するなと警告したことだ(第4点)。こ
れは今後アルカイーダが国境を越えてパキスタン内に逃げ込んだらアメリカ
軍は容赦なく攻撃するということだ。また、インドとパキスタンと敵対関係にあ
るからインドの参加を要請したことはパキスタンに強い圧力を加えたと思われ
る。但しインドがアフガニスタン戦争に介入するとは思えない。

この戦略に別の見解を発表した人も居る。アメリカが中東から手を引くには
三つの方法がある。第一はもっと多くの兵員を動員してアルカイーダとISIS
を徹底的にたたき潰す方法だが、今のアメリカは厭戦気分が高く、何年かか
るか見通しがつかない。第二はベトナム戦争と同じく早急に撤兵することだ
が、これはアメリカの負けであり、中東は真空状態となってISISが勝つか、ロ
シアが漁夫の利を得るかで最悪の方法だ。第三の方法がトランプの述べた
新戦略で、兵力を残してテロと戦いながら、「武力と交渉」でだんだん兵力を
引き上げることである。

●不干渉と孤立の違い

オバマの政策は中東各国の政府に民主主義を押し付けて各自テロと戦わ
せる、武器を提供して米軍を減らす戦略だった。オバマが軍部の反対を押
し切って期限付きでイラクから撤退したためイラクは真空状態になってISISが
入りこんだ。リビアではカダフィ政権を倒したあとでベンガジ事件が起きた。
エジプトでも独裁政権を倒したあと国内は今でも混沌としてる。みんなオバ
マの失敗である。

トランプはオバマの戦略がアメリカの衰退を招いたとして、アメリカが世界各
地の紛争に介入する目的はアメリカの安全とテロ撲滅であると定義した。つ
まりオバマの中東撤退はアメリカが世界各国の紛争から引いてアメリカが孤
立した。二度とオバマの間違いを犯してはならない。

トランプは他国の政府を援助(オバマの民主化政策)するのではなくアルカ
イーダ、ISISと、一切のテロと覇権に干渉する。これがアメリカ・ファーストの目
標である。他国政治への不干渉とアメリカの撤退と孤立とは違う。アメリカの
利益の為に干渉する、他国の民主化は目的ではないと言う。

●トランプ・ドクトリン

トランプのアフガン新戦略が国内で評価された理由はここにある。これはトラ
ンプ・ドクトリンであると私は考えている。ポール・ライアン国会議長も今回の
発表はトランプ・ドクトリンだと述べている。

トランプ・ドクトリンとはテロ撲滅や世界の平和を脅かす紛争に干渉するが、
他国の政治に干渉はしないと言うことだ。アメリカが諸国の紛争から撤退して
鎖国のように孤立するのではない。不干渉と鎖国の違いを区別するのは難
しいがアメリカは鎖国ではなく、アメリカの利益になることなら干渉すべきこと
は介入する、アメリカの覇権は維持するということだ。

このドクトリンはアフガン新戦略だけでなく、中国や北朝鮮にも警告している
ことになる。北朝鮮の核保有は不可、中国の南シナ海、台湾や尖閣諸島へ
の進出にも警告したのである。トランプがアルカイーダと政治決着をつける
用意もあると述べたことは、中東から平和的に撤退する代わり北朝鮮と中国
の覇権を抑止することになると思われる。

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