政治・経済

AC通信

国際ニュース解説と評論記事

全て表示する >

AC通信 No.652

2017/07/29

AC通信:No.652 Andy Chang (2017/07/28)
AC論説 No.652 トランプ版:「OK牧場の決闘」

ホワイトハウスの内部闘争が外部に報道されメディアが「OK牧場の決闘」
を報道したのが昨日のことである。今朝早朝のニュースでは上院議員た
ちが徹夜で討論していた「骨と皮だけの廃案(Skinny repeal)」と呼ぶ、オバ
マ健保法案のうち企業と個人の健保参加を義務付ける部分のみを廃案と
する案の投票が49対51票で失敗した。

トランプ政権はホワイトハウスの内部闘争、国会における政党闘争、トラン
プが司法長官をツイートで批判するなど、毎日新しいトラブルが起きてい
る。オバマケアと呼ぶ健康保険法の廃止、新しい健康保険法案、減税法
案など新政権は問題だらけだ。

昨日のニュースではトランプが五日前に起用してまだ正式に就任してい
ないスカラムッチ広報部長がNYタイムスの新聞記者に対し、プリーバス
首席補佐官とバノン主席戦略顧問を痛罵した事件があった。上司である
プリーバスを精神分裂、偏執狂などと電話で話して、ホワイトハウスでしば
しば起きている内部情報を漏洩した主犯がプリーバスであると非難した。
もしもプリーバスが情報を漏洩したのなら辞任を求められるべき、事実で
なかったら無実を証明すべきだと述べたという。新聞記者に電話とかツイ
ートすればメディアに公開されるのは当然だが、情報漏洩を調査すると言
いながら自分から新聞記者に情報を伝えたのは異常である。

ところがスカラムッチが非難した彼の財務情報が外部に公開されたと言う
ニュースはプリーバスがメディアに漏洩したのではなく、メディアがすでに
報道していた情報だった。バノン氏についても「私は大統領の威を借りて
自分のブランドを作ろうとしない」と非難した。ホワイトハウスに入って五日
だけで自分の上司や上級顧問を公開批判する態度は、トランプ大統領
の密命を帯びて喧嘩を仕掛けたと言われてもおかしくない。

つまりスカラムッチ氏は、ホワイトハウスの内部情報が外部に漏れることに
神経質になっているという「言いがかり」で権力闘争を仕掛けたのではな
いだろうか。スカラムッチがトランプに広報部長を任命されるとスパイサー
報道官が辞任し、五日後にはプリーバスとバノンが自分から辞職するよう
にに圧力をかけた、というのがメディアの推測である。

メディアはトランプがスカラムッチを起用して気に入らない部下を追放する
役目を負わせたと推測している。フォックステレビの討論ではプリーバスと
バノンは間もなく辞めさせられるだろうと見ている。つまりトランプは自から
プリーバスやバノンを罷免するのを避けるためスカラムッチを起用した。だ
から勝敗は既に決まっていて二人とも辞任するだろうというのだ。

●西部劇のガンマンの決闘

ホワイトハウスは内部情報がメディアに洩れることに神経質になっている。
トランプは就任して半年しか経っていないが、ホワイトハウスには大勢の職
員がオバマ時代から勤務しているのでいろいろな情報が外部に漏れるの
は仕方がない。だがプリーバスもバノンもトランプが入れた主要幹部であ
るから彼らが外部に情報を漏らすとは思えない。

但しトランプがウォールストリートで成功したけれど政治経験のないスカラ
ムッチの起用に反対したのはスパイサー、プリーバスとバノンの三人だっ
たという。起用に賛成したのは長女のイバンカと婿のクシュナーだった。ト
ランプは忠実な部下よりも家族を信じる。これでは部下も彼についていけ
ない。

部下の反対があったのにトランプが新しくスカラムッチを任命し、ホワイトハ
ウス入りして僅か五日で上司のプリーバスに矛先を向けたのだ。しかもメ
ディアに情報が洩れるのを調査するはずのスカラムッチが自分からメディ
ア(NYタイムス)にプリーブスが漏洩者であると告発したのだ。

つまり情報漏洩の調査は口実で実はトランプ版の西部劇である。「OK牧
場」の牧場主トランプが外からガンマンを雇って、気に入らないけれど自
分では手が出せない手下のカウボーイを公開決闘で殺す役目を負わせ
たのであろう。面白いカウボーイ西部劇だ。

●司法長官をツイートで公開非難

トランプはコーメィFBI長官を罷免してさんざん非難されたので最近は自
分から免職令を下すのを躊躇うようになった。六日前にトランプがセッショ
ン司法長官を弱虫な男とツイートで非難したのは、メディアで公然と非難
して本人が辞めるように仕向けたと言われたが結果としてセッションは辞
職しなかった。

セッションは記者の質問に答えて「あのように公然と非難されたら心が痛
むのは当然だが、トランプは気に入らなかったらすぐに公然と非難する人
間だから仕方がない。私は免職にされない限り自分の職務を遂行するだ
けだ」と答えた。つまりトランプが圧力をかけて相手が自分から辞職する方
式は通用しないことがわかった。

三日前にトランプが「軍隊は性転換者を使うべきでない」とツイートした時
もマチス国防部長は「性転換兵士の不使用は法律ではない」と発表した。
スカラムッチを広報部長に起用したのもプリーブスとバノンが自分から辞
職願を出すように仕向けたと見られている。

●オバマケア廃案の失敗と共和党の分裂

オバマケアの廃止はトランプの選挙公約だった。しかし共和党の代替健
保法案はいろいろ問題があって国会案も上院案も通らなかった。トランプ
は選挙公約を通すため是非ともオバマケアを廃案にしたかったが上院は
三回も修正案を投票して三回とも否決された。

昨夜は徹夜で四回目の「骨と皮廃止案」、つまり「企業や個人の強制参加
を廃止する」案が投票に付され、49対51で過半数を取れなかった。これ
はトランプだけでなく共和党にとって大きな打撃となり分裂が懸念される。

トランプ丸の迷走は民主党のボイコットの外にトランプ自身の暴言癖、敵
も味方も激しく批判してみんなを敵に回す言動が大きく作用している。「ア
メリカファースト」や「Make America Strong」は遠のいてしまった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
AC通信バックナンバーはメルマ:http://www.melma.com/backnumber_53999 
メルマの左側上部の「登録する」欄をクリックして登録すれば以後は
自動的に配信されます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-12-18  
最終発行日:  
発行周期:月刊、不定期  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。