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AC通信 No.574

2016/01/01

[AC通信:No.574 Andy Chang (2015/12/31)
[AC論説] No.574 ラファイェット疑獄

中国では大物政治家の贈収賄事件や官商癒着が報道されているが台
湾のラファイェット疑獄ほど国際的に広範囲な事件はない。ラファ
イェット疑獄は台湾、フランス、中国の高官が介入した大事件であ
り今も続いている。

私は2006年に一連のラファイェット疑獄の記事を書き、台湾の楊基
銓国際文化基金センターで二回(日本語と台湾語)、友愛会で日本語
の講演をしたあと日本に赴き、宮崎正弘と東海子のお二方のご尽力
を得て、靖国会館で日本語、外人記者クラブで英語の講演を行った。

●ラファイェット疑獄のあらまし

台湾の海軍は1990年に光華二号計画を立案した。本来の計画はアメ
リカの設計図による韓国製の2000トン級駆逐艦を16隻購入するは
ずだった。ところがこれを聞いたフランスの東京にオフイスを持っ
ていたトムソン社のアルベサール(Jean-Claud Albessard)が当時の
参謀総長カク伯村にフランスの最新式3000トン級のラファイエッ
ト巡洋艦を売り込み、カク伯村は光華二号計画を変更した。

ラファイェット巡洋艦はステルス艦で、76ミリ速射砲、ミサイルな
どの外にトムソンCSF(Thomson-CSF、いまのThales Group)社が開
発したTAVITAC(Traitement Automatique et VIsualisation TACtique)
と呼ぶ軍艦用戦術情報処理装置を持つ。アメリカのイージス艦に類
似したレーダー海面監視と連合艦隊作戦系統である。

シンガポールはこの巡洋艦6隻を12.5億ドルで購入したが、台湾海
軍は6隻12.5億ドルの予算を26.5億ドル(一説では28億ドル)で
契約した。これがフランス側のOperation Bravoで、契約により余計
な14億ドルが闇に消えたのだ。

1993年のトムソン社との契約書には「リベートは取らない」と明記
したにも拘らず、契約書の付記に「18%のリベートを払う」と書いて
あった。リベート約5億ドルは台湾、フランスと中国が分け合った。

年が明けた1994年、フランスのシラク大統領は中国が抗議したので
契約は実行できないと発言。同年2月フランスのデュマ外交部長は
56箱のラファイエット設計図を持って中国を訪問。フランスの設計
図に加えて台湾側は巡洋艦に搭載した武器一切を中国に「贈呈」し、
中国の「許可」を得たのである。

中国はフランスから貰った設計図と台湾が贈呈した武器でラファイ
ェット型巡洋艦6隻を建造した。これで台湾のTAVITACの連合艦隊
作戦は中国側に筒抜けとなるから無用化したのである。

台湾海軍はフランスで建造した軍艦を台湾までの航海中に一隻がマ
ラッカ海峡で岩礁を擦って横腹が破損した。

空っぽの軍艦のためカク伯村は更に20億ドルの武器予算を立てた。
元来は12.5億ドルで軍艦と武器一切を含む値段だから、武器の値段
はせいぜい5億ドルなのに20億ドルの予算を立てたのである。

新しい武器購入のためフランスに赴いた、汚職の実情を知らなかっ
た尹清楓大佐は、フランでカク伯村らの酷い汚職を知って驚き、同
僚に隠して詳細を記録しておいた。同年12月、同僚の郭立恆に記録
を公開すると言ったため郭立恆らに殺害され、死体は海に捨てたが
翌日発見され、始めて事件が発覚した。

一説ではアルベサールが尹清楓殺害に加わっていたと言う。尹清楓
の死んだ翌日、アルベサールと台湾の購買仲介者・汪傳浦(Andrew 
Wang)は急遽台湾を離れた。

●ラファイェット疑獄の調査

台湾とフランスでラファイェット疑獄の調査が進むと、台湾では12
人ほどの関連者が死亡し、フランスでも12人ほどが意外死を遂げた。
意外死とは建物の4階、5階から投げ落とされたような「竹聯幇の
見せしめ」式殺し方である。台湾に駐在していたThierry Imbot情
報部員とフランス海軍の技術者Jacques Morrisonがこのような死に
方をした。

その後(2011年)台湾では事件に関係していた張可文中佐が12年の
刑期を終えて出獄したあと、不可解なオートバイ事故で死亡した。
喋れば死ぬのは確実だが、尹清楓殺害の張本人郭立恆大佐は沈黙を
守り通し、昨年釈放され、改姓名してまだ生きている。

アルベサールは2000年に癌で死亡したと報告されているが、癌にな
った原因や東京かパリで死んだのかは不明。台湾の噂では彼の東京
オフイスの椅子から放射性物質が発見されたと言う。

トムソン社が取った5億ドルのリベートは三国に分与されたと言う。
台湾側の分け前は外交手段でパリからアメリカ経由で台湾に送金さ
れ、カク伯村が半分、残り半分を海軍高官と国民党高官が分け合っ
たと言われている。

中国側が受け取ったリベートは朱鎔基、姚依林など6人が分け合っ
たと言われているがもちろん確証はない。

フランスが取ったリベートは当時の内政部長・サルコジーがこれを
使ってルーマニアの選挙に介入して一人の反フランス候補者が死亡。
モロッコでも二人の政治家が死亡したと言う。もちろん証拠はない。

●疑獄は終わっていない

2008年頃、フランス法廷はラファイェット疑獄の調査資料のコピー
二箱を台湾法廷に引き渡したが、法廷が受け取った直後に海軍側が
「資料の翻訳をする」と称して横取りした。その後この資料がどう
なったのか報道されていない。法廷はコピーを取らなかったのか。

フランス法廷の調査のおかげでスイスの銀行は汪傳浦の銀行口座を
凍結し、台湾側は金の返還を告訴していた。

Operation Bravoだけでなく、Operation Tango、Magicなどいろいろ
なフランスとの軍備購入計画には汪傳浦(Andrew Wang)が仲介して
いて、彼はスイス、リヒテンシュタインなどの銀行に10億ドル以上
の金を隠していることがわかっている。アメリカでもニューヨーク、
ロスアンジェルスなど各地に不動産多数を所有していることがわか
っている。

Bravoだけでなく、フランスから購入した60機のミラージュ戦闘機
(Operation Tango)は3000億元の予算でラファイェットの三倍以上
である。Tangoはこれまで調査されていないが、来年の選挙で民進党
が政権を取ればTango疑惑の調査を要求する話もある。

だが今年の春に英国に住んでいた汪傳浦が死亡し、遺産は息子と娘
が継承したと報告された。台湾の最新報道では凍結された金は遺産
として継承できないとして返還を求めていると言う。

蔡漢勲氏によると汪傳浦は英国で耳や顔の整形手術を受けて面相を
変えた記録があるので本当に死亡したかどうかも不明である。

また、元トムソン社の副社長で、ラファイェット疑獄に深い関連の
あるAlfred Sirvanも2005年に心臓発作で死亡したとされているが、
実地Toulouseの墓地を調べた蔡漢勲氏によるとシルバン氏の墓は見
つからなかった。

以上が私の知る限りの情報である。疑惑はまだ終わっていない。

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