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AC通信 No.545

2015/06/12

[AC通信:No.545 Andy Chang (2015/06/11)
[AC論説] No.545 米国のアジア政策見直し(2)

米国のアジア政策見直しとはアメリカが中国に強い態度を取るよう
になったこと、同時に日本重視、台湾重視と南シナ海への介入であ
る。特に台湾問題でこれまでの態度を変えたのは良いことだ。

過去二か月の間に起きた台湾関連のニュースを拾ってみると米国の
台湾に対する変化がわかる。(1)朱立倫の訪中と台湾民間の強烈な
反対、(2)中台関係が中国拒否になった、(3)米国在台協会(AIT)
主席・薄瑞光(Raymond Burghardt)の台湾訪問、(4)蔡英文・民進
党党首の訪米で米国側の破格な歓待、(5)オバマの「アメリカは南
シナ海の領有権を持っていない」発言。

これらの台湾で起きた一連の事件に前の記事(No.544)で書いた、
シャングリラ・ダイアローグとG7首脳合同発表を合わせれば米国
のアジア政策見直しが見えてくる。

●過去二か月に台湾で起きたこと

5月4日、国民党の党首で新北市長でもある朱立倫は中国を訪問し
て習近平と会見したが、この会見で習近平が「92年共識(中国は一
つというコンセンサス)」が中国と台湾双方の平和の基礎であると強
調したのに対し、朱立倫はコンセンサスを認めると言わず、代わり
に「両岸同属一中(台湾と中国は同じく中国に属する)」と述べた。
台湾は中国の領土であると発言したにも等しい。

これが報道されると台湾人民は激しく反撥し、朱立倫は台湾を売っ
たと批判された。朱立倫は「一つの中国とは中華民国のことだ」と
弁解して嘲笑を買った。朱立倫の人望はガタ落ちとなり、国民党の
三大政治人物から脱落した。中国の恫喝は人民の反感を強め、台湾
では反中国と反外省人の声が高くなり、国民党は次の選挙で大敗す
るかもしれない。

5月10日にRaymond Burghardt(薄瑞光)米国在台協会主席が慌てて
台湾に飛んできて馬英九と会談した。国民党党首が中国を訪問して
習近平と会談をしたらアメリカは中国と中華民国にどんな(公開、
非公開の)約束があったのか知りたがるのは当然である。だが彼は
この訪問で国民党側の公式説明を聞くだけでなく、台湾人民の総意
が[NO CHINA]になったことを確認したと言える。

国民党は総統選挙に候補者を出せないでもたもたしている。中国政
策も反対が強烈だから、Raymond Burghardtはこの時点で「国民党に
見切りをつけた」のではないか。2012年の総統選挙にDouglas Paal
を派遣して馬英九を支持した時とは大違いである。

Raymond Burghardtのもう一つの任務は、月末に米国を訪問する予定
の民進党の党首・蔡英文とスケジュールの打合せだった。蔡英文の
ほかにも民間の有名人物に会ったと言われている。

●蔡英文の米国訪問

5月末から12日間の米国訪問に出発した蔡英文は、6月2日ワシン
トンで公式訪問を始め、参議院の軍事委員会主席John McCain、民主
党議員のJack ReedとDan Sullivan などと会見した。蔡英文はこの
後すぐAIT主任Raymond Burghardtの案内で米国貿易代表と会談した。

続いて3日にはホワイトハウスで米国国家安全会議を訪問し、4日
には国務省でアントニー・ブリンケン国務副長官らと面会した。近
年における台湾の総統候補者として、最も高いレベルの礼遇を受け
た。このほか蔡英文は3日にアメリカのシンクタンクCSISにおいて
Kurt Campbellの主催で台湾問題について講演をした。

アメリカが1978年に中華民国と断交して以来、台湾の政治家がワシ
ントンを訪問しても国会やホワイトハウスに招待されたことはなか
った。蔡英文は野党の党首で総統選挙の候補者が、今回のワシント
ン訪問で破格な待遇を受けたのである。つまり米国は国民党に見切
りをつけた、少なくとも来年は民進党が政権を取るだろうと予測し
たのだ。これは重要な政策変更である。

●オバマの「南シナ海の領土主権否定」

6月1日、オバマ大統領はホワイトハウスでASEAN諸国の青年代表ら
と会見した際に、南シナ海における中国の勝手な岩礁埋め立てにつ
いて「もしも中国の主張が合法なら諸国はこれを認める。しかし肘
で他人を押し退けるような行為で合法性を主張することはできな
い」と発言して中国の強引な領土主張を退けた。

その次にオバマは「アメリカは領土争議の片方ではなく、南シナ海
の領土主権も持たない。しかしアジア太平洋の一国として、国際間
の意見の相違は国際標準に従い、外交手段で平和に解決すべきで、
これはアメリカにも利害関係のあることである」と述べた。

オバマは「アメリカは南シナ海(そして台湾澎湖)の領土主権を持
たない」という非常に重要な発言をしたのである。日本はサンフラ
ンシスコ平和条約(SFPT)の第2条bで台湾澎湖の主権を放棄した
が、同時に第2条fで新南群島(パラセルとスプラトリー群島)の
主権も放棄した。しかし日本が放棄した領土の主権は明らかにされ
なかった。

放棄された領土の主権が明確でないため、台湾の台湾民政府(TCG)
と米国台湾政府(USTG)のグループは、SFPT第23条に主要占領国ア
メリカと書いてあるからアメリカは台湾の占領権を持つ」と勝手に
解釈して宣伝(主張)していた。

アメリカが領土主権を明確にしなかったから根拠のない主張ができ
たのである。だがオバマは「米国は南シナ海(そして台湾澎湖)の
占領権を持っていない」と発言した。つまり「台湾民政府(TCG)と
米国台湾政府(USTG)の主張には根拠がない」ことが明らかになっ
たのである。

●「現状維持」とは緩やかな変遷

これまで米国のアジア政策は「現状維持」だけだった。つまり中国
とイザコザを起こしたくないから、横暴な中国の領土拡張や武力恫
喝に対し日本、台湾、東南亜諸国に我慢を要求してきたのである。
米国のアジア政策見直しとは「我慢にも限度がある」ということだ。

米国が台湾の國民黨を支持してきた理由は、国民党は台湾独立をし
ない、民進党が独立主張をすれば中国が武力で恫喝する、だから米
国は民進党を支持せず「現状維持」を押し付けてきたのだ。それが
今回の蔡英文の訪米で米国の態度がガラリと変わった、国民党を見
切り、民進党支持に回ったのだ。

米国は民進党が政権を取っても独立宣言はしないとわかった。それ
より國民黨の統一路線と中国の南シナ海の領土拡張のほうが危険で
中国の台湾併呑はアジアで戦争が起きる。中国の急激な侵略を防ぎ、
東南アジア諸国と連携して現状の緩やかな変遷で中国を抑え込む、
これが米国のアジア政策見直しの要点である。

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