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AC通信 No.544

2015/06/10

[AC通信:No.544 Andy Chang (2015/06/08)
[AC論説] No.544 米国のアジア政策見直し(1)

ドイツ・エルマウのG7サミットで7か国首脳は中国の南シナ海にお
ける行員な岩礁埋め立てに強い懸念を表示、中国の一方的な海洋進
出と領土拡張に強く反対するなど、G7の対中国意見が一致した。

この会議に先立つ五月末のシャングリラ・ダイアローグにおいて、
米国のアシュトン・カーター国防長官は、中国の一方的岩礁埋め立
てを即時中止すべきだと講演したが、中国側は強気に中国の人工島
は軍事防衛の需要を満たすためだと反発した。G7の会議で安倍首相
は一方的な現状変更は放置してはならないと強調したが、G7の基調
講演では「対立は対話で解決すべきだ」と述べた。

●米国のアジア政策

シャングリラ・ダイアローグのあと、オバマ大統領は6月1日、ホ
ワイトハウスで開かれた東南アジア諸国の若者たちとの会合で、「中
国が南シナ海で岩礁埋め立てを強行することについて、いかなる当
事者も埋め立てや攻撃的な行動は非生産的だ」と批判した。オバマ
は「相手を肘で突き、押し出すことで確立しようとすべきでない」
と述べたが、同時に航行の自由と領有権紛争の平和的解決を求める
立場も改めて強調した。

中国の埋め立て工事は今に始まったことではない。数年前から埋め
立てが行われていた。米国は中国の強引な海洋進出を知っていなが
ら対話と平和的解決を強調するだけに止まり、中国はオバマの弱腰
を見抜いてどんどん工事を進めている。

米国の外交政策は国防部と国務省(ホワイトハウス)の対立が明らか
である。オバマの弱腰が米国の衰退を招いたことは世界の常識であ
る。ところがオバマは最近ASEANのリーダーと会見した際に、「ブッ
シュの時代はアメリカの威信が最低だったが、私が大統領になって
アメリカを世界で最も尊敬される国に作り替えた」と講演したので
ある。こんなノーテンキな自画自賛には呆れてものが言えない。

諸国はオバマの任期が終わるまで、つまりあと一年半はアメリカの
政策に大きな変化は見られないと思っていたが、国防部が中国の南
シナ海の強引な岩礁埋め立て工事を公開するに及んでオバマも遅ま
きながらアジア政策の見直し、中国に対し強硬な態度を見せるよう
になった様子である。

●頼りにならないオバマ

G7サミットでは安倍首相のリードにより、中国の南シナ海における
強引な岩礁埋め立てが討論の焦点になったと報道された。アジア諸
国だけでなく欧州諸国も中国の覇権行動、中国のオバマ無視に警戒
心を持ち始めた。中国の南シナ海における軍事基地の構築や尖閣諸
島近海に監視船を派遣するなど勝手な動きはアメリカを無視した行
動であり、G7諸国はオバマが頼りにならないことに苛立ちを覚えて
いると言える。

オバマが政権をとって以来、いくらアジアピボットを唱えても中国
の強引な領土拡張は一向に収まらない。東南アジア諸国は中国と対
立するほどの軍事力がない。中国と対抗できる日本は憲法改正とか
集団的自衛権などの討論でもたもたしている。アジアの不穏は米中
の対立、米中冷戦ともいえるが、中国が米国やアジア諸国と妥協し
ない限りどんどん基地拡張を進めるから、時間は中国に有利で東亜
諸国に不利である。カーター国防長官が中国の埋め立ての即時中止
を呼びかけた理由はここにある。

●対話で中国の覇権行為は解決できない

安倍首相がG7サミットで南シナ海問題を強く推進したのは日本及
び東亜諸国の苛立ちでもあり、東亜諸国だけでは中国を抑えること
が出来ず、アメリカが中国に対する政策の変更を望んでいるから、
そしてカーター長官のシャングリラ・ダイアローグにおける強い発
言はアメリカのアジア政策に変化の兆しが見えたと思える。

日本はフィリッピンと合同軍事訓練を行うと発表して中国に圧力を
かけているが、日本にできることは限度があり、結局はアメリカが
頼り、しかもオバマは頼りにならないから、安倍首相は「対立は対
話で解決すべきだ」と述べたのである。

だが中国の覇権拡張は対話で解決できない。これはイランの核開発
協定に対するアメリカの態度を見ればわかる。イランが18000基以
上の遠心分離器を設置してウラン精錬を始めて既に何年にもなる。
アメリカはイランの核開発を禁止するためイランと対話を始め、最
近になって非核発展協定を結んだ。しかしこの協定では濃縮ウラン
の廃棄を確約できず、イランの時間稼ぎを容認するだけに終わった。
協定の最終決定は6月末まで延期されたが、協議が破裂したらアメ
リカは経済封鎖を続けるほかに方法が無い。

中国の領土拡張では東南アジア諸国とアメリカの抗議に対し中国が
強く反撥している。つまり中国は抗議を無視して埋め立てを継続し
ている。これは中国の時間稼ぎである。激論、反論を続けている間
は埋め立てを停めない。アメリカが実際行動に出ない限り中国は埋
め立てを止めない。基地を完成させ、既成事実を作ることで覇権を
確立する計画だ。これに対抗できる手段は経済封鎖だけである。

●「対立と対話」

イランや北朝鮮と同様、中国は「対立と対話」を交互に使って発展
を続ける。毛沢東の「打打談談、談談打打」の戦略、つまり「話し
合いで妥協すると見せながら武力拡張を続ける」戦略である。こう
した「対話と対立」は中国の方に有利な発展となる。米国が強い態
度を取らない限り諸国は「対話で解決」と言わざるを得ない。

中国の岩礁埋め立ても経済封鎖も時間の問題である。中国に打撃を
与えるには中国投資を止めることだ。各国が中国投資を減らせば13
億の人口を持つ中国は干あがってしまう。現在の投資をベトナム、
インドなどに向ければよいのだ。アメリカが率先して諸国に中国政
策の変更を呼びかけるべきである。

●PASEAの実現は近い

2012年に筆者が東南亜平和連盟(Peace Association of South East 
Asia:PASEA)を提案した時は多くの読者が興味を持ったが実現は難
しいと言われた。しかし最近になって米国のアジア政策見直しが始
まってシンガポールに駆逐艦二隻を常駐させ、日本とフィリッピン
の軍事協力、オーストラリアとベトナムの協力、インド海軍が南シ
ナ海に進出するなど、正にPASEAの実現が始まった感がある。中国
は強大になってアメリカと覇権を争うようになったが、PASEAが実
現すれば中国を抑えることが出来る。

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