政治・経済

AC通信

国際ニュース解説と評論記事

全て表示する >

AC通信 No.219

2007/12/09

[AC通信:No.219] (2007/12/08)
[AC論説]No. 219 台湾は国連に加盟するな!


ペッパーダイン大学(Pepperdine University)のアメリカの元外交官、
ハーチンソン教授(Bruce Herschensohn)が最近「台湾:脅かされた
民主主義」(Taiwan: The Threatened Democracy; World Ahead 
Publishing, Inc.)と言う本を出版して、これが中国語に訳され、台湾で
はかなりの反響を呼んでいる。中国語に翻訳したのは王泰沢と張喜久で、
筆者の義弟夫婦である。この本が話題になたので、先週の12月1日ロ
スにある全僑民主和平聯盟ロスアンジェルス支部(Global Alliance For 
Democracy and Peace, Los Angeles Chapter)はハーチンソン教授を招
いて出版記念会と講演会を行った。

本書は台湾がさまざまな困難を排して民主国家として発展してきた、戦
後から現在に至るまでの経緯を詳しく書いたものである。ニクソン大統
領の特別補佐官だったハーチンソン教授は、40年の外交官経験があり、
現在では国務院を引退したので、アメリカをはじめ中国や各国の独裁、
非民主、不正不義を自由に批判することができる立場にある。

ハーチンソン教授にはいろいろユニークな意見がある。たとえば陳水扁
総統に、[台湾が1971年に国連を脱退したのはよいことだ。国連加盟な
どやめて国連を脱退した10月25日を『台湾独立記念日』と宣言したほ
うがよい]と勧告したことは人々の意表を突くものだった。

そういうこともあって今回の講演で彼がどのようなことを言うか、非常
に興味があった。結果としては同意できるものもあり、現在の台湾内部
の情勢をみれば実行に移すのは難しいのもあった。

彼の意見が台湾ではかなり実現困難であることは彼自身もよく知ってい
る。台湾の国内現状は四つの脅威に晒されていると彼は言う。その四つ
とは:
(1)中国と国際社会のまちがった「一つの中国」思想
(2)中国に投資している台湾商人の恐怖心の影響
(3)国民党の統一思想
(4)一部の台湾人政治家(謝長廷をさす)の中間路線。

このうち民進党の謝長廷が主張する中間路線についてハーチンソン教授
はかなり辛辣な評価をしていて、「中国が一千基以上のミサイルをもって
台湾を狙っているのに、和解に応じるはずがない」と喝破した。

ハーチンソン教授のロス講演の内容は以下の通りである。

●台湾は国連に加盟するな

これがハーチンソン教授の主要主張である。国連は決して正義や平和を
推進するところではない。国連の参加諸国を見れば、独裁国家、非民主
国家、残虐行為を行う政府、テロ国家などが半数以上を占めている。こ
のような烏合の衆の組織で弱小国家や強権国家に強い影響力を持つ独裁
国中国が否決権を持っているのだから、たとえ加盟国全体が総会で投票
しても台湾の加盟が無事に通るはずがない。

台湾はこれまで(1992年以来)何度も「中華民国名義で復帰」を画策し
てきたが成功していない。成功するはずがないものをやるのは「負け犬」
となること、大きなマイナスを背負うことである。台湾政府はこれまで
14回も自分から進んで「負け」の侮辱に晒される加盟運動をしてきた。
自国の威信を傷つけるよりも、国連加盟をやめて国際間で自由に発言で
きる独立国となったほうが得策である、と彼は述べた。

この主張は最近アメリカ就任した東亞及太平洋事務所の主任の柯慶生
(Thomas J. Christensen)が繰り返し台湾政府に警告していることを合
致している。つまり台湾は国ではない、中華民国も国ではないから如何
なる名義で申請しても国連加盟は却下されるのは当然であるという。

ハーチンソン教授の主張は一理あるが、われわれ台湾人には別の解釈が
ある。どうして陳水扁は徒労に終わるのが明白なことをやるのか?それ
は来年の選挙のために台湾アイデンティティを推進する目的で行われて
いるのであって、たくさんの台湾人が無理を承知で推進しているのであ
る。更に台湾の名前を国際的に売り出すことも考慮に入れてある。

陳水扁の国連加盟は加盟するのが目的ではない、単なる選挙対策なのだ。
台湾アイデンティティを公民投票に持ち込むことである。つまり総統選
挙の投票で同時に「台湾名義で国連加盟をすること」を公民投票に付す
ることであり、狙いは賛成票を投じる投票者は民進党の謝長廷に投票し、
統一を主張する馬英九には投票しないと考えているのである。つまり、
独立か統一かと言う問題において大多数の台湾人は独立を選ぶ(現在の
調べでは76%の国民が独立に賛成)。

これは中国にとっては脅威だからアメリカを通じて反対させるのである。
つまり、ハーチンソン教授の主張は正しくても台湾アイデンティティを
鼓舞する意味において公民投票はやるべきである。

●自由に発言できる国家となれ

ハーチンソン教授は言う:国連に加盟しなければ台湾は世界で孤立した
国となるが、同時に諸国の牽制、有形無形の言論統制などを受けなくな
り、自由な発言ができる。今だって加盟していない状態だから現状に変
わりはないが、台湾が自由発言をフルに利用すれば国際間で無視できな
い存在となる。

例えばダルフール、コソボ、北朝鮮や中国などの独裁国家が国内で行っ
ている虐殺や、人民の自由を制圧する行いを譴責できる国家、真の自由
民主を謳歌する国家となれる。自由民主を標榜するアメリカはこれを止
めることが出来ないばかりか、欺瞞や不公正、残虐行為を譴責すること
はアメリカの手助けとなる。

台湾が自由に発言すれば中国の脅威となるが、アメリカの味方だからア
メリカは自由発言を統制しない。もともと国連加盟は中国の反対でパス
しないから、その代わりに加盟せず自由に中国を譴責するほうがはるか
に得策である。

それでは中国が武力行使に出ればどうなるかというと、アメリカは台湾
関係法があり、民主国家を守る義務があるので、中国の武力行使こそア
メリカの反対する「現状を変える行動」であり、台湾防衛に専心せざる
を得ない。

この意見はつまり台湾が世界の孤児である事実を変えることが出来ない、
それなら世界の孤児としてやれることをやれといっているのだ。

●武器を持って自衛せよ

ハーチンソン教授は言う:ロシアはなぜ世界の強国なのか?それはロシ
アが強大な武力を持っているからである。ロシアは武力の他になにもな
い、世界に貢献するものを持っていない。しかしロシアには武力がある
から諸国が遠慮するのである。自衛力を持たない国は外国から侮られる
のは必定である。アメリカは台湾を保護する義務があるが、台湾が自国
を防衛する能力や意思を持たない場合はアメリカ人の血を流して台湾を
防衛することはない。

筆者はこの意見には賛成だが、台湾が自衛力を持つには、第一に米国か
ら武器を買う必要があり、アメリカが武器を提供してくれることが先決
であり、第二にアメリカも中国の抗議を受けるが、抗議を無視できるか
にかかっている。第三に蒋系中国人の予算妨害がある。つまり防衛力を
持てといっても簡単にできるはずがない。

もう一つの懸念はラファイエット事件のように武器購買で二倍以上の金
を使って、最後に武器は中国側に秘密裏に渡された過去があることだ。
中国人は信用できない。台湾政府が蒋系中国人の影響を受けて軍隊が敵
国に通じているとなれば防衛は成り立たない。アメリカがこんな国に強
力な兵器を売るわけがない。賄賂、汚職の問題だけではなく、台湾政府
は今でも郝柏村一味の売国者を摘発、処罰できないでいる。

しかし別の面から見れば、台湾が自衛力をつける武器開発をやる必要が
あるのは確かである。核開発を急げと言う言論も散見するが、核開発よ
りも最低限度の武力、アメリカが台湾関係法で中国の武力行使に介入す
るまで時間的に持ちこたえる自衛力を持つのが先決である。

●現状維持はぬるま湯の蛙である

ハーチンソン教授は現状維持は慢性自殺だと喝破したが、現状維持を要
求しているのは米国側であって台湾側ではない。台湾が国連加盟の是非
を公民投票に付するのにアメリカが反対するのは、「米国が中国の恫喝に
おびえている、恐怖心(Fear)のせいである」と教授は言う。これは興
味のあることで、ハーチンソン教授は40年ほどもアメリカの外交関係
の仕事をしてきたが、決してアメリカの中国政策に賛成ではないことが
わかる。政府公務員である期間に言えなかったことも引退して大学教授
になれば遠慮せずに言えるということだろう。

ただし、ハーチンソン教授は現状維持が台湾にとって不利であることが
わかっていても、台湾の政府または民間団体がどのようにアメリカ政府
に働きかけるか、解決策を教えてくれなかったのは残念である。台湾が
独立できない現状は中国の圧力によるが、アメリカも半分の責任がある
ことをわれわれはいろいろな方法で世界に訴えるべきであろう。これこ
そ自由発言の民主国家となった特権ではないだろうか。

●台湾は国であって国ではない

終戦後、マッカーサーの指令によって蒋介石が中華民国を台湾に持ち込
んだ。このとき以来、中華民国は亡命政府から亡国となり、独裁政権か
ら台湾人の努力によって民主国家の形態を作り上げた経緯はハーチンソ
ン教授の著書に詳述してある。台湾人はハーチンソン教授の思いやりに
感激すべきである。

しかし現状は中華民国の名義を保ったままであり、中華民国は存在しな
いと同時に台湾国でもない。

台湾は国である。領土、国民、制度が存在し経済活動は世界的に認めら
れている。しかし事実上存在した国であっても法的に諸国が認めた国で
はない。独立した台湾国になる一歩手前で留まっていて、しかもアメリ
カは独立に反対という。台湾が独立するには正名制憲が必要だが、それ
を阻止しているのがアメリカであり、独立が難航しているのはアメリカ
の責任である。

陳水扁が「台湾名義で国連加盟を問う」ことを公民投票に持ち込んだの
はアメリカが独立を援助してくれないからであり、公民投票に反対する
アメリカは、責任回避と同時にアンチ民主主義で、人権違反である。

ハーチンソン教授が「台湾は国連加盟をするな」というのは非常にユニ
ークで一理はある。国連加盟しなければいくつかの利点もあることも納
得できる。

しかし彼の主張はアメリカが直面している困難、つまり「中国に対する
恐怖心」から来る現状維持の政策をいくらか緩和することになるが、台
湾が世界の孤児である事実をどうするか、解決策を与えていない。台湾
が孤児の現状を維持していくのがアメリカにとって短期的な便宜を与え
ることはあっても、長期的には中国の併呑される虞が増大するばかりで
はないか。これが筆者の講演会の感想である。読者の感想と意見、今後
もわれわれの間で討論を続けて行けることを願っている。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
読者のご感想をお待ちしています。bunsho@cox.net まで。
バックナンバーはhttp://www.melma.com/backnumber_53999/ ここを入力すると、
記事のバックナンバーを見ることが出来ます。同時に、入力したあと、左側上部に
「登録する」ボックスがあり、登録すれば記事は自動配信されます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-12-18  
最終発行日:  
発行周期:月刊、不定期  
Score!: 99 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。