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AC通信 No.194

2007/01/24

[AC通信:No.194] (2007/01/23)
[AC論説]No.194 歴史の曲がり角(3):
台湾はアメリカの暫定属領である

前の二回でカイロ宣言(公報)は国際法的な効力がないこと、サン
フランシスコ平和条約と日華条約では台湾の法的地位は未決のまま
であると書いた。台湾の法的地位は台湾の住民が決定する権利があ
る、しかし現在の台湾は台湾独立に反対する中華民国に占拠された
ままであり、中華人民共和国の武力恫喝もあって独立はかなり難し
い状態にある。

李登輝前総統が述べたように、台湾が独立するには住民の台湾意識
が十分に熟した状態であり、住民投票で現政府の圧力、影響下で独
立に圧倒的な同意(少なくとも75%)を示さなければやれない。人
民の意識は中国人の影響下にあってまだまだ独立意識が熟している
とはいえない。もともと中華民国の体制下で中華民国を倒す投票を
すること自体、大きな矛盾である。

今回は林志昇とリチャード・ハーゼル(Richardの米国暫定属領論
を紹介する。私は林志昇/ハーゼルの主張が台湾独立を果たす近道
だと信じている。

●台湾が独立する道

台湾が独立するには大別して三つの道があると思う:

第一は革命で、旧政権を倒して新政権を作る。これはまず不可能に
近い。台湾人は臆病で、革命を唱える人が居ても追従する人がいな
い。台湾人は奴隷のように従順でしかも危機意識がない。知識人は
無力、商売人は卑屈、一般民衆は不知不覚で興味を示さない。

第二は「革新」つまり憲法改正で建国を進める理論。これには二つ
の主張があって、一つは正名制憲論(革新派)、もう一つは憲法修正
(修正派、現状維持派)である。どちらも同じように中華民国の憲
法制度を維持しつつ、新憲法を制定すれば中華民国から台湾国に変
更できるというが、中華民国の体制下で台湾国に変身するといえば
中国が圧力をかけるのは明らか、武力恫喝は避けられないし、実際
に武力行使に踏み切る可能性もある。

第三が米国の暫定占領領土から独立を果たす理論で、これが林志昇
/ハーゼルの理論である。告訴によってアメリカの不完全な戦後処
理の責任を追及すれば、アメリカは台湾を暫定属領と認めざるを得
ない。暫定領土であるとわかればアメリカは沖縄と同じように、暫
定政権を確立して中国の圧力を退け、住民投票で台湾の帰属(独立、
米国属国化、中国属国化)を決めることになる。

●米国暫定属領の考察

台湾雲林県出身で、日本の名城大学法学部に留学した林志昇博士は、
3年前、前総統李登輝の斡旋で米国人の国際戦争法専門家、リチャ
ード・ハーゼル氏(台湾名、何瑞元)と共に「台湾国際地位未定論」
を究明するため、平時の国際法ではなく、誰も研究してこなかった
国際戦争法と占領法、及び米国憲法と台湾関係法を徹底的に探究し
た結果、台湾は戦後から今に至るまで、「米国軍事政府(USMG)管
轄下の未合併領土(Unincorporated  Territory) であり、グアム島
と同様に、米国の列島区(Insular Area)第一類の自治区に属し、
暫定状態(Interim Status)に置かれている」と解明した。

1945年9月、中華民国蒋介石軍隊は、マッカーサーの戦後処理第一
号命令で連合国を代表した台湾の占領軍であるが、事実上は米軍の
委託代理である。現在台湾にある中華民国1949年、中国内戦に敗れ
て亡命国となり、1971年国連に追放されて滅亡国となった。

日本の敗戦は米国の単独戦闘行為に依るもので、実質的に日本を征
服したのは米軍だけである。従って米国は主要戦勝国であり、主要
占領権国(Principal Occupying Power)でもある。平和条約の第4
条b項と第23条に、「米国は日本及びその植民地の主要占領国であ
り、その処分と支配権を有する」と明記されている。

林、何両氏の法理論によると台湾問題は中国内戦の遺留問題でもな
く、中華人民共和国の内政問題でもない。日米太平洋戦争の遺留問
題である。1952年のサンフランシスコ平和条約締結後から、国際地
位未定となった台湾はどの国の所有地でもないから、台湾独立問題
も無く、中国との統一問題もない。台湾にあるのは「建国問題」の
みだ。

●台湾の法的地位未処理はアメリカの責任

終戦後のアメリカは一貫して反共だったので、台湾に亡命した中華
民国政府を支持し、共産政権を認めなかった。その後中華民国は国
際連合より除去され、Republic of Chinaは中華人民共和国に取
って代わられた。台湾の暫定地位は未処理のまま残されたのである。
こうして台湾人の独立祈願はアメリカの政治的理由から無視され、
放置されたのである。

国際地位が未処理ならアメリカの責任を追及すべきだと主張するの
が林志昇/ハーゼルで、二人は主張するだけでなく両氏は実際に行
動を起したのである。
(1)、彼は2005年10月、ワシントンポスト紙で、米国政府に対し、
台湾主権問題を追及した。
(2)、2006年3月29日、台北のAIT(米国領事館)に、228台
湾大虐殺事件にちなんで228名の本土台湾人を率い、グアムと同様
のアメリカ国民のパスポート申請書に35枚の理由書を添えて提出
した。米国はメンツ上、許可するか否かは未知だが、申請書をA
ITが受け入れたこと自体、退ける理由が無く、過去の誤策を承認
したことを意味する。
(3)、2006年10月24日、林氏は米国の曖昧政策を打破し、台湾
人民の信頼を得る為、ワシントンDCの弁護士団に委任し、米国連邦
裁判所を通じて、米国大統領ブッシュ及び国務長官ライスに、台湾
主権問題に関する明確な返事を要求する「強制執行命令」訴訟文を
提出した。連邦裁判所はそれを検証した上受諾した。米国政府は二
ヶ月以内に返事しなければならなかったが、年末休日を理由に2007
年1月12日まで回答延期を要請した。台湾人が米国政府を告訴した
のは、史上初めての大ニュースなのに、何故か中央社を除く台湾の
マスコミは一切報道していない。
訴訟文のWeb siteは: http://www.taiwankey.net/dc/

●米国政府の弁論と反論

連邦裁判所に持ち込まれた告訴状は米国政府に手渡され、米政府は
延期を要求したため、2007年1月12日まで延期されたが、1月12
日になって、35ページに上るアメリカ政府の答弁書が裁判所に提出
され、裁判所はこの答弁書を林志昇/ハーゼルの弁護士に渡して、
29日までに反論(Rebuttal)を提出するよう通知した。簡単に言え
ばアメリカ政府の見解とは「台湾問題は政治問題であり、司法で解
決する問題ではない」ということである。以下の5点の、括弧内は
アメリカ側の見解で、外側はハーゼルの見解である。

1.「米国とROCの交流は断たれたが、台湾との交流は続行中
である」。ここには台湾と中華民国の区別がない。アメリカは非公
式にROCと交流している。台湾はこの論点から外されている。
2.「米国には台湾に対する司法権が存在するという根拠がな
い」。軍事占領は軍事政府によって行使され、その執行権は占領軍
の下で始めて可能である。軍事政府の持続性は法的な明示がない限
り変化はない。
3.米国政府の答弁書はサンフランシスコ平和条約(SFPT)に
織り込まれたマッカーサー通常第一号命令書の法的根拠を完全に無
視している。SFPTによれば台湾は米国の軍事占領地域である。台湾
の主権は中国(ROC&PRC)に譲渡されていない。
4.「どの政府が台湾の主権を行使するかは純然たる政治問題
であり、法廷が判決を下すべきでない」。米政府は連邦法廷に対し
訴訟の却下を求めているが、SFPTに従えば、台湾は日本が権原を放
棄した領土であり、法的解決が妥当である。PRCもROC もSFPTに署
名してない事実にちなみ、台湾に対する如何なる権利ももたない事
を銘記すべきである。
5.「台湾の国際政治位置は米国と中国間で取り交わされた三
つのコミュニケで解決済み」。これは嘘。米国はこれらの文書で中
国の言い分を「聞き置く(Acknowledge)」と明記しただけで、米国
政府の公式文献に「台湾の主権をPRCに引き渡した」と言う条文は
皆無である。「台湾のステータスは未定」が公式見解である。

●林志昇/ハーゼル理論の考察

ハーゼルが2004年のハーバード・アジアン・クォーターリーに論
文を発表してから3年たったが、これだけの成果を成し遂げた功績
は賞賛、評価すべきである。しかし反対論も多い。中国人はもちろ
ん反対だが、革新派、修正派にも反対者は多い。彼らの反対理由は
多く誤解と曲解が多いように思われる。

改革派は「アメリカに頼らず、アメリカの属領になりたくない、ア
メリカ人になりたくない」と言う。だが林志昇はアメリカの占領が
終わっていないという事実を指摘したのであって、アメリカ領土に
編入する要求をしたのではない。現状はアメリカの暫定占領下にあ
るから連邦法廷に法的地位の解釈を要請したのである。

林志昇/ハーゼルは「国際戦争法の解釈で法的地位を決めるべき」
と主張したのである。これに対しアメリカ政府は「台湾問題は政治
問題だから司法判決を下すべきでない」と主張したのだ。

戦争法に則れば台湾は中国の領土でも、アメリカの領土でもない。
だから法律の解釈で決着をつけるのが最良である。もしも連邦法廷
の判決でアメリカの占領が終焉していないことが明白になれば中国
は台湾に対する領土主張ができなくなり、アメリカが台湾を保護し
つつ住民投票を果たすことができる。改革派、革命派が50年かか
っても中国の覇権恫喝から逃れることができなかったが、林志昇/
ハーゼルはアメリカの法廷訴訟で安全かつ国際法に則って独立を果
たせることを証明したのである。

「アメリカ人になりたいのか」と嘲笑する人は林志昇が「占領下の
住民権利」に基づいてアメリカの暫定パスポート申請を行ったこと
に由来する。中国人、台湾人にはアメリカ国籍を取得したい人がた
くさんいる。アメリカ国籍と中華民国国籍、中華人民共和国国籍と
どれが欲しいか、聞いてみればわかる。

●歴史を正す運動

「歴史の曲がり角」でこの問題を取り上げるのは、中華民国が台湾
を占領したのはマッカーサーの指令によるもので、占領権はアメリ
カにあり、法的地位は未解決であると言うことだ。

台湾独立を果たすには革命は無理だから、投票によるしかない。米
国の保護下で投票するのと、中国の恫喝下で投票することの、どち
らがよいかは歴然としている。しかも林志昇/ハーゼルは「中華民
国の法律制度の下で住民投票」といった矛盾を避けることができる。
アメリカ政府を告訴した行為は米国の法律で保護されているだけで
なく、台湾人が蜂起する必要もない。林志昇/ハーゼルが必要とし
ているのは人民の支持と、5万ドルの告訴費用の献金だけである。
無血独立を支持しない台湾人は居ないはずだ。

現状は台湾で林志昇/ハーゼルを主体とした動きとアメリカで彼ら
を支持する陳辰光/黄恵瑛のグループであるが、最近はかなり活発
な支持者や討論が行われるようになった。不足しているのは支持者
と金である。一人50ドル、100ドルでも支持者が多くなればアメリ
カの弁護士費用が拠出できるのだ。支持したい人は以下へ連絡して
ください。chengkuangchen@yahoo.com
chengkuangchen@gmail.com 
陳辰光さんの中国語および英語の詳しい討論は以下のサイトにあり
ます。
http://www.taiwanbasic.com/kcity/court.htm

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