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2004/12/22

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[AC通信:No.116(2004/11/16) [Andy Chang論説集]
◆第16章 「連宋の乱」と「柔性政変」

九月に台湾で「連宋の乱の真相」と言う小冊子を出版したが、これがかなり反
響を呼んで、立法院議員の選挙運動で「連宋の乱」と言う名前を演説に使う人
が増えた。游錫コン行政院長も選挙演説で「連宋の乱とは歴史に残る名前であ
る」と発表した。筆者も「連宋の乱」の命名者として面目を施したのである。

連宋の乱は陳水扁の狙撃事件に始まり、連宋の落選後は直ちに抗議デモ、高等
法院と選挙委員会ビルに暴力で突入などがあったが、警察が鎮圧しただけで、
軍隊の介入はなかった。ところが12日に陳水扁総統が「当時は軍部の最高幹部
が辞任、仮病入院などで十指にあまる将軍級の退役軍人がボイコット行為を行
う計画があったが、この温和な(柔性)政変は未遂に終わった」と発表して世
間を驚かせた。国民党と親民党は直ちに「証拠をだせ」と抗議して、陳水扁総
統を名誉毀損で告訴した。

最近になって判明したのは柔性政変が事実だったのみならず、もう少しで政変
が成功するところだった。台湾人政権になって4年たっても台湾の政情は非常
に不安定で、統一派の勢力は少しも衰えていないのである。

●「連宋の乱」のあらまし

総統選挙の前日、三月十九日に陳水扁、呂秀蓮の二人はパレードの最中に狙撃
されたが、辛くも一命を取り留めた。暗殺の失敗で連宋の選挙本部は夜になる
と「陳水扁の自作自演」と更なるでっち上げを発表。翌日の選挙で連宋の落選
が決まると連宋は「選挙無効」を唱えて抗議に突入し、宋楚瑜は陳水扁の辞任
を要求し、群集を唆して総統府前の広場で抗議を始めた。

軍の高級幹部は殆ど国民党員だから、電話で現役軍人に政変を起すよう圧力を
加えた。しかし一般の兵士は台湾人だから政変は無理である。そこで軍の幹部
にボイコットを呼びかけたのだった。元老の圧力が強大だったため、国防長官・
湯曜明は眼疾の治療と称して入院、ついで投票の二日後に辞任の意思を表明し
た。また副部長にも辞任の圧力があったと言われる。軍のボイコットは中国の
軍事行動に対応できない結果となるので、その影響は計り知れない。政変を憂
慮した李登輝前総統は入院中の湯曜明に電話して辞任せぬよう要請した。また
游錫コン行政院長も病院に出向いて湯曜明の辞任を取り消すよう要請したので、
湯曜明は五月二十日の総統就任式まで辞職しないと発表、政変が未遂に終わっ
て連宋本部は大いに失望した。これが陳水扁の言った「柔性政変」である。

この他にも親民党はアメリカCIAの一部に働きかけて暴動を鎮圧すると言う名
目で軍隊を派遣して台湾を制圧し、陳水扁を「国外追放」するよう要請したが、
これも失敗に終わった。

この後、アメリカの犯罪専門家三人を雇って自作自演の疑惑を解明することを
要求したが、アメリカの専門家たちは自作自演を否定する報告書を出した。ほ
かにも学生を使って陳水扁に謝罪要求(?)したとか、法廷に[選挙無効]」を
告訴する、立法院で明らかに憲法違反の「真相調査法案」を通過させるなど、
一連の動乱は「連宋の乱の真相」に書いたとおりである。

●連宋本部が総統を名誉毀損で告訴?

陳水扁が選挙演説の際に柔性政変があったと公開すると、連宋陣営はただちに
証拠を出せ、出さなければ名誉毀損で訴えると息巻いた。しかし次の日になっ
て新聞局長の林佳龍は台北市政府の警察局が発布した「総統府周辺違法聚衆活
動駆離計画」といいう通達に「中国統一連盟が武器を持って義挙を起こせ」と
いう檄を飛ばしていた事実を証明した。統一連盟は国民党や親民党と深いつな
がりがあり、外省人が政変を策動したことは明らかであるので、陳水扁の告訴
はうやむやに終わった。

●国民党軍人が辞職ボイコットを要請した事実

柔性政変とは英語で言うベルベット革命のことで、選挙で落選した連宋はただ
ちに軍人を動員して政変を起すつもりだった。しかし台湾軍は大多数が台湾人
であり、外省人には政変を起すだけの人力がない。その代わり軍部の元最高幹
部は中国人で占められているから、彼らが現職の最高幹部に働きかけてボイコ
ットを起すことは出来る。

三月当時は湯曜明が国防部長だったが、連宋が落選と決まった直後に眼疾と称
して台大病院に入院し、翌日には眼疾のため国防部長を辞職すると発表した。
つまり彼の元上官である顧=国民党の元老・許歴農が電話で辞職するよう圧力を
加えた証拠があると政府側は発表した。

選挙のあとで暴民が総統府前の広場に集まって抗議をはじめると軍隊と警察は
ただちに警備体制に入るべきである。そのような時刻に国防部長が辞職すれば
軍隊は動かなくなり、警察も暴動を抑えることが出来なくなり、総統は住居を
包囲された状況で孤立して生命の危険にさらされる、総統だけでなく閣僚も機
能せず国政は麻痺する。これがベルベット政変である。

●陳水扁の反論と証拠

湯曜明に辞職を迫ったのが誰かは今でも明らかにされていないが、許歴農の名
前があっ先に挙げられた。陳水扁は「政変の発動を煽動したことには確証があ
る、電話の主も話の内容もわかっている」と明言した。新聞は許歴農、蒋仲苓、
カク柏村などが上げたが、そのうちに顧崇廉が電話の人物であると発表されて、
顧崇廉はあわてて弁解に努めるようになった。

顧崇廉は元海軍総司令だったが、退役後は宋楚瑜の親民党に加入して重要幹部
となっている。つまり政変は宋楚瑜の画策であることが明白である。名前をあ
げられて慌てた顧崇廉は「陳水扁は私を友達を呼んでいた」と弁解したが、逆に
「友達を裏切るとは何事だ」と嘲笑された。

顧崇廉は総統選挙で連宋が落選した直後に「武器を持って総統へ前に集まれ」
と呼びかけたことがテレビに映っていて、動かぬ証拠となっている。彼のほか
にも親民党の劉文雄、丘毅、陳文茜なども総統府前に集まって武器を持って立
ち上がれと煽動したことが記録に残っている。

●汪笨湖の証言

汪笨湖という人物は台湾で最も有名なテレビキャスターで、独特の手法で人民
の声をテレビに載せるプログラムを開発して、いまでは毎日4時間の「台湾心
声」を放送して最高の視聴率を維持している。彼はテレビの有名人物だけでな
く、陳水扁総統、李登輝元総統とも電話で直接連悪できるほどの人物である。
汪笨湖がこのたび初めてアメリカを訪問し、16日に筆者とサンディエゴで「汪
笨湖先生と在米台湾人が台湾の将来を語る」と言う題目でテレビ対談をし、続
いて17日に「立法委員選挙の結果と台湾の将来」について講演したが、この際
に柔生政変の事実、湯曜明の辞職未遂の経緯について詳述した。

湯曜明が元上官の圧力に抗しきれず、眼疾を理由に仮病を使って入院、つづい
て辞職の意を陳水扁に伝えた。陳水扁は留任を要請たが、政変とは陳水扁を窮
地に立たせるのが目的であるから、湯曜明が聞くわけがない。こうして彼の辞
職がほとんど確実になった時に、李登輝が病院に電話して辞職してはならぬと
説得した。しかし湯曜明は外省軍人の圧力に抗することが出来ず、李登輝の要
請にはんたいすることも出来ず、窮地に立たされた。彼が動かぬと見た李登輝
は湯曜明に「いますぐ、私の家に来い」と命令した。

官邸に駆けつけた湯曜名に対し、李登輝は「国家存亡の際に軍人が命を擲って
責任を果たすのは軍人の本職である。たかが眼疾を理由に辞職するとは何事
か!」と彼を叱りつけたのだった。湯曜明は李登輝に引き立てられた軍人で、
彼の命令に背くわけにはいかない。

しかし統一派の退役軍人からかかった圧力も強い。進退きわまった湯曜明は「い
くら私ががんばっても十日ぐらいしかもちません」と返事をしたそうである。
これに対して李登輝は「十日ではならぬ。少なくとも五月の総統の就任式まで
留任せよ。これは命令である!」と再度の厳命を下し、湯曜明は「ハイッ、わ
かりました!」と答えて李登輝の官邸を離れた。このお陰で台湾の政変は回避
されたのだった。

陳水扁が再選を果たし、連宋の乱は収まってきたように見えるが、いまでも外
省人の勢力はかなり強く、台湾人が政権を握ることが出来る日はまだ遠い。今
月の立法院議員選挙で民進党は過半数を制することが出来ず、おおきな痛手を
こうむったので柔性政変は司法裁判になることもなく、やがては人々に忘れら
れるかもしれない。しかし台湾で連宋の乱、柔性政変があったという事実は歴
史に残しておくべきである。■

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ アンディ・チャンの本 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「フライディ・ランチクラブ」ISBN 4-88306-955-9 新風舎       
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「台湾号会沈没?」ISBN-957-801-356-6 前衛出版社
「台湾号加油」ISBN 957-8251-54-8 一橋出版社 
「連宋之乱的真相」、前衛出版社
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