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AC通信、第八章[AC通信:No.55(2002/5/30)] Andy Chang (カリフォルニア在住)

2002/06/27

[AC通信:No.55(2002/5/30)] Andy Chang (カリフォルニア在住)

 

◆[ガンバレ台湾丸] 第八章 外国人のアメリカ留学

 

ワシントン郊外から風光明媚なカリフォルニアに移住したため、半年近くも

ご無沙汰してしまった。移住するに当って車でアメリカ大陸横断旅行をした。

アメリカに住むこと四十数年、車でやる横断旅行は二度目になるが、改めてア

メリカの広大さ、民度の複雑さを痛感した。インターネットでは時々アメリカ

に数年ほど滞在した人がアメリカと日本の比較や批判などをみかけるが、いず

れも「群盲象を撫でる」の感が強い。筆者は四十数年住んでいてもこれがアメリ

カだ、と断ずる事はできないのである。

 

アメリカに留学、または滞在した人が自国に帰ってアメリカを熟知している

かのように批判に廻るケースをよく見かける。ある人が日本のお米はアメリカ

のお米よりおいしい、と書いたことがあった。当り前です、アメリカ人はお米

を常食としていないのである。ロス・アンジェルスでは日本食なら文字通り何

でも手に入るが、ロスに滞在して日本食ばっかり食べて、帰ってから日本のお

米の方が美味しいというのは、アメリカに住んでアメリカを見なかった証拠で

ある。日本料理とステーキとか、ルイジアナのケージョン料理を比べるべきで

ある。

 

このような個人的な偏った見解は別として、アメリカに留学してアメリカか

ら学んだ人が本国に戻って自国のために尽すケースはかなり多い。世界各国

の留学する人の半数以上はアメリカに留学する。これが知識の交流になり、

自国の発展に寄与することも多いが、あとでアメリカ批判や競争、意図して

アメリカの機密や盗む技術を盗むケースもある。今回はアメリカに学ぶ外国

エリートの問題をアメリカと外国の両側から検討してみたい。

 

●外国人留学はアメリカ人のチャンスを奪うか?

 

ときどき新聞を賑わす懸念のひとつは外国人の留学が本国人の就学チャンス

を奪い、外国の学生がアメリカ人の就職のチャンスを奪う結果にならないか

ということである。

 

外国から留学した人たちは自国のエリートであり、留学するなら一流大学を

希望する。だからアメリカ人からMITやハーバードなどで学ぶ機会を奪う

ことになるかもしれない。一流大学に留学した外国人が帰国してアメリカ批

判に廻るのは心外だし、アメリカで就職すればアメリカ人の職場を脅かすこと

もあるだろう。

 

しかし、全体像からみてアメリカに学んだ外国人がアメリカの利益になるか、

不利になるかという面から検討すべきだろう。アメリカの社会学者の研究によ

れば留学生は長期的に見て両国間の知識交流が進み、共通の発展に繋がること

の方が多いと言う。またアメリカで就職した学者の多くはアメリカの発展に寄

与することが多く、これがアメリカ自国の技術や学術に貢献している。

 

留学生の数は台湾、インド、韓国などが多く、最近は中国からの留学生が年々

増している。日本からの留学生は毎年同じぐらい。また、留学した学生がアメ

リカに居残る数は中国人が圧倒的に多く、これは政治的な原因で人権や自由の

ない中国に戻るのを嫌うせいである。昔は台湾人留学生の多くがアメリカに永

住したが、今では自国の戻る人が増えている。インドや韓国も似たようなもの

である。つまり留学生は自国に貢献するよりもアメリカに貢献するほうが大き

いらしい。

 

日本の留学生は殆ど帰国する。帰国して学んだ知識を広めることができれば

誰しも故国に帰りたがる。しかし帰国してから失望するケースもある。大前研

一氏のようにアメリカから帰って盛大に日本の弁護やアメリカ批判をしている

うちに、だんだんアメリカ側の弁護にまわり、やがてアメリカに移住した例も

ある。学者や技術者がアメリカに留まるのはどこに自己発展のチャンスがある

かによる。自国の政治が独裁的で研究のチャンスが与えられないとか、学閥が

強くて留学した者を受け入れない場合はアメリカに留まるだろう。この点でア

メリカは殆ど「よそ者」を差別しない国であり、それがアメリカの強みになっ

ている。

 

●外国人留学生は知識や技術の流出になるか?

 

優秀な留学生が帰国すればアメリカの知識や技術の流出になると言う人もい

る。嘗て80年代の日本は産業技術が目覚ましい発展をとげて世界一の産業国

となり、アメリカは巨大な貿易赤字となり、日本に警戒心を抱くようになった。

しかし貿易の不均衡は日本の工業発展によるものもあるが、政府の輸入制限な

どによる自国産業の保護政策によるものも多く、日本がWTOに参加して自由

貿易の時代になると貿易の不均衡はなくなり、自由競争になって日本は不景気

になった。これまでの保護政策が日本の進歩を妨げていたが、自由化するに至

って問題が一度に噴出した感が強い。更に日本が不景気になった原因は安い中

国生産品の進出であり、これは以前のアメリカが日本の安い生産品で赤字にな

ったのと同じく、日本が中国の安い労働力に差をつけられたのである。

 

世界諸国からアメリカに留学した学者がアメリカに留まるケースは多い。ま

たアメリカで創業して本国にも支店を作り両国の発展につながる事も多い。イ

ンドでは多くの数学者やコンピューター関連のエンジニアを輩出してインドの

発展のもととなっている。台湾はコンピューターの関連部品の生産では世界を

リードしているが、日本やアメリカとタイアップしている。

 

 アメリカの技術を学ぶことについては多くの比較研究がある。面白いことに

「学び方」には国民性が現れると言われている。かなり大雑把な比較しかない

が、日本人はアメリカの技術を「導入して大量生産」することに長けていると

言う。十数年前に石原慎太郎が「ノーと言える日本」で、日本は世界一のカーボ

ンファイバーの生産国であるが、輸出をストップしたらアメリカの軍需企業は

大恐慌を起す、と威張って書いたことがあった。ところがカーボンファイバー

はアメリカのパテントで、日本はライセンス生産をしていたのだった。ノーと

言うには程遠かったのである。

 

 現在の中国は日本の後を追って技術導入に励んでいるが、日本と同じく技術

や設備を導入して(大半は台湾の資金である)安い労働力で勝負をする。なに

しろ賃金が安いので他国は競争きない。これには落し穴があって、賃金が安い

のは為替レートが自由化されていないからで、WTOに加入したら中国貨幣の

調整は必至のことである。中国元が上がれば必然的にインフレとなり、都市と

山村の生活差があまりにも大きい中国はインフレを消化できなくて大恐慌を起

す。

 

 台湾の工業生産は政府の行政指導に基づいている。半導体の部品生産がその

よい例である。しかし日本と違って台湾の企業化は導入したあと自国の開発に

励むとアメリカは考えている。たとえば台湾でDRAMをライセンス生産でし

ているが、最近では自己開発の技術も見られるようになったそうである。しか

し台湾の生産は中国の安い労働力に抑えられて最近では中国に工場を移す企業

が多い。台湾の企業家は中国の安価な労働力に太刀打ちできないので、製造業

の中国移転を考えている。こうなると企業が儲かっても資金は中国に流れるば

かりで、台湾は没落するだろう。

 

 インドはコンピューター関連事業ではかなり優秀なソフトの開発を行ってお

り、これは理数科の教育が優れているのが原因と言われている。しかしインド

ではインフラがまだ完備されていないのが問題である。

 

 こうしてみる限り、アメリカの技術が流出してもそれはアメリカと緊密な関

係を保って発展を遂げる例が多く、アメリカにマイナス面よりプラスの面が多

いように見受けられる。

 

●機密の流出をどう防ぐか

 

外国人の留学で最も問題になるのは企業または国家の機密が流出することで

あるが、これに対してアメリカは有効な手段をもっていないし、対抗する計画

も薄弱である。企業体または国家は他人にないものを保有していることが大切

だが自由に留学できる国では機密の流出を阻むことが難しい。

 

機密防衛は国家または企業の使命である。ところがクリントンのようなお金

で魂を売るような人間が大統領になると大変である。ゴードン・プラザー博士の

報告によると、クリントンが核機密を自動的に開放したため世界諸国の核爆弾

の製造が可能になったのである。まさにパンドラの箱を開けた報いは覿面で、

インドとパキスタンで核戦争の可能性が出てきた。これはクリントンが大半の

責任を負わなくてはならない。

 

プラザー博士によると、クリントンは中国に全面核禁止条約にサインさせよ

うとして、機密の開放に踏み切ったと言う。クリントンは「中国が核禁止にサ

インすれば核爆弾の製造はできなくなる」、「機密を開放すればそれは機密でな

くなる」、といった阿呆みたいな屁理屈を主張したのである。そして核機密の開

放を当時のエネルギー部長、ヘーゼル・オリーリーに推進させたのであった。

 

アメリカ政府は機密文書を開放して、誰でも文書を取得できるように「クラ

ウン・ジュール」と言うプログラムを作った。しかも中国人のロス・アラモス訪

問を許可して文書にアクセスする方法を伝授したのである。その後、核機密と

ミサイル弾頭の製造が中国に流出したことで国会の調査が進むとウェンホ・リ

ーに責任転嫁したのである。クリントンこそが現在の印・パの核戦争危機、ビ

ン・ラディンやサダム・フセインの核爆弾の製造を容易にした大罪人であること

は明らかである。

 

もともと機密の防衛はそれに携わる人々の責任である。機密があればそれを

盗むスパイがでてくる。「スパイを防ぐよりも機密を公開する」といったクリン

トンはどこか狂っているか、お金で魂を売ったのではないかと取り沙汰される

のも無理はない。魂を悪魔に売り渡すとは正にこのことだ。

 

歴史的に見て「中華思想」と言う自大的エゴを持つ中国では、平和共存など

あるはずがなく、機密を盗むため、自国に有利にするため学者を派遣するのだ

からスパイ防衛に励むのが道理であろう。友好国といってもイギリスやイスラ

エルのスパイが摘発されることはよくある。9.11テロのあと、アメリカでは機

密防衛とスパイ摘発に励むようになったし、FBIの内部改革も進んでいる。

 

●アメリカの不景気は自国に戻る機会となるか?

 

アメリカでは不景気が進んでいるが、雇用が少なくなれば外国人技術者が自

国に帰る機会となり、これが各国の発展になるといわれる。でもアメリカで失

業して自国に戻っても職があるとも限らない。アメリカの不景気が各国の不景

気を誘うこともあるし、本国で技術者を受け入れるインフラが整っているのか

も検討するべきである。

 

アメリカで創業して自国とのタイアップを計れば両国にとって最もよい結果

を齎すだろうという考えもある。また自国の政府が外国に流出した技術者をリ

クルートするかどうかによって帰国者のチャンスもずいぶんと違うものとなる。

小泉政権のように失業者対策がうまく行かない状態では技術者の移住のほうが

多いのではないか。

 

台湾でも不景気が進んでいて、業者の一部は中国に企業を移すことを宣伝し

ている。経験のある技術者50万人が中国に移住したといわれている。しかし

中高年の技術者が中国に移住して国内企業が空洞化すれば、若い世代の雇用も

できなくなり、人材もいなくなってしてしまう。台湾では為政者も、立法院も

企業者も、国の機動力となるべき人物の殆どが台湾の利益を思索せず、もっぱ

ら自己利益の追求におわれていて崩壊は時間の問題となっているみたいだ。

 

インドや韓国では国益を追求する姿勢が強く、多くの問題点を抱えていなが

ら長期的な見通しは悪くない。ただ、国が人材をリクルートしてもインフラの

不備がエリートの帰国を渋らせる原因となっているところもあり、さらなる努

力が必要である。

 

●アメリカとのタイアップ

 

外国人技術者がアメリカで創業するとか、またはアメリカの会社に就職して

故国の企業に技術援助や流通網のセットアップなどに役立つこともある。しか

しこれにはいくつかの問題点があることも指摘しておきたい。

 

問題の第一は自国とアメリカとの政治関係である。一番よい例が中国で、ア

メリカの技術導入を望んでいながらアメリカを「潜在的な敵」と見ている。五

千年の歴史が示すように中国とは雑多な民族から構成されている中国では「大

中華思想」から逃れることが出来ない人種で、アメリカから利益を求めても機

会があればアメリカを征服しようといった意識がある。このような国と技術そ

の他の交流をすれば一方的な利益の追求や技術の流出の終ってしまい、アメリ

カや他国の利益にならない。

 

アメリカの外交政策とは簡単に言って、友好国となって合作するか、敵と見

なして包囲網を造りシャットアウトするか、二者択一である。中国はアメリカ

と敵対してはならぬと知っているので、ニセの友好を装って利益を追求する。

クリントンのような外交に無知で、お金で買収できるような人間が大統領にな

って中国に接近した苦い教訓は、ブッシュに受け継がれて中国に警戒心を抱く

ようになった。

 

両国を股にかける企業では経済的な問題も残る。たとえばアメリカのシリコ

ンバレーでは人材の確保が難しく、生活費や家屋など恐ろしく高価で、両国間

の人材にサラリーその他の差異が大きくなれば両国との交流は困難である。

 

●対立闘争でなく共存共栄を

 

歴史的に見ると人類の関係とは異民族を征服することであった。村と村の戦

争から地方を平定して国をつくり、国と国が戦争を起して世界制覇を試みるこ

とはアレクサンダー大王や、ローマ帝国、ジンギスカン、秦の始皇帝や中国歴

代の覇権願望、大中華思想などに見られる。

 

しかし現代は違う。人類が戦争から学んだことは相互殺戮よりも共存共栄で

ある。お互いに助け合うことで関係を結べば、戦争をしないでも相互の繁栄は

期待できる。これが進んでEUROすなわちヨーロッパ連合が成立し、国際間

の貿易ではWTOといった相互補助、公平な競争などが可能となった。このほ

かにもASEAN、APECなどがみられる。

 

でも、まだ新しい共栄思想を受け入れない国や民族がいて、テロや国際紛争、

軍備増大に走る。たとえば中国は台湾を征服しなくても相互の利益になる関係

を結べるが、それが実現しないのは「大中華思想」という非近代的な征服思想

のせいである。イスラエルとパレスチナ、印度とパキスタンの紛争をみてもそ

うである。

 

アメリカは知識や技術を諸国に開放して留学生を歓迎している。知識や技術

の交流が世界の相互繁栄に繋がるとアメリカは信じている。だがアメリカに敵

意をもち、アメリカが世界制覇を意図しているといった、嫌米思想や危機意識

を煽る知識分子もかなり多い。公平に見て諸国がアメリカから得た利益や恩恵

の方が尊大さよりはるかに大きいのではなかろうか。■

 

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