政治・経済

地域からの発信

「首都圏の田舎」千葉県四街道市の市会議員となった筆者(元新聞記者)が発言する。国政・国際レベルのニュースについて地域住民の視点での発言。「市民の手によるまちづくり」のための発言など。





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新聞批判=「フセイン報道の大きな欠落」

2003/12/21

 「新聞批判」第8号=2003年12月21日(日)
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 筆者・発行者=田中  良太
 メールアドレス=gebata@nifty.com
 URL=http://www.gebata.com/
 [敬称・呼称略]
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 ◆フセイン逮捕=「米国が育てた」事実が消える理由
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 サダム・フセイン逮捕の第一報が入ったのは、日本時間で14日(日)のこと
だった。どうやら朝日は、号外をばらまいたらしい。確認できただけで宮城▼千
葉▼山梨▼愛知▼広島などの地方版(16日付)に、号外を配布したというニュ
ースが掲載されている。
 14日は、たまたま新聞休刊日だった。「超大ニュースがあるときは号外を出
すのが新聞社の使命」といった位置づけなのかもしれない。しかしこのテレビ時
代に、多くの人たちは新聞に第一報を期待しているとは思えない。それなのに新
聞は、「速報性」にこだわっている。
 起こった事件を「速報」するだけならまだいい。日本の新聞の特色は、起こる
はずの事件を予言する「前打ち」記事が多いことである。さいきんでも、自衛隊
の派遣が12月25日からになるという「前打ち」が行われた。首相官邸は防衛
庁に対して、情報管理の徹底を指示すると同時に、「その日取りは変えよ」と厳
命するという騒ぎがあった。このためじっさいの「命令」は26日出発となった
という。
 その「前打ち」の取材競争で、特ダネになってほめられるか、それとも特オチ
となってマイナス点を付けられるのか。それが記者の評価となる。だから日本の
新聞記者は、取材先との癒着を強いられるのである。
 日本の新聞記者の最終目標は、フツーのサラリーマンと同じ「社長」である。
私の尊敬する政治記者の一人に広瀬道貞という人がいる。岩波新書「政治とカネ」
(1989年10月刊)などの著書があり、「カネの動きこそ政治」といった構
図をえぐってきた政治記者である。
 「政治とカネ」の奥付によると1934年生まれで、89年10月の時点では
論説副主幹だったとある。その後、系列のテレビに天下り、いまはテレビ朝日の
社長になっている。これが政治記者の「出世コース」なのである。
 少なくともアメリカの新聞記者は違う。名もない地方紙に入り、「書ける記者
だ」という評価になると、「ニューヨークタイムズ」や「ワシントンポスト」な
ど有力紙から声がかかる。そこでさらに「優秀」の折り紙がつくと、独立したコ
ラムニストとなる。要するに「会社人間」ではなく、「仕事人間」なのである。
 広瀬道貞氏に会う機会があったなら、著書を通じていろいろ教えていただいた
お礼を言う一方で、「政治記者としての業績が、テレビ朝日社長となるための踏
み台であるかのような人生を構築されたのは残念」と一言したいというのが、私
の心情である。
 記者たちの最終目標が独立したコラムニストだということになっていれば、取
材先との癒着はほどほどのところに収まるはずだ。「書くべきことを書かない」
コラムニストなどあり得ないからだ。
 サダム・フセインに話題を戻そう。このメルマガが「21世紀を解読する」だ
ったとき、第40号(2003年4月11日付)で「<米国>サダム・フセイン
独裁を育てた愚」というタイトルの拙文をお送りした。
 書き出しは「サダム・フセイン政権が崩壊したいま、この悪らつな独裁政権と
米国との関係をふり返ってみるのも悪くないだろう」である。
 サダム・フセインが大統領に就任したのは1979年7月だが、このときイラ
クと米国は断交したままだった。イラクはシリアと同様バース党の国である。バ
ース党は「アラブ社会主義」を掲げ、親ソ反米だったのである。
 ところが隣国イランでは、この年2月「ホメイニ革命」が成立し、米国と友好
関係にあったパーレビ王朝が崩壊していた。同じ中東のイスラム教国でありなが
ら、イランはペルシャ人の国で、アラブ人との対立感情は根深いものがある。そ
の対立感情を利用して、「中東のヒトラー」の座を目指したのがサダムであり、
イラン・イラク戦争を仕掛けた。
 ホメイニ革命下のイランでは、反米感情が高まり、米国大使館占拠事件まで起
きた。反パーレビ政権が、そのまま反米となったのである。米国の方も、ホメイ
ニのイランを「敵」と認定した。そして「敵の敵は味方」の論理で、イラン・イ
ラク戦争を仕掛けたサダム・フセインを全面支援したのである。
 米ソ対立の時代に、その双方から支持されたからこそ、サダム・フセインは強
固な独裁政権を築くことができたのである。
 以下「21世紀を解読する」第40号の文章を引用する。
 <84年には、時のレーガン政権が国交を回復し、戦線で劣勢だったイラクを
支援し始めた。
 米国は、ソ連製武器の情報と引き換えにイラン軍の配備状況を撮影した偵察衛
星の写真を提供し、クウェートやサウジアラビアに対してイラクへの武器供与を
働きかけた。87年には、「自国のタンカー護衛」を理由に48隻もの大艦隊を
ペルシャ湾岸に派遣し、欧米のイラク支援体制を確立した。
 レーガン政権はこの間、イラク原油の輸入を急増させ、イラクにとって米国は、
日本やフランスなどに取って代わる最大の貿易パートナーとなった。大量破壊兵
器開発要員としてサダムが送り込んだ留学生たちも受け入れた。独裁者・サダム
を育てたのは米国なのである。
 この間、サダムのイラクは、軍事大国化したばかりでなく、化学兵器・生物兵
器の開発など、国際条約違反の非人道的な道を歩んだ。そういう暗部には目をつ
ぶっていたのがレーガン・父ブッシュの両共和党政権だったのである。
 サダムはクルド人に対して化学兵器による攻撃を実行し、父ブッシュ政権下の
米国議会ではこれが問題になった。人権派議員たちが「なぜ放置するのか」と追
及するのに対して、父ブッシュ政権の当局者たちは「イラクが友好国であること
を忘れてはならない」と答弁した。この押し問答は、1990年8月2日のイラ
ク軍クウェート侵攻の直前まで続いた。
 湾岸戦争からイラク戦争まで、ブッシュ父子政権がやっていることは、自分が
育てたダーティーな独裁者を破滅させることにすぎない。父ブッシュがレーガン
政権の副大統領だったことを考えれば、各国に「ご迷惑をかけてすみません」と
謝りながらやるべきことだろう。正義漢づらして、「協力しないのはけしからん」
と主張するなど、許されないことなのである。
 米国の行動の最大の被害者はイラク国民である。サダムの圧制下に置かれ、し
かも戦禍に怯えなければならなかった。米国の統治は、イラク国民の反抗に悩ま
されるはずだ。「善政を敷く米国」なのだから従順であれ、というのが米国の論
理だろうが、あまりに手前勝手にすぎる。こんな論理が通ると思っている米国の
つけあがりぶりは、あまりにひどい。>
 サダム・フセインの支配は、拘束されたことによってほんとうに終わったとい
える。新聞が「真実の報道」を目指すとするなら、この独裁者と米国のねじれた
関係を書かなければならない。しかし日本の大新聞はそろって、その作業を怠っ
ているのである。
 ただ一紙「日刊ゲンダイ」だけが12月18日号の「Today's Top News」で、
米国などの「フセイン支援」問題を取り上げている。そのキャッチコピーは
 <■ 恐らくこうなる生け捕られたフセインの運命■ 裁判で洗いざらい暴露さ
れたら大変なことになる西側主要国首脳たちの■ 重大な過去のフセインとのこ
れだけの汚れた関係から予測される事態■ 多分彼はもう表には出てこないだろ
う>
 である。
 文中の小見出しを拾っていくと
 ◆ フセインは無罪じゃないの? 今度の戦争で裁く罪名がない米国の悩み
 ◆ 米国こそフセインを増長させた元凶だ ◆
 ◆ 仏独ロ英も戦争ビジネスで利益を得てきた ◆
 ◆ 用済みフセインが裁判前に消される可能性 ◆
 ▼ 10年も前の罪状で拘束、処刑は無理だ ▼
 ということになる。
 記事全体は、フセインが今後どう扱われるかという未来予測の形をとりなが
ら、米国をはじめとする国連安保理事国の「汚い手」を暴いている。こうした記
事を書こうとしないのは、まさにジャーナリズムの退廃でしかない。
 その構造的な原因は、過度の速報性重視と、新聞記者の世界が依然として会社
人間の世界にとどまっていることにあるというのが、私見である。
 この原稿を書いている最中に、NHKラジオの「新聞を読んで」が聞こえてき
た。「各紙とも15日夕刊は、フセイン逮捕の記事だけと言えるほど盛りだくさ
んだったが、気の抜けたビールのような感じだった」というのが、論評の内容だ
った。サダム・フセイン報道についてこんな論評しかできない人間が、堂々と大
学教員となっている低レベルぶりに驚きを新たにした。
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