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気になるこの本★ビジネス/社会/ノンフィクション★

ちょっと気になるテーマの本、いま話題になっていたり、なりそうな本、ユニークで面白そう、仕事や学習に役立ちそう、話のタネになりそうなどといった本を新・旧刊にかかわらず読んで紹介、ときに批評もしていきます。


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★RRCメルマガ【気になるこの本】 

2003/06/17

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   気になるこの本★ビジネス/社会/ノンフィクション★
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◆◇◇◇◆2003.6.17<vol.21> 編集発行RRCメルマガ編集部
             http://www.rrc-sokudoku.com/
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★気になる1冊

『5年後こうなる』(日下公人著 03.01 PHPソフトウェア・
 グループ  1500円)
                      ※価格は本体価格
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◆柔軟、ユニークな発想を

 本書は、今年の初めに出た、いわゆる“未来予測”本で、書店によ
ってはビジネス書の売れ行き上位にランクされていた。

 このような本をいま取り上げるのは、この本の“予測”が、イラク
戦争と、りそな銀行の国有化という2つの大きな出来事の後で見ると、
より一層興味深いものになっていたから。そのため改めて目を通して
紹介しておこうと思った次第。本号と次号の2回にわたって、その予
測を紹介していく。

 余り批評、感想も述べずに予測をそのまま紹介していくのは、予測
が正しいとか、当たる当たらないという興味より、いまの世の中の空
気、世論が、一億総与党化と言うか、アメリカの一局支配が強まる国
際情勢同様に、一方的に大きく流れる傾向にあるなかで、角度を変え
た見方、ほかに柔軟でユニークな見方、視点があるということを知る
上で有意義だと思うからだ。
 
 余り一方的に流れないための見方、さまざまな角度から見ること、
ためつすがめつしながら検証することの大事さに、結果的に気付かさ
れるような気がする。

 著者の日下公人(くさかきみんど)氏は、東京大学経済学部卒業後、
日本長期信用銀行に入行し、同行取締役を経て、現在、(社)ソフト
化経済センター理事長。東京財団会長。同財団は、競艇の日本財団の
系列団体で、会長の日下氏は、機関誌や自ら主宰する“日下フォーラ
ム”などと呼ばれる会などでも、さまざまな発言をしている。著書も
多い。

 最近、東京都の石原慎太郎知事が打ち出した“新銀行構想”に対し
ては、「多摩大名誉教授」の肩書きで毎日新聞にコメントが載ってい
た。長銀破綻にめげず、また、それをマイナスにせずに多方面で活躍
している、しぶとさを持った人とも言えるし、破綻のことなど気にせ
ず、自由な発想を持ち続けている人、と言うこともできる。

 それはともかく、「5年後の日本経済および生活を描く未来予測の
決定版!」と謳われた本書は、次の7章で構成されている。

第1章 未来予測の前提が変わった――経済見通しより戦争見し、
    戦争見通しより道義見通し
第2章 五年後 デフレは続く、けれどみんな幸福
第3章 五年後、これが次なる日本経済
第4章 五年後、成長産業はこう生まれる
第5章 そして生活はこう変わる
第6章 政治と外交はこう変わる
第7章 アメリカの落日が始まった?  

 これらの章のなかに84項目の予測がちりばめられている。アトラ
ンダムに紹介しておくと――。

「バランスシ−トが悪くても健康」
「不良債権は解決しない、が、みんな幸せ」
「GDPが論点ではなくなる」
「地価も株価も話題にならなくなる」
「東京に国際金融人が十万人来る」
「IT革命、第二回戦も日本が勝つ」
「五年後の日本の会社はとても有望」
「日本人社長がまた評価される」
「働かない若者が新しい時代をつくる」
「貧富での二極化はしない」
「問題は国際競争力より国内競争力、となる」
「外務省は兄弟三人以上の人が採用される」
「外務省が外国人だらけになる」
「中国の南京大虐殺PRが日本のプラスに転ずる」
「自衛隊に外国人部隊ができる」

 などなど…。なかには“自由な発想”も行き過ぎてしまい、マンガ
チック?になってしまったものや、ここには入っていないが、すでに
現実が先に進んで意外性に欠ける予測もあるが、全体の予測のベース
になっていると言えるのが、第7章「アメリカの落日が始まった?」
と第2章「五年後デフレは続く、けれどみんな幸福」。

 一人勝ちしているように見えるアメリカの落日と、いまは八方ふさ
がりに見える日本経済の未来は暗くない、明るい――という予測だ。

 日本経済の未来については、次号に譲るとして、今回は一人勝ちし
ているアメリカ、ドルの未来から…。

◆道義欠け、ドル安、アメリカ安…

 本書の発行はことし1月、イラク戦争(3月開戦)の前に書かれた
ものだが、「アメリカの落日」が始まるとの予測は、どこから――。

 まず、ドル安から。かつて「有事はドル高」と言われたが、イラク
戦争前の風雲急を告げていた時期でもドル安…。
「エンロン、ワールドコムに代表される不正会計事件以降、…アメリ
カ全体が不道徳だからドル安になった」。

「今までのドル高の原因は日本をしゃぶったから…」「日本は貧血を
起こして不景気」「アメリカはしゃぶるものがなくなる。新たな略奪
を求める対象を外に求めると戦争で、国内に求めれば何でもありの共
食い競争である。結局は信用を失って不景気になる」

「アメリカの景気回復の見通しが立たないから、ブッシュは国民の目
をそらせるためにイラクと戦争するというシナリオが一部の人に不人
気」。こうして「エンロン(=道義)から始まり戦争の話になる…」

 その後、イラク戦争が実際に開戦になっても、一瞬、ドル高の局面
があっただけで、ドル安…。

「経済発展の基礎にあるもの、それは平和と道義」。だから「『戦争』
と『道義』が経済見通しの必須要素」で、それにもかかわらず、アメ
リカ直輸入の経済学やエコノミストは、それらの要素をまったく無視
しているから経済予測などできないのだと主張する。

 次号でも触れるが、日下氏は、竹中平蔵金融経済担当相ら、アメリ
カ帰りのエコノミストを相当に意識して随所で批判している。そこで
本書には、「アメリカ発の経済論が意味がなくなる」とか「心理学者
が経済担当相になる」などの項目も設けられている。いまの大臣らは、
バランスシ−トや数字一辺倒で、道義や人間心理を無視している、と
いうことを強調しているのである。

 さて、そのドル安だが、アメリカが短期間に圧勝したイラク戦争の
後でも、また米政府のドル高堅持方針が確認されても、その趨勢に変
わりがない(時々、ドル安容認発言も出てくる)。

 もちろん、イラク戦争前にすでに有事のドル高神話が崩れていた。
ご存じのように91年の湾岸戦争時など、国際情勢が不安定になった
時には資金が安定したドルに移動してドル高になった。だが、01年
9月の米同時多発テロあたりから様相が一変。米本土も攻撃対象にな
り「有事のドル買い」神話が崩れたとされている。

 ただ日下氏は、テロではなく、予測に「戦争」「道義」の2つの要
素を加えて、ドル安、アメリカ経済下降を引き出した。ここがユニー
クな点で、アメリカ経済の5年後は、この2つの要素を加える分「皆
が予想しているよりも悪くなる」とする。

 さらに日下氏は、道義を問題にして、次のように論を展開する。

「アメリカの得意技はもはや軍事力しかない」「超軍国主義の国アメ
リカ」は、お山の大将になって独善に走り、環境問題でも国際社会を
無視。すでに「世界中から信用を失い」「孤立しつつある」。

 さらに「アメリカが孤立する理由の一番大きな点を言えば、イラク
に対して開戦する理由が手前勝手なことが第一で、第二は勝利した後
のNew World Order(新世界秩序)を言わないことである」

 現実にはブッシュ米大統領は「中東の民主化」を掲げたが、アラブ
にアメリカ型民主主義が根付けば、反米・反イスラエル色が強まる可
能性が大だから、ブッシュ大統領の本音は「民主化」ではなく「親米
化」とも言われている。

 それがエゴに映る。イラク戦争の圧勝でお山の大将ぶりをさらに強
めるアメリカの行く先には「攻勢終末点」があるのみと言う。これは
「やりすぎて潰れてしまう」ということ。攻めて攻めて…の攻勢をか
けていくと、どこかで終わりになる(パンクする)。それを軍事用語
で「攻勢終末点」と言うのだという。

 また、ドル安に関しては、「ドルに値打ちがあるのは、日本の場合、
石油を買うため」だったが、「脱石油が進んでいる」から「ドルは
不要」になり、この面からも「中長期的にドル安」と指摘する。

 さらに「大事なことは、グリーンスパンFRB議長の言葉を借りれ
ば、『強欲の感染症』である。道義の低さが感染するとは、もう根本
が崩れるということを意味する」「略奪型でやっていると、自分の国
の中がおかしくなる。やがてアメリカ国内でもお互いに騙し合ったり、
インチキをし…」「訴訟社会、非常に効率の悪い社会、無駄の多い社
会」になる(すでになりつつある)。それで「ますますドル安」…。

 すると「お金は臆病で気が弱い。逃げ足が速い」、実際に「アメリ
カから逃げつつある」「自分で働かず、略奪しようとするからそうな
る。それが続けばますます…」

 ……したがって現在は一人勝ちしているように見えるアメリカだが、
その未来は、決して明るくはない、となる。

 一方、日本の場合、これまでアメリカから輸入されたグローバル化
の名の下で排斥されてきた「相互信頼社会」「馴れ合い社会」が見直
され、復活し、日本型経営が再び評価され、力をもち、未来は明るい、
となる。

◆未来予測って、何だ…

 本書の謳い文句には「他には例を見ない、知的で刺激的な未来予測
が満載された、注目の緊急書き下ろし」とある。

 確かに他に例のない刺激的な予測も多く盛り込まれている。ただ、
書き下ろしと謳っているのに、文章の後ろに「(笑)」の文字を入れ
たり(実際は聞き書き? あるいは見出しに“顔文字”を入れている
ので若者受けを狙ってメール風にした結果なのか)、不満点はいくつ
もある。

 さらにアメリカの「攻勢終末点」が近いと言っても、その論拠とし
ては、近づくほど「勇みだつもの」「相手を甘く見る、鈍感になる」
「弱点をつかれたときに怒る、正義、正義の押しつけがましくなる」
などの「兆候」なるものを示しているだけだ。つまり、経験的、直感
的で、論証が不足していると言わざるを得ないような予測が少なくな
いのだ。だが、それらのマイナス点を差し引いても、視点はユニーク、
その点で買えるのだ。

 そういう視点を取り入れて見ると、一人勝ちしているように見える
お山の大将のアメリカに、唯々諾々と従い、何でもやってしまいそう
な日本政府には、ますます危うさを感じさせられる、ということにな
る…。

 ところで日下氏は、未来予測の仕方の本(『すぐに未来予測ができ
るようになる62の法則』(PHPソフトウェア・グループ)なども
出し、一部では「未来予測の達人」などとも呼ばれているようだ。

 その日下氏がこの本では未来予測について次のように書いている。

「未来予測をしたいなら、いちばん簡単なのは『正しい提案』をする
ことである。正しい提案はいずれ実現する。遅かれ早かれそうなるも
のである。そのとき提案は予測だったことになる」

 荒唐無稽なように見えるものでも、提案によって現実がそちらに動
けば、その予測が実現して正しい予測だったということになるという
わけだ。

 そういう面で、本書のなかの面白い予測というか提案を一つ、紹介
しておく。それは「機密費は百倍、ODAは半分になる」というもの。

 問題になった例の外務省の機密費が「三〇億円しかないのは少な
い」。「理念のない日本のODA1兆円」を半分にして、機密費を百
倍に増やして「三〇〇〇億円にし」「機密費担当大臣」を置き、使途
は「首相が指示する」ようにせよ、と提案する。

 なぜ、そんなことを、と言うと――。
「『領収証不要の機密費が三〇〇〇億円ある』と発表するだけで世界
中の人がなびく。上手く使えばアメリカ大統領だって買える(いろい
ろ先方から相談にくる)」。それは「ほのめかすだけ」「予算を計上
してみせる」――だけでも効果がある、と言うのだ。

 何だか、今問題になっている金大中前政権下の韓国政府が、南北会
談実現の前に北に5億ドルを贈ったとされるような話ではないか。

 こういう機密費の話は、ちょっと考えれば、相当荒唐無稽、マンガ
的ということになる。

 外国から大金を大ぴらに受け取って無事でいられる政治家は、先進
国にはそうはいないだろうし、機密費が3000億円もあったら、そ
れこそ、外交に使う前に、その争奪戦だけで国内が大混乱、権力闘争
が加熱するだけのことだろうから…。
                         (以下次号)
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