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気になるこの本★ビジネス/社会/ノンフィクション★

ちょっと気になるテーマの本、いま話題になっていたり、なりそうな本、ユニークで面白そう、仕事や学習に役立ちそう、話のタネになりそうなどといった本を新・旧刊にかかわらず読んで紹介、ときに批評もしていきます。


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気になるこの本★ビジネス/社会/ノンフィクション★ 

2001/12/27


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   気になるこの本★ビジネス/社会/ノンフィクション★
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◆ ◇◇◇◆◆◆2001.12.27 <創刊号>◆編集発行RRCメルマガ編部
                                    http://www.rrc-sokudoku.com/
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 ご購読ありがとうございます。創刊号をお届けいたします。
 当メルマガは、いま話題の本、これから話題になりそうなテーマの本、ユニークな切り口で面白そうな本、仕事や学習に役立ちそうな本、話のタネにちょっとだけでも目を通しておきたい本?などの今とても「気になる本」「ぜひ読んでおきたい本」を、書評の枠にとらわれず、また新刊・旧刊を問わず取り上げていきます。
 ご愛読ご支援のほどをよろしくお願い申しあげます。
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★今週の1冊目
『ファストフードが世界を食いつくす』
 (エリック・シュローサー著 楡井浩一訳 2001.8 草思社 1600円)
                                        ※価格は本体価格(以下同)
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★ほかに取り上げる本
『狂牛病 人類への警鐘』(中村靖彦著 01.11 岩波書店 700円)
『狂牛病100問100答』(松井宏夫監修 01.12 主婦と生活社 780円)
『権力必腐』(高杉良著 01.11 講談社 533円) など。
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◆ 「食」をキーワードに

 1冊目の『ファストフードが世界を食いつくす』は8月刊で、すでにベストセラー上位にもランクされている本。それをあえてこの創刊号で取り上げるのは「食」が一段と重いテーマになっているから。
 また、同書のテーマとはいえないが、いま大いに気になる狂牛病をどのように扱っているかにも注目してみた。

 本書は帯に「マクドナルド方式が、経済、社会、産業構造の根幹を崩壊させる!」とうたっているように、マクドナルド(およびケンタッキー)に代表されるファーストフード産業の発展が、アメリカ経済、農業、畜産・精肉業やその労働現場を激変させ、また私たちも実感しているように、世界の人びとの食生活を大きく変え、その結果、特に子どもたちの健康をおびやかしている、といった実情を入念な取材により描き出している。

 著者は、ファーストフード産業の創業者たちの成功物語をかたりながら、彼らが大量生産・大量消費のファーストフード・ビジネスを成立させるために近代工場の流れ作業の原理を飲食店経営に初めて導入したいきさつなどを紹介していく。

 その大量生産方式は、ポテトやビーフ、チキンを生産する農業、畜産、精肉業にも導入された。巨大化した精肉会社の処理工場では、最大需要家のファーストフード産業の要請に応え、コストを押えるために流れ作業のラインのスピードをどんどん引き上げる。そこで働いているのは主に未熟練労働者。スピードに追いまくられているために事故が絶えず、食材に必須の清潔さとは無縁の想像を絶する劣悪な条件下での作業が続けられている、といったことなどが詳細にレポートされている。

 その結果、食肉処理工場はサルモネラ菌や大腸菌の温床になっている、と著者は指摘する。
 アメリカでは1996年7月、O-157に汚染されたハンガーを食べた子どもの死亡事故が発生(筆者の執筆動機にもなったようだ)。国の監視も無きに等しかった。クリントン政権はようやく規制や監視強化に乗り出したが、精肉業界の支持を受けたブッシュ共和党政権の誕生によって、それもほぼ白紙に戻され、国の監視はさらにルーズになっているという。

 著者は食肉処理場からさらに香料メーカーなどにも足をのばして「フライドポテト」の“味の秘密”なども探っている。

 著者は、批判するだけでなく、たとえばマクドナルドがいち早く遺伝子組み換え食品の使用をやめたことなどは評価する。
 消費者に対しては、肥満・病気になりやすい食品をとり続けることが賢明であるか否かを考えるべきときだと呼びかけ、それを変えるのは簡単な決断ですむと強調している。
 消費者だけでなく「食」に携わる人に目を通してほしい力作といえる。

◆狂牛病はいかに扱われているか

 本書は日本で狂牛病騒動が起きる前の発行。しかもアメリンビーフは狂牛病では一応「安全性が高い」ことになっている。だから本書は(日本語版も)、狂牛病騒動を当て込んだり見越して出版されたものではない。
 だが時期が時期でもあり、狂牛病は「気になるテーマ」だ。本書はそれにどう応えているだろうか。

 結論をいえば、狂牛病問題にはほとんど触れられていない(1、2ページだけ)。発生の可能性などにもまったく触れていない。しかし、直接論じていなくても、その可能性が決して低くないと判断できる材料は、牧畜産と肉処理の現場レポートのなかで随所に提供されている。

 アメリカでは、カウボーイに象徴される大牧場による牧畜がすっかり様変わりし、肥育場で短期間に太らせる“工業化”が進められ、その結果、簡単に栄養を補強できる穀物や動物性飼料――食肉加工後に残った羊や牛の残骸、さらに動物保護団体などから年間何百万トンと買い入れている犬や猫の死骸などから作られる飼料――が与えられるようになった、という。

 ヨーロッパの狂牛病騒動によって米食品医薬品局が97年8月に禁止するまで、75%の牛がそのような畜産廃棄物を飼料にしてきた。しかも豚や馬の残骸は規制の対象外で、その後も与えられ続けているという。
 ただ、肉牛は出荷が早く(生後2年ぐらい)、乳が出なくなって食肉に回される乳牛の寿命も4年ぐらい(牛の寿命は本来40年という)。その結果、食肉になるのは生後2〜4年の牛。狂牛病の潜伏期間は2〜8年だから、いま発生していなくても、安心できる状態ではない。

 狂牛病発生の可能性が直接論じられていなくても、以上のような判断材料となる現実は、しっかりレポートされている。

◆ 狂牛病を論じた本にも目を通す

 狂牛病を扱っている本が続々刊行されている。それらはアメリカンビーフをどう扱っているか。
 岩波新書の『狂牛病 人類への警鐘』(中村靖彦著)を読んでみると、元NHK解説委員(現明治大学客員教授)の著者だけに、イギリスなどヨーロッパに出かけて現地調査やインタビューを重ねて、狂牛病が発生した原因などを追求、そこから日本上陸までをジャーナリスティックに描いている。だが、アメリカの牛や畜産には、なぜかまったく触れられていない。

 狂牛病騒動後、「オージービーフ」などとともに「アメリカンビーフ」の安全性を強調するような各種の店が多数出現しているだけに、それに触れていないのでは、基本的な疑問にも答えていない、実用性の低い本ということになってしまうだろう。

◆実用性をうたう本はどうか

『狂牛病100問100答 食べていいものいけないもの』(松井宏夫監修、01.12 主婦と生活社 780円)
『牛肉を安心して食べるための狂牛病Q&A』(池田正行著 02.1 主婦の友社 780円 ※発行月は奥付による)

 この2書は、アメリカンビーフは安全かといった項目をもうけて説明している。
 ご存じのように2001年4月、EC委員会は狂牛病汚染度を4段階評価して、騒動が起きる前の日本を下から数えて2番目の「レベル3」(発生は未確認でも汚染の危険性がある)と判定した。日本の農水省は、それに反発したものの、その後、評価どおりに狂牛病が発見された。
 アメリカは、日本より危険性の低い「レベル2」(発生の可能性は低いが、まったく危険がないとはいえない)と評価された。
 それでもオーストラリアやニュージーランドのような「可能性はまったく考えられない」とされる「レベル1」とは違う。

 上掲の2書は、実用書らしく、これらの点は押えているが、踏み込んだ記述や分析は少ない。しかし狂牛病を一通り知っておこう、新聞などで報道されている知識を整理しておこうといった向きには低価格で手頃。狂牛病に関して疑問点があれば、たとえば書店でその項目に目を通し、答え方に納得できれば購入して手許に置いておけば、これからも何度も参照用に使えるだろう。


 ベストセラーになった『買ってはいけない』で名を馳せた船瀬俊介氏(共著者)の著作が、狂牛病騒ぎに合わせるように連続して発行されている。
『早く肉をやめないか? 狂牛病と台所革命』(01.10三五館 1200円)
『この食品だったらお金を出したい! 狂牛病と台所革命2』(01.12 以下同)

 この本は『買っては?』に続く2匹目のどじょうを狙う書店によって結構目立つ場所に平積みにされているようだ。
 このうちの『早く?』の方で「アメリカの肉は安全か?」という1章がもうけられ、詳しく述べられている。

 船瀬氏は、アメリカでは老廃牛などをつぶして年間何百万トンもの動物性飼料が生産され、そのうちの13%が牛のエサになっている、だから一見健康そうな牛でも感染している可能性がある、と書く(さらにアメリカでも狂牛病は発生しているが、アメリカ型狂牛病は「狂水症」として処理されている、などとも述べられている)。

 飼料に関する記述などでは『ファストフード?』と共通の箇所もあるが、なぜか97年8月の規制には触れられていない。現在も牛の肉骨粉がそのまま変わることなく与えられているという内容になっている。
 これでは前述のEC委員会のアメリカ牛に対する評価が日本より危険度が低い「レベル2」と判断されたことの説明ができないのではないだろうか。
 肉をやめるかやめないかは、消費者の判断一つだが、そのためにも、きちんとした調査や根拠、正確なデータによって、検討、論議したいものだ。

◆初出誌などのデータの明示を!

 今週の1冊目『ファストフード?』は、現場に足を運んで調べた、読み応えのあるレポートだが、元はアメリカの若者雑誌『ローリングストーン』に連載されたものだという(残念ながら日本の雑誌では最近このような批判精神に富んだ骨のある調査レポートは見かけなくなってきた)。
 ただ同書は、最初が雑誌記事だったことを明示していない。訳者あとがきで、「若者雑誌に掲載された二部構成の告発記事だったという」と、なぜか「?という」の伝聞形で書かれているだけだ。
 この扱いには首をひねらざるを得ない(これは訳者の責任というより編集側の問題といえるだろう)。

 原題は“Fast Food Nation”。日本語版タイトルには、世界に向けて書かれた本というイメージもあるが、実際はあくまでもアメリカ人向けに書かれたレポート、提言である。
 そのため、ヨーロッパの狂牛病騒動や、ファーストフーズ産業側のそれへの対応策など、私たちが抱いている大きな関心事には触れられていない。アメリカでは、まず狂牛病より現実に死者が出たO-157の方が深刻な問題だった結果ともいえるだろう。

 同書には、このように現在の日本人読者には説明不足な箇所や、逆に読み飛ばしていい、アメリカ国内だけの特殊事情を詳述している箇所も少なくない。

 日本のマクドナルドに関しては「エキセントリックな経営者」などと藤田田社長のことが簡単に触れられている程度。使用牛肉についての記述はない。
 日本マクドナルドは、藤田氏が「わが65円バーガーに勝算あり」(『週刊ポスト』00.2.4号)で発言していたように、材料の牛肉は世界で一番安いところから買い付ける方式をとっているという。したがって欧米からも購入していたはずだが、同社はいまは「レベル1」のオーストラリア産牛肉(オージービーフ)を使用していると強調している(アメリカのマクドナルドは100%米国産牛使用)。
 また日本の店舗や調理上のクリーンさは過去何度も強調されきた。

 だから『ファストフード?』の記述のどこまでが、日本に当てはまるかは不明だ。

 ファーストフーズ産業は、世界のどの国に行っても同じ味のハンバーグやポテトが食べられるという「食のグローバリゼーション」を押し進めた。それがいまは味はともかく、原材料の牛肉が国によって違い、そこが消費者の関心の的にもなっている。

 それだけに日本においても、狂牛病問題に限らず、同書のような徹底したレポートの出現を期待したい。
 ファーストフーズ産業側には、同書などに目を通して、反論したり、積極的な情報公開を行ってほしいと思う。

◆文庫版『権力必腐』について

 初出誌をしっかり明示してほしいということから、最近文庫化した高杉良氏の『権力必腐 日本経済混迷の元凶を糺す』(講談社)に触れておきたい。
 高杉氏は、ベストセラー小説『金融腐食列島』などの著者。この文庫は、書き下ろしではない。元の単行本が「光文社1998年刊」と記されている。高杉氏初の評論集というが、初出誌の方は記載されていない。

 同書は、元々が雑誌などに掲載された多くの文(「老害財界人は引退せよ」などの評論や筑紫哲也氏、佐高信氏との対論など)を収録したもの。文庫版にはその説明もない。
 そのため、類似の記述や項目、いつ書かれたものか不明のものを読んで読者は困惑することになる。

 この種の評論は、いつ書かれたかも重要な要素のはず(小説でも『金融腐食列島』は第一勧業銀行の不正融資事件などを「予見した内容」として話題になった。発表時期が重要な評価材料になっている)。
 佐高信氏の解説も初出誌には触れていない。単行本の解説を転用しただけだからだろう(単行本には別に初出誌のデータが記載されていたはず)。文庫化に当たっての説明・解説などもついていない。

 同書に収録されている評論の多くは『金融腐食列島』発表から第一勧銀事件の発覚、映画化?などが続いた97年から98年にかけて書かれたものだろう。高杉氏ならでは鋭い筆鋒の評論も少なくない。
 ところがそこに何の説明もなく、たとえば「『命燃ゆ』の取材で、一九八二年十一月中旬に中国を旅行した」と始まる文まで入っている。
「はて?」と首をひねりながら最後まで読めば、いつ書かれたものかは想像もつく。だが実際の記載がないのだから困惑状態は続く?。
 編集側のミス(あるいは手抜き)といわざるを得ないのでは。

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【編集後記】
 狂牛病は現在進行形の問題だけに、1度読んでモヤモヤが晴れるような本はまだ出ていない。既刊本のデータは、すぐ陳腐化しかねない。だから狂牛病問題など、「食」に注意を喚起するような本は、これからも続々出版されるでしょう。
 それとは別に本の売れ行きが全体的に大きく落ち込んでいるのに、新刊がどんどん出されています。本号で取り上げた本のように、内容がしっかりしているものでも、最終段階においてデータを欠如するなど、基本的な目配りを欠くと「粗製乱造」といわれかねない本になってしまいます。
 読者も、批評・批判精神をもって、それらの点も指摘していけば「粗製」の傾向に多少はブレーキがかかるのではないでしょうか。
 本メルマガでは、本筋の記述以外のことでも、「気になる点」はどんどん指摘していくつもりです。         (編集長 山本恵之)

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