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最終発行日:
2004-09-25
発行部数:
32
総発行部数:
5836
創刊日:
2001-10-30
発行周期:
週刊
Score!:
-点

おはなしの宅配便「ものかき手ぶくろ 番外編 3」

発行日: 09/25

  ***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***


          おはなしの宅配便   No.98 2004/9/25
        http://www7.plala.or.jp/monogatarikan/
        本日は「ものかき手ぶくろ」番外編その3


  ***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***〜***

☆☆ またたびさんから勇気と技術を受け継いだ、その後は… ☆☆

おもしろいお話を書いてくれる不思議な手ぶくろをひろったことから、
少女は、おばけ作家が成仏するよう、物語を書かされるハメになりました。
そのお役目も終え、おばけ作家のまたたびさんから、
ものを書いていくための勇気と技術とを受け継いだみちほが、
次に直面したことは、なんでしょう?

番外編の初回では、主人公のみちほのところへ、同じく金の手ぶくろを
はめてお話を書いたことのあるゆうかがやってきて、
事件のいきさつを書いたノートを、おいていきました。

番外編その2では、
このノート、読みたい!けど、なんだか、動揺はげしくて
ドキドキしまくり。結局、みちほは読めません。
心がごにょごにょで、ぐちゃぐちゃ。なぜか複雑な心境のみちほです。
またたびさん、帰ってきて! ここにいて、愚痴を聞いて!
それから、わたしをほめて!なんていう気持ちを、
またたびさんにぶつけるかのように、手紙を書きます。

だけど、もはやその手紙はどこにも出しようがなく、みちほ本人も
バカバカしくなってしまいました。
で、今回は場面が変わっての、つづきです。


  +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

          ものかき手ぶくろ 番外編 3

  +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

 大声を上げたっけかな?
 わたしは穴に落ちてしまった。落ちたことは覚えている。
 気絶したんだろうな。けっこう深いから、腰を強く打った。ずきんと痛
む。うげ……動かしにくい。
 大きな穴。こんな草っぱらに、どうしていきなり開いてるわけよ。昔、
井戸だったとか、そういう場所かなあ。
 空が、丸く切り取られている。
「きゃっ!」
 足を動かすと、そこにだれかが横たわっている感しょく。暗いからよく
わからないけれど、こわい。やだ、まさか死体じゃないでしょうね。
「……うう、あああ……」
 生きてるみたい、よかった……だけど、だれ?
「あの、だれですか?」
 おそるおそるたずねた。
「みちほってば……あんた、何、言ってるのよ、……いたたたた」
「ゆうか! わたし、あんたといっしょに、ここに落ちたわけ? でも、
わたしたち、こんなところで、何をしてたの?」
「学校のオリエンテーション中だったでしょう? わたしたちおんなじ班
になってさ、みちほったら、全然おぼえてないわけ? あっちにすももみ
たいな熟した実を見つけたから、こっそりとりにいこうって言ったの、あ
んたじゃない!」
 相手を小バカにしたようにズケズケとしゃべる、これまでのゆうかその
もの。なんだか、かえってほっとする。
「わたし、腰……いたたた、ゆうかも、腰、打った? 体、だいじょうぶ?」
「頭もちょっと打ったわ。足、すり傷あって血が出てる。でも、まあだい
じょうぶよ。みちほも、死んでなくて何よりね」
「そっちこそ。さ、ここから、どうやって出よう? かなり深いね。ゆう
か、動ける?」
「うん。暗いから、わかりにくいけど。これってかべをつたっていけるっ
てかんじかな?」
「だめだよ、かべをつかもうとしても、かたい土みたいなかんじでさ、ひ
っかかりもなくて」
 また上を見る。さっき丸く開いていた空は、三日月型にじわじわとへっ
てきている。
「ね、みちほ、ここ、ふたされてる。さっきより、暗くなったじゃない。
え、どうしてよ、わたしたち、ここに閉じこめられちゃうじゃなーい! 
ねえ、だれかー、わたしたち、ここにいますーーっ! ふた、しないでよ
ーーーっ!」
 心臓が、ドックンドックン。うるさく感じるくらい大きく打ってる。
 穴の上にいる人間に、わたしたちのことを気づいてもらわなければ、殺
されるかもしれないんだ。
 このまま、こんな暗いところで閉じこめられて、だれにも気づかれない
で、死んでいく!? むざんな死体になったわたしたちを、お父さんやお
母さんが見る? ええーっ、ええーっ、冗談じゃないわ。だれかーーーっ!!
 必死でさけぼうとしたけれど、気がどうてんして、声が出なかった。
 気がつけば、ゆうかは、ふたを閉めようとする人に向かって、さけんで
いた。それから、わたしに向かって、イラだった声をあびせる。
「……もおっ、みちほ、何してるのよ。みちほも、いっしょに言ってよー。
まったく、なに、ぼーっとしてるのよ。ねえ、そこーっ、閉めようとして
るひとーっ、ちょっとー、わたしたち、ここに落ちたんだってば! ちょ
っとー、聞こえてるんでしょう!」
 空は、バナナ型の三日月というくらいにしか開いていない。
「ねえ、そこの人! 聞こえてるんだったら、ちょっと顔くらい、出しな
さいよーっ!」
「どーれ、いせいのいい女の子だ。はっはっは。そこに、何人いるんだー?」
 野太い男の声が、穴の底までとどいた。
「ふたりよ、ふたり。ちょっといきなり落ちてしまって、けがもしてるの
よ。助けてくださーい。わたしたち、学校で……」
 ゆうかのきちんとした説明をはばむように、男は笑いだした。
 それから、ふたをまたすこし開けて、底をのぞきこもうとした。黒いシ
ルエットは、肉づきのよさそうな、大ぶりなものだった。
「おじさーん。早くしてくださーい。ここから出るのに、何か、つかまる
ものとかー……」
 男は、くっくっくっと笑いをかみつぶしたような小声で、不気味に笑い
つづけている。
「おじさーん。どうして笑ってるのよ。笑ってる場合じゃないわよ。あん
たがふたをしめちゃったら、わたしたち死ぬところだったのよ。どうにか
してくださいってば!」
 それでも、またふたが閉まろうとする。
「ぎゃーーーっ! おじさん、わざと、そんなことをやってるわけ!? 
わたしたちを、見殺しにするつもりなのーっ!」
 わたしたちは、口々に、全力でさけんでいた。このまま、ふたを閉めら
れて放っておかれたら、ふたりとも、酸欠とか飢えで死ぬことになる。そ
れを“わかってやる”おとなの人間がいるんだ。なんて、なんて……なん
てこと。
 殺されるかもしれない恐怖というのを、この瞬間、はじめて味わった。
「ぎゃーっ! おじさーん、ねえ、あんた、自分のやってること、ちゃん
とわかってるのーっ!」
 ゆうかは、さけんでいた。わたしは、腰が抜けたように、かべにもたれ
て、目を見開いている。
 男は、うっすらと開けているすきまから、底をのぞきこんで言った。
「クモは、巣をめぐらせて、えものがやってくると、つかまえて食べる。
それを、クモって悪いやつだと思って見たことあるか? 自然界のことは
気にならんだろう。おまえ、豚肉食っても、豚を殺せないだけで、いろい
ろな命うばって、平然と生きてるだろ? 毎日、何か、血を流したものを、
食ってる。そうして命をつないでいる。おれは、人を食うんだ。こうして、
甘い実のなる木を植えて、せっせと穴をほって、そこに落ちた者を食う。
そうして、生きている。文句があるか。文句があったら、クモにも言え、
おまえ自身にも言え、親にも言え、友だちにも言え。だれもが生きるのに、
何かに、血を流させて、食わねばならんのだ」
「おじさーん、あったま、おかしいんじゃない? 人間はねえ、人間を食
べないんだよ。共食いはルール違反なんだよ。どうして、おしゃべりがで
きる相手を殺して、食べられるわけ? 豚だって、話ができたら、人間は
絶対食べないと思うよ。それに……」
 ゆうかは、男と必死になって話していた。
 わたしは腰をぬかして、立てないだけじゃなく、言葉もまともに出なく
て、あわあわしているだけだった。
「おまえは、話ができるんだな。話ができる人間は、共食いしてはならな
いのか。そんなことは一度も、だれにも言われたことがないからな。おれ
は、ずっとここで、穴をほって、人を食って、生きている。死ぬまで、そ
ういうことをしつづけなきゃならん。おもしろくもなんともない。ただ、
生きているから、生きつづけなくてはならない。ほかに何もやることがな
い」
 ゆうかは、ふうん、おじさんは、退くつな人なのねー、とせせら笑うよ
うに言った。
 男は、案外、ドギマギしているかのように見えた。ふたりがいる穴の底
をもっとのぞきこもうと、ふたを開け、なかに光が入るようにしている。
「わたしのおしゃべりはね、ちょっとおもしろいわよ。おじさんが生まれ
てから、これまでの何十年間か、退くつしていた時間を全部うめられるぐ
らいのことができる。わたしの特技なのよ。おしゃべりをして、人を楽し
ませるのが。この人間は、食べるより、能がある、って思ってもらえたら、
ここから出して、家に帰してもらえる?」
 ゆうかは、みちほとさけびあっていたときよりも、ずっと落ち着きはら
って、男と取り引きをはじめていた。あまりのかしこさ、というか、勝負
どきょうとかいうようなものに、あっけにとられる。
 ところで、ゆうかには、人食い男の退くつな人生を穴うめできるくらい
に、おもしろい話なんて、本当にできるんだろうか? みちほは、そう思
っていた。
「よし、わかった。おまえは、食べるよりもましな使いみちができるやつ
なんだ、と言っているんだな。よし、チャンスをやろう。何か、しゃべっ
てくれ。それがおもしろければ、逃がしてやってもいい。たいしたことが
なければ、そのときはふたりとも、あきらめて食われろ。よっぽどよけれ
ば、ふたりは逃がしてやるが、まあまあだったら、ひとりは食われろ。ふ
たりも逃がすということは、今日のおれの腹がすくからな。草よりは、肉
のほうが、うまい……」
 ゆうかは、そっきょうで物語を作りはじめた。
 落ち着いた、やさしい声をだし、人間を共食いしなくてはならない男を、
物語のなかに、うまく登場させていた。それは、ゲラゲラ笑えるようなお
もしろい話でもなければ、涙をそそるような感動の話でもない。けれど、
男の心を物語にぐっと引きよせるための、さまざまな工夫がほどこされ、
ゆうかなりの全力というものが、伝わってきた。
 まさに食うか食われるかの、しんけん勝負だ。
 これでは、ゆうかが助かり、自分が食われるのは確実じゃないの。
 どうしたらいいのよう。わたしも、食べものになるより、能のある人間
だっていうことを、どういうふうに伝えたらいいんだろう? もともと、
わたしに、能なんて、本当にあるんだろうか。
 ゆうかは、ほほに玉の汗を光らせながら、話を作って、語りかけている。
「わ、わ、わたしにも……」
 あわてて、ゆうかに割って入ろうとしてしまった。
 彼女の次に、わたしにもお話をさせてください、とたのもうとしたのだ。
けれど、とっさに引っこめた。これでは、昔話とかによく出てくる二番手
の「いじわるじいさん」じゃないか、と思って。ゆうかの話を途中で切る
というのも、命ごいには、逆効果はなはだしい。
 ゆうかの話は、つづいている。彼女もきんちょう感いっぱいで、汗をか
きまくっているようだ。熱気がこっちまで伝わってくる。「あ、この話っ
て、先が見えて、つまらない」と思うようなものでも、彼女は引かない。
がんがんと話しつづける。
 ゆうかに決着がついたら、次はわたしにもチャンスをください、とつげ
よう。
 みちほは、そう思っていたが、なかなかゆうかの話は終わらない。男も
ときどき、うなずいたり、ため息をついたり、とにかく彼女の話に聞き入
っている。この男、ただのアラクレ者というか、人食い人間でもないんじ
ゃないか。しっかり人の話に耳をかたむける知性のようなものがあるんじ
ゃないか。
 ああ、不安。
 ゆうかくらいにでも、この男を引きこめる何かを話せるだろうか。そん
なお話を作れるだろうか。いまの、この、わたしに。
 ゆうかの話が、だいたい終わりにさしかかった。彼女も、くたくたのよ
うだ。立ってしゃべっていたのだが、ふらっとひざを落とした。
「もう、食べるんなら、食べちゃって。もう……最後のところを、しゃべ
る力が残ってないの……。のど、かわいて、声も、出ない……とことん、
くたびれたわ……」
 ゆうかは、両うでをついて、うなだれた。
「よし、おまえは、上げてやろう。水を飲め。それから、最後のところを、
話してくれ」
 男は、そう言って、ふたを開け、カウボーイが使うような太いロープの
投げ輪を、ゆうかの体に通し、おどろくべき力でぐいぐいと引き上げた。
ゆうかは、何の気力も残されていないかに見えて、ロープが投げられると、
ぐいっと手でにぎりしめ、足でかべをけって、上へとあがっていった。
「みちほ、あと、絶対助けるからね」
 ふりむきざま、ゆうかは小声で言ったけれど、ひたすらおそろしかった。
彼女の調子のよさを、信じられなかった。
「ゆうかーっ!」
 名前だけ口に出したものの、じつは、ひきょうものーーっ!と、心のな
かでさけんでいた。
 ゆうかが、男に助け出されたあとは、また、ふたがぴたっとしまった。
 さっきのようなじりじりとした閉め方ではなかった。一瞬にして、穴の
なかは、黒一色となってしまったのだ。
「う、うぎゃーーーーーっ! ぎゃーーーーーっ!」
 がばっと体を起こした。
 ああ、夢。
 へっ、くだらなーい。
 でも、わたしはそこで、生き残ることができなかった。負けていたから
だ。
 やはり、ちゃんと、ゆうかがおいていったノートを、読まなければ。
 まずは、落ちついて、読まなければ。
 わたしは、大きな深呼吸をした。

          *

                              つづく

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  ☆2004/9/25        98号(週刊発行)
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