文学

本格派小説家のエッセー

「第三章へ」「コザが燃えた夜」「桐の小箱」を上梓した小説家が  出版前に送る珠玉のエッセー。

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小説家のエッセー

2005/05/08



          喫茶店での和み

  血糖値を下げるために、週に3度、ジム通いを続けている。
  天気のいい平日はOsaka-walk。
  昨日、曇天だったが、とても清清しい気持ちになった。
  日本橋駅南界隈を例の大股の急ぎ足で通過しようとしていた
  際、中古ビルの一階部分にある喫茶店前で足が止まった。
  店内を覗き込む。私と同年輩の女性がカウンター席にいるの
  が見えた。客で立て込んでいないらしく、落ち着いた雰囲気
  そうなので、入り、カウンターに座る。
  昔の癖で、しぜんと、バックバーを眺める。
  ジノリらしいカップがたくさん置いてある。
  「レーコーを」
  「モーニング・トーストは?」
   黙ったままで首を横に。
  15分程度だったが、会話が弾んだ。20年もここで営業してい
  るというママさんは、私がときどき飲んだクラブのママと知
  り合いとのこと。そのクラブの名は、飲み屋を経営している人
  だったら、知らない人は「もぐり」と評されるだろう。
  ミナミでいちばん規模の大きいそのクラブのママも私と同年
  輩。現役のオーナーママで、和装で接客するのが常だ。
  そんな彼女には言い話がある。
  いつだったか、開店X周年の案内状を久しく姿を見せなくなっ
  ている馴染み客に手紙で案内したところ、数日後、達筆な文と
  壱万円が同封された返事が届き、「::実は、主人、二年前に
  病死しました。生前であれば、喜んで行かせてもらったことと
  思います」とあり、一万円は、開店X周年の祝いとして、生花
  代の少しにでもお使いいただければ:と、結んであったという。
  その話に、私も、喫茶店のママも、いまさらながらに心を和ま
  せた。

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創刊日:2001-09-20  
最終発行日:  
発行周期:随時。  
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