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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み <<中国発「大不況」に備えは出来ていますか?

2019/01/25

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成31年(2019年)1月25日(金曜日)弐
        通巻第5968号    
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中国発「大不況」に備えは出来ていますか?
  発端はアップルのスマホ売り上げ急減、株の大下落からだった
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 凄まじい勢いで日本の景気が悪化している。米国も悪化の兆しがでた。
 元凶は中国だが、この中国の経済構造にビルトインされたシステムの下で成長してきたアジア諸国が軒並み不況ムードに蔽われた。日本経済も例外ではない。

 「アップル・ショック」というのは2019年1月4日、ティム・クックCEOが「中国でのスマホの売り上げが10%落ち込んだ」と発表したことを受けて、同社株価は9・22%の大下落、半年で35%強も下げた。

このためアップルばかりかスマホ関連企業が悲鳴を挙げた。とくに香港株式は10%の下落となり、日本でも部品、ICなどを供給している多くのメーカーの株価が5−8%も下がった。目立った下げが日本電産、京セラ、村田製作所などだったことは投資家ならずとも周知の事実だろう。
 鵬海精密工業は河南省鄭州の工場で五万人をレイオフし、代替工場をインドに移転して稼働すると発表したため、同社従業員が騒ぎ出した。
 
 景気後退というより、状況はもっと悪い。
中国の就職戦線。ハイテク技能を持つ理工系ですら、応募倍率が32倍という難関になり、これまで会社を移るたびに給与を増やしてきた「トラバーユ・ジャンプ組」も「向こう十年はいまの会社にしがみつく」と言う。リクルート代理店、人材スカウト会社も閑古鳥である。

 或るコンピュータ企業は2018年八月まで毎月、技能者を8人平均で雇用し、輝かしい未来を約束されたかに見えたが、十二月に突然半分の社員が解雇された。

華字紙が大きく報じた事例はベンチャーの「マインドレィ社」(本社深せん、従業員七千名、NY上場の優良企業)の新卒内定者取り消しというショックだった

マインドレィ社は急成長を続けてきたため、2017年には430名の新規採用があった。18年には中国全土50の大学から成績優秀の理工系学生485名を採用した。ところが昨師走になって、このうちの254名を内定契約破棄、補償金として約束した給与の三分の一を支払うとした。
若者たちの未来は真っ暗、この先、どうなるのか?

 夥しい不況の実例が『サウスチャイナ・モーイングポスト』(1月24日)で報じられている。
ベンチャーキャピタルは2018年の年初と比較して第三・四半期には25%の激減ぶり、たとえばバイクレンタルのベンチャー・ビジネスは50都市で派手な営業を展開したが、倒産が目立ち、1400万人のユーザーが補償金を返せと訴えている。

とりわけ厳しい環境に転落したのはアリババ、バイドゥ(百度)と並ぶ御三家のテンセントに代表されるゲームソフトのベンチャーだった。
カジノ・ゲーム開発ベンチャーなど30%の落ち込みとなった。いよいよ中国経済の破綻は秒読み、備えはできていますか?
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(下段に「読者の声」「書評」福島香織さん、樋泉克夫さんのコラムがあります)
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  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
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 監視システムは顔認証で六万人のスタジアムから指名手配犯を見つけ出した
   SNSの監視によって潜在的な反党人物を割り出して家族に圧力をかける

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坂東忠信『移民戦争』(青林堂)
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 元警視庁通訳捜査官の坂東さんの新作である。明日にも発生しそうな大量難民だが、我が国政府は『移民を増やす』と頓珍漢極まりない危険は方針で暴走を始めた。
 欧州でいまおきていることを対岸の火事として高みの見物、明日は我が身という警戒心は稀薄であり、移民法があっという間に国会で成立したことに保守の政治家はほとんど抵抗を示さなかった。
 安倍政権をどちらかといえば支持してきた多くの保守層が、見限った瞬間でもある。したがって今後おこることはナショナリト政党ではないか。ドイツでフランスで「極右」と左翼ジャーナリズムから批判される愛国者政党は着実に、いや飛躍的に勢力を伸ばし、イタリアで、オーストリアで政権の座についた。
 全ては移民への反感ばかりか、実際に移民に職を奪われたか、賃金が下がってしまい、自分の問題として移民問題を真剣に考えれば、ナショナリストが主張していることが正しいという流れになったのである。
 坂東さんは、対策提案のユニークさにかけても定評があるが、中国の断末魔がいずれ百万の難民を発生させると氏は大胆に予測し、しかも多くが『偽装難民』となるだろうと予言する。
このいやな未来への対策についての坂東氏のアイディアは本書によっていただくとして、本書の余滴部分で、大事なポイントが幾つかある。
 中国の顔認証技術は、交通警察官のサングラスにも装填されていることから、世界一だろうが、14億人のスキャンリサーチが可能の段階まで発展しており、「その確度は99・8%。江西省の南昌市警察の発表では、このシステムにより六万人が参加する音楽フェスティバルで指名手配犯を割り出し逮捕した」(中略)「貴陽市では顔認証システムによりBBC(英国放送協会)の記者を発見、当局は彼を7分で身柄拘束しています」
 そればかりではない。ビッグデータによって、プライバシーは当局に筒抜けとなった。
「個人メール、クレジットカード消費金額、ファイナンスリース、ホテルの部屋、旅行、結婚・恋愛、ジャンル別情報」等々によって「ネットゲームで一日に十時間を超える人物は『ネットの暇人』としてカテゴライズされ、またネットでおむつを買う人物は『社会的責任感を期待できる人物』として認識している」そうな。
 SNSを見張り、すこしでも反党的言辞を吐く人物がいたら、家族を脅す。
 もう一つ、面白い箇所がある。ファーウェイ誕生秘話である。
 中国産業部長だった呉基伝が、「巨竜通信」「大唐通信」「中興通訊」「華為技術」と命名して、これらを横に並べると「巨大中華」と「龍唐興為」となる。
「龍たる唐を興して巨大中華と為す」と読める、このネーミングにも中国の隠された野心が存在している。
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■読者の声 ☆どくしゃのこえ ★READERS‘ OPINIONS
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(読者の声1)人種差別撤廃提案100周年記念国民集会のお知らせです。
 1919年2月13日、日本政府はヴェルサイユのパリ講和会議における国際連盟規約を草案する委員会で、人種差別の撤廃が規約に盛り込まれるように提案しました。
米英などの反対に遭い実現しませんでしたが、その後の歴史に大きな影響を与えた画期的な提案でした。
 その百周年、2月13日に記念の国民集会が下記の通り開催されますので、ご案内します。皆様のご来駕をお待ちしています。

・日時:平成31年2月13日(水)17:45開演(17:00開場)
・会場:憲政記念館講堂 半蔵門線・丸ノ内線永田町駅2番出口、有楽町線1番出口 
・来賓あいさつ:山田宏参議院議員
・講演:
加瀬英明(外交評論家)人類最大の革命は「人種差別撤廃」の実現
頭山興助(呉竹会会長)無名烈士の壮挙
山下英次(大阪市立大学名誉教授)
    「日本の人種差別撤廃提案100周年」戦勝国史観を覆すとき
藤田裕行(二宮報徳連合代表)ジェラルド・ホーン『人種戦争』の意義
茂木弘道(「史実を世界に発信する会」 代表代行)
     大東亜会議〜世界初の人種差別撤廃宣言
高橋史朗(明星大学教授)人種差別心理学の典型例としての「菊と刀」
ぺマ・ギャルポ(政治学者)チベットにおけるエスニック・クリンシング
トゥール・ムハメット(日本ウイグル連盟代表)中国のウイグルジェノサイド
・代表発起人・発起人
   http://www.sdh-fact.com/CL/100u.pdf
・参加費 1000円
・チラシ:http://www.sdh-fact.com/CL/100o.pdf
       (「史実を世界に発信する会」 )
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1848回】         
――「支那はそれ自身芝居國である」――河東(6)
  河東碧梧桐『支那に遊びて』(大阪屋號書店 大正8年)

        ▽
 数千年の歴史と文明を徒に誇りにはするが、この国に過去はない。
極論するなら、彼らにとっての過去は、自らの立場を補強するための方便に過ぎない。確かに歴代王朝の歴史を綴った正史をはじめとして膨大な歴史書群は残されているが、そこに記された史実は真偽を問う前に、専ら善悪が基準となって採用されているのである。

  なによりも道徳が基準となって史実が判断されるから、勢い荒唐無稽な議論が罷り通ってしまう。
先人の営みを道徳によって裁こうというのだから、どだいムリな話だ。

  たとえば文革時、「毛主席の親密な戦友」と持ち上げられ党規約で毛沢東の後継者とされた林彪ではあったが、権力闘争の果てに遂には毛沢東に対する叛徒とされ抹殺されていた。抹殺の理由として挙げられた公式的見解に「林彪は孔子の熱心な信奉者」が加わる。

  林彪の書斎を捜索すると「克己復礼」の4文字を発見した。それさえも怪しいが、林彪のモットーは「克己復礼」と断定されてしまう。「克己復礼」は孔子の封建思想の柱であればこそ、林彪は封建社会再興を狙い、毛沢東が目指す社会主義社会建設に反対した。いいかえるなら毛沢東思想による道徳律に照らして悪である孔子の考えを信奉したがゆえに、問答無用で林彪は悪というリクツだ。もうそうなったら最後、林彪の一生は凡てデタラメ・インチキで毛沢東に反対する陰謀で終始していたとされて一巻の終わり。正直な話、林彪が本当に孔子を信奉していたのかなどといった考察は、この際、一顧だにされない。

 20世紀後半の社会で、共産党独裁政権内の権力闘争において政敵抹殺の正当性の論拠が古代社会に生きた“聖人”というのだから、奇妙と言う他はない。林彪批判の論拠に孔子を持ち出すことは、たとえるならアメリカでトランプ大統領の政治姿勢を非難するに当たってワシントンやリンカーンを引っ張り出すようなものだろう。どう考えても中国以外では通らない屁リクツの類だろうに。

 それにしても林彪批判の材料にされるとは、孔子サマも浮かばれまい。
 じつは文革時代、孔子は諸悪の根源であり、封建王朝・封建搾取のイデオローグであり、有史以来の民族最大の大悪人と蔑まれ否定されたものだ。「封建王朝に『至聖』などと崇め奉られる孔子ヤロー」を断固として許すわけにはいかない、というのだ。ところが現在では孔子学院、孔子平和賞(まだ続いているのか!?)など共産党政権の正統性を補強するための“ツール”として重用されている。時に地獄の門の入口にまで墜とされ、時に天高く持ち上げられる。孔子サマとしてもタマラナイ。嗚呼、妄言冷血、鮮ナシ真・・・。

 やはり孔子サマにゴ同情申し上げる次第であると同時に、じつに身勝手な屁リクツを捏ね繰り回す民族であることを改めて心に牢記しておきたいもの。であればこそ、こういった思考回路を持つ方々と歴史認識を一致させようなどと、まるで太陽を西から昇らせるに近いほどの不可能事と心得ておくべきだろう。

 閑話休題。
河東は旅に古くからの舟を利用したが、なかでも足蹴船と呼ばれる原始的な様式の舟に興味を持つ。

「此足蹴船は、禹の治水時代に人間經濟から割出した進歩した便法であつたものであらう、それが其のまゝに進歩もせずに保留されてゐるのだらう。一方に蒸氣機關や瓦斯エンヂンがとめ度なく發達して行く世の中に、南洋の土人のそれと同じやうに、神代に近い物の其の儘の面影を見得るのを、寧ろ一個の軌蹟としてよりも、文化運動中の有り勝な事相として、反進化論にも相到せしめらるゝものだつた。總ての過去を葬るに吝かならぬ支那人にも、それと兩極端な思想が存することが、別な興味を惹くのでもあつた」という。
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 福島香織(ジャーナリスト)のチャイナ・ウォッチング
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台湾をめぐって何かが起きるかもしれない 
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                        福島香織(ジャーナリスト)

 台湾をめぐって何かが起きるかもしれない  ほとんど恫喝、習近平の危うい台湾政策【JP PRESS:2019年1月24日から転載】

 習近平が2019年初頭の「台湾同胞に告げる書」40周年記念行事で発表した台湾政策がかなり激しい。恫喝を交えながら一国二制度による「平和統一」を台湾政府に迫る内容だった。
 もちろん、江沢民の台湾政策(江八点)の方が、武力統一を強調していたという意見はあろう。だが江沢民は「できるだけ早く」といった抽象的な期限しかいっていない。一方、習近平の演説には、あきらかに自分の代で台湾との統一を実現するという強い意思が感じられ、しかもそれをやりかねない中国内外の情勢も見てとれるので、怖いのだ。
 この脅迫めいた呼びかけに蔡英文はきっぱりと反論。はっきり「92年コンセンサス」(中台が「一つの中国」原則を確認するという合意)を認めない立場を強調した。昨年(2018年)の統一地方選の惨敗で、党内外から批判を受けていた蔡英文は、その対応により支持率が盛り返した。やはり恫喝は台湾人の反感しか呼び起こさない。
 だが、蔡英文政権の支持が上がると、中国との対立姿勢がなおさら先鋭化してくるだろう。しかも米国も台湾に急接近。今年、台湾をめぐって何かが起きるかもしれない、という予感に満ちている。

◆歴代指導者が発表してきた台湾政策

 習近平の台湾政策とはどういったものか。その前に、習近平が大晦日に行った恒例の「新年のあいさつ」で、必ず冒頭に入れていた香港、マカオ、台湾同胞および海外華僑同胞への祝賀が入ってなかったので、おやっ? と思った人も多かっただろう。一部では、香港、マカオはもはや取りたてて挨拶するほど特別な存在ではない中国の一地方都市に成り下がったからだ、と囁かれた。では、台湾も無視していいほど中国化が進んでいると思っているのか。昨年の台湾統一地方選では与党民進党が惨敗で、蔡英文は党首を引責辞任、行政院長の頼清徳も辞任しており、蔡英文政権など相手にせずともいい、と思ったのか、などと話題になった。

 だが年明け1月2日、習近平は「台湾同胞に告げる書」40周年記念行事で台湾に対する強烈なメッセージを発する。
 「台湾同胞に告げる書」は1979年1月に?小平が発表した国共内戦後初めて中華民国に対し軍事的対峙を終結させ平和統一を呼びかけた文書である。その後、歴代指導者は必ず任期中に自分なりの台湾政策を発表してきた。1981年全人代常務委員長だった葉剣英が発表した「台湾平和統一に関する九条方針政策」(葉九条)や、83年に?小平の6つの主張(?六条)、1995年江沢民が発表した「祖国統一大事業促進を完成し奮闘を継続する」ための8項目(江八点)、2008年暮れに胡錦濤が発表した「手を取り合って両岸の平和的発展を推進し、中華民族の偉大なる復興を一緒に実現する」ための6項目(胡六点)だ。

 江沢民の江八点は武力行使を放棄しないことを強調。だが当時の台湾総統・李登輝が両岸の政治分離の現実や民主促進など6つの主張を含む反論(李六点)を発表し、これに怒った江沢民が武力威嚇姿勢を打ち出して台湾海峡危機を引き起こした。
 一方、胡錦濤は胡六点で両岸の平和的発展に重点を置き、台湾の現実を考慮した対話や融和政策を呼びかけた。もちろん胡錦濤政権は台湾が独立を宣言した場合に非平和的手段を取ることを合法化する「反国家分裂法」(2005年)を制定し、それをもって対台湾強硬派とみなす人もいるだろうが、これは当時の陳水扁政権に独立宣言をさせないことを目的としており、本当の狙いは現状維持であったと見られている。だが、結果的に親中派の馬英九政権を誕生させ、胡錦濤政権時代が一番台湾人民の心を中国に引き寄せ、中台統一に一番現実味が出た時期でもあった。

◆「習五条」から伝わる習近平の野望

 さて習近平は台湾政策として5項目(習五条)を挙げた。簡単に内容をまとめると、以下のようになる。
 
(1)平和統一の実現が目標。台湾同胞はみな正々堂々とした中国人であり、ともに「中国の夢」を共有できる。台湾問題は民族の弱さが生んだもので「民族復興」によって終結する。
(2)一国二制度の台湾版を模索。92コンセンサスと台湾独立反対という共同の政治基礎の上で、各政党各界の代表者と話し合いたい。
(3)一つの中国原則を堅持。中国人は中国人を攻撃しない。だが武力行使放棄は約束しない。外部勢力の干渉と少数の台湾独立派に対しては一切の必要な選択肢を留保する。
(4)経済融合を加速させる。両岸共同の市場、インフラ融合を進める。特に馬祖・金門島のインフラ一体化を推進する。
(5)台湾同胞との心の絆を強化。台湾青年が祖国で夢を追い実現することを熱烈歓迎。

 武力行使放棄を約束しないという恫喝表現はじめ、江八点でも使われている表現が多いが、江八点よりも激しく感じられるのは、全体の文脈ににじみ出る、自分が権力の座にいるうちに何としても台湾を併合してみせるという意欲だろう。
 たとえば前言で両岸関係を振り返るにあたって「70年来」つまり建国以来という表現を5回以上繰り返し、過去の指導者の台湾政策の流れにほとんど触れず、自分の意志を強調し、いかにも自分こそが建国以来の中国人民の願いであった台湾統一を実現する当事者たらんという文脈で「祖国統一は必須で必然」と強く訴えている。しかも、習近平が2049年までに実現すると掲げている「中華民族の偉大なる復興」プロセスで台湾同胞は欠くことができない、としている。「中華民族の偉大なる復興」は習近平個人独裁確立とセットでタイムテーブルが設定されていることを考えれば、そこに自分の任期中に台湾統一を実現させたいという野望が見て取れるだろう。

 また「一国二制度」を台湾に適用する考えは?小平から続いているものだが、トウ小平時代の「一国二制度」と今の「一国二制度」が指す状況は全く違うだろう。「一国二制度」は今の香港の現状をみれば、決して2つの違う政治・経済システムが1つの国家の中で運用されているという意味にはなっていない。香港はほとんど完全に中国化され、司法の独立も経済の自由も「共産党の指導の下」という枠組みの制限がついている。共産党が許す範囲の司法の独立であり、経済の自由であり、自治である。もはや特別行政区の「一国二制度」は中国国内の自治区の自治と同じで、完全に意味のないものになっている。なので、習近平がいくら「統一後の台湾同胞の私有財産や宗教信仰、合法権益は十分に保障する」と言っても、それが嘘であることは香港を見ればわかるのである。

 また江沢民も使った「中国人は中国人を攻撃しない」という表現も、台湾人自身の過半数から8割前後が「自分は台湾人であって中国人ではない」というアイデンティティを持っている現状では、台湾にとって何の安全の担保にはならない。むしろ中国人は中国人を攻撃しないが、台湾人ならば攻撃する、というニュアンスすら感じる。習近平が打ち出した台湾政策は、表現こそ江八点と共通点が多いが、全体の文脈としては、台湾に対する恫喝度合いはずっと強い印象を受けるわけだ。

 さらに言えば、江八点が発表されたときの台湾は、稀代の老獪な政治家と呼ばれた李登輝が国民党現役総統の時代であった。李登輝 VS 江沢民であれば、政治家の力量とすれば間違いなく李登輝が上だろう。台湾海峡危機が起きたとき、堂々と張りあえた李登輝政権の台湾と比較すれば、政権としての力量は各段に劣る今の民進党・蔡英文政権が、江沢民時代よりずっと軍事的にも経済規模としても強大になった中国からの恫喝を交えた圧力に対抗し続けられるか、という部分もあろう。

◆蔡英文政権は毅然と反論

 もちろん、この習五条に対して即日、蔡英文政権は毅然と反論し、明確に「一国二制度は絶対に受け入れられないことは台湾の共通認識」と拒否し、92年コンセンサスについて「終始認めたことはない」との立場を久々に言明した。
 さらに台湾の人材、資本を大陸に吸収するような中国利益のための経済統合に反対し、台湾ファーストの経済路線を主張。国際企業に「台湾」名称を使うなと圧力をかけたり、台湾の友好国に札束で断交をせまるやり方を批判し、どの口で台湾同胞と心の絆とかいうのかと言わんばかりの拒絶を示した。
 また「民主的価値は台湾人民が非常に大切にしている価値と生活様式」「大陸も民主の一歩を勇気をもって踏み出したらどうか」と呼びかけ、中国が民主化しない限り統一はありえない、という姿勢をはっきりさせた。

 蔡英文は今までは現状維持を心掛けるあまり、中国に対する姿勢は慎重になりすぎた傾向があり、そのせいもあって昨年の台湾統一地方選挙で与党惨敗の結果を招いたとして党首職を引責辞任した。今回は習近平の恫喝的な台湾政策にきっちり反論できたおかげで、多少は失地を挽回できたわけだが、それでも2020年に総統再選の目はほとんどなく、民進党内の団結も揺らいでいる。

◆「9」がつく年には乱が起きる?

 習近平は習五条を発表した2日後の中央軍事工作会議では「軍事闘争準備」を呼び掛けており、あたかも台湾武力侵攻への準備を固めているような印象も与えている。蔡英文の反論を受けて中国世論には台湾武力統一論が再び盛り上がってきた。
 実際に、中国が台湾に対して武力統一を行使する能力があるかどうか、といえば、米国が台湾の民主主義と独立性守ることが自国の利益であると考えている以上、台湾に手を出せば米中戦争に発展しかねず、中国に今、米国と本気で戦える意思や能力があるかといえば「ない」とほとんどの人が思うだろう。可能性としては非常に低い。
 だが、ペンタゴンが発表した「2019年中国軍事パワー」リポートでは、「中国の巡行ミサイルなど打撃兵器はすでに米国など西側先進国と同水準」「中国の兵器システムの一部の領域は世界最先端水準」「解放軍は自軍の戦闘能力に自信を深めており、最終的には中国指導部に部分戦争を発動するリスクを侵させうる」といった分析を出している。この場合の「部分戦争」として一番想定されるのが台湾と一般にはみられている。

 このリポートに関してペンタゴン関係者がAFPなどに寄せたコメントの中には「最大の心配は、中国が技術的成熟や軍制改革の実施を行い、解放軍の実力を理解してきたとき、中国が1つの臨界点に達すれば、軍事力の使用で地域の衝突問題を解決しようとすることがありうること」「北京の解放軍実力に対する自信の度合いによっては、軍事力による台湾統一という選択肢を取らせる可能性がある」というものがあった。米国防関係者の中には中国による台湾有事を現実感をもって予想している人はいるのだ。だからこそ、米国は台湾に急接近しているということだろう。
 中華文化圏には「逢八必災、逢九必乱」というジンクスがある。8がつく年には厄災があり、9がつく年には乱が起きるという都市伝説だ。1969年珍宝島事件、1979年中越戦争、1989年天安門事件・・・。杞憂であればと心から願っているが、必乱の2019年に台湾問題は最も警戒すべきリスクの1つかもしれない。

   (ふくしまかおり氏はジャーナリスト、元産経新聞北京特派員)
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『AIが文明を衰滅させる (ガラパゴスで考えた人工知能の未来)』(文藝社、1404円) 
『習近平の独裁強化で、世界から徹底的に排除され始めた中国』(徳間書店、1080円) 
『連鎖地獄 日本を買い占め、世界と衝突し、自滅する中国!』(ビジネス社、1188円)
『金正恩の核ミサイル 暴発する北朝鮮に日本は必ず巻き込まれる』(育鵬社、1512円)
『日本が全体主義に陥る日  旧ソ連圏30ヵ国の真実』(ビジネス社、1728円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、1620円)
『西郷隆盛 ――日本人はなぜこの英雄が好きなのか』(海竜社、1620円)
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<宮崎正弘の対談・鼎談シリーズ> 
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宮崎正弘 v 宮脇淳子『本当は異民族がつくった虚構国家 中国の真実』(ビジネス社) 
宮崎正弘 v 西部 邁『アクティブ・ニヒリズムを超えて』(文藝社文庫、778円)  
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宮崎正弘 v 渡邊惣樹『激動の日本近現代史 1852−1941』(ビジネス社)  
宮崎正弘 v 藤井厳喜『米日露協調で、韓国消滅!中国没落!』(海竜社、1296円)
宮崎正弘 v 石平『アジアの覇者は誰か 習近平か、いやトランプと安倍だ! 』(ワック)
宮崎正弘 v 室谷克実『米朝急転で始まる中国・韓国の悪夢』(徳間書店、1296円)
宮崎正弘 v 渡邉哲也『世界大地殻変動でどうなる日本経済』(ビジネス社、1404円)  
宮崎正弘 v 福島香織『世界の中国化をくい止めろ』(ビジネス社、1404円)
宮崎正弘 v 河添恵子『中国、中国人の品性』(ワック、994円) 
宮崎正弘 v 高山正之『日本に外交はなかった』(自由社、1080円)
宮崎正弘 v 馬渕睦夫『世界戦争をしかける市場の正体』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円) 
宮崎正弘 v 石平、福島香織『日本は再びアジアの盟主となる』(宝島社、1296円)
宮崎正弘 v 田村秀男、渡邊哲也『中国経済はどこまで死んだか』(産経新聞出版)         
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(休刊のお知らせ)小誌、取材旅行のため1月27−28日が休刊になります
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2019 ◎転送自由。転載の場合、出典明示
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創刊日:2001-08-18  
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