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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み 「米中貿易戦争は、本当の戦争を誤魔化す手段だ」とトマス・ピケティ

2018/10/26

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)10月27日(土曜日)
        通巻第5868号   <前日発行>
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 「米中貿易戦争は、本当の戦争を誤魔化す手段だ」とトマス・ピケティ
  富裕層には減税、貧困層には代理の敵を攻撃して、目標を逸らす
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 トマス・ピケティという怪しげな経済学者がいるが、フランスの左翼学者は、流行の議論を音楽のように発展させるのがうまい。
ジャック・アタリなどを連想すれば、すぐに了解できるだろう。ピケティの『資本論』も、マルクスの階級史観を換骨奪胎したかのようなベストセラーが現象としてあったが、いまは忘れられた。

 そのペケティが『サウスチャイナ・モーニングポスト』(10月26日)のインタビューに応じて、トランプが仕掛けた関税による米中貿易戦争は、真の戦争から目を逸らす手段でしかなく、これによって富裕階級は事実上の減税が批判されることを回避できするうえ、貧困層は「誰がわれわれの富を奪ったか」という訴えで、敵を中国と思いこんだ。内部矛盾を外敵とすり替えた、とピケティは云う。

 代理として設定した敵(中国)を意図的に強い口調で攻撃したのも、トランプ政権が、中間選挙を前にして、本当の目標を逸らすことに成功したのだ、と頓珍漢な、一面だけの分析をしている。

 しかしこの発言を大書して掲載したのが、北京よりの香港メディアだから、いまの中国にとっては、ピケティの理論に状況分析を頼るという不安な心理の別の評言ではないか。
 ピケティはインタビューの中でも、米国のサンダースや英国のジェレミー・コルビンのように貧困救済の政策を、欧米はもっと盛り上げるべきだと主唱している。

 ナショナリズムをバックに国益をかけての歴史的戦争の開始という歴史認識はどこにも見られず、左翼学者のぼやきとなっている。
 ピケティはまたマレーシアのナジブの敗北を中国べったり政策への国民の反発とはみないで、物品税とサービス課税が原因だと主張している。
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1808回】           
――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(33)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正七年)
 
      △
 「實利」と「?榮」の「兩個の性格、交互錯綜して、一種不可解なる支那の國民性を、構成」している。だから「支那人と交らんと欲する」なら、「彼等の實利を、尊重する」と同時に「其の體面を毀損」しないよう努めなければならない。
 
「人は弱點に於て、他と繫る」ものだから、「支那人の?榮心は、寧ろ支那人の美點と見て可也」。
 
――まったくもって厄介極まりない方々だが、徳富の考えに従えば虚栄心を満足させる程度に実利を与えることが、彼らとの最善の付き合い方ということになりそうだ。さすれば「中国の夢」なる虚栄心を満足させる程度に実利を与えることで、一帯一路を骨抜きにできるかもしれない・・・のだが――
 
■「(五八)無事的調法物有事的厄介物」

日本人は「一旦緩急的」であり、「支那人は、普通尋常的」である。かくして「日支兩國人が、互ひに相提携し難」いことになる。
 
 およそ決められたことを決められたように順序づけて「繰り返すには、支那人程、調法な者はな」い。いいかえるなら彼らは「生命ある器械」であり、「盲目的服從、無心經的動物」ということだ。だから「一旦既定の順序が、齟齬する」なら、「支那人の弱點」は暴露され、「周章し、狼狽し、途方に暮れ、進退度を失」う。つまり「臨機の才能、應變の智惠」がないことから、「支那?史の慘劇の多くは」起こっている。
 
■「(五九)常に處して變に處せず」

「所謂神智靈覺は、支那人も最も不長也」。「彼等の多數は、順風快潮の舟師にして、惡風激浪の水夫」ではなく、「比較的低級の氣轉さへも、餘りに利かぬ者もあり」。
 
「支那人が戰爭に適せざるは、其の平和的人種なるが爲めのみにあらずして」、臨機応変の振る舞いができないからだ。「彼等は練兵場に於て好兵士」ではあっても、「戰場に於いて、好兵士」ではない。それというのも「常に處」することはできるが、想定外の事態が連続的に起こる戦場における「變に處する能はざれば也」だからだ。
 
「支那人現時の平凡生活は、今や殆んど支那人を驅りて、行屍走肉たらしめたり」。
 
■「(六〇)數の勢力」

「如何なる點より觀察するも」、「支那の強味は、其の人口の衆にあり」。「之を強味として利用するは、政治の妙機」である。「戰爭に於ても、平和に於ても、數は一大要素」であり「數は即ち資本」である。であればこそ「吾人(徳富)は此の一點に於て、支那の前途を悲觀す可き理由を見ず」。
 
■「(六一)烏合の衆」

「數をして最有力ならしむるは、組織にあり、結合にあ」るが、「支那人は個人萬能、團體零能」だ。「支那人程、彌次馬根性の増長したるものなし。一犬?に吠へ、萬犬實を傳ふとは、支那の犬を形容するよりも、寧ろ支那人を形容すべき名言也」。
 
「飛語、流言、訛傳、風説、何も非常の勢力を以て、支那を席捲し、時としては政府を顚覆し、國家を破滅」させることもあるが、その依って来る所以は「皆な支那人の雷同性にある」のだ。
 
彼らのような「烏合の衆」を組織化するには「規律に服從する順法精神」と「公徳心」とが大前提だが、「此の二者は、個人主義萬能の支那には、不幸にして缺乏」している。だから「衆ありて、大を做す能はざる」のである。
 
数が多いだけ。しょせん「個人萬能、團體零能」のヤジウマ集団にすぎないわけだ。
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【知道中国 1809回】                
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■「(六二)言論の勢力」

「支那に嚴正なる意義に於て、公議輿論なるもの」なし。というのも、「公議輿論」を「調節し」、「培養し」、「發揮する適當なる機關が見出さゞれば也」。だが、だからといって「人民の意思は、全く爲政者に無視せられたりとは、速了す可らざる也」。
 
歴史を振り返ると、「支那の革命」、つまり王朝の交代劇は「概ね流賊により、其端を啓かるゝも、流賊の先驅をなすものは、人心の動揺」であり、「民心の放潰」である。「此の衆庶心意の發作合離は、實に支那の史上に於て看過す可らざる暗流也」。これを「公議輿論」とは言えないかもしれないが、少なくとも「衆庶の心理情態の作用」であり、同時に「支那人の雷同性」であることは確かだ。
 
「堂々たる青天白日の高論崇議は勿論、其の童謡、俚歌さへも、動もすれば千萬の軍隊よりも偉大なる勢力を逞うしたる例」は、たしかに歴史上に認められる。ならば王朝をひっくり返すような「支那人の雷同性」に火を点ける「童謡、俚歌」もまた形を変えた「公議輿論」と見做すべし、ということだろう。
 
■「(六三)新聞雜誌の勢力」

「支那に於ては、正議?論よりも訛傳、流説を以て、有力なりと爲す」。それというのも、「輿論の理性に質す」というよりは、「寧ろ衆庶の迷信、若くは雷同性、彌次馬根性に訴ふうる」ことが有効であるからだ。「支那に於ては、口舌、文章の力は、兵力に比すれば、?々偉大なる働きを爲す」ものである。
 
これを「要するに拳力よりも、舌力有効」であり、「舌力既に然らば、筆力亦た固より然らざるを得ず」。「今後有力なる新聞出で來りて、支那を風靡する」ことだろう。そこで「吾人(徳富)は處士?議の風が、一轉して新聞專制の時代となる可く、豫期」した。
 
――百万の軍隊よりも強力な民衆の雷同性に火を点けるのは、やはり「舌力」、これをいいかえればメディアの力である。
 
 中国では世の中を動かし、ひっくり返す大きな力として「槍杆子」と「筆杆子」の2つが挙げられている。鉄砲と筆、兵隊とメディアだ。毛沢東は「政権は鉄砲から生まれる」との有名な言葉を残した。わが国では毛沢東の革命は鉄砲が生んだなどと軽はずみにも誤解し、「鉄砲から革命を」などと叫んであさま山荘に立て籠った“革命戦士”がいたが、「槍杆子」が有効に働くためには「筆杆子」が絶対必須条件なのだ。
 
 それは文革初期、毛沢東が「筆杆子」において政敵・劉少奇を“圧倒的に圧倒”したことを振り返れば判るはずだ。今日なお共産党中央宣伝部がなぜ力を持っているのか。中国における「筆杆子」の総元締めだからである――
 
■(六四)興亞的一大新聞」

だから「若し日支親善を、事實の上に現呈せしめんと欲」するなら、「只だ須らく支那に於て有力なる新聞、雜誌を發行す可し」。これこそが「即今の急務也」。イギリスは上海で『北支那日々新聞(ノース、チャイナ、デリーニュース)』を発行している。「其の紙數は、眇焉たるも、其の勢力は、隱然一敵國の觀をなし」ているほどの、「支那に於ける英國勢力の重鎭たり」。
 
だからイギリスにとっての『北支那日々新聞(ノース、チャイナ、デリーニュース)』に当たる機関を、日本は早急に持つべきだ。だが、「出來得る限りに於て、公平中正の態度を持」つ必要がある。

「徒らに褊狹、固陋の我利的、主我的の言論」を振り回すことは厳禁。
  それというのも「支那人をして、斯くの如く思惟せしむること」が肝要だからだ。 

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  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)人種差別撤廃提案100周年記念講演会
 日本の真珠湾攻撃が西欧の支配からのアジア解放の引き金になった
 セナカ・ウィーララトゥナ氏(スリランカ弁護士)
 1919年2月13日、日本政府はヴェルサイユのパリ講和会議における国際連盟規約を草案する委員会で、人種差別の撤廃が規約に盛り込まれるように提案しました。米英などの反対に遭い実現しませんでしたが、それから50年後の1969年人種差別条約が国連で採択され、発効しました。
 人種差別が第二次世界大戦の大きな理由の一つになっていました。日本の戦争目的は日本の存続を脅かす人種差別的な世界秩序の撤廃、すなわちアジア民族の解放にありました。1943年11月5日、6日に開かれた「大東亜会議」には、アジアの独立国6か国と自由インド仮政府が参加しました。
 スリランカの弁護士、社会活動家のセナカ・ウィーララトゥナ氏は、日本の真珠湾攻撃こそがアジア解放の引き金になったという論文を「史実を世界に発信する会」 に寄稿してきました。ニュース・レターNo.154Jでご紹介いたしました。
http://hassin.org/01/wp-content/uploads/Senaka.pdf
 「史実を世界に発信する会」 では、ウィーララトゥナ氏の来日に合わせて「人種差別撤廃提案100周年記念講演会」を開催することにいたしました。 
 下記の内容で行いますので、皆様にご来場をお待ちしております。
         記
・日時:平成30年11月14日(水)16:00開演(15:30開場)
・会場:衆議院第2議員会館 地下 第1会議室
・講演:・セナカ・ウィートラトゥナ
       日本の真珠湾攻撃が西欧の支配からのアジア解放の引き金になった 
    ・加瀬英明(外交評論家)(「史実を世界に発信する会」 代表) 
大東亜戦争で日本は世界をいかに変えたか
    ・山下英次(大阪市立大学名誉教授)
       日本の人種差別撤廃提案から100年
・入場無料
・主催:「史実を世界に発信する会」TEL:03-3519-4366 qzd13301@nifty.com
 こちらをご覧ください! http://www.sdh-fact.com/CL/20181114.pdf
    (「史実を世界に発信する会」 茂木弘道)



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(読者の声2)11月18日、下記のイベントが開催されます、お時間のある方はぜひ足をお運びください。
(A)2018年 東トルキスタン独立記念式典 
      記
日時:11月18日(日)午後3時開場 3時半開会
場所:ハロー貸会議室半蔵門
東京都千代田区平河町1-2-2 朝日ビル5階(Google地図)
(東京メトロ半蔵門線 半蔵門駅 1番出口 徒歩1分)
https://www.hello-mr.net/yotsuya/detail/109/
会費:1000円
(事前申し込みは不要です)
主催:特定非営利活動法人 日本ウイグル協会
協力団体:一般社団法人 アジア自由民主連帯協議会
連絡先:舘 かずこ 電話070−4401−6491


(B)ドルクン・エイサ総裁 来日歓迎会 
     記
時間:11月18日午後6時半開場 7時開会
場所:ウイグルレストラン レイハン(駒込駅北口 徒歩5分 ぐるなび Google地図)
会費:5000円
(※参加される方は、11月17日までに、メールもしくはファックスでご連絡くださるようお願いします)
メール:info@uyghur-j.org
FAX:03-5980-9255
http://uyghur-j.org/japan/2018/10/20181118_east_turkestan/?fbclid=IwAR13W38ZzjDFH8nzvkmPcKMgjFRUu_XG9lUJC7ZXK2x60N2W7rYsjjSHQlY



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(読者の声3)西尾幹二氏の著書「あなたは自由か」に対する宮崎先生の書評に触発されて、いろいろな形で問題とされる「自由」について、ヘーゲル哲学の視点から考えてみたいと思います。
 ヘーゲルの学問的な運動体の弁証法の論理において、「自由」は、「有」と「無」とが同一であり一体であるように、「自由」と「不自由」とは同一であり一体です。
これを、もう少し詳しく云いますと、「無」が直接性で「有」がその裏に媒介性として存在している場合は、生成へと向かう運動の一体性の論理となり、反対に「有」の方が直接性で「無」がその裏に媒介性として存在している場合は、消滅へと向かう運動の一体性の論理となります。
これと同じように「自由」と「不自由」との一体性の論理も、たとえば、「神の手(必然性)」が分からないまま即自的な自由を発揮しますと、「神の手」によるしぺ返しを喰らうという不自由を味わうことになります。
しかしながらこの失敗の体験・試行錯誤によって、人類は少しずつ「神の手」を学んで賢くなっていって、やがてはその「神の手」に従うという不自由を、むしろ意図的に、目的意識的に実践することによって、達成すべき本来の目的を達成する、という真の「自由」を得るようになっていきます。

 人類の歴史的な発展過程は、前者の即自的な自由から後者の対自・即自の自由へと向かうものであると、ヘーゲルの運動体の弁証法の論理は説いています。
別言しますと、前者の即自>対自の自由的不自由から、後者の対象の構造に合わせた対自>即自の不自由的自由へと発展していくと説いているのです。、動物時代の生命は、その環境にピッタリ合うようにプログラミングされた本能に従う不自由によってその環境でその動物として生きていけるという自由を実現しておりました。
ただその動物的な不自由的自由には、大きな欠点がありました。それは、部分的な限られた範囲内でしか、その不自由的自由の合理的な運動は成立しないという欠点であり、さらに一旦出来上がったプログラムは、書き換え不能で、固定的で、かつ発展性もない、という大きな欠点が存在していたということです。

 人類は、この欠点を克服するために、もっと大局的な観点から云うならば、本来の自分に戻ることのできる時機がやっと到来した、という内的必然性に導かれるように、動物的な本能的プログラミングをあえて消去して、自分の力で主体的に書き込む「(先に述べたような運動的・過程的な)自由」を得たのです。
つまり人類が、この「自由」を得る必然性は一体何かと云いますと、本来の自分の本性を知るためであり、自分の本性に立ち戻るためだったのです。
わがまま放題・勝手放題をするための自由ではなかった、ということです。だから、「自由」は、自由的不自由から不自由的自由へと発展させていかなければならないものなのです。
この不自由的自由というのが、自由即必然性の「自由とは必然性の洞察である」というヘーゲルの有名な言葉なのです。
これがすなわち、人類が学問を本能化して絶対理念となった時の、「自由」のあり方なのです。したがって、初めは、一見自由でいながら「神の見えざる手」によって翻弄されながら律せられていたものが、次第に「神の見えざる手」(必然性)が、見えるようになって、人間がその「神」となって、その「神の手」すなわち必然性を自由に操れるようになって、真に合理的な世界創造をするようになっていく、というのがヘーゲルの描く人類の歩むべき未来への地図であり、築くべき未来の設計図なのです。

 と同時に、これは実は、個人の認識の発展の過程でもあるのです。人間は、誰でもはじめは、即自しかありません。しかし、まともな人間となるためには、先人の労苦の成果として掴み取り継承されてきた自分の生まれた社会・国家の普遍性・歴史性を、さらに言えば人間としての普遍性を対自として教育され学びとって自分のものとして、即自対自の社会人から対自即自の国民へと発展していかなければ、一人前の人間となることはできません。個性や多様性は放っておいても勝手に育つものですが、人間になるためのまともな対自は、目的意識的に教育されなければ育ちません。だから学校なのです。ところがその学校で、対自は放っておいて個性・多様性ばかりがもてはやされるのは本末転倒です。

 以上を踏まえて、宮崎先生の「日本人が変わってしまった」感の構造を考えてみたいと思います。
ヘーゲル流の人倫国家を見事に実現していた時代の日本人は、武士道精神に象徴されるように、国家第一主義の対自即自の「真の自由」である不自由的自由を主体的に生きていました。
これに対して戦後の日本人は、まずそれまでの「対自」が否定され、徹底的に破壊される工作にさらされました。そういう意図的な工作以前に、日本人を、精神的に侵略して、大流行したのが、ヘーゲルを捻じ曲げた亜流に過ぎないマルクス主義でした。
その大流行したマルクス主義が、「対自」である国家・体制を悪と決めつけるものでしたので、GHQの自虐史観工作と相まって、道徳的であることが体制に順応するかっこ悪いことで、背徳的であることが自由で前衛的でカッコいい、という風潮が支配的となって時代の空気を作っていました。

 そのマルクス主義は、現在では誰も口にする者がいなくなり、現象としては廃れたかのように見えますが、まだ根っこの部分では、依然として大きな影響力を保持しているように見えます。
その要因として考えられるのは、対極と思われていた民主主義の人権論が、マルクス主義と同じ土壌で作られたもので<対自的国家>を悪と見る点で共通しており、しかも、その人権論は、「人間は生まれながらに自由にして平等」というフィクションに基づく、現実離れした機械的平等論とワンセットの自由論であったために自分たちの都合の良いところ勝手に切り取って利用しやすかったために、それを隠れ蓑として巧妙に生き延びることができたからです。
さらにもう一つの要因としては、マルクス主義に代わって時代をリードしうる強力な思想・哲学が出てきていないからです。それはヘーゲル哲学の変種であるマルクス主義を凌駕することは、大本のヘーゲル哲学が偉大なだけに、並大抵の思想では不可能だったからに他なりません。
それだけに、だからこそそのマルクス主義の根っこの部分の欺瞞性を暴き出して根底から破壊しつくせるものは、本家本元のヘーゲル哲学の復権しかないのです。

 マルクスは、論稿「国法論批判」において、国家の統合、国家の大事性を説くヘーゲルに対して、虐げられし者の現状を見ないで、対立を媒介して統合しようとして対立をボカすのはナンセンスだと批判し、対立を敵対的に激化させて、徹底的に非妥協的に戦うことが、大事だと強調しています。、だから、今の野党は、国家の危急に際しても、国家のことなどお構いなしに、モリカケ問題のように、政府と敵対すること
のみに専念するのです。

 また、人間の解放についても、ヘーゲルは、自分自身の本性を明らかにする学問
を、対自的理性として、その主導のもとに即自の自分を創っていくことによって、そ
の対自と即自とを統体止揚することが、すなわち自分の本性を本性とする自分自身
を、目的意識的に創り上げていくことであり、自らが「神」となり、「神の手」を操
る主体となることであって、これがすなわち「真の人間の解放」であると説いたので
す。

 これに対してマルクスは、人間になるために必須な対自を否定し、虐げられし労
働者・農民こそが真の人間解放の担い手であるとして、あるがままの即自の労働者・
農民をそのまま肯定して絶対視したために、それをうのみにした中共やポルポト派
は、農民から学べとばかりに下放運動を推し進め、大学の教授を追放して農民を大学
の校長に据えたり、ポルポト派のように教師や知識人を皆殺しにするという暴挙・愚
挙を行って、アンコールワットの栄華を誇ったカンボジアを無知蒙昧の未開の社会
に引き戻してしまった結果、カンボジアは、そのマルクス流の人間解放の後遺症に、
今なお苦しんでいるのです。

 現在の日本で、やれ人権が、多様性・自由が、即自的感情の開放が大事だと叫んで
いる連中は、即自偏重で対自無視であるために、自分の感情ばかりを大事にして他人
の感情は平気で踏みにじる、まさにこのポルポト派と何ら変わらないのです。つま
り、その思想の根っこにあるのが、マルクスの誤った人間解放論であり、その解放の
担い手である正義の自分たちの、即自的感情の自由の不躾な認知強要という厚かまし
さであって、杉田議員に対する理不尽な攻撃に見られた通り、自分たちの人権だけを
肯定させようとして、他人の感情は平気で踏みにじるという暴挙を、これこそが進ん
だ文化だ思い込んで、未開社会へと日本を後退させようとしているのです。

 いわゆる「神の見えざる手」がいつまでも見えてこない理由は、ヘーゲルの本物の
学問が、マルクスによって、幽閉されてしまったからであり、人類が本来進むべき道
から遠く離れてしまったからに他なりません。そして何よりも一番深刻なのは、世界
の中で最も見事な対自即自の自由を創り上げた日本が、その対自を失って即自オン
リー全盛の、最早人倫国家の見る影もない、「神の見えざる手」どころでない無様な
国家の姿に成り下がってしまっていることです。  
    (稲村生)



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(読者の声4)憲法改正、国民投票を求める全国大会」のお知らせです。

とき      12月5日(水)1430
ところ     砂防会館別館 一階大ホール
入場      無料
記念講演    桜井よしこ
        国会議員(各党)代表挨拶
事前申し込み  下記へ電話、もしくはFAX 
主催      美しい日本の憲法をつくる国民の会
        03−5213−4323 FAX(5212−7201
         ○◎○◎○
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■宮崎正弘の新刊 ロングセラーズ  好評発売中!
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近刊予告
宮崎正弘『AI管理社会・中国の恐怖』(11月25日発売予定、PHP新書)
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『米中貿易戦争で始まった中国の破滅』(徳間書店、定価1296円)
『アメリカの「反中」は本気だ』(ビジネス社、1404円)
『習近平の死角』(育鵬社、1620円)  
『西郷隆盛 (日本人はなぜこの英雄が好きなのか)』(海竜社、1620円)  
『米国衰退、中国膨張。かくも長き日本の不在』(海竜社、1296円) 
『AIが文明を衰滅させる (ガラパゴスで考えた人工知能の未来)』(文藝社、1404円) 
『習近平の独裁強化で、世界から徹底的に排除され始めた中国』(徳間書店、1080円) 
『連鎖地獄 日本を買い占め、世界と衝突し、自滅する中国!』(ビジネス社、1188円)
『金正恩の核ミサイル 暴発する北朝鮮に日本は必ず巻き込まれる』(育鵬社、1512円)
『日本が全体主義に陥る日  旧ソ連圏30ヵ国の真実』(ビジネス社、1728円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、1620円)

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<宮崎正弘の対談・鼎談シリーズ> 
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宮崎正弘 v 藤井厳喜『米日露協調で、韓国消滅!中国没落!』(海竜社、1296円)
宮崎正弘 v 藤井厳喜『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧』(海竜社。同) 
宮崎正弘 v 西部邁『アクティブ・ニヒリズムを超えて』(文藝社文庫、778円)  
宮崎正弘 v 石平『アジアの覇者は誰か 習近平か、いやトランプと安倍だ! 』(ワック)
宮崎正弘 v 石平『いよいよ、トランプが習近平を退治する!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 石平『私たちの予測した通りいよいよ自壊する中国』(ワック、994円)  
宮崎正弘 v 渡邊惣樹『激動の日本近現代史 1852−1941』(ビジネス社)  
宮崎正弘 v 室谷克実『米朝急転で始まる中国・韓国の悪夢』(徳間書店、1296円)
宮崎正弘 v 室谷克実『赤化統一で消滅する韓国、連鎖制裁で瓦解する中国』(徳間書店) 
宮崎正弘 v 室谷克実『悪あがきを繰り返し突然死の危機に陥る中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 福島香織『世界の中国化をくい止めろ』(ビジネス社、1404円)
宮崎正弘 v 福島香織『暴走する中国が世界を終わらせる』(ビジネス社、1188円) 
宮崎正弘 v 河添恵子『中国、中国人の品性』(ワック、994円) 
宮崎正弘 v 高山正之『日本に外交はなかった』(自由社、1080円)
宮崎正弘 v 馬渕睦夫『世界戦争をしかける市場の正体』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 宮脇淳子『中国壊死』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円) 
宮崎正弘 v 石平、福島香織『日本は再びアジアの盟主となる』(宝島社、1296円)
宮崎正弘 v 石平、福島香織『中国バブル崩壊の全内幕』(宝島社、1296円)
宮崎正弘 v 渡邉哲也『世界大地殻変動でどうなる日本経済』(ビジネス社、1404円) 
宮崎正弘 v 田村秀男、渡邊哲也『中国経済はどこまで死んだか』(産経新聞出版) 
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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  • 名無しさん2018/10/26

     「米中貿易戦争は、本当の戦争を誤魔化す手段だ」とトマス・ピケティ

      富裕層には減税、貧困層には代理の敵を攻撃して、目標を逸らす←トマス・ピケティ、、、日本のマスゴミはこのカビの生えた頓珍漢学者をもちあげるんでしょうね。。。宮崎先生、情報ありがとうございます。