国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み <<ふたつの原子力発電所、最悪の事態にそなえ、緊急態勢へ

2018/09/16

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)9月16日(日曜日)
        通巻第5832号   
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 超強風の台風22号、フィリピンから広東を直撃へ
  ふたつの原子力発電所、最悪の事態にそなえ、緊急態勢へ
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 フィリピンに猛烈な被害をもたらした台風22号(マングハット)が、16日午後から深夜に駆けて香港に上陸し、広東省を通過することが明らかになった。予測される進路は香港の南方から広東省の中南部を通過する。暴風圏はすでに台湾南部から、海南島にも及んでいる。

 緊急の問題が浮上した。
 台風の進路には二つの原発があるのだ。
 「台山」原子力発電所は、香港の西135キロ。1660メガワット。緊急会議と防災チームが結成された。かれらの強迫観念は「フクシマ」だ。

 もう一つが香港の西230キロの「陽江」原子力発電所である。
 1080メガワット。6号機まであって、過去にも多くの管理不注意から事故が報告されている。日本の基準なら一面トップ記事になるほどの事故だったが、中国では殆ど報じられなかった。

中国は現在40基の原発が稼働しており、石炭火力発電を代替してきた。環境保護の最大の課題は石炭火力発電からの脱皮で、遼寧省から山西省にかけての炭鉱の多くが閉鎖され、夥しい炭鉱夫が失業という犠牲を伴った。

将来は百基を必要とする中国は、なりふり構わず原発建設に熱中してきたのだが、伝統的な「手抜き工事」でも悪名が高く、しかも、この台風22号は、原発の場所を直撃する進路予測がでている。
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(休刊予告)小誌は海外取材のため、9月20日―25日が休刊となります。  
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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
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 知性の劣化が、バカ文化人、エセ学者、偽善コメンティターを産んだ
  それにしても日本はどうしてアホやバカがテレビに跋扈するのか?

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北岡俊明『日本アホバカ勘違い列伝』(ワック)
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 その昔、左翼全盛で全共闘とか、ノンセクト・ラジカルとか、ベ平連とか、アジビラ一枚で左まきに染まった付和雷同組の社会騒擾があった。その頃、全貌社から『全国大学左翼教授一覧』という本が出た。
日本共産党とそのシンパの文化人やら教授やらを網羅し、いかなる発言をしたのかを記録したもので、当時は斬新だった。編集者から聞いたところでは「読んで抗議してきた人」「私は頼まれて『赤旗』に書いただけ」という釈明の人など反応は様々だったそうな。
 昭和五十年代に山手書房から『日本を悪くした百人』という、異なったスタイルの本がでて、テレビタレントだの流行作家、有名教授等を俎上に載せた。小田実とか吉永小百合とか、羽仁五郎、大島渚らも入っていたような記憶がある。やはり売れた。
 その後、左翼文化人は世代交代して、右か左かの区別がつかなくなった。
単に政府を批判するだけの人、あらゆる政策に異論をとなえて悦にいる経済学者。民族差別だとか、少数意見をあたかも国民の総意のように言い張る御仁。しかもややこしいことに、現象に乗っているだけで理論的裏付けを決定的にかく人が、テレビでしゃぁしゃぁとコメントを吐く時代に変わった。
イデオロギーは消滅して、感情論が支配する環境となれば、出鱈目なことを主張しても誰も咎めない。
 なんという知性の劣化だろう!
バカ文化人、エセ学者、偽善コメンティターを大量に産んだ背景には日本全体の知力の低下があげられる。だから日本に大量のアホやバカがテレビに跋扈することになった。
 十年ほど前に、そのことを思い出して或る編集者に『日本をダメにした百人』などという企劃を提案したことがあるが、軽く蹴られた。
その替わりに書いたのが評者(宮崎)の『中国を動かす百人』(双葉社)で現代中国の政治、経済、スポーツ、文化を牽引する百人を網羅しての人名事典となった。
本書は、謂わばそうした流れに棹さして、とりわけ一般の読者向けに、おかしな発言、怪しい言論を振りまくタレント、芸能人、教授や弁護士をずらりと俎上に乗せて切りまくる痛快本である。
おのれの専門分野を中途半端にした漫才師、芸能人が我が物顔、偽文化人らが厚顔無恥に朝日新聞の社説のようなことをのたまい、スポーツ選手がえらそうに振る舞い、たいした作品もないのに作家をなのるバカまでを北岡氏は快刀乱麻を断つがごとくに切りまくった。
とりわけ偽ブンカジンのリストに、左翼を衣の下に隠す池上彰と寺島実郎が出てくる。
池上はリベラルな解説屋にすぎず、寺島は「なにも知らないし、知っていることは全部間違っている」人だ。
ただ評者はテレビを見ないので、ほかに並んでいる人たちの名前を殆ど知らないのが残念である。
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1) 先々週でしたか、日本文化チャンネルの「フロント・ジャパン」で宮崎さんと福島香織さんが、習近平主席がプーさんに似ていると発言されていて、そういえば中国ではディズニーのキャラクターのプーさんは発売禁止、そのうえプーさんの原作者をモデルにした映画も、中国では上映禁止だそうです。
  (HN子、江戸川区)


(宮崎正弘のコメント)当該のハリウッド映画、日本では「プーと大人になった僕」というタイトルで9月14日から封切りされるそうです。
小生は先々月にダブリンに行った折、偶然、畿内で同じような英語をみました。なにしろ国際線の上映映画は日本の封切りより早いですね。
 この映画は「大人の童話」だそうです(『週刊新潮』の映画評、9月13日号)
 ところでスタジオにプーさんのぬいぐるみも持ち込んだのですが、番組のディレクターから「版権にひっかかるので」と指摘され、スタジオでは使いませんでした(苦笑)。



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(読者の声2)日本の敗戦半年前の1945年2月に行われたヤルタ会談は例の3人衆、チャーチル、ルーズベルト、スターリンにより行われ、密約によりソ連の参戦と大日本帝国の領土の処遇を決定し、今に続く北方領土問題の淵源となったことは後存知の通りである。
 ヘンリー・トスークスは対日戦を仕掛けた「真のA級戦犯」は3人衆だと言っている。3人衆の話題は今なお尽きない。
さて、映画の話である。
今年になりチャーチルとスターリンをそれぞれテーマにした面白い映画が製作され日本でも公開済みであり、既にご覧の向きも多いのではなかろうか。
その1が『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
 日本人がアカデミーメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞でも知られる。英国政界一の嫌われ者チャーチル対独戦の国難の中での孤独と苦悩と決断の感動的ドラマであることは確か。
 その2が『スターリンの葬送狂騒曲』
 スターリンの死後、その葬儀とベリヤの処刑に至るスターリンの側近連中、ベリヤ、フルシチョフ、ジューコフ、マレンコフ、モロトフ、ミコヤン等の権力闘争をドタバタ喜劇風に突き放して描く。最後にベリヤが権力闘争に敗れ、処刑され残酷に処理される場面は敗者への見せしめにしても、そこまでやるかの感を抱かせる。
ベリヤが皆からいかに蛇蝎のごとく嫌われていたかの証左かも知れない。本作がロシアでは上映禁止とされたことは宜なるかなである。
 ところで3人衆のもう一人FDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)の映画を誰か作ってくれないか。
チャーチル型ではなく、スターリン型のドタバタ調が望ましい。なぜならハーバート・フーバー元大統領がFDRを「マッドマン」と貶しており、マッドマンの愚行ぶり、とくに政権近くに入り込んだコミュニスト達に操られ、日本を開戦に追い込んだ愚行を思いっきりドタバタ調で描いたら面白いと思うからだ。
 しかし制作は日本人監督には先ず無理であろう。
米人監督はどうか。マッドマンとは言え、自国の大統領を貶めることは出来ないだろうからこれも無理。
となると『スターリンの葬送狂騒曲』のイギリス人アーマンド・イアヌッチ監督しかいないか。タイトルはずばり「マッドマン」。是非とも作ってもらいたいものだ。
(ちゅん)。



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(読者の声3)インドルピーが連日安値を付けていますが、株価はそれほど下落していません。
背後には御指摘のようにパキスタンとの関係改善があると思われます。
ところでパキスタン首相のイムラム・カーンですが2004年までゴールドスミスの娘(ムスリム改宗)と結婚しており、子息もいるようです。
離婚したとはいえ、グローバリストの影響はパキスタンでこれから広がると考えていいのでしょうか?イランの隣のパキスタンは米国に取って重要と思われますが。それとも民族主義的な動きの方向へ向かっているのでしょうか?
  (R生、ハノイ)


(宮崎正弘のコメント)カーンとゴールドスミスの娘との結婚は、当時かなりの話題となっていました。小生も、たしか『ウォール街 凄腕の男たち』(世界文化社。1989年刊。絶版)のなかで、書き込みました。
 ゴールドスミスは乗っ取り屋のなかでも例外的なあくどさを発揮し、買収した企業の資産をバラバラにして売却し、最後の本丸も売ってのけるという、まさに禿鷹ファンドの草分けでしたね。
 ご指摘の文脈で言えば、23日に行われるモルディブの大統領選挙に注目しています。中国とインドの代理戦争、いまのところ、中国のリードですが、マレーシアでパキスタンで中国の巨額融資を返せないと訴えた候補の逆転勝利が続いており、モルディブにも、それが伝播したか、どうか。
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西村眞悟の時事通信
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日本人のことあるときに顕れる系譜
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 天皇がしらす國である我が国の歴史を振り返るとき、 古事記の日本武尊と、身を捨てて荒ぶる海を鎮め愛する日本武尊を救った弟橘姫の物語から始まって、武士(もののふ)や軍人また兵士ら、そして、民族の運命に選ばれたかのようにその場に遭遇した人々には、自らの生を切断することによって、後世に深く巨大な影響や思想を与える人々の系譜があるように思える。
  平成三十年九月八日、鹿児島の錦江湾を見晴るかす丘にある南洲墓地を訪れた。そこには、西郷隆盛の墓を中心にして西南の役を戦って戦死した二千余の薩摩軍将士の墓が、桜島に向かって整然と直立している。
その墓群の中に佇んでいる時、明治維新の勲章をぶら下げた元勲達が、皆その名を忘れられた後においても、日本が日本である限り、西郷南洲の名は、日本人に忘れられることはないと感じた。まさに魂魄を留めた如き凄まじい存在感を、没してから百四十年後の現在に照射しているこの「西郷南洲」とは、何であろうか。
   明治十年九月二十四日、午前四時から開始された城山を包囲する官軍の西郷軍に対する総攻撃が終わった後、この墓地の近くで、 官軍の山県有朋参軍は、砂の付いた西郷の首を清水で洗わせてから両手で受け取って、西郷を凝視した。
  この時のことを、江藤淳は次の通り記している(同氏著「南洲残影」)。
  
  このとき実は山県は、自裁せず戦死した西郷南洲という強烈な思想と対決していたのである。陽明学でもない、『敬天愛人』ですらない、国粋主義でも、拝外思想でもない、それらをすべて超えながら、日本人の真情を深く揺り動かして止まない『西郷南洲』という思想。マルクス主義もアナーキズムのそのあらゆる変種も、近代化論もポストモダニズムも、 日本人はかつて『西郷南洲』以上に強力な思想を一度も持ったことがなかった。
  
この江藤淳の言う「西郷南洲」も、万世一系の天皇のしらす國である日本に生まれた者である。それ故、沖永良部島で虜囚の身であった頃に詠んだ漢詩「獄中所感」の最後を西郷は、次のように結んだ。
 「生死何ぞ疑わん天の附與するを、願わくば魂魄を留めて皇城を護らん」。
そして、その言葉通り、 生を終えるまさにその時、西郷は、遥か東方の天皇陛下を拝して別府晋介に首を打たせた。即ち、西郷も我が国の歴史のなかの、自らの生を切断することによって、 巨大な思想を後世に与える人々の系譜のなかにある。
ここにおいて、四方海に囲まれる我が国の歴史における唯一の本土への大規模な武力侵攻を撃退した宗助國らが戦った元寇以来、三島由紀夫の自決に至る、この系譜を概観したい。
  
 文永十一年(一二七四年)十月、蒙古軍は、兵三万数千、軍船九百艘で玄界灘の対馬を襲い小茂田浜に上陸してきた。この蒙古軍を迎撃したのは、時に六十八歳の対馬守護代宗助國以下八十四騎である。彼ら八十四騎は、数千の蒙古軍を相手に、寅の刻(午前四時)から辰の下刻(午前九時)まで実に五時間にわたって勇戦奮闘し、最後は突撃して全員戦死した。
 その時、彼らは微笑みながら突撃した。蒙古軍の大将、忻都(キント)は「私はいろいろな國と戦ってきたが、このような恐ろしい敵と出会ったことはない」と驚いた。
この時の小茂田浜の地形は現在と異なり、海は現在よりも数キロも山に迫り、上陸した数千の蒙古軍と馬は左右から山に挟まれる狭い浜にひしめき合った。この地形が八十四騎で数千の敵を相手に五時間の奮闘を可能にした。

 そして、この文永の役から五十九年後、河内の楠木正成が金剛山麓の山が左右から迫る千早に入ってきた三十万の鎌倉幕府軍を少数で迎撃しゲリラ戦で撃退した。対馬の小茂田浜と河内の千早の地形は似ている。
 楠木正成は、 五十九年前の対馬の宗助國の戦い様を研究していたはずだ。その三年後の建武三年(一三三六年)五月二十五日、楠木正成は、後醍醐天皇の命を受け、七百騎を率い、兵庫の湊川で数万の足利軍を迎撃し 六時間に十六回の突撃を繰り返した後に「七度生まれ変わって朝敵を討たん」と誓い微笑んで弟とともに自決した。
この楠木正成の峻烈な忠孝の志と死に臨んだ誓いは長く語り伝えられ、三百五十六年後の元禄五年(一六九二年)、 水戸の徳川光圀は、湊川の楠木正成戦死の地に、楠公の忠孝と武勇を顕彰し、後世の日本人が天皇を戴く日本の忠孝の道義に目覚めるように、巨大な碑「嗚呼忠臣楠子之墓」を建てた(湊川建碑)。
 以後、この墓にぬかずき碑文に発憤する者が年々増えていき、広く庶民に至る迄楠木正成の忠孝を知るに至る。

 それ故、建碑から十年後の元禄十五年(一七〇二年)、播州赤穂藩家老大石内蔵助と赤穂浪士四十七人が、主君浅野内匠頭の無念を晴らすために幕府高家筆頭吉良上野介の首を取った時、江戸の庶民は、

 楠の今大石になりにけるなおも朽ちせぬ忠孝をなす

 と詠んだ。
 楠木正成が、大石内蔵助に生まれ変わって吉良の首を取り忠孝を尽くしたという。吉良の家は、足利の本家筋の名門であった。
  なお、大石内蔵助以下赤穂浪士の思想は、山鹿素行によって形成された。山鹿素行は、天皇を戴く日本こそ万邦無比の國であり中華であると説き、「中朝事実」を書いた儒者軍学者である。幕府によって江戸を追放され赤穂藩に来た山鹿素行は、大石内蔵助らにその尊皇忠孝の教えを説いた。 時に幕府の方針は、禁中並びに公家諸法度等を定めて天皇と朝廷を全て京都所司代の統制下に置くというものである。従って高家筆頭の吉良上野介は、この幕府の方針通り、江戸に来る天皇の勅使を待遇しようとした。
しかし、赤穂の浅野内匠頭は、 山鹿素行の教えを受けた尊皇の藩主である。その吉良上野介を天皇に対する不敬者と看た。ここにとっさの刃傷の原因がある。よって大石等四十七士は吉良の首を取って主君のその無念を晴らしたのだ。
 亡き山鹿素行から観れば、 赤穂浪士達の決起は自らの思想、尊皇の志の実践である。
  この赤穂事件即ち忠臣蔵として語り伝えられてきた事件は、 江戸時代における我が国の国民精神に最大の影響を与えた事件であろう。従って昭和二十年九月二日から我が国に進駐して統治したGHQ(連合軍総司令部)は、忠臣蔵の映画演劇を禁止したのだ。
 また、明治三十八年九月のアメリカのポーツマスにおける日露戦争の講和条約締結の仲介をしたセオドア・ルーズベルト大統領は、仲介の労を執った理由として日本全権の小村寿太郎に「少年の頃、忠臣蔵の物語を読んで血湧き肉躍ったからだ」と述べたという。
  
 幕末の志士たちで楠木正成を思わない者はいない。吉田松陰は、短い生涯のなかで、三度、湊川の「嗚呼忠臣楠子之墓」に参り「楠木兄弟は未だ死なず」と泣いた。この松蔭の安政の大獄に連座してからの死に急ぐような姿は、楠木と同じ、「死しても死なない」という確信の故かと思う。満二十九歳で伝馬町牢屋敷で斬首されるときに詠んだ松蔭の

身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂

はその確信を示している。
  
この幕末維新を経て、我が国は、国家の存亡をかけて日清、日露戦争そして大東亜戦争を戦う。その戦場に赴く将兵で、楠木正成の「七生報国」、「死して生きる」を意識しない者はいない。 楠木正成は日本が日本である限り甦り続けてきた。 軍司令官から戦死確実の作戦を命じられた指揮官は、「つまり閣下は、私に湊川をやれと言われるのですな」
とつぶやき、「俺は湊川をやる」と納得して死地に赴いた。
 昭和二十年四月二十二日午前十時、台湾の桃園飛行場から沖縄に特攻出撃した若い十四名の陸軍特攻隊員は、「いまここで死ぬのが自分にとって最高の生き方です」と言って飛び立っていった。
 そして、この系譜は、現在に繋がっている。
 東日本大震災の際、多くの人々は、あの巨大な津波に向かって走ってゆく警察官の最後の姿を見ている。同じ頃、南三陸町危機管理課職員遠藤未希さん(二十四歳)は、午後二時四十六分から三十分にわたって防災庁舎二階から「大津波警報が発令されました。高台に避難してください。」「六メートルの津波が予想されます、逃げてください」「異常な潮の引き方です、逃げてください」と津波が目前に迫るまで町民に対して避難を促す放送を続け、津波にのまれ殉職した。
さらに、福島第一原発の爆発して破壊された灼熱の原子炉建屋の真上にホバリングして、 約四十トンの水を落とした二機の巨大ヘリCH47チヌークを世界が見た。中共軍の将校は自衛隊の将校に、日本人は、戦前戦後、まったく変わっていない。簡単に命をかけてくると言い、アメリカ軍将校は、 人の命を何とも思わないような作戦をするな、と言った。
  
戦後の昭和四十五年十一月二十五日に市ヶ谷台で自決した三島由紀夫も「いまここで死ぬのが、日本人として最高の生き方」と思い決したはずだ。
 晩年の三島由紀夫は、西郷南洲に、まるで自分に語りかけるように、次のように語りかけている。
  あなたは賊として死んだが、すべての日本人はあなたをもっとも代表的な日本人とみています。 
              (にしむらしんご氏は前衆議院議員)
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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