国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み BOOK REVIEW

2018/03/24

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)3月25日(日曜日)
        通巻第5643号  <日曜版>
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 (本号はニュース解説がありません)
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<<読書特集>>
川口マーン惠美著『そしてドイツは理想を見失った』(角川新書) 
ジョシア・グリーン著 秋山勝訳『バノン 悪魔の取引』(草思社) 
樋泉克夫のコラム2本 ほか

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 書評(その1)しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
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 なぜドイツはナチ亜流の全体主義・中国にのめり込んだのか
  習近平の独裁、人権無視、人民監視という現実を語らなくなったメルケル

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川口マーン惠美『そしてドイツは理想を見失った』(角川新書)
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 題名から連想するならば、では「今日までのドイツに理想はあったのだろうか?」と思わずにはいられない。
しかしながら本書はドイツの現状、とりわけ状況対応型政治家のメルケルの言動を基軸に措えつつも、偽善者の多いEU諸国の混沌ぶり、無茶苦茶になった欧州全体の政治環境などをわかりやすい語彙で鋭角的に描き出している。
ブラッセルのEU委員会ビル、じつは評者(宮崎)は先月ブラッセルに滞在の折、タクシーを雇って、この「EU村」へ行って見た。国際色豊か、しかし庶民にとっては官僚臭いエリート臭がぷんぷんする街、タクシーの運転手などはきびしい意見を吐いた。

 シリアからの移民問題がEUを深刻に亀裂状態に陥落させたのは事実だろう。
 当初、メルケルが言った「何人でも難民を受け入れるのは人道主義」という基本姿勢はドイツのリベラルなメディアが言祝ぎ、労働力を確保できると財界が飛びつくように喜び、単純な「グローバリズム」に酔いしれたドイツ国民の多くが思慮を欠いて賛同した。
 ところが、ドイツの周りの国々は、シリアからの難民が押し寄せて、ドイツへの通り道になった。夥しき新種の蝗の大群が押し寄せ、婦女強姦など犯罪も増えた。そのため、急いで国境を封鎖し、ドイツの一人勝ちを疎ましく思ってきた感情が爆発してメルケルを批判し、ドイツの政策が間違っていると言い出した。
そればかりか、ポーランド、ハンガリー、チェコ、オーストリアで「反メルケル」色が濃厚な政治指導者が政権の座に着き、フランス、イタリアで保守派が急台頭し、オランドでもあと一歩、英国はEUに背を向けてしまった。
なんとも収拾のつかない大混乱に陥ったのである。
だからエマニエル・トッドは予言した。「ドイツが折々に欧州を自殺させる。EUは解体し、ユーロは崩壊するだろう」と。
 そしてドイツでは「メルケル政権安泰」としたメディアの予測は大はずれ。川口さんは言う。
「CDU(キリスト教民主同盟)は、歴史始まって以来、最大の敗北を喫した」(中略)「ドイツ政府とメディアが理想を追いかけ、現実を見失ったからだ」。
 左派メディアが「極右」と騒いで異端視してきた「ドイツのための選択肢」は誰も予測をも超えて大躍進を遂げた。おりしも米国でトランプに黙って投票した「隠れトランプ支持派」が実際の投票行動で、本心を晒したようにドイツには大量の「隠れ反メルケル」がいたことになる。
周章狼狽したメルケル政権は、言論の自由を踏みにじるSNS規制法を議会通過させ、時代に逆行する。

 さて、本書にはそれ以外にも「えっ」と叫びたくなるような記述がたくさん詰まっていて、たとえば「ドイツ観念論」というのは、「ドイツ理想主義」だという。
 ドイツ観念論は哲学者のヘーゲルを源流として、その弟子や後継者にはナチスに近い思想を抱いたハイデッカーなどを生んだが、ヘーゲルの思想から右へ行ったのがニーチェ、左がマルクスだと総括すると、あるいは説明しやすいかも知れない。
 そして「戦後」におけるドイツ人の観念論(トいうより理想主義)は、総括として「自分たちはヘーゲルの時代、いや、もっと以前から高邁な理想を追求してきたはずだったのに、独りヒトラーのせいで道を踏み外してしまった」とするご都合主義な考え方を抱くに到った。ご都合主義の典型だろう。

 ドイツ人のアンビバレンツな思考方法がここで出てくる。ナチスが悪く、ドイツ人はヒトラーに騙されただけ、という都合のよい歴史観である。
 本書のもう一つの特色は独自的な歴史を結んできた「独中関係」である。
 ドイツ在住三十年の川口さんならではの独断場である。
 なにしろ日清戦争では清に最新鋭の軍艦(「定遠」と「鎮遠」)を売り、蒋介石には軍事訓練を施すための軍事顧問団を秘かに派遣し、武器を供与しつつも、その一方で日独伊三国同盟を結んでいたのはドイツだった。
 日本から見れば恥知らずの鉄面皮。その便宜主義的、機会便乗主義的な政治性にはドイツ特有な思考体系がある。
 ドイツはプロイセン王国の頃から清に近付き、おりからの「ドイツの産業革命」で貿易も増えていた。
「ドイツは中国との交易をさらに拡大するため、徳華銀行(ドイツ・アジア銀行)という投資銀行をつくる。現在、中国がイニシアティブをとっているAIIBを彷彿とさせる」(74p)
 しかも清がドイツに好感を抱いた理由は「お茶や陶磁器、絹などを輸入し、それをアヘンの密輸出で精算しようとしたイギリスなどとは違い、ドイツの売り込んだものは、生産手段であり、軍事技術だった。つまり、中国の近代化に資するものを、ドイツは売った。ドイツと中国との絆が固くなったのは、当然の成り行きだった」
 どうやらドイツ人と中国人は似ている。
「狐と狸の壮大な化かし合い」が独中関係であり、「ときにドイツは中国を『経済国家主義』などと批判するが、(中略)中国マネーと中国市場の威力はつとに大きく、ドイツ人はあらがえない」(112p)のである。
 かくして「民主主義の優等生」は「自由から逃亡した」。
 読み応えがあると同時に多くを考えさせて呉れる本である。
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 書評(その2) しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
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 トランプを思想的に支え、ヒラリー攻撃の戦術を編み出した男
  ホワイトハウスを去っても、国際的な影響力をもつバノンの物語

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ジョシア・グリーン著 秋山勝訳『バノン 悪魔の取引』(草思社)
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 副題にあるのが「トランプを大統領にした男の危険な野望」。著者のスタンスがなんとなくわかる。つまり機会便乗主義者である。
 トランプ大統領を奇跡の当選にもっていった戦略家、策謀家、陰謀家。というよりバノンはプロデューサーといった方が良いのかもしれない。スティーブ・バノンを『タイム』誌が表紙にしたほど、大変な政治力を発揮してトランプを一時期動かしたことは紛れもない事実だ。
 ホワイトハウスのなかで、歯に衣着せず大胆に周辺を批判し、娘婿のクシュナーやジョン・ケリーとの対立が尾を引いて解任に追い込まれても、バノンは意気軒高として、毎週トランプとは電話を取り合っているという。
肩書とか権威にはこだわらない思想家という趣があるのだろうか。

 そこで本書はまずバノンの謎の過去を追う。両親はアイルランド移民の末裔、カソリック信者。もちろん、ケネディ大統領を尊敬する一家だった。ケネディ家はアイリッシュとして差別され、しかもプロテスタントの国で、大統領になった初めての人物であり、アイルランド移民が特別な感情を持つのは当然だろう。
 バノンはそうして家庭で生まれ、カソリック信者であり、軍隊に勤務すること七年、カーターが無様な作戦を展開したテヘラン米大使館人質奪還作戦(失敗)では、インド洋上の艦船にいた。
 除隊後、29歳で、ハーバド・ビジネスス・クールを選んだ。年齢的には遅すぎる選択である。
理由? どうしてもゴールドマンサックスに入社したかったからだ。そして奇跡が起こった。パーティで知り合って意気投合したのがゴールドマンサックスの幹部だった。かれらはバノンの話術に魅了され、採用を決めた。
 本当にゴールドマンサックスにいたのか、と著者は疑い、関係者を取材するとバノンはM&A部門で大活躍し、やがて香港で会社をたち上げ、さらにハリウッドに進出して映画のプロデューサーに変身し、さらには大富豪をつぎつぎとスポンサーとしてつかみ、保守派サイトの「ブライドバード」を円滑化させて影響力を発揮する保守派のメディアに仕立て上げたのだった。

 ▲バノンはその印象とは異なりゴールドマンサックスでも辣腕家だった

 この経歴と、バノンの主張に共鳴したトランプは選挙途中から(その時点でトランプは当選など絶望的だった)、かれを選挙対策陣営に引き入れ、いかにしてヒラリーを攻撃するか、戦術を練った。
 つまりトランプにとってヒラリーが対立候補であったからこそ、当選できたようなものだった。
開票日でさえ、スタッフはトランプの当選を予測しておらず、選対本部長のフリーバス(共和党全国委員長)などは荷物の片づけをはじめていたほどだった。
 奇跡が起こった。
 トランプを思想的に支え、ヒラリー攻撃の戦術を編み出した男は、ホワイトハウスを去っても国際的な影響力を保ち続け、香港から北京へ、日本にも講演旅行でやってきた。最近はパリにも表れ、ルペンに助言した。北京でバノンは王岐山と面会したかと思うと、米国へ帰って、王岐山を批判してやまない亡命者と面会する。
本書は陰でトランプ選挙を濃厚に支えた、波乱万丈で「危険な男」、スティーブ・バノンの物語である。

 ▲本書からも予測される今後のトランプ政権は中国に厳しくなる

 さて本書のなかにバノンがトランプにもっとも影響を与えたとされる中国観である。
 トランプはティラーソン国務長官を更迭し、ゲリー・コーン国家経済会議委員長を更迭し、さらにはマクマスター安全保障担当補佐官も馘首して、ポンペオ、ナバロ、ボルトンをそれぞれ後任に宛てるとした。
 いずれも対中国タカ派人脈であり、この人事を見ても、これからの米国の対中国政策の大変化が予兆される。

 著者は、バノンの対中国観を次のように述べている。
 「メディアは、移民やイスラム教に対するバノンの過激な考えに焦点を当てる」のだが、それらはバノンにとって脅威には値しない。
 いったいバノンの認識における脅威とは、「台頭する中国に技術移転を強いられた結果、アメリカの経済力は今後十年のうちに搾り取られ、見る影をなくしていくはずだとバノンは信じて疑わない。そんなことになれば、時を置かず中国が世界を牛耳る。この恐怖のシナリオはすでにある段階に達したと考えている。バノンが『蕃族の管理』と呼ぶものだ。(中略)トランプが打ち出した政策の核心はこの脅威に対抗するために築かれている。『経済ナショナリズム運動の狙いは中国に対抗すること』」
なのだと分析している。
 かくして「バノンはトランプに世界を授けていた。理路整然として、内容も首尾一貫した世界観だ。トランプ自身が唱える貿易と他国への脅威も取り込まれており、トランプによって最終的に『アメリカンファースト』と命名されるナショナリズムである」(81p)

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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1705回】               
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(12)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

        ▽
 いかに中国経済が規模を膨らましたとはいえ、現時点で持ち上がっている一帯一路構想の全体を完成させるほどの財政負担に耐えることは難しい。
だが、3割程度なら可能だろう。ユーラシア大陸全体をネットワークするなどと打ち上げているが、最終的に周辺の東南アジア、中東、中央アジア程度を固め、自らの物流ネットワークに組み込んだだけでも「大成功」となるはずだ。
なにせ、一帯一路構想を打ち出す以前は何もなかった、つまりゼロの状態だったわけだから。

 であれば日・米・豪・印の4カ国は、習近平政権が打ち出す威勢のいい一帯一路ではなく、彼らの真の狙い、いわば腹の底を見据えてピンポイントで潰しにかかるべきだ。

  ここで話を中国人が考える史書と国土の関係に戻し、「日本の読者に、一人の中国人研究者がいかに『中国』、『中国史』、『中国文化』を理解しているかを分っていただきたい」。「いかに理性的に中国とその周辺の現実を分析しているかを理解していただきたい」と「懇願」する葛兆光の議論を紹介しておきたい。

  彼は『中国再考  その領域・民族・文化』(岩波現代文庫 2014年)で、以下のように主張している。

 ――古来中国人は「『中国』は『四夷』〔周辺民族〕を見下して然るべきであり、中国文明は四辺の戎夷狄蛮に遥か影響を与え、教育すべき立場にある」という「天下観」を自明の理としてきた。だが史実を冷静に判断すれば、この考えは間違いである。古代から周辺の国家や民族の存在を認め往来し、必ずしも自分たちだけが圧倒的に優れた文明を持っていたというわけではない。たとえばインド渡来の仏教は、確実に中国文化の根幹を形成している。「だが残念なことに、どういうわけかこれは古代中国人の根強い『天下観』を真の意味で変化させることはな」く、自省なきままに「中国の歴史は世界の歴史となった」。

 中国が抱き続けた「天下像は、中心だけが明確で、四辺はぼんやりとしている」。その「明確」な「中心」に王朝政権という絶対的な政府(政治権力)を置き、「今に到るも一部の人は無自覚に政府を国家とし、歴史的に形成された国家を不変の真理として祖国への忠誠を求める。そのために多くの誤解、敵意、偏見が生まれるのである」。

 「『中国台頭』による興奮と高揚感」を背景に、「中国が長期にわたって受けた屈辱と圧迫に対する激しい反抗から」、?「我々は現在より遥かに多くの資源を管理し、経済的に管理、政治的に指導しこの世界を導かねばならない」、?「未来には中国人が政治的に全人類を統一して世界政府を樹立する」、?「現在の『中国』が近代ヨーロッパをモデルとする『民族国家』を超越し、現実的合法性と歴史的合理性があるものだ」といった論議が「時にイデオロギー的支持を得ている」――

 葛兆光は現在の中国のイビツな姿、敢えて表現するなら「超巨大夜郎自大帝国路線」を、以上のように描き出している。
その典型が一帯一路だろうが、この趨勢が続くなら、いずれは「『天下』観念が激化され、『朝貢』イメージを本当だと思い込み、『天朝』の記憶が発掘され、おそらく中国文化と国家感情は逆に、全世界的文明と地域協力に対抗する民族主義(あるいは国家主義)的感情となり、それこそが本当に『文明の衝突』を誘発することになるであろう」との危惧が、いずれ現実のものとなる可能性は大だ。

  葛兆光の主張を敷衍するなら、歴史的にも実態的にも単一民族として存在したことのない中華民族なる妄想の誤りを素直に認め、一切の妄動を即刻中止せよ。そうしてこそ中国は世界の中の中国として生き残れる――となろうか。こういう真っ当な考えが中国全般で受け入れられるはずがない。
ましてや習近平政権において。そこが・・・大問題。


【知道中国 1706回】     
 
毎度のことながら道草を食ってしまったが、ここらで内藤に戻ることとする。
内藤が中華民国という国名を考え出した章炳麟の領土に対する主張に疑義を示し、中華民国の承認問題を論じた「中華民国承認について」を「大阪朝日新聞」に発表したのが明治45年3月半ば。その直後、明治天皇崩御から大正天皇御即位へと時代は大きく転換する。明治大帝の御世が終わり、いよいよ大正デモクラシーの時代が始まろうとしていた。
 
慌ただしく時が過ぎたであろう大正元(1912)年の8月1日、内藤は雑誌『太陽』に「支那の時局について」を発表した。
 
「近頃、人に逢うごとに、支那は一体どう成るのだろうという質問を受けることがしばしばである」と、内藤は切り出す。
 
古い中華帝国の清国を革命し新しい共和政体の中華民国が建国されたとはいえ、まだ海の物とも山の物とも判然とはしない。一衣帯水・同文同種で形容される関係の、しかも膨大な人口と広大な国土を持った隣国である。その国の動向に「一体どう成るのだろう」と関心を払うのは当たり前だが、じつは昔も今も日本人にとって中国は謎だらけ。敢えて表現するなら終始一貫して魑魅魍魎の棲む世界といったところだろうか。
 
そもそも「一体どう成るのだろう」との質問については、「支那現勢の漠然たるがごとくまた漠然たる質問であり」、それに一言で満足させられるように答えることは不可能だ。「遠き将来まで貫通して支那がどうなるという問題に解決を与うることは、今日において決して容易なことではない」。だが現状から判断して、「それがどういう風に傾いて行くだろうかということは必ずしも測定し得られないことではない」と。
 
この辺りの指摘は、現在のみならず将来における中国論議にも――ということは過去・現在・未来を一貫して通ずるといえそうだ。
 
いわば国内最強の軍事力を手にして大総統に就任したものの、「袁があまりに八方美人主義を取りて何もかも穏便に事を纏めようとするのが、現在の支那の形勢を不安の地に陥るる最大原因である」。日本はじめ関係諸国は「袁の手腕に信頼しておる傾きがあ」り、「支那の統一」は彼によって達成可能と思い込んでいる。だが、「この推測は恐らく的をはずれるのである」。その根拠を内藤は次のように示した。
 
北京、南京、武昌、広東、奉天と「支那には五つの中心があ」り、「この五つの中心が屹立しておる次第」だ。「袁は大総統という空名を擁しておるけれども」、その権力の及ぶ範囲は北京を中心とする極めて限られたものでしかない。「各省とも皆財政に苦しむと?言うるけれども、その実、北京以外の四中心の各地においてはさほど甚だしい窮乏を感じていないのである」。つまり袁世凱がトップに坐る北京の中央政府を当てにしなくても地方は地方で独自にやっていけるわけだから、大総統なんぞクソ喰らえ、となる。いわば名前は中華民国と共和政体を取り繕いながらも、近代的統一国家には程遠いのである。
 
じつは「袁には妙に人を引きつける魔力があると云われておる」り、「北京に這入って来たものは、誰も彼に籠絡されてしまう」。そこで「統一は出来ない」ものの大混乱になっているわけでもない。ここで袁が度胸を決めて諸外国からの大借款を受け入れ中央政府の財政基盤を強化し、「大借款を利用して外国人をある程度まで使用して」、複雑な税制度を抜本的に整理し中央政府に一本化することが「支那財政の将来のためには非常な利益を齎すかもしれない」。つまり「北京以外の四中心」の持っていた徴税権力を取り上げることで、その権力基盤をなし崩し的に弱体化させることが統一へのカギということになる。だが「袁の老猾なことは十分わかるが、その度胸の無いこともまた、明か」というのだ。                      
《QED》
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)大阪の愛読者の皆さんへ日亜協会月例会の案内をさせて頂きます。御興味のある方はどうぞ。
 スローガン国家である中国国内では数年前から「中国の夢」という大看板がどこにでも出ているが,昨年10月の党大会で総書記の任期を撤廃,現在開催中の全人代の憲法改正で国家主席の任期も撤廃し,習近平主席は終身独裁者になる。
矛盾を内包した中国が今後,習近平主席のもとでどこへ向かうのか,平成の蘭渓道隆たる石平先生にお話を伺います。
記        
日時:4月9日(月) 18時開場 18:20〜20:30(講演と質疑)
会場:大阪市立総合学習センター(大阪駅前第2ビル)5階 第4研修室
会費:千円 (非会員二千円),学生200円
   二次会:2階北西隅「ほくだい北大会館」(酒・軽食つき交流会 千円(非会員も同じ)
演 題: 「中国の夢はアジアの悪夢」
講 師: 石平 ( 評論家 )
   <講師プロフィール> 昭和37(1962)年中国四川省生れ.北京大学哲学部卒業後(在学中から中国の民主化運動に情熱を燃やす),四川大学哲学部助手・講師を経て昭和63(1988)年日本へ留学.翌年日本在住中に6・4天安門事件に遭遇,中国と訣別.平成7(1995)年神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了.民間研究機関に勤務の後,評論活動に入って,『Will』『正論』『Hanada』『産経新聞』等で執筆.著書も『私はなぜ「中国」を捨てたのか』『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(山本七平賞)などご本人も解らなくなるほど多数,最新刊に『習近平の終身独裁で始まる中国の暗黒時代』がある.平成19(2007)年11月30日日本に帰化,翌平成20(2008)年1月3日伊勢神宮に参拝,日本民族の一員となったことを報告,同3月24日故中條高?氏と共に靖国神社昇殿参拝.早くから日本の風景写真撮影に目覚め,ツイッターで「石平が観た日本の風景と日本の美」を連載,『Will』の「Photo Essay」連載中。
 参加事前申し込みは必要ございませんので、当日直接会場までお越し下さい。お問い合わせは、072-922-5331 又は
info@jas21.com(林まで宜しくお願い致します)。



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(読者の声2)第38回 家村中佐の兵法講座 兵法書として読む『古事記』『日本書紀』
 日本最古の史書とされる『古事記』『日本書紀』には、遠い昔から今に伝わる日本人の戦争観や武力行使のあり方、優れた戦略・戦術や軍隊の指揮・統率など、現代社会においても十分に役立つ最高の兵法書としての教えが数多あります。
今回の兵法講座では皇統断絶の危機を救うため、応神天皇五世の孫・継体天皇が擁立された経緯、筑紫国での「磐井の反乱」鎮圧、複雑化する朝鮮半島との関係、蘇我氏と物部氏が勢力を拡大する安閑天皇・宣化天皇の治世などにつきまして、図や絵を用いながらビジュアルに、分かりやすく解説いたします。

日 時:4月28日(土)13:00開場、13:30開演(16:30終了予定)
場 所:文京シビックセンター5階 会議室A
講 師:家村和幸(日本兵法研究会会長、元陸上自衛隊戦術教官・予備2等陸佐)
演 題:第11話 継体天皇から宣化天皇まで
参加費:1,000円(会員は500円、高校生以下無料)
お申込:MAIL info@heiho-ken.sakura.ne.jp
 FAX 03-3389-6278(件名「兵法講座」にてご連絡ください)。
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  • 名無しさん2018/03/25

    <<読書特集>>

    川口マーン惠美著『そしてドイツは理想を見失った』(角川新書) 

    ジョシア・グリーン著 秋山勝訳『バノン 悪魔の取引』(草思社) 

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    夜中に読みながら、眼が覚醒してしまいました。すばらしい書評そして、宮崎先生の分析、ありがとうございます。