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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み << トランプ大統領は郭文貴の政治亡命を不支持

2017/10/10

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)10月10日(火曜日)弐
        通巻第5468号 
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中国の闇の帝王たちに日本の大手銀行が絡んでいた?
 トランプ大統領は郭文貴の政治亡命を不支持
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 爆弾男、郭文貴の衝撃の発言が続いている。
 博訊新聞(10月9日)は、「トランプ政権は政治亡命申請のでている郭文貴の米国受け入れに不支持」と報じている。
しかしトランプ大統領はこの問題で、これまで一度も発言をしたことがない。

 前々から噂があったのは安邦保険のボス=呉小暉が米国逃亡直前の郭文貴に1億ドルを貸したとされる情報だ。
これは日本の某銀行の収賄が絡んでいると博訊新聞(10月8日)に報じているが、呉といえばトウ小平の孫娘と再婚し、「紅二代」に躍進したたぐいまれな政商の一人であり、ウォルドルフアストリア・ホテル買収ほか、クシュナー夫妻との面会経歴など、メディアの話題を集めた。
 この呉小暉は当局の手で拘束されたままである。

 郭文貴は同じく拘束されたインサイダー取引の元締め=肖建華と組んで、共産党幹部らの資金洗浄に手を貸して、その裏を知り尽くしているが、なかなか証拠が挙がらない主因は、郭と肖が組んで新しい手口で資金を隠匿したかららしい。

 郭文貴は金貨(クルーガーランドコイン)を大量に購入し、ほかにドルの現金などを直接運搬した。
 つまり郭が自家用ジェット機や豪華ヨットを富の象徴として保有していたのではなく、これらによって資金洗浄後の外貨ならびにゴールド・コインを諸外国から諸外国へと運搬に利用した可能性が濃厚だという。
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1639回】        
――「独逸の活動心憎きまで?溂たるものあるを感じた」――(米内山5)
  米内山庸夫『雲南四川踏査記』(改造社 昭和15年)

      ▽
  昆明に近づく汽車の中で「日本語のよく分る學生服を着た支那人」に出合う。数日前に言葉を交わした岩倉鉄道学校生徒の兄で「東京高等師範學校の學生」だという。

  昆明に着いて米内山が世話になったのは「南門外の保田商店」である。保田商店が何を商っていたのかは不明だが、当時の昆明は日本と密な関係を持っていた。昆明には「日本人の?習が多く、農業學堂などは殆ど日本人の?習で持つてゐるといふ有様でありまた、日本の士官學校に相當する雲南講武堂なども、日本人の?習こそゐなかつたけれども、校長初め?官は殆ど全部といつていゝほど、日本の陸軍士官學校出身の人々であつて、私共を大いに歡迎した。私は雲南の日本色の濃いのに驚いたのであつた」。
かくて「雲南は極めて好い印象を私に與へた」のである。

  ここで米内山の旅から少し離れ、日本と雲南の間の関係が最も緊密だった頃を振り返っておきたい。
 米内山が言及する雲南講武堂は、正式には雲南陸軍講武学堂と呼ばれ、20世紀初頭に設立されている。共産党政権成立の元勲たる朱徳や葉剣英も学ぶなど、清朝打倒からの辛亥革命から共産党政権成立までの激動の20世紀前半の歩みを語るうえで欠くことのできない人物を輩出している。

 じつは清末の清朝打倒を掲げた革命運動の中心の1つが雲南であり、その原動力こそが日本の陸軍士官学校に留学した若き将校たちだった。彼らが徹底した軍人教育を施された日本の士官学校こそ彼らの母校であり、であればこそ彼らは母校に倣って昆明の地に雲南陸軍講武学堂を創立したのである。
古来、「好鉄不当釘 好人不当兵(いい鉄は釘にならない、いい人は兵にならない)」と形容されるように匪賊と五十歩百歩であり社会のクズ以下の存在でしかなかった兵士を、日本式に徹底して教育し立派な戦士に鍛造したのである。

  ここに加藤信夫が馳せ参じた。東京で革命工作を続ける孫文などに共感したことから陸大を退学させられたうえに剥官処分を受けた加藤は、体育学校を創設し主任として講武学堂の予備教育に力を尽くす。
ある本に「雲南における(清朝打倒)革命の成功は、氏の功績に負ふところ少なくなかった」と記されるほどだ。

  辛亥革命によって清朝が倒れた後にアジアで最初の立憲共和政体の国として誕生したのが中華民国だが、この時代、雲南を基盤に中国政治に影響力を発揮した人物の1人が唐継尭である。彼もまた日本の士官学校に学んだ親日家であり、山縣初男以下数人の日本人を顧問として招請し、省の財政・軍事などを委ねた。

  大正初年頃から末年までのことだが、昆明には100人を超える日本人が在住し、日本から大工や左官を呼び日本流の座敷を作り、雲南省政府高官の邸内には桜が植えられ、村上洋行、安田洋行の両商社のもあった。
当時、昆明の湖には日本から持ち込まれたモーター・ボートが浮び、さながら昆明の日本人にとっての黄金時代だった、とか。

  ところで極東軍事裁判で絞首刑の判決を受け、昭和23年12月23日に巣鴨プリズンで処刑された板垣征四郎(明治18=1885年生まれ)だが、その軍歴を追ってみると、陸大卒業後の大正6(1917年)8月6日に参謀本部附仰附の辞令を受け昆明に向っている。

2年ほどの滞在の後、漢口に転じた。関東軍参謀長、第5師団長、陸軍大臣、支那派遣軍総参謀長、朝鮮軍司令官、第17方面軍司令官、第7方面軍司令官などの要職を歴任した彼は、在中華民国公使館附武官補佐官、奉天特務機関長なども経験した。

極東裁判では板垣と並んで帝国陸軍を代表する「支那通」で知られた土肥原賢二、松井石根も絞首刑となっているが、偶然の一致というより復仇――“狙い撃ち”であり“見せしめ”ということだろう。
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴著「西郷隆盛」を拝読しました。
自刃した西郷隆盛と三島由紀夫の二人に通底する日本精神について考察したところが宮崎さんの真骨頂といったところでしょうか。
 現在解散総選挙中ですが、政権メンバーに私心を捨て最後は死んでもいいという人が集まらないと歴史は転換できないものではないでしょうか。
 岩倉具視、伊藤博文、大久保利通、木戸孝允、山口尚芳など政府首脳陣を含む107名の岩倉使節団が渡航中の明治4年(1871年)11月から明治6年(1873年)9月の約2年間留守を預かった西郷隆盛参議留守内閣は、米国GHQ製の日本国憲法を70年間そのまま有難く祀っている今の日本人には考えられない猛烈な大改革を断行しています。
 西郷留守内閣は、その2年の間に廃藩置県を施行し、戸籍を整備し(壬申戸籍)、地租改正条例を布告し、太陽暦を採用し、徴兵制を布告し、と矢継ぎ早に施策を実行します。

武士道精神を失い、三島さんのいう「無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない」日本人であふれている平成の御代にて、このような大改革法案を掲げた上で解散総選挙をしたならば政権惨敗必定です。
西郷留守内閣は、さらに陸軍省・海軍省の設置、学制の発布、国立銀行条例公布など大改革を断行し、他方、自由平等をも標榜し、華士族と平民の婚姻許可、人身売買禁止令、被差別部落解放令、散髪廃刀の自由、仇討ちの禁止令、などを次々に発布。実に濃い2年間です。
これら一連の改革が、徴税の公平化、高度教育人材の輩出、富国強兵、日清日露の勝利、等に結実し、黄色人種で初めての一等国と世界に認証され、俗にいう坂の上の雲を追い駆け上がる際の体力づくりの布石となります。
まさに、私心を捨てて政務を全うした西郷隆盛留守内閣首相の賢人政治のなせるワザではないでしょうか。
 士気士魂を失った高齢者と怯懦な若者の群なす平成日本。その日本人に正気を取り戻すきっかけを与える良書です。
   (KU生 杉並)



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(読者の声2) 講演会三つのお知らせ
 三つともほぼ同じ話をしますが、本邦初公開、驚く話しばかりです。必見です。いずれか御都合良い方にご参加ください。事前連絡不要、直接お越しください。懇親会あり、講師も参加。
 ★日時10月14日(土)午後1時30分〜5時
 場所 JA共済埼玉ビル第11会議室(大宮市土手町1-2 大宮駅東口下車左(北方へ線路沿いを歩いて10分)
 講師 村田春樹
 演題 皇位継承に関する諸問題 譲位・憲法そして三島由紀夫
   講演に先立ち 参議院議員和田政宗先生より国会報告
 参加費 無料
 主催 日本の明日を考える埼玉県民の会
 事務局 蓮見一郎(090-3247-3392)
     竹本博光(090-8815-4986)

 
★日時 10月15日(日)午後1時30分〜4時
 場所 船橋市勤労市民センター2階第一講習室
    船橋市本町4-19-6 JR船橋駅中央口を出て南口方面徒歩5分、京成鉄道高架線路をくぐるとすぐ、マツモトキヨシあり、この飲食街を通ってすぐ。
 講師 村田春樹
 演題 皇位継承を巡る諸問題 譲位・憲法そして三島由紀夫
 参加費 500円
 主催 船橋・史の会 愛甲浩一郎(07053754915)

 
★日時 10月18日(水)午後6時開場6時20分開会〜8時30分
 場所 大阪市立総合学習センター(大阪駅前第二ビル五階第五研修室)
 講師 村田春樹
 演題 「楯の会」の遺したもの
 参加費 2,000円(会員は1,000円) 学生200円
 主催 21世紀日本アジア協会(日亜協会) 林(090-3055-5133)



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(読者の声3) 『週刊新潮』10月12日号は「小池百合子の希望・横暴・票泥棒」という特集を組んでいますね。全体的になかなかおもしろいのですが、特に、哲学者・適菜収氏の「大衆扇動の『小池劇場』に熱狂『B層』が日本を滅ぼす」という小論は、ほぼ小生の意見と同じで、共感しました。
 「B層」というのは2005年の郵政選挙の際に使われた概念ですが、適菜氏は「小池は自分はAIだと言いましたが、たしかにそこには人間に備わる良心がない。冷徹で非情で傲慢で卑劣。世の中を混乱に陥れても、反省することはない」「小池の独裁まがいのやり方も、B層はリーダーシップと勘違いする」と述べていますが、こうした形容は、小泉についてもほぼ当てはまるもの、というよりも、小池は、小泉純一郎とせいぜいのところで同類かそれ以下でしょう。小池のパーソナリティは、栗本慎一郎氏が小泉について述べた表現と近似しているように私には思えます。
  栗本氏は『純個人的小泉純一郎論』(2006年9月イプシロン出版企画刊)の中で、小泉について「友人としても政治家としても、中身がなく、魅力もない男」「思考とか、思想とか、苦悩とか、同情とか、人間が人間であるために必要な諸条件のどれをとっても空虚な男」(6)「頭も悪いが性格も悪い。・・・彼はよく『非情だ』と言われるが、それは正確ではない。彼は自分がやっていることの社会的意味をわかっていないだけなのだ」(64)等と述べています。
  この『週刊新潮』10月12日号では、櫻井よし子氏の「政権担当の資格はありや希望の党」という小論もよい。希望の党に政権担当能力などあろうわけがないでしょう。
 さらに、佐伯啓思氏の、特別読物「『核の傘』は日本を守ってくれない」という小論もよい。佐伯氏が「実際、核開発の停止と北朝鮮の体制保障を交換条件とした妥協がなされたとしても、北朝鮮が本当に核開発を放棄するなどとは誰も考えていない。時間がたてばたつほど、北朝鮮の核ミサイルに関する技術は高度化するだろうから、当面の話し合いによる戦争回避が、本当に最善の解決策かどうかもわからないのである」と述べられるのは、次元の違いはあっても(私には、北朝鮮の肥満した若造の低劣さは、ヒットラーと同列に比べるのも愚かなほどのひどいレベルに思えます)、 映画「日の名残り」にも描かれる、チェンバレン融和政策の失敗を想起させます。
 『週刊新潮』という雑誌は、こうした硬派記事もなかなか水準が高いのですね。基本的には一般大衆向けなので、小難しい表現等を避け、簡明に述べられたよい論が多い。
   選挙結果について、10月10日付通巻第5468号見出しでは、「自民党辛勝の展開か」とされています。
  選挙はミズモノでしょうが、私は、自らの期待と願望を込めて、バッジ喪失忌避という自分ファーストの念だけで野合したガラクタ集団の敗北、自民党の勝利(現有議席率の保持または上昇)を「予期」したいと思います。
   (CAM)



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(読者の声4) 国防問題研究会国防講座の記録です。桜林美佐氏(防衛問題研究家・ライター)の「自衛隊の現状と課題」
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 私は今年、著書『自衛官の心意気』をPHP研究所から出版した。一昨年前の平和安全法制成立に伴う集団的自衛権の行使容認を受け、現場の自衛官の気概あふれる姿を書いてほしい、という依頼で執筆したものであり、タイトルは最初から決まっていた。
しかし、なかなか筆が進まず、多くの自衛官に遭って気概を問うているうちに、脱稿まで1年半ほどを要した。この著書執筆を通じて分かったことは自衛隊に対する誤解があることだった。
 これまで自衛隊は「冷や飯食らい」、憲法違反という扱いを長い間受けてきた。その反動からか、近年では自衛隊が過剰な称賛や期待を受けつつあり、そうした見方も修正もしていかなければならないと考えている。

私は先人たちの思いを多くの人に伝えようとして生きてきた者であり、先人たちの「後を頼む」という言葉を胸に刻んできた。現代に生きる私たちにとっては、自衛隊を確固とした組織にしなければならず、そのためにも自衛隊への評価や認識をしっかりしなければならない。率直に言うと、自衛隊は限られた範囲の中で活動してきたので、近年では「・・・しかできない」という冷めた感覚の人が多くなっている。特に三島事件以降、自衛官の意識はニヒリズムや官僚化が進行してきたように思う。
 その一方、自衛隊には私たちの想像を超えた感動や物語があり、いい意味で期待を裏切ってくれ、驚かせてくれるところがある。
 著書『自衛官の心意気』はそうした側面を多く集めたものである。また、夕刊フジの連載をもとにした著書『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出版)は東日本大震災以降の自衛隊の活動を取材したものである。ただし、私のスタンスは自衛隊応援団ではなく、自衛隊はきちんとした組織であってほしい、というものである。

自衛隊の特徴は我慢強い組織であることだが、同時にそれは欠点でもある。たとえば、昨年、政府は南スーダンに派遣される部隊に新任務として「駆けつけ警護」を付与した。これに賛成する側も反対する側もある種の「駆けつけ警護」を過大評価しているというのが私の感想だ。
従来、自衛隊は自己及び自己の管理下にあるものだけを守れたが、平和安全法制成立以降は妨害する相手を排除できるようになった。
これは自らの身を縛っていた100本のロープのうち、1本が解けたようなものだ。
相手に危害を加えるような武器使用は正当防衛と緊急避難のみに限られており、実際は中途半端なものだ。

▼駆けつけ警護の問題点

このため、「駆けつけ警護」は現地で活動中の外国の部隊の足を引っ張ることになるのではないか、という意見は賛成派と反対派の双方にある。実際、現場の自衛官は「駆けつけ警護」が法制化される以前から、必要ならば自らの判断と責任で警護を実施する覚悟でいたのであり、今回の法改正をどのように説明するかという点は自衛隊にとっても難しい問題であった。
 そもそも自分が盾になり、撃たれる覚悟でやってきたという話は陸上自衛隊だけでなく、海上自衛隊にもある。一緒に活動中の米軍が攻撃されたとき、そこに割り込んで撃たれることで正当防衛を成立させるつもりだった、ということは当たり前のように言われてきた。そうした非常識な運用が平和安全法制によって多少改善されたにすぎない。
 陸海空の三自衛隊は性質と出自が全く異なる。陸上自衛隊の起源は朝鮮戦争時に発足した警察予備隊であり、当初は旧軍で少尉以上の階級だった人は入隊できなかったため、軍としての体をなしていなかった。
一方、海上自衛隊の前身である海上警備隊は警察予備隊の1年後に設立された。
当初は海上保安庁と一体となって活動すべきだという意見もあったが、旧海軍の関係者が働きかけた結果、警察と異なる組織として発足することになったのである。
言うなれば、海上自衛隊はうまくやることで誕生したが、陸上自衛隊は厭戦気分が広がっていた時代背景の中、旧軍との違いをアピールすることで誕生したのである。
 その結果、陸上自衛隊の歴史を見ると、ある種の卑屈さや謙虚さがあることに気付く。地域における祭りの支援や援農、部外工事などがその代表例であり、「愛される自衛隊」をモットーにして活動してきたのである。昭和の時代は自衛隊がサービス業のような感覚で地域と密着し、連隊長が毎日酒席を回っていたこともあった。しかし、自衛隊の活動が多角化してきた現在、こうした在り方は見直されるべきだと思う。

 ▼ペルシャ湾派遣から性格に変化が。。。。

自衛隊の性格が大きく変化するのは平成になってからであり、その転機が平成3年の海上自衛隊掃海艇部隊のペルシャ湾派遣であった。もともと掃海艇部隊は下関など、国内での活動を前提としたものであり、小型の木造掃海艇がペルシャ湾に派遣されることは想定外だった。
 しかし、この任務を体験することで、翌年にはPKO協力法が成立し、以後、自衛隊はカンボジアなど世界各地で実績を重ねていくことになる。それまでの自衛隊は自分たちの実力や評価、すなわち、パブリック・ディプロマシーを知らなかったが、ペルシャ湾やカンボジアでの派遣によって、外国から高い評価を受けるようになる。
南スーダンでも自衛隊は外国の軍隊と異なり、休日の際、自主的に子どもと遊んだり、ごみの捨て方を教えるなどしたことが現地で歓迎されることになった。
 PKOで主体となるのは施設科部隊であり、本来の陸軍工兵と違い、道路整備や学校建設などの活動、あるいは現地人に重機の使い方を教える能力構築支援の面で貢献しているのが特徴である。現在、PKO活動の在り方は停戦監視よりも文民保護の方向に変化している。
 道路整備などのニーズはあっても、自衛隊だけがそれに専念することは難しい。こうしたことから、私は今後も自衛隊がPKO活動に従事するのは難しくなるのではないかと思っている。
 南スーダンへの自衛隊派遣は国連を重視するオバマ政権からのプレッシャーによるものであったが、現地の情勢が悪化すれば撤収することは安倍総理も明言していたことである。しかし、現地に派遣されていた自衛官にとっては、情勢が悪化しているときだからこそ現地の人々を守らなければならず、撤収の判断は受け入れがたかったはずである。
 かつてルワンダに派遣されていたベルギーのPKO部隊は学校の警備任務を中断して撤収することになったが、その直後に数千人が惨殺される悲劇が起きた。
当時のカナダの司令官はそれが原因でPTSDに苦しむことになったが、南スーダンに派遣されていた自衛官にも同じ思いがあったはずである。
 なお、PKO部隊が撤収するには本来であれば1年かかるが、2ヶ月で撤収できたのはNSC(国家安全保障会議)を通じて、省庁間の連携がうまく機能したためである。

現在、自衛隊はどのような進化をたどっているか。まず、その大きな流れの一つが統合運用であり、今年で10年目を迎える。
軍の統合運用はアメリカ、イギリス、オランダ、中国、カナダなど世界的な流れであり、陸海空軍に加え、サイバーや宇宙、電磁スペクトルがクロス・ドメインした形が常識になりつつある。

▼陸自削減論は誤り

なお、現在の日本には日本経済新聞や読売新聞のように防衛費増額には賛成しつつ、陸自削減を求める論調が見られるが、これは誤りである。
 日本の統合運用は比較的にうまくいっており、その最も大きな理由として陸海空に分かれた士官学校と異なる防衛大学校の教育がある。
また、災害派遣も陸海空の三自衛隊が一体になって取り組んでおり、ミサイル・ディフェンスもその方向で進むと思われる。平成25年に国家安全保障戦略が策定され、これを受けて防衛大綱や中期防衛力整備計画が作成されるようになった。平成26年にはNSC(国家安全保障会議)が設立されており、今後、防衛力整備の上で実効的な組織になることが期待されている。

そして自衛隊が進化していく上でのもう一つの変化が防衛省改革、すなわち、UC一体化である。Uはユニフォーム(制服組)、Cはシビリアン(背広組)のことである。かつては自衛隊のトップが単独で総理と会談することはできなかったが、現在では総理と頻繁に会うことができるようになった。
 平成27年に内局の運用企画局が廃止されて統合幕僚監部に吸収され、その結果、統合幕僚長が総理や防衛大臣を直接補佐するようになった。これはミサイル危機に象徴される時代の変化を背景としたものであり、わざわざ内局を通さなければいけない時間を省略するためである。
 次にヒト・モノ・カネの現状について見ていきたい。
防衛費が増額傾向にあることは事実だが、その44%は人件費と糧食費である。自衛官は特別職国家公務員であり、人事院勧告に対応して給与が上がり、これによって防衛費が増額されるのは当然である。
 防衛費の3割を占めるのが装備品についての支払いであり、単年度ではなく、ローンで分割して支払っている。そして、残り3割が一般物件費であり、その大部分は基地対策費や米軍への「思いやり予算」である。
また装備の維持費も大きな負担になっており、新規装備の購入費や研究費にあてられる予算がごく僅かである。したがって、防衛費は増額傾向にあるとはいいながら、純粋に自衛隊のために使われている予算は少ないのである。その結果、トイレットペーパーなどの必需品や食事の内容に加え、営内には空調がないなど、自衛官は厳しい生活を強いられているのである。

 ▼定員に比して二万人が不足している

 現在、陸海空の三自衛隊を合わせると、定員に比して2万人近くの自衛官が不足している状態であり、海上自衛隊だけでも3000人近く不足している。2日に一度は当直が回ってくるような過酷な勤務状態が続いていることは深刻である。自衛官の数を減らしてきたのは自民党政権であり、最近になって数百人増員しても追いつくレベルではない。
 自衛隊への志願者が減った原因には少子高齢化、有効求人倍率の上昇、警察官・消防官の待遇改善がある。最近は女性の社会進出に対応して女性自衛官の採用枠を増やしているが、厳しい予算状況を考えると、少数の女性自衛官のために施設を改装する余裕はないはずだ。 

最後に防衛産業をめぐる問題に言及しておきたい。さきほど述べたように、近年になって防衛費は増額傾向にある。
しかし、調達されている装備品は国産ではなく米国製のものばかりであり、この傾向はトランプ政権に交代してから強まっている。イージスアショアはいいにしても、オスプレイやグローバルホークを購入することはリスキーだと思っている。
F35戦闘機も日米共同開発とはいいながら、最終組み立てをする三菱重工は下請け的な役割である。折角、日本が培ってきた防衛産業が今になって手放しつつあるのが現状である。
 こうした状況を打開するため、日本国内では武器輸出に期待が集まっているが、日本は純粋な軍需産業があったわけではなく、防衛産業は大企業の一部門でしかない。
防衛産業と呼ばれる企業も防衛依存度は平均で約4%にすぎない。ようやく3年前から日本企業も海外の武器展示会に出展するようになったが、イメージ面も含め、武器輸出に対する企業の取り組みは消極的である。
 しかも実際に輸出することになった場合の設備投資も大変である。新明和工業が開発した飛行艇であるUS2をインドに輸出する計画があるものの、インド側の関係者を自衛隊の施設に入れるのはどうすればいいか、US2をインドまで持っていくにはどうすればいいかなど、日本国内の法的基盤や資金援助体制は整備されていないままである。
 このように防衛装備品の輸出は産業的なメリットはないものの、外交上のツールとしては有効な面がある。企業に丸投げするのではなく、政府が支援する体制を整えることで、現状を改善していく必要があると考える。
                      (三島由紀夫研究会事務局速記)
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『トランプ熱狂、アメリカの反知性主義』(海竜社、1404円) 
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『吉田松陰が復活する』(並木書房、1620円)

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<宮崎正弘の対談・鼎談シリーズ> 
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宮崎正弘 v 室谷克実『赤化統一で消滅する韓国、連鎖制裁で瓦解する中国』(徳間書店) 
宮崎正弘 v 室谷克実『悪あがきを繰り返し突然死の危機に陥る中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 室谷克実『日本に惨敗しついに終わる中国と韓国』(徳間書店) 
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店、以上4つは1080円) 
宮崎正弘 v  石平 『いよいよ、トランプが習近平を退治する!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 石平『私たちの予測した通りいよいよ自壊する中国』(ワック、994円) 
宮崎正弘 v 渡邉哲也『世界大地殻変動でどうなる日本経済』(ビジネス社、1404円)
宮崎正弘 v 渡邊哲也『激動する世界経済!』(ワック、994円) 
宮崎正弘 v 福島香織『暴走する中国が世界を終わらせる』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 高山正之『日本に外交はなかった』(自由社、1080円)
宮崎正弘 v 馬渕睦夫『世界戦争をしかける市場の正体』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 宮脇淳子『中国壊死』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 石平、福島香織『日本は再びアジアの盟主となる』(宝島社、1296円)
宮崎正弘 v 石平、福島香織『中国バブル崩壊の全内幕』(宝島社、1296円)
宮崎正弘 v 田村秀男、渡邊哲也『中国経済はどこまで死んだか』(産経新聞出版) 
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創刊日:2001-08-18  
最終発行日:  
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