国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み <トルコがNATOから離脱する動き、イランはロシアと組んで快哉

2017/07/26

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)7月27日(木曜日)
        通算第5369号  <前日発行>
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 麻のように乱れ、混乱、カオス。収拾がつかない中東情勢
  トルコがNATOから離脱する動き、イランはロシアと組んで快哉
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 中東混乱の表層的な原因はシリア、そしてシリア難民がEU諸国にあふれ出したことによる治安の悪化、テロリズムの跳梁跋扈にあるが、地下水脈では中東の覇権をめぐるサウジ、イラン、そしてトルコのヘゲモニー争いである。
ここにNATOとして、米欧がからみ、ロシアが参入し、漁夫の利を狙う中国が虎視眈々と機会を狙っているという構図である。

そのうえ、トルコは反欧米を鮮明にしてロシアへ急接近した。従来の発想にはない、クリミア半島をめぐる露土戦争以来、反目しあった露土が突然仲良くなり出したのだから、国政情勢まさに複雑怪奇、一寸先は闇である。

 とくに注目はトルコとドイツの関係悪化、凄まじい不協和音が鳴り響き始めたことである。
 戦後、ドイツは労働力不足のためトルコからの出稼ぎを受け入れた。その数およそ200万人、ドイツ各地にトルコ族コミュニテイィがあるが、クルド族が混入している。
 この列に、16年のクーデター未遂で失脚した軍人、反政府活動家ら多数がドイツに亡命し、反エルドアン運動の拠点と化したことである。

 レジャップ・タイイップ・エルドアン大統領は、欧米のメディアから独裁者と批判されている。
 底流に流れているのはイスラムへの反撥といえる。ケマル・アタチェルクの建国の精神は宗教と政治の峻別、それによる近代化だった。しかしエルドアン政権になると、イスラム回帰が顕著となった。
イスラム世俗社会にさようなら、というわけである。

 エルドアンはインターネットの検閲とメディアへの介入を強化したため、ドイツ人特派員を逮捕し、さらにトルコで人権問題の活動をしていたドイツ人を拘束した。
このためドイツの人権批判はオクターブを挙げて、独裁者だとエルドアンを非難し、さらにはインジルリク基地からドイツ空軍が撤退する時代への発展した。

 エルドアンはシリア難民を大量に抱えるため、密出国の手綱を緩めた。このため百万人を超えるシリア難民がドイツへ雪崩れ込んだ。

 トルコの主張を聞こう。
 「ドイツにトルコを暗黒に染める力はない」(エルドアン。7月21日)。
 「ドイツがトルコへ経済制裁を課すなどと、身勝手なことを言っているが、もしそうなるとトルコへ進出しているドイツ企業700社は路頭の迷うことになるだろう」。
 ユーロ加盟国ではないトルコは通貨安のため、ダイムラー、BASFなど、ドイツ企業大手が進出している。

 トルコの主張はドイツに厳しくなった。
 「ドイツのいうトルコの民主化とはEU化でしかなく、トルコは歴史伝統があり、文化的な独自性を破壊するような動きには反対だ。中東の緊張を高めているのはどこのドイツだ?」

 こうした主張には長年、EU加盟を申請しながらもイスラム国家が原因と見られる反対にあってきた。
このためトルコはEU加盟をなかば諦め、またユーロ加盟の道は閉ざされた。ならば、NATOに留まる必要はあるのか?という怨念がトルコ国内に広がる。


 ▲ロシア、このトルコの弱みにつけ込んだ

ロシア要素が加わった。シリア空爆に参加したロシアは、勢い空爆の主導権を横取りした。
理由は簡単で、米軍はISが民間人を楯にしたテロ拠点には攻撃を加えない。人道上、民間人の犠牲を増やさない方針だから、攻撃に米空軍は出撃しても90%は攻撃しないで帰還する。
ところがロシアの空爆は人質もろとも攻撃する。

したがってロシアはシリアで主導権を握り、米国と対等な立場を確保したのである。そのうえ、ロシアはイラクへ大量の武器を供与した。イラクを解放したのは米国ではなかったのか。 
米国は対抗措置として、ウクライナへ最新兵器の売却をきめてプーチンを苛立たせたばかりだ。

 そのロシアがトルコへS400ミサイル供与を決めた(支払い条件で最終的折り合いがついていない)。トルコはNATOの重要メンバーとして、イタリアとフランスと共同開発でミサイルを開発してきたが、この開発プロジェクトとの関連はどうなるのか。
 「トルコはもうひとつのイランだ」(中東フォーラム、6月20日付け)。

 とくに米国は中東の軍事バランスが崩れかねないとして、トルコのS400導入に反対しているが、「ギリシアにはS300が配備されており、いったい何が問題か?」とエルドアンは米国にも楯突く。

 シリア国内ではクルド武装勢力へ米国が武器を供与したが、戦闘はおわりに近いのでクルドから武器を回収せよとトルコが要求する。欧米はトルコのクルド族弾圧に転化されるとして応じていない。クルドは独自の軍事的動きを見せる。

 シリアのもう一つの要素はドルーズである。この少数派だが政治的影響力のあるコミュニティをいかに扱うのか? アサド政権を支えるのはロシア、イランである。そのアサド政権の支配階級はドルーズが多いのだ。


 ▲サウジがカタールと断交

 サウジアラビアが主導し、周辺国が呼応してカタールと断交した(6月4日)。
経済的な封じ込めを行っている。この行動にUAE、エジプトなどが加わって、物流、航空機乗り入りを中止したため、実質的な兵糧攻めに遭遇したカタールに緊急に食料を届けているがイランとトルコという新しい図式が産まれた。

 エルドアンは七月初旬、クエート、サウジを訪問し、カタールのドーハに入り「話し合いが重要」とした。米国より先に仲介に乗り出したのだ。この動きを米欧は不快に見ている。カタールには米軍が駐留しているが、トルコ軍も150名の軍人がカタールに駐屯している。

サウジのカタール封じ込めはカタールがISを支援し、迂回路で資金も提供してきたとされ、しかもアルジャジーラが、あまりにもリベラルであることへの不満が鬱積していた。

しかし真の狙いはイランへの対峙にあり、カタールが陣営のなかで歩調を合わせないことに苛立ちが募っていたのである。
米国は明確にサウジを支援しつつも、カタールへの封じ込めには反対であり、ティラーソン国務長官は、サウジ、UAE、エジプトなどに対してカタール封じ込め解除を訴えた。

 ところが、肝腎のサウジ王家に内紛が絶えず、副皇太子が辣腕をふるい始めたため クーデターもしくは反政府内乱の噂が絶えなくなった。
憂慮する米国は、トランプ大統領が初の外遊先に、サウジアラビアを撰んだように、大きな波乱要因なのである。


 ▲「トルコのルペン」登場

 もっか、トルコにおいて強圧的なエルドアン政権への挑戦者はいるのか。
 弱い野党、クルド政党、そしてクーデター失敗によってエルドアンの政敵およそ十万人が追放され、ネットは監視され、反政府運動は身動きが取れない。

 こうした状況下で注目さているのがメラル・アクセナー女史(前内務大臣、元国会副議長)だ。
彼女は1996年に「真実も道」党から国会議員に当選し、注目された。内務大臣から国会副議長もつとめており、現在61歳。印象は若々しい。一部は彼女を「鉄の女」として期待する。

アクセナーは、いま新しい政党を準備中で、「いつでも挑戦する用意はある」と表明しており、2019年に予定されているトルコの次期大統領選挙に新党から立候補し、エルドアンに立ち向かうという(TIME、2017年7月31日号)。

 アクセナーはTIMEが「トルコのヒラリー」を呼ぶほどに民主的、リベラルかと言えば、政治信条は愛国者。前に所属したのは「愛国者行動党」であり、その頃はナショナリストとしての政治行動が多く「トルコのルペン」と呼ばれたのだ。

 法治が重要であり個々の政策をめぐって右か左かという色分けは時代錯誤だと語るアクセナーはクルド族の独立には反対であり、政治イデオロギー的には振幅のぶれが大きい。

 しかしトルコにあって、強引な憲法改正リフレンダムに打って出て辛勝したエルドアンの遣り方に不満が高まっており、テロも頻発して国際空港もアンカラの目抜き通りでもIS共鳴者の爆破テロがあった。
国内的にもトルコ政治は安定を欠いている。かくして麻のように乱れ、混乱、カオス。収拾がつかないのがこんにちの中東情勢である。

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 ▼読者の声 ▼どくしゃのこえ ■READERS‘ OPINIONS ●読者之声
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      記
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2.記憶と慰霊の国民集会
   午後3時受付開始/3時30分開演(終了5時40分)
   新国際ビル9階(日本交通協会大会議室)千代田区丸の内3-4-1 電話03-3216-4081
   【交通】JR有楽町駅「国際フォーラム口」から徒歩3分
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   【参加費】2千円 (参加予約不要。直接会場にお越し下さい)
http://tsushu.sakura.ne.jp/archives/119

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  • 名無しさん2017/07/26

    麻のように乱れ、混乱、カオス。収拾がつかない中東情勢 トルコがNATOから離脱する動き、イランはロシアと組んで快哉→中東情勢、よくわかりませんが、情報ありがとうございます。