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宮崎正弘の国際ニュース・早読み< 「チベットの現状と今後の運動展開」(その1)

発行日:3/23

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成29年(2017)3月23日(木曜日)弐
        通算第5233号   
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「チベットの現状と今後の運動展開」(その1)
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アジア自由民主連帯協議会 会長 ペマ・ギャルポ氏

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 五十数年間、私たちは毎年この時期に、来年、ラサで乾杯しようと言い続けてきました。きょうの題は「現状と今後の活動展開」ということですが、まず何よりも言わなければならないのは、これから話すことはすべて私個人の責任であるということです。もちろん、かつては政府の一員としてやってきましたが、特に政府、または活動している人たちを代表して話しているのではないことを前置きしたいと思います。
  日本で50年間生活をして、本来であればそろそろきょうの演説あたりで独立に向けてとか、あるいはこういう国をつくりたいというようなビジョンがあれば一番いいのではないかと思いますが、残念ながら60年近くなっても、チベット問題は悪化することがあってもあまりよくなってはいないと思います。

もし、何か評価できるものがあるとすれば、チベット問題が世界的に一応分かるようになった。これは評価できることだと思います。
  ただ残念ながら、なぜそもそもチベット問題なのかということを考えると、やや喜べない部分もあります。
なぜかというと、いまチベット問題で一生懸命にやってくださっている方々は、環境問題や人権問題を一生懸命にやっています。もちろん、これも大切な問題です。しかし、そもそもチベット問題とは何かというと、一国の独立国家が他の国に侵略された。そして、その独立をもう一回取り戻そうというのが本来のチベットの目的であり、またそれが目標であるべきだと思います。

  そういう意味では今もう一度、われわれも考えなければならない時期に来ているのではないか。
幸いにしてというか、今の北京政府、一見、非常に強く見えますが、総合的に見ると、そろそろ自らのさまざまな矛盾から崩壊する可能性もないわけではない。かつて私の恩師の倉前先生が、ソビエトが崩壊することをおっしゃってご本にも書きました。そのときに周りから、そんなことはあなたの推測にすぎない、
小説だと言われ、いろいろと批判を受けました。しかし、先生はもう一度ご本の中で、中華人民共和国という帝国も滅びる、そういう日が必ず来るとおっしゃっていましたが、残念ながら先生が健在のときにはそういうことが起きなかった。しかし、私はその予測が当たるだろうと信じています。

 ▼、チベットは決して非文明国家ではなかった

今のダライ・ラマ法王の時代になり、初めて私たちはある意味で統一した国家になりました。それまでは中央政界がありましたが、世界中同じように、私たちも中世から近代に入るのに少し出遅れました。
中華人民共和国という国がチベットを侵略したときは、まだチベット自身が本当に近代国家としての形があったかというと、必ずしもあったとは言い切れない部分があります。
  それから、日本が1860年代に明治維新を行いましたが、それまではたぶん、文化の面において、歴史の面において、あるいは民族の特有性において、どう考えても日本に負けないぐらいの国家としてチベットは存在したと思います。
中国は、野蛮で非文明国家のチベットに文明の光を照らした。そして、そのためにチベットを封建社会から解放したと言っていましたが、たとえ封建制があったとしても、文明の面においては、ポタラ宮殿をご覧になっていただいても、あれだけの技術があの時代にあった。
そして、チベット医学、あるいはチベットの占星術。あるいはチベットの歴史、特にチベットの歴史の場合には宗教を中心とした歴史ではあるけれども、すばらしい書物がたくさんありました。インドの仏教の教えも、世界で一番多く翻訳されているのがチベットです。普通、私たちはお釈迦様の教えは8万4000あると言いますが、少なくともチベットで約4000が翻訳されています。
中国では2000ぐらい翻訳され、日本には200ぐらいしか来ていないわけです。そういう意味で、チベットは決して非文明国家ではなかったということです。

  しかし、残念ながらチベットは、世界中が近代化して近代国家として中央集権国家をつくったときに、私たちはヒマラヤの奥地で自分たちだけの平和な生活をし、そして鎖国政治を約400年取りました。この鎖国政治により、私たちは自分たちの文化文明を発達させるには大いに役に立ったと思います。しかし、近代国家としては出遅れました。これがたぶん、私たちがいま直面している運命の原因です。

  1949年に中華人民共和国ができ、そしてすぐ毛沢東は、この革命は本来わが祖国、これは中国的なわが祖国ですが、わが祖国の領土を全部開放するまではこの革命は終わらない。そして、それはもちろん、チベット、東パキスタン、南モンゴル、あるいは日本の尖閣諸島、琉球、沖縄も含めてのことです。彼らが直接的、間接的に一度でも影響力を及ぼしたり、あるいはかつて朝貢を受けた国はすべて中国の一部であるという考え方に基づいています。
そして1950年、一番近く、一番武装していない、お坊さんが27万から30万人ぐらいいても軍隊は2万人しかいない国、まさにどうぞ侵してくださいというような環境にあったチベットに入ってきました。
  1951年に17条条約を結びました。
17条条約を結んでから約8年間、1959年3月まで、残念ながらチベットは中国の一部でした。これは認めざるを得ません。なぜならば1954年、中国は憲法をつくりました。1949年に独立したけれども、中国は憲法ができたのは1954年です。このときにはダライ・ラマ法王もパンチェン・ラマ尊師も、あるいはそのほかチベットのそうそうたる方々が人民大会に参加して1票を投じています。給料ももらっています。しかし1959年、ダライ・ラマ法王がインドに亡命してから、テスブというところで3月に、もうあの条約は無効であることを発表しました。

 ▼チベット分裂を企図したパンチェン・ラマという仕組み

  私個人の考えでは、あの瞬間からチベットは占領下の国家です。私たちはまだ国家であるはずです。
なぜならばチベット人の自発的な、あるいはチベット人の同意を得て、いま中国がチベットを支配しているのではありません。彼らは約束をことごとく破りました。あの条約の中では少なくともチベットの外交、防衛以外のことに対しては尊重することを書いています。
  そして、それまで、本来であればダライ・ラマ法王は私たちの宗教、政治でも最高の地位ですが、パンチェン・ラマ尊師はダライ・ラマ法王の先生であり、決して副大統領みたいではないです。
副王様でもない。中国はわざとチベットの中で分裂をつくるために意図的に法王、そしてパンチェン・ラマというような仕組みをつくり、そして中国はダライ・ラマ法王を中国とチベットが一つになるための準備委員会、つまり自治区の準備委員会の主席、副主席に任命しました。

  この状況においては、残念ながらまだ東チベット、そして今の青海省、アムド地方、この辺に関してもあまり明確なチベットとしての立場を明記していません。むしろ多くの東チベットの人たち、あるいはアムド地方の人たちも、長い間、中央集権に対し権威として存在したけれども、近代国家としての権力ではなかったと思います。ですから、東チベットで1957年、最初の決起が起きても、中国政府はこれという手を打つことができなかった。

  しかし、インドに来て1963年、チベットの各種族、各宗派のトップ、みんなが初めてダライ・ラマ法王を頂点とする、自分たちの、日本で言ったら藩の権限を当時、中央に返上したような形でインドのブッダガヤで誓いを立てました。そして、その誓いとは、最後の1滴の血まで祖国の独立のために使うということでした。

  さらにその後、1972年までゲリラ活動をしていました。
ゲリラ活動に関してはアメリカの支援もありました。インドは当初、あまり積極的ではなかった。インドとしては、特にネルー首相としては、できればチベットを不干渉地帯として中華人民共和国と直接ぶつからないために残したほうがいい。そこにアメリカとか、あるいはヨーロッパの国々が、もう一回、チベットを助けるような意味で入ってきたら、せっかく日本の先の戦争の結果、独立したアジアの国々、アジアにもう一回、西洋の勢力が帰ってくる。そのようなことは、ネルーは望まなかった。したがって、インドも最初はゲリラ活動、あるいはアメリカが関わることについては必ずしも積極的ではなかったのです。

▼インドはチベット支援に最初は積極的ではなかった

  インド自身が中国と友好条約がありました。インドと中国は1960年代まではインド人の売買、バンドン会議においてネルー首相と周恩来、特にネルー首相の発想で平和五原則、パンチャシラを。パンチャシラはサンスクリット語で、中国語ではありません。日本の学者によっては、これは周恩来の哲学だと言っているが、周恩来の哲学ではないことは名前から言っても分かります。つまり、平和五原則の最も大切なことは、お互いの内政を干渉しない。他の国を侵略しない。主権を尊重する。

  ネルーは非常に理想主義的な要素がありました。
例えば1957年、法王がインドをいったん訪問してそのまま残ろうとしたときも、周恩来が来てネルーを説得し、帰ってください、あとはわれわれが仲介して、チベット問題は平和裏に何とかしましょうというようなことを言っていました。
しかし、1962年、インドそのものが突然中国に侵略されました。ネルーはショックを受けました。サッダ・パティルはじめ当時のインドの国民会議派の世間で言う右派、この人たちからも、「言ったじゃないか!」。なぜかというと、サッダ・パティルは1951年にもう既に武力を使ってもチベットを支援したほうがいいということを提言しています。しかしネルーは、いや、これは平和的に解決できる、周恩来と私の人間関係がある、などと言い、パティルさんとか、そういう人たちの意見は聞かなかった。

  ですから当然、インドは第1回目の中国との戦争では負けました。
なぜ負けたかというと、インドは戦争するつもりがなかった。中国はチャンスがあればという準備をしていました。しかし、その中国の準備も当時はまだ不十分です。一つは、まだ道路がない。軍は簡単に入れない。それから、高山病にかかる。中国人自身はチベットへ戦いに来ても、高山病にかかる。だからモンゴル人とか、高地で戦える人たちを使って来ましたが、その人たちは積極的に喜んで兄弟たちを殺すようなことはしません。彼らはインドのアルナーチャル州から、2〜3週間ぐらいで結局撤退しました。
  一昨年、僕はアルナーチャルへ行きました。
そのとき、アルナーチャルの人たちが言うのは、決してその後もインド政府が力ずくで中国と戦い、あるいはインド政府が政治力で中国を説得して撤退したわけではない。何かというと、中国人が来て現地の人たちに、あなたたちは私たちと同じ顔だ、兄弟だ。あなたたちを助けに来たと言っても、彼らは兄弟ではない。
中国は今のようにロジスティクスがないです。彼らは協力しなかった。食べ物でさえ協力しなかった。そして、冬になりました。そうすると中国は撤退せざるを得なかったのです。その後、ネルーの娘のインディラ・ガンジーは二度も中国と戦争したけど、勝った。それはインドも学ぶことがあった。

  1962、63年になり、インドは初めてダライ・ラマ法王をインド国内において国家元首並みの扱いをするようになりました。
そして、ネルーは法王に対し、長期戦になるかもしれない。だから私たちインド政府はあなたの国の人たちをいろいろな学校に入れたり、インド社会に受け入れるのは簡単だけれども、そうではなく、自分たちの学校をつくりなさい。チベットの学校をつくると、そこは私立の学校ですから、インドのカリキュラムをやらなくてもいい。そこでチベット語を教える。チベットの歴史を教える。チベットの文化を維持する。チベットの音楽を教える。そして、チベットの坊さんが一人、必ず学校に精神指導としていました。そういう配慮をするようになったのです。

  そのおかげで今日も、僕はときどき人民解放軍のカーキ色の軍人と、私たちの赤い色のお坊さんの軍人、どちらが勝っているというけど、世界的には私たちが勝っているだろう。なぜかというと、幸いにして1960年代、ベトナム戦争などもあり、アメリカを中心として、世界中のある意味で精神的な空白がありました。
そこでビートルズやインドの聖者、聖マヘーシュ・ヨーギーとか、そういう人たちが出てきて、それと一緒にチベットの聖者ミラレパが最初に注目されました。それがきっかけで『チベットの死者の書』が外国の資料になりました。
  それから、チベットのお坊さん、最初に外に出て活躍したのは、スコットランドにいらした先生二人、それからのちに一人が交通事故に遭い、アメリカへ行ったのです。あれも偶然ではなく、本人が帰ろうと思ったときに車の事故に遭ったのです。
たまたま運転していたのがアメリカの金持ちの女の人で、その人がアメリカに招待した。その人を通してアメリカで教えるようになりました。

  その次がカルマパ。カルマパに対しては中国人の香港にいる人が協力しました。それから、日本人でアメリカ人と結婚した龍村さんの妹さん。そういう人たちが少しずつチベットのお坊さんたちを西側に呼ぶようになった。
最初はどちらかといえばカル・リンポチェやチベットの学者よりも行者の人たち、それからアメリカにおいてはアメリカンインディアン、特にホビの人たち。彼らの伝説の中に、いずれ東から赤い衣を着ているお坊さんが来る、聖者が来るというようなことがあった。そういうことで、最初はそういう人たちが私たちに関心を持ちました。

  日本でも、東大をはじめとしてインド哲学の延長線でチベット仏教がありましたが、残念ながら、それはあくまでもインド哲学の延長線でしかなかった。チベット仏教について研究している人はなかった。むしろ最初に関心を持ってくださったのが、いまホビット村にいる当時の日本のヒッピーたちでした。この人たちがチベットに関心を持ってくれました。世界全体が似たようなことだったと思います。

  正直言って、最近はチベットの支援者は外国でも金持ちがたくさんいますが、最初にチベットに関心を持ってくれたのは、どちらかというとヒッピーでした。何となくインドへ行き、そこで麻薬でもやり、そして人生を考える余裕のある人というか、そういう人たちがチベット仏教に関心を持ってくれたのです。そのおかげでチベットは知られるようになりました。

 ▼アメリカ人富豪らの支援はチベット仏教への関心からだった

  そうこうしているうちに、1972年、中華人民共和国はアメリカと関係ができ、アメリカは私たちに対し、あと6カ月でゲリラに対する援助を打ち切ると言いました。そのとき、ネパール政府に対し中国、アメリカ、両方から圧力がかかりました。ネパールのマヘンドラ国王は最後の最後までチベットの人たちに対し、非常に親切でした。ムスタンを基地にして、われわれが中国と戦っています。

  そこで最後にゲリラの人たちは結局、ネパールからも追い出さなければならない。中国は向こうから追ってくる。法王は、少なくとも他の民族の地を私たちのために犠牲にしてはならない、ネパールと戦ってはならない。
ですから、ネパール軍に降伏するということをおっしゃいました。最初何名かいて法王のそういう言葉を伝えていたけど、ゲリラの人たちはみんなあまり信じません。
なかには友達と。独立のために最後まで戦うと誓い、その友達が死んでしまっている。だから、その友達のためにも自分は戦わなければならないという人もいました。

  最後に法王の義理のお兄さんが法王のテープを持っていき、そのテープをゲリラに聞かせたのです。それでも一部の人たちは中国、あるいはネパール軍に降伏するのだったら自殺したほうがいいと言い、自分自身に鉄砲の銃口を付けて死んだ人もいます。もしかしたら僕の代わりに来る予定の人もいました。学校にいるときは何となく競争相手ですから、僕はその人のことを尊敬もしていなかったし好きでもなかった。しかし、僕が日本に来て数週間後に彼はゲリラに入った。そして、数年後に彼は死にました。

  そのとき、僕は彼に負けたような気がしました。
それまで憎たらしいと思った人が急に恋しくなり、そして偉いと思うようになったのです。だから、その後の僕の日本での活動は、常に彼のことが頭の中にあります。もし私の代わりに彼が来ていたら、彼は何をやっただろうか。確かに、彼は生きているとき、命を懸けていたことに対し報われることはなかった。しかし、その尊い命を大きな目的のために捧げることができた。それを私はいまできていない。だから永遠に彼は、少なくとも私にとってはヒーローです。

  どこの国でも、最後においしいときはヒーローがたくさん出てきますが、歴史の中で名前も残らないヒーローが本当はたくさんいます。
私たちと一緒になって戦ってくれた、アムドキャシという中国人もいます。彼はもともと中国の人民解放軍でした。しかし、途中から、中国のやっていることはよくないということで、われわれと仲間になってくれた。そして、一緒に戦ってくれました。恐らく彼のことも、チベットの歴史にも、中国の歴史にも載らないかもしれない。いずれにしても、この1970年代は私たちにとっては非常に大きな転換期でした。
   (つづく、三回連載です)

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  1. 昔、米国に留学し、あちこちの美術館(博物館)なども訪れましたが、米国の美術館ではチベット文化に日本、中国、インド並みかそれらに準じるくらいの規模の展示室を割り当てているところなども見られ、チベットが独自の高度な文明を築いていたことを改めて感じさせられました。

     2017/3/23


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     2017/3/23

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宮崎 正弘

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国際情勢の裏情報を豊富なデータと人脈から解析してゆく。独特な方法と辛辣な批判精神によるニュースの裏側で織りなされている人間模様に興味を持つ。筆者の人生観と執筆を継続する動機の基軸は同じ。ホームページは http://miyazaki.xii.jp/

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