国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2016/08/04

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成28年(2016)8月5日(金曜日)
         通算第4979号 <前日発行>
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 いよいよ世界大乱、激動の荒波がやってくる
 日本のこれからの課題は奈辺に潜んでいるのか
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 第三次安倍内閣第二次改造(2016年8月3日)にあたって、安倍晋三首相は記者会見で「最優先課題は(改憲ではなく)経済の再生だ」と言った。
まさに世界大乱の現状を踏まえれば、日本経済のエンジン再稼働、経済再生は喫緊の最優先課題であることが分かる。

日本経済の過去四半世紀にわたる宿痾は「デフレ」である。
バブルが崩壊してからの「失われた二十年」から、一時的にアベノミクスの発動で株価が急伸し、円安にぶれて企業業績はあがった。そのままの勢いで上昇気流の乗れるかと思われた。幸運は続かなかった。

自動車、建設機械、重化学などに日は射しても、全体の消費は伸びず経済活性化は局所的だった。地方によっては依然としてシャッター通りが拡大している。「地方再生」は掛け声だけが勇ましいが、効果があったのは「ふるさと納税」くらいだろう。
東日本大震災、熊本地震被災からの恢復は軌道に乗ったとは言えず、「一億総活性化」も具体的な施策となると曖昧のままである。

参議院選挙、都知事選挙でも争点は「待機児童ゼロ」とか「医療保険」とか、枝葉の問題が焦点となっても国家の根幹を決める改憲も防衛も、まったく議論されなかった。日本は相変わらずの平和ぼけマインドが続いている。

経済の活性化は政策の実行にあるとはいえ、それは予算の配分によるため遅行するが、根本に横たわるのは日本人のマインドの再生、日本精神の復活にあるのではないのか。

国土強靭化も結構だが、防衛力整備こそがトンネルや橋梁のかけ方なんぞより急がれる。。
しかし戦後一貫して精神的頽廃は恢復されず、日本人の意気消沈が続き、あらゆる経済対策は遅れ気味となり、円高に悩まされて輸出は停滞し、内需は消費マインドの決定的な萎縮によって頓挫したまま。


▼第二次「アベノミクス」の旗色は滅法悪い。

 内閣改造直前に麻生財務相と黒田日銀総裁との緊急会談が行われ、財政出動の刷新が話し合われたが、喫緊の問題は補正予算の裏付けであり、28兆円規模と計測されるものの、いったい真水の部分がどれだけあるのか、予算審議は秋の国会審議に委ねられる。
 第二次「アベノミクス」の旗色は滅法悪い。

 日本の貿易相手国は中国と米国が二大基軸だが、とくに中国経済の大後退にともない、中国進出企業の株価は冴えず業績は低迷している。対米輸出は順調とはいえ、米国の景気も利上げが遠のき先行き不透明、まして大統領選挙はヒラリーが勝とうがトランプが勝とうが、日米安保条約の改定は次の政治日程にあがってくることは確実である
 
 日本が米中にかわって期待するアセアン諸国も経済的な飛躍はとても望めない状態であり、アジアは中国の不況の余波をまともに被って今後急激な再躍進は期待薄となった。
ひとり中国との生産流通システムにビルトインされていないインド経済圏が気を吐くが、日本経済にさほどの影響はない。

 まして対EUとなると、英国のEU離脱(BREXIT)によって、EUが混乱しており、また産油国経済は原油価格の低迷が続く限り恢復はほど遠い。あまつさえISのテロリズムが世界を不安に陥れたまま、シリア内戦、経済難民、トルコのイスラム化、サウジとイスラエルの米国離れ、プーチンの失地回復と高笑い。
 つまり世界経済の行方は不透明であるばかりか、大乱が予測される。

 日本はこれから如何なる舵取りを迫られるのか?
 安部改造内閣は防衛大臣に稲田朋美氏を指名したが、直後、北朝鮮はノドンを日本海に打ち込んで「歓迎」の意味を表した。
これは秋田沖250キロ、日本のEEZ領海内である。即ち軍事的に言えば、日本が侵略されたのである。
 しかるに日本のメディアの反応は滅法鈍い。

中国は直前に発表された日本の『防衛白書』に対して悪罵を投げかけ、「反対である」などと言いがかりを付け、南シナ海の人口島埋立て、軍事基地化という自らの侵略的行為をすり替えた。とくに「稲田防衛大臣は右翼政治家であり、日中関係に衝撃を与えた」などと華僑向けの中国新聞社が伝えた。

同日に北京を訪問していた日本の財界ミッションの「経済同友会」代表に対しても、「政経分離の原則は確認されたが、日中の「政冷経熱」は去り「政冷経冷」は続くという暗い展望が確認された。
 
 日本の行き先はますます不透明となり、軍事的緊張は逆に高まり、日本の防衛債券が礒がなければならないというのに、政府、マスコミ、そして多くの日本人にその自覚がない。それが問題なのである。

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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 世界史のパースペクティブから眺めても十七条憲法は重大な国家のあり方
  日本人の国家論の源泉は、近代の議論など吹き飛ばす崇高・爽快さを秘めている

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田中英道『天平に華咲く「古典文化」』(ミネルヴァ書房)
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 かねてから不思議と考えてきたことは、たとえばソ連末期、ソルジェニーツィンに代表されるような、人間の呻くような本質をえぐる本物の文学が出現した。サハロフ博士のような自由な論争が地下出版で行われ、西側は全体主義の体制のなかに呻吟する知識人のうめくような声を聞いた。
 弾圧され、抑圧された思考・言語空間のなかでは却って人間は哲学を深める。
 ところが市場経済を取り入れ、複数政党政治を行うようになった旧ソ連で、なぜ感動で震えるような文学が、感性を圧倒するような素晴らしい芸術が現れないのか。
西側の亜流のような、ポストモダンのアーチストが輩出したとはいえ、それはロシアの深い根にもとづいた芸術とはかけ離れたコスモポリタン流儀であっても、すこしも土の臭いがしない。
 中国でも共産主義全盛の頃には、硬直化した「芸術」なるものが彫刻や絵画や、文芸作品になったが、世界文学を震撼させるような偉大な作品は何ひとつも現れなかった。改革開放以来、わずかに鄭義のグロテスク・リアリティの文学が出現したが、かれは米国亡命以後、これという作品を書かず、またノーベル文学賞の莫言はガルシア・マルケスの亜流でしかない。
 中国でもネットで世界情勢が把握できる時代となったのに、精神的には全体主義の呪いが解けた筈なのに、中国人は崇高な芸術作品を追求するのではなく、目の前のカネ、贅沢な物品に狂奔し、精神性は極度に軽視され、拝金主義全盛となった。
 ならば日本は? これほどの自由を享受している国でも、左翼の洗脳効果がまだ尾を引いている所為か、本物の絵画や音楽、小説は現れていない。
「芭蕉も西鶴もいない昭和元禄」と三島由紀夫は言ったが、過去に『源氏物語』や『古今集』を表して日本人の精神を高らかに謳歌したのは昔話。それこそ「文学の真昼を経験した民族には夕暮れを待つしかない」(三島由紀夫『日本文学小史』)という悲惨な状況である。
グローバリズムの最先端を競うような亜流か、黄昏の文学しか望めないのだろうか。

 さて、本書は大変な労作、そして田中英道氏畢生の日本文化論、歴史論の集大成である。
 本書でまず国家のあり方を田中氏は問う。
 国際的にみても芸術論はグローバル化にともなって多文化主義が横溢しており、レベルは低まる一方という傾向を嘆かれる筆者は「ナショナルなもの、『国家』や『権力』にかかわるものを批判するあまり、そうした偏頗な理論で文化社会を論ずる人文学は衰退する以外にない」と前置きして、次のように続ける。
 「『国家』の問題を出すと、必ず左翼の歴史家たちは、それが『国民国家』として『近代』にしか存在しないとする(中略)」「しかしその考え方が誤りであることは、日本のような、古い島国の例を挙げれば明らかである」
従来、日本の戦後論壇でも「国家」イコール「悪」という意味で論じられてきた。国家を肯定するのは右翼と攻撃されたが、田中氏はこう反論する。
「『国家』と言えば悪い意味での『権力』機構ととらえ、打倒の対象であるかのように
否定した社会主義の理論は、ソ連や中共の成立で完全に崩壊してしまった。ソ連や中共がナショナリズムの『国家』として、ドイツ・ナチ『国家』よりもひどい全体主義国家であったことは明らかである。そのような一党独裁の国際主義の『国家体制』は、決して価値ある文化は生まれないのだ」(352p)。

 日本には古来より古事記日本書紀が成立し、世界初の恋愛小説『源氏物語』が生まれ、そして世界史初の憲法が聖徳太子によって制定された。
 「聖徳太子の『十七条憲法』の最初の三条に示される事柄は、共同体のあり方、個人のあり方、そして日本の政治のあり方を論じている。『近代法』のように市民革命を経て、市民の権利や自由を法律化したものではなく、人間の自然のあり方から発して、その陥りやすい欠陥を克服しながら、運営していく方向を示している」
 十七条憲法には「日本人の国家間の基礎となる神道の精神が脈打っている。神々が自然のなかに行き、祖霊の神々の中に生きている。それに向かって天皇が祭祀を行い、それによって国土が守られると詔をしたものである。一方で仏教を取り入れ、個人の信仰としてこれを奨励し、他方、天皇がこのように神道の祭祀を続けられる姿こそ、まさに日本の国家観の基礎を形づくる」(42p)。
 おりから保守論壇では憲法改正議論が沸騰しているが、このような原点に立ち返って改憲のあり方を熟慮しなおすべきであろう。
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  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)都知事選は以前お伝えした通り、小池百合子氏の圧勝となりました。ついでに今後の彼女について見通しを述べさせて下さい。
 小池氏の異常な上昇志向からみて、とても都知事が最終ポストなどではありません。私は東京五輪が終われば、国政に復帰し、必ず総理大臣を目指すとにらんでいます。当選直後の記者会見で、このことを聞かれた小池氏が「まだ(都知事に)なったばかりですから」と、否定しなかったところに、彼女の強い野望を感じます。
 さらに言えば、これに対抗するのが今回の改造で防衛相に起用された稲田朋美氏と民進党代表選に出馬する蓮舫氏です。恐らく東京五輪後の2021年頃、政権の座をめぐってこの3人が争っていると思います。
(加藤清隆)


(宮崎正弘のコメント)さすがに女性宰相論(加藤清隆著『女性宰相待望論―時代が登場をうながす』、2012年、自由社)を書かれた加藤さんの指摘、次代を先取りされていますね。
小生も個人的に三人とも知っておりますが、率直に言えば稲田さんになって貰いたいと思います。『正論』のアンケートでもそう回答しました。帰化人の末裔の連舫さんは中国礼讃派でもあり、もっともなって欲しくない人です。
稲田さんは国家観も歴史観もしっかりしていますが、小池さんには後者が不足、もう一人は両方ありませんから。

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 宮崎正弘の新刊案内  http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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宮崎正弘のロングセラー 
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『トランプ熱狂、アメリカの反知性主義』(海竜社、1404円) 
『中国大恐慌以後の世界と日本』(徳間書店、1080円)
『中国大失速、日本大激動』(文藝社、1620円)
『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』(徳間書店、1080円) 
『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)
『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、定価1620円)
『中国・韓国を“本気で”見捨て始めた世界』(徳間書店 1080円)
『台湾烈々  世界一の親日国家がヤバイ』(ビジネス社、1188円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)

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<宮崎正弘の対談シリーズ> 
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宮崎正弘 v 石平、福島香織『中国バブル崩壊の全内幕』(宝島社、1296円)
宮崎正弘 v 田村秀男、渡邊哲也『中国経済はどこまで死んだか』(産経新聞出版)
宮崎正弘 v 馬渕睦夫『世界戦争をしかける市場の正体』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 室谷克実『悪あがきを繰り返し突然死の危機に陥る中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 宮脇淳子『中国壊死』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 石平『私たちの予測した通りいよいよ自壊する中国』(ワック)
宮崎正弘 v 渡邊哲也『激動する世界経済!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 室谷克実『日本に惨敗しついに終わる中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店、1080円)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 西部 遭『日米安保五十年』(海竜社)  
宮崎正弘 v 佐藤 優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
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