国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み(東南アジアの水も支配するのか、中国)

2010/07/13


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 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成22年(2010)7月13日(火曜日)
         通巻3020号 
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 今度はベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、ミャンマーの水を支配
  中国、雲南省に二十近いダムを建設し下流域少数民族を強制移住させている
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 チベット高原に水源を発する長大な河川は北寄りに黄河、びん江、長江などが蕩々と流れ来たり中原を潤す。
 一方でチベット高原から南へ流れ出す河川には怒江、ランツアン江、元江などがあり、それぞれがベトナム、ラオス、ミャンマーへながれこむ。

とくにラオスへ流れ込むランツアン江は、メコン河と名称を変え、さらに二大支流となってタイへ、カンボジアへと流れる。
メコン河は川魚の漁業のほか小船による貿易でも栄える。

 怒江(ヌー河)は雲南省で南へ向きを変え、ミャンマーに流れ込んでサルウィー河となりアンダマン海まで蕩蕩と流れる。ミャンマーの南北をつらぬく河川のひとつ、多くの生命を依拠する。

 元江(ユアン河)はベトナムへ流れ込み、ホン河となる。ベトナム北方の田園地帯の重要な水資源である。

 大問題がおきている。
 中国は下流水域の国々に一言の相談もなく、これらの上流域に合計20ものダムをつくるとし、しかもその計画の内容はまったくの不透明。実際には下流域の少数民族(中国国内、雲南省だけで)およそ五十万人の立ち退きを命じ、実際には多くで強制移住が完了しており、従わない者は監獄行きとなる。

 雲南省にはペイ族、リ族、ミャオ族、ペイ族など23の代表的少数民族が共生する珍しい地域でもあり、現地へいくと漢文明とは異なる仏教世界が広がる(拙著『出身地でわかる中国人』<PHP新書>参照)。


 ▲巨大ダムは流域の生態系を破壊し住民の生活を脅かす

 「巨大ダムのなかには三峡ダムより大きな規模のものも含まれ(つまり世界一のアーチ型ダムは2013年に完成予定)、あちこちで建設は急ピッチで進み、将来の河川域から下流域にいたるまでの生態系を破壊すると環境団体は抗議している」(英誌『エコノミスト』、2010年7月10日号)。

そればかりかダムは流域住民の生活を根底的に変貌させ、あるいは破壊し、たとえば漁民は職を失い、農家は水がこなければ作物は育たず、最大の頭痛のたねは下流域の飲料水、工業用水の確保である。

 つまり上流の雲南省で、中国がダムにより水コントロールを開始すれば、下流域のベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、ミャンマーの水資源が完全に支配されてしまうのである。

 南シナ海において中国軍はすでに南砂諸島、西砂諸島を軍事的に抑えて珊瑚礁を破壊し、軍の飛行場までこしらえた。
これにより中国はベトナム、マレーシア、フィリピン、ブルネイ、インドネシアと領土係争を引き起こしているが、メコン河やサルウィー河におけるダム建設もまったく身勝手な中国の振る舞い、近隣諸国は唖然とするばかりである。

 しかし中国は「ダム建設により電力供給が豊富となり、しかも洪水などの被害を回避できる科学的プロジェクトであり、いったい下流域諸国は何が不満か」とでも言いたげ、プロジェクトの不透明さもありながら一切の説明をしてこなかった。

 タイの有力紙『バンコック・ポスト』紙は「メコンを殺すのか」と社説に書いて抗議した。

ベトナムでもカンボジアでも反対運動がおこると、中国は下流域にもダムを建設してあげようと、政府高官の買収にとりかかる。中国の建設会社が、それらのプロジェクトを融資付きで入札する勢いでもある。

 もっとも下流域の諸国でもダム建設が進んではいるが、水をコントロールし、下流域を洪水にしたり枯渇させたりの政治力を発揮できる立場を得るのは中国だけである。
アンコールトム、アンコールワットはかつて水が豊かな場所にあって、いつしか水路が変わり、付近はジャングルとなって文明は埋もれたのだが。
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  ★読者の声 ☆どくしゃのこえ ☆DOKUSHANOKOE ★読者の声
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(読者の声1)貴誌3019号オバマ衰退の記事ですが、上院ばかりか、ぺロシ民主党は下院も過半数を失う。ワシントンポストのコメント欄から、独立派も、黒人の一部もオバマ・ぺロシを離れたことは明白です。
なんと98.6%のアメリカ国民がアリゾナ移民法は正しいと解答した(MSNBC調査)。
これで46もある知事改選は民主党候補に流れないのです。
オバマは大学の先生の性格だとか、DITHER(優柔不断)な性格が戦時の、不況下の大統領職には向かないと思われたのです。
一方、ぺロシは民主党内部でも離反が進んだ。支持するのはプログレッシブ・リベラルだけです。医療改革法案以来、この政治ポイントからセンター・ライトへは戻れないのです。
ビル・クリントンまでがオバマに愛想が尽きた。なんぼ言っても、染み付いたリベラルのDNAは治らないものですね。ついでに菅は普天間で失脚する。在京米国大使館のCIAは、ゆっくりと小沢を退治する。
(伊勢、ルイジアナ)


(宮崎正弘のコメント)CIA? 過剰評価じゃありませんか。いまヴァレリエ・プレィム・ウィルソン女史の『フェアゲーム』(サイモン&シュスター社、ペーパーバック版。Valerie Plame Wilson“FAIR GAME”)を読んでいますが、CIAが政治闘争の道具にされると、かくも組織内暗闘に弱いかという脆弱性がよくわかります。
愛国者はときに国家が裏切ることがある。日本でもありました。
 直近の米国はマクリスタルが切られ、おそらくカンダハル総攻撃は延期、それも無期延期というかたちで、タイミングがおいかぶさってNATOが撤回を開始し、結局米軍も“なしくずし的な撤退”という最悪の政治決着のシナリオが透視できますね。
 それにしてもオバマは政治の本質が理解できない、菅直人と同様な市民活動家出身ですから。世界最強軍の指導者という大統領のもつ最高権力の醍醐味さえわかっていないんでしょうね。




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(読者の声2)案の定、千葉法務大臣は参議院選挙で落選しても、「民間人」として起用だって…。
【民主党敗北】 菅首相、落選の千葉法相を民間人として続投へ…「44議席」は橋本内閣退陣と同じ数だが、民主党は動き鈍く
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1278900736/
だそうです。
がっかりですね。予想されては居ましたが。
(ID生、長野県小諸市)


(宮崎正弘のコメント)それにしても、マスコミは自民党なら徹底して批判しつくし、大げさに報道した。松岡農水相は自殺し、絆創膏大臣は落選し、あるいは問題があるとすぐ詰め腹を切らされたのに、民主党が大臣となると、公安をあずかる大臣が女性と路上チューも、政治献金脱税も、不動産不正入手事件も、誰もマスコミが深く追求しないから大臣をやめない。やめる素振りさえないですね。



   ♪
(読者の声3)貴誌3019号の(読者の声1)で「東海子」氏が、張作霖爆殺事件の犯人に関して、「河本はソ連に使われたのでしょう。関東軍内にもソ連スパイはいたそうですから」と書かれました。
河本氏を犯人にでっち上げ、自国の責任を逃れることにソ連が利用したという意味では、結果的に「河本はソ連に使われた」ともいえないこともありません。
しかし河本氏がソ連の協力者であったかのような推測論法は証拠のない濡れ衣をかぶせることになりかねず、河本氏に対して非礼な発言ではないでしょうか。
河本氏は中共の収容所に入れられてからはともかくとして、それ以前は「自分は犯人ではない」と一貫して主張していました。
終戦後も大陸に残ったのも、自分はやってないから罪に問われることはないという確信に基づいてのことでした。
河本氏がソ連の協力者ではないと断言する証拠を持っていませんが、可能性は著しく低いと考えます。
昭和19年に陸軍大学をご卒業になられた元帝国陸軍参謀に以前、張作霖爆殺犯人についてお尋ねしたところ、陸軍士官の間では一般に張作霖と対立していた支那の軍閥がやったのであろうと信じられていた由でした。
つまり河本氏が犯人だったとは、陸軍軍人の間で思われていなかったということです。ただし当該元参謀は事件当時まだ学生であったので、完全に同時代の証言とはいえませんが。
   (ST生、千葉)
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樋泉克夫のコラム樋泉克夫のコラム樋泉克夫のコラム樋泉克夫のコラム樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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  ――その昔、「日本人民解放連盟」という卑怯者の集団があったそうだ
    『日僑秘録  中共國賓の手記』(川口忠篤 太陽少年社 昭和二十八年)
 


 日本が敗れたあの日、著者は「こうなってくると、日本の居留民は、素手で中國側と對決するより術がない。しかし今日まで、一圖に日本の勝利を盲信して、自分達を永遠なる中國の支配者だと思い込み、その儚ない自惚れの上に、偸安の夢を貪つてきた日本人と、有史以來、打ち續く、天地人の三災と、裸一貫で取り組んで、逞しく生き抜いて來た中國人が、いま戰い勝つた彼らの國土で、攻守ところを代えて、對決するのだから、その歸結は、まさに知るべきのみである」
との思いを抱く。

この本には、その日から「晋察冀邊區日本人會長、在華日人技術者同盟總裁として、國賓待遇のまゝで、四ケ月間を幽閉されていた“赤い牢獄”から突然釋放された」1946年5月1日を経て、「昭和二十一年五月十九日の太陽」を渤海湾に浮かぶ帰還船の上から「歸國委員長」として「千二百名の同胞」と共に眺めた時までの、悪戦苦闘が綴られている。

日本が敗れたその日から、「どこにも、昨日までの昂然たる日本人の姿はなかつた」。
じつは「終戰當時、華北にあつて日本軍と對峙していた中國軍は、全部、共産軍であった」ことから、「中共地區在住日本人」は「深刻甚烈な民族的體驗を」を覚悟せざるをえなかった。

そこで著者は「晋察冀邊區日本人會」を組織し会長として華北一帯に残された日本人の生命財産の保護に努める一方、「中國側の要請によつて、在華日人技術者同盟を結成、その總裁に就任し、二十年九月、中共代表と“西山協定”を結んで、獨自の理念による中共協力を展開」する。その柱が、華北一帯に残された日本人医師や技術者を糾合して在華日人技術者同盟を結成し、高度の医療や工業技術を提供することだった。

そこに「特に(中共下部の)日共の指導下にあった、日本人民解放連盟」が登場する。元敗残兵でしかなく、同胞が必死に戦っている間に中共から洗脳教育を受けた彼らを、著者は「中共軍を解放軍と稱譛して、そのもとで働く彼らを解放戰士と(自ら)呼號する」「祖國喪失者」であり、「その!)養は概ね低く、品性は卑しく、特に長年にわたる捕虜生活の卑屈さが、骨の髄までしみ込んでいて、どうにも人間として相許せぬ連中が多かった」と評する。

彼らは“勝利者ズラ”をして振る舞い、“中共の威”を借りて弱い立場の日本人に対する生殺与奪の権を握った。その横暴に、敗戦国民たる日本人は泣き寝入りするしかない。

著者は「晋察冀邊區日本人會長、在華日人技術者同盟總裁として」彼らと深刻に対立した結果、「遂に彼らの讒訴をうけ、同志、門人五十四名と共に逮捕監禁の厄に遭」ったが、やがて「北京軍事調處執行部(國府、中共、米國の調停機關)の斡旋によって被釋され、直ちに」天津から帰国する。

理不尽で傲慢な日本人民解放連盟の面々を、帰国直前や祖国への船上で徹底的に糾弾し、死なない程度に殴り痛めつけ積もり積もった恨みを晴らす。

 著者は幸徳秋水の影響を受けるが後に「皇道學を創唱」し、「大東亞戰爭勃發後は、軍の推輓によって、北京に川口機關を創立、主として亞細亞第三勢力の結成による、日華單獨講和と和平統一工作に専念」し、昭和22年には公職追放処分を受け、「二十五年、臺灣義勇軍事件に連座し、その責任者として法廷に立」ち、以後は「同志と締盟して、亞細亞人による亞細亞解放を提唱」したという。

著者のその後はともかく、敗戦という未曾有の極限状態に在って、日本人として如何に処すべきか。深刻に考えさせられる本だ。
《QED》

(ひいずみかつお氏は愛知県立大学教授。華僑、京劇研究の第一人者)
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 ◎宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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