国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2010/02/16


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  「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成22年(2010年)2月16日(火曜日)
       通巻2877号  
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 あの人口過剰の中国で、なぜ労働者が不足しているのか
  珠江デルタ、長江デルタなどの輸出基地で工場が稼働しないほどに
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 労働者不足の理由はと聞かれて、公の見解は「高齢者」の急増にあるという。
 復旦大学客員教授の王豊によれば、「09年に中国の高齢者人口は1億6900万人で、全人口比の12・79%、今後も年に1000万人が高齢者入りする」と予測する。

 そして高齢化社会に突入した中国の労働問題は、今後「教育、年金、成長モデルの転換、労働生産性向上」などの諸問題となるだろう、とする。
 (? あまりにキレイゴト過ぎませんか)。

 中国政府は労働者不足を地理的要因と判断して、沿海部の工場を内陸部へ移転させ、地方で工場が出来れば、ちかくの農村からの出稼ぎ労働者を存分に吸収できるとした。
実際に安徽省、江西省、湖南省などへの移転が顕著に見られた。

 しかし内陸部は労賃が安くても、ふたつの深刻な問題を抱える。
第一は労働の質の悪さ、第二は完成した製品をトラック、鉄道で沿海部の輸出港へ運搬する費用。倉庫代の追加などで、結局、内陸部が沿海部より二割ほど賃金が安くとも、総合的コストは変わらないことになる。

 中国国務院発展研究センターは「農村から沿海部の工業部門への労働移動は2億3000万人」とはじき出した。

 さて現下の中国でおきている労働者不足は上記のような事情で起きていることではない。
 事態はもっと深刻であり、労働者不足は激甚である。



 ▲労働人口の構造的問題:リーマンショック「以前」と「以後」の顕著な差異

 リーマンショック以前までの労働者不足は主として建築現場で見られた。
 職を斡旋するブローカーが、労働者を刑務所のごとき施設へぶち込み、重労働をさせたあげく、約束の賃金を払わない(半年、一年ごとにまとめて支払う)。豚小屋のような宿舎に残飯のような食事まで給与からごっそり天引きされる。
 これでは約束が違うとして、春節(旧正月休暇)が明けても地方から労働者は帰らなかった。

 そこで中国企業はさかんに海外進出を加速する。これまではベトナムやバングラデシュに繊維産業の工場移転だったが、政府の資源戦略とセットになって、極東シベリア、パキスタン、アフガニスタンからアルジェリア、スーダン、アンゴラへとすすみ、当該地域でも労働者を奴隷のように酷使するため、あちこちに反中国暴動が頻発する。

 リーマンショック以後、労働不足状況は輸出基地を襲った。
 とくに広東省は中国全体の輸出の三分の一を占め、深センから東莞、広州へといたる一大ベルト地帯は日本、台湾、香港企業が工場進出。マカオから真珠海、中山、仏山から広州へと至るルートは主として香港企業が進出した。
 広州周辺は自動車の部品工場がひしめく。

 自動車部品、IT関連、コンピュータ部品を除き、玩具、スポーツシューズ、雑貨など「労賃が安い」輸出製品の一大生産拠点に異変が起きたのだ。

 対米輸出が激減し、工場の労働者への不払いが生じた。一部に暴動、ストライキ、工場閉鎖、廃業など深刻な不況に直面した。広州では外国人労働者へも不満が向けられ、治安が悪化した。

 09年春、政府のテコ入れにより、4兆元の財政出動があって景気が回復し、輸出はEU諸国、産油国、ならびにアフリカ向けが回復したが、現場では深刻な労働者不足に直面していた。
 そうやすやすと労働者が集まらなくなったのである。

 労働者はブローカーの甘言に乗らず、高い賃金をもとめて建設ブームに沸く地方都市や建設現場に散った。
このため沿海部、とくに珠江デルタの輸出基地には戻らず、多くの工場は生産設備の七割稼働が関の山、つねに労働者を募集するも集まらず、ついには最低賃金値上げに踏み切る(江蘇省が890元に値上げした)。

 なんとか努力して労働者をあつめ、輸出を拡大してきたが、またまた「恐怖の春節」がやってきた。

経営側から見れば、正月休みがあけても労働者が戻らない懼れが高い。
労働側から見れば、奴隷のように働かされ、不衛生でぎゅうぎゅう詰めの宿泊施設、電気がない。冷蔵庫もない宿舎で、満足な食事は供されず、土日もなく働かされ、残業手当がつくかどうかも分からない職場には二度と帰らない、と決意するだろう。

 かくて「躍進中国」の印象が強い輸出現場では、かつて体験したことのない労働不足という危機に陥った。
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(読者の声1) 貴誌2876号「関東軍が満蒙開拓にあたった民間人を置き去りに逃げた」という史実はなく、ソ連の政治宣伝だったという記事と投稿を読んで思い出しました。何かの機会に、北支辺りであった「夫婦特攻」知りました。
事実だったのですね。
整備兵が操縦席の後ろに黒髪の女性が隠れていたのを見つけたそうですが、気づかないふりをしていたそうです。改めて胸が一杯になりました。満州の研究こそ、日本が「侵略国家」の言いがかりを蹴散らす源になると思っております。
世田谷の特攻観音に祀られている陸軍将校は夫人を飛行機に乗せて侵入してくるT-34戦車に体当たりして散華されました。
軍人の家族は逃げてなどいないのです。
   (桃、岡山)



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(読者の声2)貴著『朝日新聞がなくなる日』(ワック)を読んで。
朝日の駄目駄目ぶりを、「中国、ロシア、トルコ、イラン」等の情報をからめて解説してくれる良著だと思います。
でも私にとって、この本の白眉は、第五章「朝日新聞はなぜ見捨てられるか」。その中の「五つのWと一つのHを反省」。
5W1Hは、社会人になった頃、新人研修で良く言われましたが、新聞を読むときに使えるとは思ってもみませんでした。
朝日購読を止めてやっと一年が過ぎました。
この方法なら駄目朝日からも情報が読み取れかも(二度と読む気はありませんが。。)
最近、新聞を読んだりTVを観たりする時、どこぞの全体主義国家に潜入した工作員のごとく行間を読んだり斜めに観たりしている自分に気付き、笑ってしまう事があります
   (MU生)


(宮崎正弘のコメント)5W(何時、誰が、どこで、何を、したか)が事実、1H(いかように)は形容ですから、記者の「主観」。Hの箇所を飛ばすか、べつの視点で読めば、情勢分析に役に立ちます。
お役に立てているようで光栄です。



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(読者の声3)貴著『日米安保 50年』(西部邁氏との対談集)、読了しました。
お二人の知的回想は興味深く、一気に読んでしまいました。小生も大学で国際関係論を教える手前、日米安保体制については少なからず興味があるところですが、お二人ともご自身の経験のなかから安保条約、安保体制を回想、分析されている場面はおもしろかったです。
小生は団塊世代の末期であり、大学に入った69年春はすでに70年安保闘争の激しい風は収まっていましたが、それでも早稲田の法学部に少しいた際、ノンセクトの集会に参加していました。
いまは本部棟になっている大熊講堂前の法学部2号館の入り組んだバリケードの中に入って行くと広間に布団が敷かれ、大勢がそこに寝泊まりし、男女が絡み合っている怪しい風景を見て、幻滅した記憶があります。
学生運動の後れて出た世代ですが、受験で影響を受けたことを含め、その後の人生観に大きな影響を与えたことは間違いありません。
  (TH生、横浜)


(宮崎正弘のコメント)安保条約の過去半世紀とこれからの半世紀を考えながら、自主防衛、自主外交の意味を問うたものですが、部分的にセンチメンタル・メモワールになっている箇所もありますね。
団塊の世代の読者の多くが、そういう感想を寄せて呉れました。
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 樋泉克夫のコラム  樋泉克夫のコラム  樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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――地縁で結ばれる香港の新田村とロンドンのチャイナタウン
       『移民と宗族』(J・ワトソン 阿吽社 1995年)
 

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香港在住時、二日酔いの頭に新鮮な空気を注入しようと林村、粉嶺、大埔など新界の農村地帯を歩き回ったものだ。
天を突くような高層建築が立ち並ぶ喧騒と雑踏の香港にも、南中国の農村の営みがあり、長閑な暮らしがあった。

かつて中国での実地調査が許されなかった時代、新界の農村は欧米の文化人類学者にとって南中国の農村構造を解明するための唯一といってもいい格好の研究現場だった。この本は、そんな研究から生まれている。

周囲に田や畑が広がる元朗の街も、二日酔いの頭でよく歩いたものだ。商店と商店の間の路地を抜け、トラック改造のバスで農道を中国との境界を流れる深圳河に向かって進むと、文氏一族の住む新田村に。新田という名前からして、ここが新しく開けた村であることは判る。

面白いことに、この村の住人の大部分はロンドンにあるチャイナタウンに親戚を持っていた。
現にロンドンで稼いだ財産で悠々自適に暮らす者もいれば、一時帰郷者もいる。肉親や友人を頼ってロンドンに出かけ一旗上げようと考えている者も少なくなかった。

いいかえるなら、ロンドンのチャイナタウンは“第2の新田村”ということになる。後年、ロンドンで知り合ったチャイナタウンの住人は、確かに新田村の文氏の一族だった。

第2次大戦が終わり50年代に入り英国の経済が上向き始めた頃、英国人も些かの贅沢を味わいたくなる。
文氏一族にとっての転機だった。広東省汕頭から移動してきた新参農民だっただけに、彼らに豊かな土地が与えられるわけもない。高い収穫量が見込める肥えた土地は他の先住一族のものだったからだ。

街で働こうにも、職場は地縁・血縁の網で固められていて、付け入る隙間も無い。“ないない尽くし”の文氏一族は、ロンドンのチャイナタウンでの中華レストラン経営に一族の命運を賭けた。
しょせん相手は海賊の子孫だ。微妙な味が判る訳がない。新田の農民が作ったチャーハンだって立派な中華料理だ。農民が作る無骨な料理だって、単調な味のフライド・フィッシュより数段も豪華で美味いはずだ。

かくて新田の農民が作った料理が評判となり、豊かになったイギリス人が中華の味を求めてチャイナタウンの中華レストランに押し寄せる。不足する働き手の供給元は、新田村の親族だった。

つまり「大部分の者たちは親族のネットワークに就職の斡旋を依存」しているわけであり、「新田から新たに出稼ぎ移住する者にとっては、英国全体の都市の要所要所に宗族仲間のネットワークが隈なく張り巡らされているので、文氏の経営する料理店で人手不足が生じた時」、店のオヤジは新田村に住む宗族、つまり一族の仲間に対し労働証明書を発行し、英国に呼び寄せるのであった。

このような行動様式の根底には、地縁なり血縁で結ばれた《自己人(なかま)》しか信用できない、あるいは信用しようとしない人間関係が牢固として存在する。もちろん、それは彼ら民族の歴史が培ったものだが。

とどのつまり文氏一族がロンドンのチャイナタウンを中心に英国全体の中華レストラン業界を独占する。
中国の内側であれ海外であれ、移り住んだ先で漢民族が生きていくことができるのは、血縁(文氏)と地縁(新田村)と業縁(英国の中華レストラン)とが強固に合体した相互扶助組織があるからこそ、なのだ。

いまや世界中に無数の相互扶助組織が展開し海外進出を支え、彼らの手前勝手な振る舞いを許しているのだ。
この本は、彼らの民族移動のカラクリを解き明かしてくれる。
《QED》

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『朝日新聞がなくなる日』(ワック、945円)
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 http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
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◎宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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  • 名無しさん2010/02/16

     何でもありの中共はチベットの問題も本物ですか?このサイトの漫画が本当なら恐怖です。http://www.geocities.jp/my_souko/index.htm

  • 名無しさん2010/02/16

    中国に厳しいのは良くわかりますが、ところどころに無理が垣間見えます。中国は本音と建前が著しく、あらゆる点で矛盾があるのも良く判るような気がします。なので、こういうところもあるし、間逆のこういうこともあると言った表現の方が正しいのじゃないかと。人手不足は、ここシンセンでも顕著で、工場は至る所で空きが目立ってきました。それは労働法改正や平均賃金法ができて、特に海外資本にはひじょうに厳しく適応させてきた為で、多くの企業が内陸部へ、もしくは夜逃げ同様にして撤退してそれを補うことの出来る企業が無いのが現実です。今では地元の人間の企業に関しても厳しい罰則がかけられるようになり、賃金なしの残業などありえませんし、そんなことして働く工員もいません。人手不足は企業のせいだけではないのです。