国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/12/12

◆小誌、2800号を突破!

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  「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成21年(2009年)12月12日(土曜日)
       通巻2800号  <2800号記念特大号>
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 アフがニスタンへ米兵30000,NATO5-7000増派
  これから何が始まるのか? 欧米軍事力の相対的低下をほくそ笑む中・露
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 12月1日、オバマ大統領はウエストポイント(陸軍士官学校)に出向いて演説し、アフガニスタンへの三万名の兵力増派を決めた。
六月に前現地司令官を更迭し、新しく任命したマクリスタル現地司令官が作成した報告に基づいた四万人派遣プランは、じつに三ヶ月もかけて、九回の幹部会議を開催した末の決定(四万を三万に減員し、不足分をNATOに要請)だった。

この間、オバマ大統領には「優柔不断」のレッテルが貼られ、しかも途中にノーベル平和賞の珍事がふってわいたため、「もはや増派はないだろう」とする楽観的な推測もあった。

 米議会の多数は増派に反対、とくにバイデン副大統領が反対して閣内不一致となったことにくわえ、前現地司令官で、現駐アフガニスタン米大使エイカンベリーが猛烈に反対してきた。
そういう経緯をふまえての増派ゆえに、しかもまったく皮肉なことに増派には共和党が賛成するという、じつに奇妙なアメリカ政治の局面においてのオバマの出遅れた決断だったから、当然ながら苦渋に満ちたものである。

 むろん増派には、幾つかの条件がついた。
最大の付帯条件はアフガニスタンのカルザイ政権に対しての汚職追放要求である。バイデン副大統領もエイカンベリー米大使も、カルザイを個人的に嫌っている。
 その根深い汚職構造に。

 オバマ演説は二つの特徴を持つ。
 第一は四万増派を三万人に削ったうえ、重点をアフガニスタンの治安部隊の育成と訓練に置いていること。
 第二は2011年からの撤退も同時に謳い、兵力の派遣計画にしては異様な内容であること。


 ▲中央軍司令官は特大の疑問符を打った

 はやくも疑念が唱えられた。
 米中央軍司令官ディビッド・ペトラウスは議会証言にたって、オバマの増派計画と治安部隊の育成に関して財政的見地から極めつきの疑問符を投げかけたのである。
 ペトラウス中央軍司令官とはイラク、アフガニスタン、パキスタンへの米兵派遣を統括するトップ。嘗ての湾岸戦争の英雄シュワルツコフの地位。つまりクリスタル現地司令官より上のポストの軍人である。

 「欧米軍は合計15万人規模となり、アフガン現地の治安部隊と警察を併せると合計40万人になる。このコストだけでも(戦費を除く)年間100億ドルでまかなえるとは考えられない(げんにアフガニスタン南部ヘルマンド地区では、補充するアフガニスタン治安部隊の募集にあたり、給料を180ドルから240ドルにあげたが、タリバンの補充兵士には250ドルから300ドル)。

 カブールを突如訪問したゲーツ国防長官と12月9日に記者会見したカルザイ大統領は「アフガニスタンが自己負担で治安部隊の給与を支払えるようになるのは2024年になるでしょう」
としゃあしゃあと言ってのけた。
 
この唐突な発言は横に立っていたゲーツ長官を驚かせた(ヘラルドトリビューン、09年12月11日付け)。
 たとえ増派は決まったとはいえ、アフガニスタンが第二のベトナムとなることは明白である。

 ベトナムの敗北と共産主義政権の樹立も、カンボジアの大虐殺も、米議会が厭戦気分によって予算を認めず、敗退せざるを得なかったのが米国の歴史であり、今度のアフガニスタンとパキスタンという両戦域での戦争の継続は、リベラルとハト派が多い米議会の出方による。
 ハト山宇宙人と同程度か、それ以下のレベルの政治家が覆い米議会で、戦争の理想が通じるのは、おそらくあと一年であろう。

いずれ米国は自ら国力を弱め、アジア太平洋における中国の覇権確立は、もった迅速になるだろう。
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 STATEMENT
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習近平中華人民共和国副主席来日への緊急アピール
私たちは、習近平副主席の来日に抗議します。
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 12月14日から、中国の次期国家主席と目される習近平国家副主席が、4日間の日程で来日する。私達、日本ウイグル協会は、今回の習近平国家副主席来日に際し、7月5日、ウルムチで発生したあの惨劇を想起せざるを得ない。

 今回来日する習近平国家副主席は、本年7月、胡錦濤国家主席がG8サミットに出席し不在の中、その代役の任にあたっていた。
そして期間中の7月5日、ウルムチ事件は発生した。そのウルムチ事件の対策チームのトップとして、指揮を執ったのが、今回来日する習近平国家副主席なのである。習近平国家副主席は、対策チームにも慎重論が起こる中、「どの民族が起こそうが、暴力事件には徹底して対処する」と発言、徹底した武力鎮圧を主張したのである。その結果、当時の王楽泉新疆ウイグル自治区書記を始め、地元の武装警察の暴走を許し、多くの人命が失われることになった。
 では、7月5日、ウイグル人は漢人を襲撃したりするなどの破壊活動を行うためにデモ行進を行ったのだろうか。習近平国家副主席が主張するような、「暴力事件」であったのだろうか。決して、そうではない。事の発端は、6月26日に広東省の玩具工場で発生した漢人によるウイグル人襲撃事件にある。その後、7月5日のウルムチで行われたデモ行進は、この事件の真相究明と犯人の逮捕を訴えるために行った平和的なデモだったというのが、紛れもない真実である。それは、集まったウイグル人が手にした中国国旗が証明している。ウイグル人は、デモ行進が反政府運動ではないことを、手に携えた中国国旗に託したが、この確固たる意思表示は、武装警察の水平射撃の前には通じなかったのである。
 中国政府の公式発表では、ウイグル人の死者は極めて少ない。
実際には前述したような武装警察の無差別発砲や、漢人による襲撃により、数千人規模の犠牲者が出ているのである。この行為は、「弾圧」以外の何物でもない。もっとも、習近平国家副主席の決断如何によっては、ここまでの犠牲者が出ることは無かったであろう。この点からも、日本ウイグル協会は、習近平国家副主席に対し、明確に抗議の意志を表明する。

7月5日の事件から5ヶ月が経過したが、ウルムチの事件はまだ終わってはいない。11月9日には、ウルムチの事件で逮捕・拘束され死刑判決を受けたウイグル人ら9人に死刑が執行された。そして、今もなお、多くのウイグル人が捕えられたままになっており、死の淵に立たされている。
 日本ウイグル協会は、習近平国家副主席に対し、逮捕・拘禁されているウイグル人の即時釈放を求め、さらに、事件の真相究明の為、国連調査団の受け入れを要求する。
 中国の次期国家主席と目される習近平国家副主席は、このような人権問題の解決を図り、抑圧される全ての人々に多様な自由が与えられない限り、未来における中国の真の発展は断じて無いことを認識しなくてはならない。
 以上、習近平国家副主席の来日に際した、日本ウイグル協会の声明文とする。

       イリハム・マハムティ(Ilham Mahmut)
世界ウイグル会議日本全権代表・日本ウイグル協会会長
       賛同者 西村幸祐(評論家・ジャーナリスト)日本人
           藤井厳喜(国際問題アナリスト)日本人
           ペマ・ギャルポ(桐蔭横浜大学教授)チベット人
           オルホノド・ダイチン(モンゴル自由連盟党幹事長)モンゴル人
           石平(評論家)中国系帰化日本人
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(読者の声1)11日付けの産経新聞「正論」の「国を危険にさらす単純な正義感」中谷巌を読みヒントを得まして、下記の論理展開を考えました。
(A)日米同盟死守ならば、→日本は米の核の傘内に留まる →日米の軍事的対等関係はありえない。 
(B)日米(同盟)の対等関係を主張するならば →もっと強力な自主防衛路線 →(自前の核武装)→いわゆる軍拡路線。
(C)日・米・中間での対等な正三角関係の樹立ならば→日米(軍事)同盟の解消→自主防衛路線 →ぼぼ(B))に同じ。
ここでは「ロシアとの(軍事的)関係」が考慮されていませんが、ここにロシアを組み入れると、つくづく「日本のポジションは100年前(明治40年代)と全く変わってはいない」と感じます。
ならば日露戦争以降、大東亜戦争敗戦まで、あの時期(の40年間)に日本が歩んだ道は、21世紀の日本の歩むべき道のおおいなる参考になると小生は考えるのですが、先生のご意見をお聞かせください。
   (KI生、尼崎市)


(宮崎正弘のコメント)この場合、ロシア側からの工作があってしかるべきでしょうが、北方領土を返さない限り、ロシアが日本を巻き込むのは不可能でしょう。ロシアはいま、タジク、ウズベク、カザフなどへの捲土重来と、インドへの猛烈な接近を再開しており、対日工作は外交日程にまだ入っていない。ハトの息子がモスクワ留学中ですから、このファクターは残りますが。。。
 EUとのバランス感覚も地政学的には日本の場合、あいだに中国とロシアが挟まれていますから、思考対象から抜けています。



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(読者の声2)小沢訪中団のニュースを見て、めまいと吐き気を覚えたのは私だけでしょうか?
小沢のご満悦な笑顔とそれと対照的な胡錦濤の戸惑いの顔。あれは歓迎の顔ではなかったですね。路上でばったり会って声掛けられて「この人誰だったかなあ?でも失礼だからとりあえず挨拶しておこう」という時の顔でした。
またアイドルのサイン会を思わせるような、民主党議員の握手と記念撮影。これまたみんなの顔がイっちゃってましたよねえ。情けない...。
あとで現像してもらって地元の支援者に自慢でもするのでしょうか? このニュースを見た一般の方の感想を聞きたいものです。
  (TM生)


(宮崎正弘のコメント)あんなんを選んだ選挙民の馬鹿貌も、その後ろに浮かんで見えませんでしたか?
 しかし小泉チルドレンと同様に、次の選挙で小沢チルドレンの、いったい何人が残りますか? 四人、いやせいぜい五人くらいでは?
 さて、そんなことはどうでもいいのです。
 鳩山が歴史始まって以来の、おそらく足利義満いらいの売国奴だということがはっきりしました。
畏れ多くも天皇陛下に面会を強要して来日する序列六位でしかない習近平の面会を、あろうことか鳩山政権が許可したという暴挙。
タウンゼント・ハリスが江戸幕府の将軍に拝謁を申し出ても、実現したのは一年後でした。天皇どころか征夷大将軍でさえ、それだけの威厳があった。
鳩山に会うことさえ格が下の政治家が、恐れ多くも陛下に拝謁の機会を与えるという決定を宮内庁の反対にもかかわらずごり押しで鳩山政権が行った。これは二千六百年の歴史を否定する、おおよそ日本人としてはあり得ない売国奴の所業です。
国際的な外交儀礼にも違反しています。
史上最悪の外務大臣と言われた田中真紀子だって、こんなことくらい分かった筈。だってアミテージ国務副長官(当時)が面会を求めたとき「格が違う」といって国会図書館に引きこもったんですから。 
オバマが陛下に拝謁できたのは米国の国家元首であり、当然です。中国は胡錦涛があうのなら「国家主席」ですから、国債礼儀上、当然です。しかし公式的に「国家副主席」であり、党内の序列は六位でしかない。いかに次期国家主席の有力候補とはいえ、もし、これを許せば、同時に胡錦涛が推す李克強の芽を日本がさっさと摘んで、胡の顔に泥を塗ることを同時に意味し、かの独裁政権を延命させる手助けになることを意味するばかりか、中国のごり押しに日本が屈服したことを内外に鮮明にすることになる。日本は中国の属国ですか。
しかし、今回の鳩山政権の暴挙は、明らかに「日本は中国の属国で御座います」ということを内外に鮮明にしたことと同義語です。「北京の軍門に下った屈辱の日」として、後世の歴史家は書くことになるでしょう。



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(読者の声3)安藤礼二は折口信夫の『死者の書』と彼の天皇論について次のように述べています。
(引用開始)
「富岡(多恵子)の推定では、その初めての出会いの後、折口と無染は何度も会い、一緒に暮らし、多くの「歌」を折口にもたらした二人だけの「旅」を何回もした。やがて二人の関係は、無染の結婚とともに終わりを告げた。そして、折口はおそらく無染の死を契機として、無染につけてもらった戒名でもある「釈迢空」を筆名として使用することを決意したのである。それでは、なぜ、無染との関係がこれほど深く隠されているのか。富岡は言う。無染以降の折口の同性愛は一つの不均衡な関係のもとに成り立っている。それは基本的に折口が「快楽の主体」に立った、つまり愛する側に立った、師と弟子との関係である。しかし、折口と無染の関係は、そうではなかった。ちょうどその逆である。折口は、愛される側、つねに「快楽の客体」であらねばならなかった。「快楽の客体」であったことを、あらためて意識した時、折口は自らのなかに深く存在する女性性に気づいたのである。おそらくそのことが「口ぶえ」を経由して一直線に「死者の書 初稿」に描かれた、折口の中将姫への変身につながっている。
『死者の書』とは折口の「王権論」と直結するものなのである。権力と表現は交錯する。『死者の書』執筆とは、昭和の新たな革命、「天皇」を中心とした、理念としての「昭和維新」と呼応する営為でもあったはずである。「死者の書 初稿」を読解してゆくことで、折口の異様な「天皇論」の奥深くに隠された一つの構造が、白日のもとに曝されるはずである」
(引用止め)
 
折口信夫は戦前活躍した国文学者、民俗学者、歌人です。 「無染」は折口の同性愛の最初の相手だったという新仏教運動(明治・大正時代の仏教改革運動)に熱心な年上の僧侶です。
「口ぶえ」は折口の自伝といわれる小説です。『死者の書』は折口が書き残した不思議な書で、その内容については次のように説かれています。
(引用開始)
「『死者の書』の舞台は当麻寺を麓にもつ二上山である。ここには、大津皇子伝承や中将姫伝説がのこっている。折口はこれらに取材し、古代の人の観念そのものとなっていく。物語は「めざめ」から始まる。太古の雫が「した した した」と垂れる塚穴の底の岩床でめざめたのは、死者である。この死者は射干玉(ぬばたま)の闇の中で徐(しず)かに記憶を呼び戻し、かつての耳面刀自(ミミモノトジ)に語りかける。死者の姉は伊勢の国にいる巫女だった。思い出せば、死者のおれは磯城の訳語田(おさだ)の家を出て、磐余(イワレ)に向かっていたようだ。そこには馬酔木が生えていて、そのとき鴨が鳴いたのまでは憶えている。姉がおれを呼んでいた。そこへ九人九柱の神人たちの声が聞こえてきた。どうやら藤原南家の郎女(いらつめ)の魂を呼んでいるらしい。物語の冒頭は、こうした幽明さだかならない時の境界をゆらめく記憶の断片が、あちらこちらに少しずつ湧き出して、まるで霧の谷の姿がうっすら見えてくるように始まっていく」
(引用止め)

 折口信夫には『大嘗祭の本義』という天皇の存在の本質に迫る書があります。「大嘗祭」は皇祖皇宗からそれら御霊を受け継ぐ最重要の祭儀で、即位後初めて一世一度行われる祭です。天皇が行う収穫祭が「新嘗祭」で(現在は「勤労感謝の日」と呼ばれています)、その年に収穫された稲を天皇が神に捧げ感謝しますが、古くはこれを「毎年の大嘗」と称しました。それは『大嘗祭の本義』によると次のような考え方に基づきます。
(引用開始)
「稲の魂は、神の考へが生ずる、一時代前の考へ方である。外来魂の考へである。此魂を身につけると、健康になり、農業に関する、すべての権力を得ることにもなる。大嘗祭の中へ、稲穂を入れる時には、警蹕(けいひつ)の声をかける。警蹕は、神又は天子様の時でないと、かけない。そして、警蹕のかけ方で、何処の国、何処の誰といふ事が訣つた位である。警蹕の意味は「尊い神が来た。悪い者よ。そこをどけ」といふ事である。此で見ても、稲穂が大切な尊いものであつた事が知れる」
(引用止め)

 折口信夫は神話の中に天皇霊の不変と永続性の縁(よすが)を見出し、「大嘗祭」のうちに天皇の死 = 再生の儀礼が織り込まれていると論じています。
「大嘗祭」では、御所である禁中に、悠紀殿と主紀殿の両殿が仮設されます。因みに、秋篠宮の第三子の御名前の悠仁は「悠紀殿」の”悠”からとられたと巷間伝えられています。両殿には天皇の寝所がしつらえられ、茵(しとね)と衾(ふすま)が持ち込まれます。天皇は日嗣の皇子(ひつぎのみこ)として、この中に籠もって物忌み、禁忌の時間を送ります。「日本書紀」の天孫降臨でニニギノミコトをおおっている真床襲衾(まどこおうすま)が寝所の茵と衾にあたります。天皇は一晩この衾に身をくるみ、目覚め起き上がると、先帝の「魂」が新天子のからだに移され、万世一系の正統性がつながれるのです。天皇の肉体である現身(うつせみ)は一代ごとに変わっていき、同一でなくても、その肉体から肉体へと移される「魂」は不変で同一だという観念が根っこにあるのです。この「魂」が永遠の「天皇霊」です。血統のうえでも「皇位」の継承が考えられ、信仰の上でも不変の魂(天皇霊)が継がれているのです。
この天皇の魂が不変であることを儀礼的に確かめているのが、毎年行われる新嘗祭です。
 大嘗祭がメイン・ファンクションを受け持ち、新嘗祭は大嘗祭の効果をつなぎ留めるサブ・ファンクションを果たしていると云えます。

故三浦重周氏(元「重遠社」代表、三島由紀夫研究会元事務局長)は、第一遺稿集『白骨を秋霜に曝すを恐れず』(K&Kプレス)の中の論攷「大嘗祭を平成維新の転回点に」で「大嘗祭」の持つ本義をつぶさに開陳しています。
そして今上陛下の即位の儀式中の「大嘗祭」を国事行為から外し、私的な皇室行事として即位の礼と行為の主体を異にした、時の政府に怒りをあらわにしました。
それから早20年が経とうとしています。今回中国政府は日本側の慣例となっている外交上のプロトコル(天皇陛下面会の一カ月ルール)を逸脱して、中国要人との会見を強引に要請してきました。これを特例として受け入れた現政府に、泉下の三浦氏は激怒していることでしょう。
「大嘗祭」の意義を通して天皇の存在の本質に触れ、それを敬った古代の人の観念を呼び起こすことが喫緊です。
   (有楽生)


(宮崎正弘のコメント)三島由紀夫の『三熊野詣』を思い出しました。
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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム(2800号記念 三本一挙掲載)
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――卑屈、屈辱、無知蒙昧・・・この面汚し
 

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12月10日、民主党の小澤幹事長はチルドレン140人ほどを含む600人を越える家之子郎党を引き連れ、「日中草の根交流」の大看板を掲げ、北京で待つ胡錦濤共産党総書記の懐へ飛び込んだ。
なんせ飛行機は5便、北京の街を大型バス17台で移動するというのだから豪勢このうえなし。小澤は北京側が用意したロング・ボディーの超高級リムジーンで胡との“謁見”の場へ。

真紅の絨毯を足下に、眼は笑ってはいないが満面笑みを湛える風情の胡は、一歩前に歩みだし右手を差し出し“大歓迎”の意を装う。
そんな胡を眼にすると、小澤は破顔一笑。同じく右手を前に恭しく胡の手を戴く。「閣下、臣小澤、一同を引き連れお約束通りに参上致しました」。対する胡の態度は、如何にも「よくきたな小澤。ういヤツよのーッ」。

次のシーンはチルドレンが次々に胡の手を押し頂いた後、横に並んでツーショット。あるチルドレンは感激至極の態で、「小澤先生と同じように強いカリスマ性を感じました」とさ。オレを小澤如きと一緒にするな――こんな、胡の苦笑が聞こえてくるようだ。

胡との会談に臨み、各議員へのツーショット写真という破格の服務(サービス)への礼を述べた後、小澤は「(来年の参院選では)野戦司令官となって勝利しましたら、外交政策も思い切ったことが可能になります」と、胡に向かって参院選での勝利を誓ったのである。

家之子郎党を引き連れての小澤の北京詣でを「長城計画」とか呼ぶそうで、なんでも日中の「草の根」が手を繋ぎ両国の間を隔てている洋上に眼には見えない万里の長城を描き、日中永遠の友好を築こうというのが狙いらしい。「オヤジさん」と信奉する田中角栄の意思を継承すべく、小澤はライフワークとして取り組んでいるとのことだ。

いまここで長城計画についてとやかくいう心算はない。ただ、北京側のタメにする厚遇に舞い上がり、自ら“卑屈”な振る舞いをみせる小澤を筆頭とする日本側の対応に、なんとも言い知れぬ怒りを覚えるだけだ。

思い起こせば文化大革命初期のことだ。当時の日本では、文革は共産党上層の権力闘争だとの真っ当な考えが押し退けられ、偉大な毛沢東が発動した人類史上空前の「魂の革命」という論調が大手を振って罷り通り、メディアや学界で持て囃されていた。そこで中国に赴いて文革を現地で体験し、活学活用したうえで日本でも「魂の革命」を起こそうと妄想するオッチョコチョイが表れる。

社民党の前身である日本社会党関係者の中には中国まで出かけ、毛沢東語録の一部を書いた小さな看板をサンドイッチマン然と体の前後に下げ、中国の街を歩く“剛の者”まで登場したほどだ。無知蒙昧も極まれり、といったところ。

おそらく当時、文革が指導部最上層の命懸けの血腥い権力争いであり、同時に闘いの帰趨が自らの日々の生活に直結していることを直感していたはずの中国民衆は、日本社会党関係者のトンマな振る舞いに戸惑い、苦々しく思っていただろう。

自分が生き延びるためには昨日の友が今日は敵になり、今日の友を明日は敵に売る。神経をすり減らす際どい日々を送っていた彼らの前に、トンマな格好の“善意”の日本人社会主義者が、しかも“誠意”を込めて毛沢東と文革を讃えて登場したのだから、ざぞかし驚き、その真意を訝り、最後には苦笑したに違いない。

 小澤の長城計画に、あの時の日本社会党関係者の滑稽で卑屈な姿が重なってくる。
《QED》


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(増大号につき貳連発)

  ――そーれ、それそれ、お祭りだ。わっしょい、ワッショイ・・・



共産党政権の支持基盤は経済面での永遠の右肩上がりと中華民族至上主義だ。
だからこそ現在の胡錦濤政権はもちろんのこと、次の政権も、その次も・・・共産党、いや漢民族の政権が続く限り、この2本の旗を振り続けるしかない。だが成長がいつまでも続くわけがない。そこで経済成長にブレーキが掛かったら、なあに「全世界の中華民族よ、団結せよ。屈辱の近現代を振り返れ。いまこそ雪辱の時だ」と、民族主義のアクセルを噴かすだけさ・・・。

悲願のオリンピックを終え、上海万博は目前。再来年の2011年は満州族の清朝を打倒し中華民族の手でアジア初の立憲共和制国家を築いた栄光の辛亥革命から100年。ならば共産党政権が辛亥革命100周年を盛大に祝わないわけがない。それが政治というものだろう。

そこで21世紀に想定される「中華民族主義昂揚100周年イベント」を、冷静かつ客観的に選定してみた。
!)2015年=国恥記念日100周年
!)2019年=五・四運動100周年
!)2021年=共産党結党100周年
!)2022年=孫文北伐宣言100周年
!)2024年=第一次国共合作100周年
!)2031年=「九・一八」(満州事変)100周年
!)2037年=「七・七」(盧溝橋事件)100周年
!)2037年=第二次国共合作100周年
!)2045年=抗日戦争勝利100周年
!)2049年=人民共和国建国100周年

まさに21世紀前半はビッグ・イベントの目白押しということになる。!)!)!)!)!)と並べたら、一衣帯水も同文同種も、「友愛」も「東アジア共同体」も、小澤朝貢団だってクソ食らえ、である。だからこそ日本人としては、いまからシッカリと覚悟を固めておくべきだ。

さて21世紀後半に眼を移すと、ここから選定が俄かに難しくなる。それというのも20世紀後半は共産党政権による“ビッグ・イベント”が目白押しだったから。だが、その大部分が《負の遺産》となる可能性が大。共産党政権としては隠しておきたいことばかり。

先ずはチベットとウイグルの「解放」、次いで百花斉放・百家争鳴、反右派闘争、大躍進政策が招いた大飢饉。60年代半ばから10年続いた文化大革命に中ソ国境武力衝突敗北。

70年代末の対越懲罰戦争での惨敗。
極め付きは89年の天安門事件――共産党政権による現時点での公式評価はともかくも、民族的立場に立った“歴史認識”からするなら、これら出来事の大部分は苦難・凶事と断罪されるに違いない。

ならば共産党政権独裁が続いていたなら、21世紀後半は2078年の改革・開放100周年と、香港(2097年)とマカオ(2099年)の2つの植民地の中国回帰100周年しか祝えないことになる。
寂しい限りだ。

祭が盛り上がれば盛り上がるほどに、終わった後の反動が怖い。だから傍迷惑なことだが、内外からの注視を逸らしバブル破裂の先延ばしを狙い、共産党政権は民族主義100周年イベントを連発し、国民を煽り酔わせ麻痺させ躍らせ続けるしかないのだ。
そこで老婆心ながら一言・・・楽アレバ苦アリ。イベント疲れにゴ注意を。
《QED》


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(増大号につき三連発)

――3日やったら止められない・・・とはいいますが
         『中国乞丐調査』(于秀 中華工商聯合出版社 1999年)
 


 △
本書は、女性ライターによる長い時間を掛けた突撃取材によって明らかにされた20世紀最末期の中国における乞食社会の内面報告である。
中国各地で取材した26例が詳細・綿密に、そしてリアルに綴られ、社会の最底辺がどうなっているのか。

そこで何が起こり、なにゆえに彼らは最底辺の生活を送っているのか――
なにはともあれ、何人かの乞食に登場願うこととしたいが、その前に70年代前半を過ごした香港での我が経験を・・・。当時の香港にも種々雑多な乞食がいた。
彼らは一様に自らが乞食生活を余儀なくされるに至った来歴を墨で紙に、あるいはチョークで路面に書きつけ、通行人の同情を誘う道具立てにしていた。

来歴を記した虚実綯い交ぜの表現の面白さに時の経つのを忘れ読み耽けり、時に乞食を求めて街を散策したこともあるが、なにより吃驚仰天したのが鮮やかなまでの筆致。乞食自身が書いたものなのか。それとも代筆を商売とする仲間でもいたのだろうか。20世紀前半の中国の乞食に関する本を読んでも、やはり達筆で“自己紹介”を・・・ということは、それが乞食社会の伝統手法ということか。

さて、北京動物園の入り口の雑踏で著者が知った若い女性の乞食は「呂秀娟。河南武郷人。母を亡くし父は病の淵に苦しみ床に伏したまま。
3人の弟妹は幼く食うに事欠く始末。心優しき方々の援助を心よりお願い致します。私は学費が払えず、重点教育を施す高校中退を余儀なくされました。皆様の暖かいご援助で妹や弟を学校に通わせてください。心よりの感謝の意を」と自らの身の上を書き記した紙を首から提げていたというが、墨痕鮮やかに記されていたのだろうか。かてて加えて、ウソかマコトか知りたいところ。

貧乏だが成績優秀だった彼女は、親戚一同の援助で高校へ。ある夜、村の鼻つまみ者に暴行され不幸にも妊娠してしまう。
学校にも行けず、村にも居られず、不幸な子供を残したまま北京へ。だが、仕事などあるわけなく万策尽きて乞食に。もう故郷には戻れない。

車椅子に乗ったみすぼらしい乞食だが、じつは一帯の乞食の総元締め。もう一つの顔は、手荒な仕事で近郷近在を震え上がらせる押し込み強盗団の親分。
彼もまた両親を知らなければ生まれ故郷もわからない。気がついた時には、乞食になっていた。とはいえ立派な屋敷に3人目の若いカミサンと子供。
優雅な生活である。乞食で稼いだ金を元手の賭けマージャンで濡れ手に泡の大儲け。広州の歓楽街では、たった9歳の女の子が夜中の2時3時まで酔客相手の花売り稼業。「名誉がなんだ。政府は面倒見てくれねえ。カカアと2人、乞食でもしなきゃあ死ぬしかネエ」と、革命戦争に参戦したが両足膝下を吹き飛ばされ元解放軍兵士。大企業経営者に成り上がってチャイニーズ・ドリームを実現した元乞食・・・。

「貧乏の共同体」であった毛沢東の時代は遠く去り、いまや共産党政権は目の眩むような格差を助長するばかりの金持ち優遇策を次々に打ち出し、必死に延命をはかろうとする。

没落する超大国のアメリカを尻目に1国で世界を差配しようと鼻息は荒いが、彼ら乞食が抱える現実を見せ付けられれば、北京が狙う壮大な“世界制覇計画”もまた蜃気楼に思えてくる。

同時に、彼らの生活ぶりが19世紀後半から20世紀前半にかけての“眠れる獅子”がじつは“眠れるブタ”だった時代を生きた乞食の悲惨極まりなかった生活と重なって見えてしかたない。
中国の20世紀は停滞、退歩、進歩、はたまた先祖返り・・・。
《QED》

(ひいずみ・かつお氏は愛知県立大学教授。華僑、京劇の研究家として著名)
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  • 名無しさん2009/12/12

    今朝の新聞に「副主席の対面を損ねるから」特例措置で陛下に無理矢理割り込み会見させるとか。

    バカもきわまれり。「小一内閣」の面目躍如。

    いままで培った全世界との友好が潰れるって気づかぬ愚劣ぶり。世界各国の代表が「第六位」の「副」主席より下に扱われ体面を潰されたに等しい事。「政治利用ではない」とアホポッポがほざいてますが、政治利用したのは、「自己中国」の方。

    しかも世界中の元首のメンツを潰したのから、自己中国の国益も損ねてます。

    両方愚劣です。

    近攻に拘り破滅した国は支那の歴史でもよく見られます。お家芸でしょう。

    「特例措置」には、特別な理由を国民のみならず、世界中に説明する責任を負ってますが、その責任は果たされないでしょうね。

    阿呆ポッポの元秘書が、不起訴になったのが小さく出てました。反日法務大臣の圧力でしょう。

    先日も反日集会に祝電を打ったとネット産経にでてました。「大臣としてではない。参議院議員としてだ」とかのたまったそうですが、言い訳にもなりません。



    関係ありませんが、テレビ朝日「一生懸命我々も支持率を下げないで辛抱して支えている」動画。というのがネットにあがってました。下がらないようにできるんですね。(笑)ttp://birthofblues.livedoor.biz/archives/50949895.html

  • 名無しさん2009/12/12

    大分のサル山を見る様で実に恥ずかしい想いでテレビの画面を見ていました。

    こんな奴らが税金で養われている?いくらなんでも許せる事では有りません。

    コキン党とオザワ党の天皇利用も情けない話です、イラク辺りじゃ暗殺されても仕方が無いでしょう。