国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/11/14


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  「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成21年(2009年)11月14日(土曜日)貳
           通巻2772号 
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(書評特集)
(下段にコラム)
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●◎ブックレビュー◎●BOOK REVIEW◎●書評◎●ブックレビュー◎●
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西部邁『14歳からの戦争論』(ジョルダン・ブックス)
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刺激的な副題に曰く。「戦争、この醜くて、美しいもの」。
 いったい真っ正面から戦争を論じる本が、いまの日本の精神的瀰漫状況、あの宇宙人が率いる政府という、信じられないほど貧弱な言語空間のなかで受け入れられるのだろうか? ちなみに昨晩(11月13日)には日米首脳会談が行われたが、大事なことは全部先送りされた。
本書を紐解きながら緊張感の欠けた日本の思想状況を真っ先に思った。
 西部さんらしく本書では鋭角的な語彙を武器として用い、世の安逸に挑戦している。
 しかし「14歳からの」という主題形容詞は、理由がよく飲み込めない。おそらく元服の年齢で昔なら大人として立派に扱われたし、また日本男児として生まれたからには、それなりの覚悟が出来ていた。戦前までなら十四歳でも素養が備わっていた。その大人のスタートとしての年齢設定だろうけれど、本書に書かれた内容を理解するに、現代人は十四歳でOKだろうか。いまの日本人なら高校生か、大学生のレベルである。
 いまは学校で競争を鼓舞されることはなく、運動会のかけっこで一等、二等がない。
 競争心のない社会では戦争の本質は絶対に理解されない。戦争反対が偽善であることにも、気がつかない。朝日新聞をまだ購読しているひとは天性の偽善を自ら宣言しているも同様だが、その知的退廃ぶりにさえ気がつかない。
 さるにても、嗚呼なんという日本の軽さ。
 いま次の本の表題を思いついた。「日本、この耐え難き存在の軽さ!」

 さて本書で西部氏はこう言う。
「『戦争反対』そして『平和賛成』と軽々しく口にする者には気をつけなければなりません。そういう者にはヒポクラット(偽善者)が多いのです。人間とその社会において戦争への傾きがいかに強いか、それを素直に認めてかかるのが戦争論の出発点」(本書22p)。
 またこうも言われる。
「強く予感します。この二十一世紀には、近代文明の長く続く死の苦悶が待っていることを。死の苦悶にあえぐ文明は、ほぼかならず、戦争の挙に打って出ます。文明の再野蛮化」が確実に開始されるだろう、と。
 その言を俟つまでもなく、すでにイラクでアフガンで、そしてインドでソマリアで、つい先日までのコソボ、チェチェン、イングーシュ、そしてセルビアとボスニア&ヘツツェゴビナで戦争があり、米国に出現した偽善政治家によって、世界に真空が生まれたウクライナ、グルジアあたりで、戦火が再び火を噴くだろう。
 『文明の再野蛮化』はすでに始まっている。
 本書は最後の箇所に三島由紀夫の行動が描かれ「命より大事な価値」とは何か若い読者へ熟慮を促す呼びかけが含まれている。
(蛇足。そうそう、ことしの憂国忌シンポジウムには西部邁氏もパネラーで登壇するのです)。



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西部邁『昔、言葉は思想であった』(時事通信社)
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 西部さんの新刊がもう一冊ある。この本は「歩く語彙辞典」こと、西部さんのレトリック学の集大成のように思える。
 その昔、雑誌『宝石』で、この種の語彙に関しての随筆を西部さんは長く連載されていて、評者は愛読していた。言葉の魔術師の面目躍如だった。
 本書ではむしろ、その語源に遡り逆に現代を見つめ直すという試み、これは一つの哲学である。
 四つのカテゴリーに別れ、政治・経済・文化・社会の、たとえば「市民」とは何か、『権利』とは、『自由』とは何かを表面的な解釈ではなく語源に遡って、その意味の歴史的変遷を抑えながら、現代人に哲学の活性化を問うという壮大な言葉の実験が続く。
 一例を引こう。
 西部氏は本書のなかで「パトリオティズム」を説明され、語源は「父祖の地」。ナショナリズムの語源である「ナツィオ」とは「誕生の地」。両者は大同小異の言葉と規定される。
 そして愛郷心も愛国心も本来的には「自然の発露であり、サミュエル・ジョンソンが言った「愛国心は悪党の最後の隠れ家」というのはあたらない。寧ろ「悪党の住み処はパトリオティズムでもナショナリズムでもなく、ショーヴィニズムのほうである」と冷徹な言語学的基礎知識をふまえ、「愛郷心と愛国心を否定するのはバカ者の振るまい」であり、「愛郷心・愛国心は精神的な健全さの証し」である、と強調される。
 凄く利口になったような読後感が随所にある。
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◎ブックレビュー◎ ●BOOK REVIEW◎ ●書評◎ ●ブックレビュー◎
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黄文雄・原作&スタジオ大四畳半・漫画『くたばれ平和主義』(飛鳥新社)
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 漫画入門シリーズの原作を黄文雄氏が書いた。
 「政治が変わったこのタイミングで凄い本がでた」というのは田母神元空幕長の推薦の辞。
 本書は似非文化人やサヨク教師らが子供たちを洗脳していく手口と本質との乖離をえがき、いかに平和を訴える左翼がインチキかをあばき、しかしサヨク謀略が成功しそうになる最終場面に突如、武道にも長じた英雄が登場し、サヨクをばったばったとなぎ倒す。その英雄的な主人公の名前は黄文雄。
 そうそう、昔々、蒋介石独裁体制下の時代の台湾で、息子の蒋経国がNYの国連本部を訪問しホテルに戻ったおり、玄関先でかれを狙撃した台湾独立派の英雄がいた(狙撃は弾がそれて失敗)。その人の名も黄文雄(同名異人)でした。
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< 宮崎正弘の近刊 >
  宮崎正弘『朝日新聞がなくなる日』(ワック、980円)
都内の大きな書店では本日テスト販売があります。全国主要書店では11月17日発売!
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◇読者の声◇◆ ☆DOKUSHA―NO―KOE▲◎ ☆◇どくしゃのこえ◇◆
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(読者の声1)(チャイナ・パキスタン・イラン・北朝鮮・ロシア) VS (US・UK・EU・イスラエル・インド・日本)と考えると、中東・アフリカ・南米がどこへ向かっていくのかが気になります。
CIAがUSの情報局、ペンタゴンが作戦本部。国際対立俯瞰図にど素人のオバマは、アフガン問題ひとつ掌握出来ていない。
「ブッシュの所為にする暇があるなら、2001年11月のアフガン開戦から8年間も何をしていた? オバマは当時40歳で、シカゴの、黒人コミュニテイのリーダーに過ぎなかった」とWPブログで批判されている。
 WPは「1982年、パキスタンのアブドル・カーン博士(現在は在宅監禁中)は、毛沢東と約束していた核爆弾二個分の完成ウラニウムを受け取っていた」とカーンのペーパーを記事にした。
毛沢東はインドの核(その二年前に実験した)を恐れたわけです。見返りは、カーンが、ヨーロッパ製の遠心分離機と工場建設(ウイグルらしい)をブットと話し合って、シナに提供した。シナは高性能のウラニウムやプルトニウムを作る技術に遅れていて悩んでいたらしい。
(伊勢ルイジアナ)
 

(宮崎正弘のコメント)ブットはロンドン亡命時代にTIMEのインタビューに答えて、「軍は首相である私にも内緒で核開発をしていた」と語っていた。あれは嘘だったわけですね。ま、あのパキスタンで女性宰相ですから、嘘は政治家としての常識的武器ではありますが。。。。
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       コラム コラム コラム
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樋泉克夫のコラム
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――あの頃、世間は、まだマトモだったようです
         『小學算術教學講話』(兪子夷 浙江人民出版社 1954年)
 

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官僚と資本家の不正を批判・摘発するための「三反・五反運動」と呼ばれる全国規模の政治運動を進める一方、朝鮮半島ではアメリカ帝国主義を敵に“人民義勇軍”を投入――建国直後の中国は苦難の門出ながら、清新の息吹に溢れていたように思う。

そんな折の52年秋に小学校1年生から新しい算数の教科書が採用された。だがソ連の教科書をそのまま機械的に翻訳したことから、教科内容や進度がそれまでのものと大違い。そのうえ中国の実情に合わないから、多くの教師が面食らい使いこなせない。
難解で詰め込みすぎといった欠点が目立ち、生徒の学力増進には結びつかないとの不満の声が教育現場から挙がる。

当時、小学校での算数の教え方について多くの解説書が出版されていたが、その多くは、これまたソ連で出版されたものの翻訳であり、少なからぬ教師が理解し難く感じていた。それというのも、訳文が生硬で中国の教師がいつも教室で使っている述語とは違っているばかりか、内容も中国の子供たちの日常生活における関心とはかけ離れすぎていた。

早くも11月には、杭州の小学校教師は新しい考えに基づいた新しい教科書の必要性を深く認識したそうだ。
そこで53年の冬休みを利用して小学校教員有志が集まって、新しい教科書作りに着手した。以後、教育現場での実験教育などの試行錯誤を繰り返した結果として、「わが国の実情に基づいて本書を書きあげた。訳本の不都合さはありえない」と著者は胸を張る。

そこで早速、「わが国の実情に基づ」く算数教育の一端を覗いてみよう。
■お父さんは27日間働きます。お母さんの労働日数はお父さんより9日少ないです。では、お母さんは何日間働くでしょうか。

■お母さんは18日間働きます。兄さんはお母さんより12日間多く働きます。では、お兄さんは何日間働くでしょうか。

■お父さんは27日間働き、お母さんはお父さんより9日間少なく、お兄さんはお母さんより12日間多く働きます。では、お兄さんの労働日は何日間でしょうか。

■以上を理解させたうえで、「お母さんとお兄さんはそれぞれ何日間働くでしょう」、「3人合わせて何日間働きますか」、「3人は平均して何日間働きますか」と設問を変える。

著者は、!)初歩から出発し「一歩から二歩、二歩から三歩・・・四歩、五歩」と段階的に確実に理解させることができる。!)事物の発展と変化に従って、簡単から複雑へと進むことが出来る。!)2つから3つ、3つから4つと関係を発展させることで、複雑な関係を明確に把握させうる――と、彼らの考えた方法の長所を解説し、ソ連式詰め込み教育を「明確な基本概念を欠いた底なしの浪費だった」と批判する。

そして、「(本書で示した)基本概念と基本的計算方法の基礎を確実に身につけたなら、小学校を卒業して就職しようが、短時間の学習で仕事や生産現場で必要な全ての計算方法をマスターできる」と自信を示す。

その後、著者の教科方法がどの程度普及したのか。どんな成果を挙げたのかは不明だが、小学校の算数という限られた範囲ながら、すでに52年の段階でソ連式に異を唱えていたことに興味が湧く。
それにしても、この本には毛沢東の「も」の字も、共産党の「き」の字も全く現れない。その後の中国を思えば、当時は少しはマトモだったようデス。
《QED》
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 ((( 憂国忌プログラム )))

 第三十九回 三島由紀夫氏追悼会
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 とき     11月25日(水曜日) 午後六時半(六時開場)
 ところ    星陵会館 二階ホール
        http://www.seiryokai.org/kaikan.html
 開会の挨拶  松本徹(三島文学記念館館長)
 シンポジウム 「現代に蘇る三島思想」
 パネラー   杉原志啓 (評論家、徳富蘇峰研究家)
富岡幸一郎(文藝評論家、司会)
        西部 邁 (評論家、『表現者』顧問)
        西村幸祐 (評論家、『撃論ムック』編集長)
 会場分担金  お一人 1000円
        記念冊子とメルマガ合本(第十二号、20ページ)をお渡しします。
        過去の憂国忌ポスターを頒布します。過去の冊子はバックナンバーがありません。ご了解下さい。
 どなたでも予約なしで入場できます。
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MMMMMMMMM 三島 MMMMMMMMMMMMMM 三島 MMMMMMMMM
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< 宮崎正弘の近刊 >
 宮崎正弘『朝日新聞がなくなる日』(ワック、980円、都内の大きな書店では本日テスト販売があります。全国主要書店では11月17日発売)

宮崎正弘+内田良平研究会編
『シナ人とは何かーー内田良平の『支那観』を読む』(展転社、定価1995円)

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< 宮崎正弘のロングセラー 絶賛発売中 >
 http://miyazaki.xii.jp:80/saisinkan/index.html
『中国分裂 七つの理由』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
『人民元がドルを駆逐する』(KKベストセラーズ、1680円)
『絶望の大国、中国の真実』(石平氏との共著、980円。ワック文庫) 
『やはりドルは暴落する! 日本と世界はこうなる』(ワック文庫、980円)
『中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配』(KKベストセラーズ 1680円) 
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
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◎宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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