国際情勢

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み

2009/10/29


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  「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成21年(2009年)10月29日(木曜日)
         通巻2753号 
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 ダッチロールを描き出したオバマ政権のアフガニスタン戦争
  いかに勝つか、ではなく、いかに逃げるかと焦点が移行したのか
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 ワシントンポストに衝撃の記事が登場した(10月27日付け)。
同紙に依れば、元海兵隊でイラク駐在経験もある(海軍大佐)、その後、ペンタゴンの制服組でワシントンに勤務後、アフガニスタンのタリバン本拠地へシビリアンとして赴任したマチュー・ホーが周囲の慰留を振り切って突如任務を離れ、「この戦争は何のためのものか、我々は何のためにここにいるのか」と上層部へ手紙を書いた。

 事件そのものはたいした問題ではない。
ありふれた戦争の側面であり、イラク帰り、アフガン帰りの米兵の一部に精神障害が見られることも深刻に報告されている。
 
 ところがタイミングが最悪の事態と重なった。
 バイデン副大統領は個人的なカルザイ嫌いが昂じて、アフガニスタン大統領選挙やり直しキャンペーンを背後で画策し、かつオバマ大統領の四万人増派に反対し、とりあえず一万増派でお茶を濁すことになるのだが、その演出の影に動いた。
 
 上院の有力者ケリーはアフガニスタン現地を訪れ、増派を要請はしたものの、カブールでカルザイ大統領に露骨な圧力を掛け、大統領選挙やり直しを呑ませた。

 混乱の巷からカブールは血の海に染まる。

 ところが、オバマはアメリカ国内の健康保険法案に強い関心があり、つぎにノーベル賞の重さ、授賞式でどんな演説をするかに腐心している。そのうえ十一月の北京訪問の重大問題(あ、日本にも寄るんだっけ?)、その次がアフガニスタン戦争。


 ▲オバマの無能が証明されるのは、いずれ時間の問題

 大統領選挙をやり直すとカルザイに圧力をかけた結果、タリバンのテロが猛烈な勢いで再開される。

 カブールの治安さえ、カルザイ政権では保てず、国連の拠点まで襲撃を受け、パキスタンはテロの嵐に吹き飛びそうになり、このタイミングへホー元海軍大佐の書簡が現れたため、リチャード・ボルブロック特別代表がホーと会談したほど、軍人高官の動きに配慮せざるを得ず、しかもワシントンポストが、この「事件」を対処報道し始めたことは、次のいやな予兆を示唆するだろう。

 ベトナム戦争の末期、撤退の気運に厭戦ムード、新聞は総立ちで政権批判とくれば、「ハエが象を倒す」こともありうる。
鳩山首相の政治力が無能に近いことは就任後僅か一ヶ月でばれた。オバマの無能が証明されるのは、いずれ時間の問題であろう。

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 ◎ブックレビュー ◎BOOK REVIEW ◎書評 ◎ブックレビュー◎
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トクヴィルの本質を論じないで、都合の良い箇所だけをガジる親米派
保守とサヨクの大喧嘩はラベル貼りと絶妙な比喩の応酬

西部邁・佐高信『思想放談』(朝日新聞出版)
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  右と左の対決。血を流しあい、眦(まなじり)を決しながら決闘まがいの対談を期待する向きには意表を突かれるほどの両者の共通点が存在した。
すなわち西部氏と佐高氏とは「昔、トロツキスト」と呼ばれたという意味では同士。そして二人とも美空ひばりのファン。庶民に共通する情緒がひばりにはあると褒めあう。
 かといってなぁなぁのなれ合いは一箇所もない。だから余計に面白いのだ。
 その二人が福沢諭吉は「平熱の思想家」とか、トロツキーは「詩人の革命家」とか独特のレッテルを貼っていく。
 なにしろ自ら規定する「乱暴者」と「狼藉者」とが、お互いが罵りありながら言葉の戦争を侃々諤々と展開されるのかと思いきや、情緒の世界と歌謡の世界で共鳴する点が多いのが本書の持つ独自の世界である。
本書は左右の「乱暴者」同士が十人の歴史的人物を選んで、その評価を加える。
西郷隆盛、福沢諭吉、吉田茂、夏目漱石、ニーチェ、ケインズ、オルテガ、エトセトラ。
いや人物評価を交えながら同時に世相を斬り、切り捨て、切りまくる歯切れの良さは、ちょっと他人には真似が出来ない。

形式張ったイデオロギーに囚われないで議論が進む。
評者(宮崎)がまず関心を抱いたのは、二人がいかようにトクヴィルを評価するか、という箇所にあった。トクヴィルはフランスの政治思想家で、十八世紀初頭にアメリカ各地をまわりフランス革命の残骸か、あるいは成果なるものを冷徹に観察してまわり、米国民主主義とは何かを説いた。
トクヴィルの『アメリカにおける民主主義』はベストセラーとなり、古典となり、いまもアメリカ研究には欠かせない。研究者ばかりか読書人なら必ず手にする書物である。じつは評者も嘗て米国に招かれてカリフォルニアのクレアモントという大学町に一ヶ月逗留した折、この本がテキストのうちの一冊だった。
佐高氏は「トクヴィルが刑務所観察と法律から米国研究を始めたところがユニーク」と指摘し、一方、西部氏は、アメリカ人ならびに親米の研究家らが、トクヴィルの都合の良い箇所だけ活用して、持ち上げたと総括する。
自由と平等と博愛はフランス革命のお題目に過ぎず、実際は血を血で洗う暴力だった。それが流れ着いた先がアメリカン・デモクラシーなる極北と、ソビエト連邦という実験国家となったが、デモクラシーなる制度はソクラテスの時代からあった。
REVOLUTIONは誤訳されている、という。

次に山形出身の佐高氏が石原莞爾をどう評価するか、興味があった。
評者(宮崎)はこの対談が進行していることは知らず、あるとき西部さんから「石原莞爾についてどう思いますか?」と問われ、「過大評価されていると思います。戦後、軍人の英雄たちが戦犯になって価値が逆転したおりに、せめてもの擬似の英雄として石原を持ち上げた伝説の名残では」と言ったことがある。
 本書でもふたりの石原莞爾論、おおむね上記に近い。彼の提唱した八紘一宇の「紘」から山形選出の代議士=加藤紘一が名つけられたという逸話は本書で知った。
 とはいえ、佐高氏は『週刊金曜日』というキョクサの雑誌を発行する、いわば凶状持ち。思想的に嫌う人も多いだろう。日垣隆氏が、どのメディアだったか忘れたが、長い長い佐高信論を綴られ、要するに彼を褒めてくれた財界人は褒めたたえ、彼をけなした人をボロクソに酷評する癖ありと論破されたのが記憶にある。佐高氏が或る週刊誌に連載していた書評コラムも、引用が半分以上のケースがあり、原作者が「あれだけ引用したのだから原稿料を半分寄越せ」と酒の席で絡んでいた。
 丸山真男の講義を東大に盗聴にいったほど入れあげた佐高は「丸山真男は進歩派の精神安定剤」と言えば、西部氏は「丸山はナショナルな問題を考えていない」と一刀両断。
 また両者、タケナカ某を「つまみぐいのマルキスト」と実に絶妙のレッテルを貼る。なっとく。結局、この両者は自らが規定するように、「背中合わせに立っている」。
 佐高氏のレッテル張りのうまさ、西部氏の比喩の巧みさも対照的で、率直に言うと電車の中で一章毎に読んで刺激的だった。
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HPを更新 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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 ◇読者の声 ●DOKUSHANOKOE ☆どくしゃのこえ ★読者の声
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(読者の声1)前から一度お尋ねしたいと思っていたのですが、田中宇という人が国際情勢を分析するメルマガや単行本を出されています。宮崎先生の分析と似ていることがあるようで、しかし大半は逆の分析です。陰謀論にも相当こだわっている論理の展開ですが、先生はどういう評価をされていますか?
   (KY生、栃木)


(宮崎正弘のコメント)ときどき講演会などで同様の質問を頂きますが、単行本を読んだことがないので。ときに読者の方から同氏のメルマガが回送されることがあり、たまに読みますが、楽天的な多国籍主義、多元的価値観の持ち主のようで核廃絶などの論理展開を拝見していると、世界もそうなるという信奉者のようですね。亡くなった片岡鉄哉さんが言っていたことを思い出しました。「かれの解説は猟奇的なところがある」と。一方的な思いこみと推測の積み重ねで次の世界を描くのは、客観的情勢分析では禁じ手。ですからそれなりの評価しか受けないのでは?



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(読者の声2)貴誌のランキングを毎日見ていますが、メルマガのなかで、連続して第一位ですね。アクセスと評価の分野ですが。休刊中もアクセス・ランキングが上位のことがあります。頼もしい限りでますますのご健筆を期待したいと思います。休刊が長いとがっかりすることがあります。
   (UY生、京都府)


(宮崎正弘のコメント)メルマガは登録配信ですので、なぜアクセスがほかにあるのか、不思議です。有り難いことではありますが。
 会社によってはパソコンが管理されており、購読は記録に残るので、逐一アクセスを繰り返している読者があるいは存在するのかも知れません。アンサーバックから判明するのは商社、銀行、証券、シンクタンクなどに小誌の読者が相当おられるようです。
 ところで小生の海外取材は業務上、不可欠ですので折々の休刊はご寛恕下さい。よく携帯用パソコンを持ち歩き、海外からも発信せよとお叱り(励ましですか?)を頂くのですが、移動が多い旅ゆえに、せめて旅行中はネットから解放されたいのです。

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  <目次>
推薦の辞   伊達宗義
第一章    激動する中国と問われる日本人の中国観(小田内陽太)
第二章    内田良平『支那観』(現代語訳 森田忠明)
第三章    異文明大国・中国とどう付き合うか(宮崎正弘)
第四章    『支那観』研究
第五章    内田良平『支那観』(原文)
執筆陣    池田一貴、片瀬裕、高木桂蔵、田中秀雄、永山英樹、福永武

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◎宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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  • 名無しさん2009/10/30

    ワシントン・ポスト紙報道記事のマシュー・ホー元海兵隊captainを(海軍大佐)と表記されておられますが、海軍所属とはいえ海兵隊の階級呼称は陸軍式なので(海兵隊大尉)が正しいと思います。余計なこととは知りながら、勘違いをしておられるのではないかと指摘させて頂きました。失礼(宜候)